「・・・あれが・・・ピサロ様・・・」
33.仲直り 俺たちはデスピサロの元へと来ていた。
変わり果てたデスピサロの姿に、ロザリーさんはショックを受けていた。
「ロザリーさん・・・」 「・・・ご心配はいりません。ありがとうございます、ソロさん」 にこりと笑うロザリーさんだが、俺はその笑顔を見て胸が痛んだ。
最期の――――――――シンシアの、悲しそうな笑顔に似ていたからだ。
「・・・ピサロ様。私がわかりませんか。ピサロ様」 「・・・・ぐぁぁあっ・・・!!・・・エ・・・ルフ・・・」 ロザリーさんが問いかけても、デスピサロは全く知らないと言った風にロザリーさんを見ていた。
「お前など・・・知らぬ・・・!!私は・・・人間を滅ぼすのみだ・・・!!!」 そういって、デスピサロは両手に構える剣の矛先を、俺たちに向けた。人間である俺たちは、それを見てたじろぐ。 相変わらず、この場所は暑い。そしてデスピサロとのまたあの戦いを思い浮かべると、少しだけ足が震えた。怖い。死んでしまうかもしれない。冷汗が額に滲む。 俺は、剣を構えた、その時。
「待ってください!」 俺たちとデスピサロの間に割り込むかのように、ロザリーさんは両手を広げて入ってきた。俺たちは驚いてロザリーさんを見る。
「今のピサロ様はとても危険です・・・。・・・でも・・・」 下を俯いていたロザリーさんは、顔を上げてデスピサロを見た。
「でも、どんなになってもピサロ様はピサロ様です!」
その言葉を聞いて、俺は戦闘体勢をやめた。そして、俺の後ろでも武器を構える仲間たちに振り返り、それを止めるよう指示した。 「ソロ?」 「・・・今は、ロザリーさんに任せようぜ」 それを聞くと、アリーナは「わかった」と言って構えを止めた。
「・・・元々は・・・ピサロ様をこんな風にしたのは・・・私です」 ロザリーさんは、デスピサロの顔を見上げながら寂しそうに呟いた。 「私が・・・私がピサロ様に出会わなければ・・・世界はこんなことには、ならなかったでしょう」 しかしロザリーさんは、地面に崩れ落ちた。肩が震えている。
「わたし・・・わたし・・・っ!!」 そしてロザリーさんの瞳からは、ルビーの涙。 後ろから、トルネコさんの惜しそうな声が聞こえる。
俺たちは見ていられなくて、ロザリーさんの後姿から目を逸らした。
その時。
「・・・ロザリー?」
「・・・ピ・・・サロ・・・様・・・・・・・?」
視線を戻せば、そこには人間の姿に戻ったデスピサロがいた。
「え・・・」 「デスピサロ・・・?」 俺たちは目を見開く。
「ピサロ様・・・ピサロ様・・・・・・!!!」 ロザリーさんは嬉しそうにデスピサロに抱きついた。デスピサロは愛しそうに、その体に手を回し、ぎゅっと抱きしめた。
「ロザリーの涙を見て正気に戻った。・・・・・私は今まで・・・何を・・・・・・?」 「・・・人間を滅ぼそうと進化の秘法を使って魔物になっていたのよ」 マーニャの言葉に、デスピサロは深くため息をついた。
「そうか・・・ロザリーを殺した人間が許せずに・・・私は気が狂っていたのだろうな・・・」 「・・・ピサロ様・・・・・・私が生き返ったのは、ソロさんたちのおかげなんです。千年に一度しか咲かない世界樹の花を、私に使ってくれたんです」 ロザリーさんはデスピサロから離れ、デスピサロの顔を見つめた。
「ピサロ様・・・。私を殺した人間は・・・確かに酷い人間だと思います。でも、世の中はそんな人たちばかりではありません。ソロさんたちのような・・・素敵で、優しい方々もたくさんいるんです。そんな人たちを滅ぼすのは間違っていますわ。例え私を思ってくれていての行動だとしても、私は全然嬉しくありません」 「ロザリー・・・」 「ですから、もう決して人間を滅ぼそうだなんて考えないでください。ピサロ様がこれ以上・・・間違った道に進んでしまうのを私は見ていられません。今回だって、私一人では止められることはできませんでした」 そう言って、ロザリーさんは振り返って俺たちを見た。
「みんなみんな、ソロさんたちのおかげなんです」
そして、ロザリーさんは嬉しそうににこりと笑った。初めて見た、心から微笑んでいる笑顔。 俺は嬉しくなって、ついつい笑ってしまう。
「そうか・・・あの勇者たちが・・・」 デスピサロはそう言うと、俺へと歩み寄った。
「・・・すまなかったな。今まで人間を憎み・・・お前達のような奴がいるとは知らずに」 「・・・・・・・・・」 俺が黙っていた。例え謝られたとしても、こいつが俺を殺そうとしていたことに間違いはない。そして、その犠牲になってしまった村の人たちや、シンシアのこと。
「お前は勇者ソロだったかな。あの時・・・殺していたと思っていたが・・・」 ふ、と笑ったデスピサロに無償に腹が立って、気がつけば俺はもう行動に出ていた。 「ソロ!?何してんの!?」 「ソロさん・・・!?」 俺は、デスピサロの頬を一発、殴っていた。
「・・・あんたは・・・どれだけの人を殺したと思ってんだよ・・・」 「・・・・・・」 「あんたのせいで・・・あんたのせいで、俺の・・・俺の村は・・・シンシアは・・・っ!!!!」 俺は悔しくて、悲しくて。足に力が入らず、そこにへたり込んだ。
「・・・すまない」 「・・・・・・・っ・・・」 「・・・謝って許してもらえる問題ではないだろう。だから私を憎んだままでもいい」 「・・・!?」 俺はその言葉を聞いて、驚いてデスピサロの顔を見た。
「だから、償い・・・と言うわけではないが、ロザリーを生き返らせてくれたことにも感謝する。・・・私が殺してしまった、お前の大切な人を生き返らせたいとも思っていただろう」 「・・・・・・・・」 「私を・・・共に旅の仲間にはしてくれぬか」
「「「「「「「「・・・ハァア!?」」」」」」」」
俺たち仲間が一斉にそう叫んだ。
「・・・正気かよ、デスピサロ」 俺は差し伸べてきたデスピサロの手を掴んで、何とか立ち上がった。 「・・・ああ。そもそも私がこのように意識を無くしてまで人間を憎む理由は、誰か他に黒幕がいるんだろう。そいつを倒さねば気がすまぬからな」 「黒幕・・・?」
そういえば、デスピサロを倒しに行く前。エビルプリーストという魔物に会った。そいつが人間にロザリーさんを殺すよう指令を下し、今に至る。 しかしエビルプリーストは俺たちが滅ぼしたはずだ。
「それなら「よし、聞き込みだ。デスパレスへ向かうぞ」いや俺の話を・・・」
「オレの話を聞けよォォオォオォ!!!!」
あとがき 2010.08.05 UP |