「っ・・・・・・ぃ、て・・・」 俺が目覚めると、そこは真っ暗な世界だった。だが周りには、デスピサロにやられて倒れている仲間たち。アリーナが永遠の眠りにつきながら俺の手を握っているのはわかる。 「そうか・・・俺たち・・・負けたんだ。デスピサロに・・・」 俺はポツリと呟いた。シンシアへの自分の中で誓った約束を・・・守れなかった。仇を討てなかった。妙に冷静な俺は、辺りを見渡した。やはりそこは真っ暗で、俺たち以外は見えない状態だった。その時。
「勇者ソロよ・・・」 「!? 誰だ・・・!?」 力のない俺は、そんな風に声を荒げることしか出来なかった。
「あなたはまだ死ぬ時ではありません…あなたはデスピサロに打ち勝たねばならぬのです・・・」 「え・・・?」 見渡して声の持ち主を探しながら、俺は問いかける。 「あんたは・・・誰なんだよ・・・?」
「・・・・・・勇者よ、目覚めなさい・・・」 その人は俺の質問には答えず、そう言った。そして一瞬、俺の前は真っ白に光った。目が眩み、俺は目を瞑る。再び目を開けた時には・・・ゴッドサイドの宿屋のベッドで俺は眠っていた。
29.守れなかった約束 「・・・・・・は・・・・・・?」 不思議なことの連発で、頭が混乱した。確かに自分は今までデスピサロと戦い、負けたはずだ。なのになぜここに・・・。横には、普通に眠っている仲間たち。被っている布団が上下しているところを見ると、息はしているようだった。
「(・・・変なの・・・・・・)」 あの時聞こえた声は誰だったのか・・・それすらもさっぱりだったが、俺はとりあえず外に出た。負っていたはずの傷もすっかり癒えており、俺の疑問は増えるばかりだった。空を見上げれば、いつもと変わらない青空。
「・・・ごめん、シンシア」 シンシアの仇、討てなかったよ。 でも、もっと強くなってやる。そしたら。 「そしたら次こそ、デスピサロを倒すよ」 「うん、そうだね」 「わぁぁあぁっ!!!」 いきなり背後から聞こえた声に、俺は慌てすぎて後ろにこけた。声の主はアリーナ。こけた俺を、びっくりしたように見ていた。 「・・・ぷっ!何やってんのよソロ!」 「い・・・いや・・・・・・ははは・・・」 アリーナが差し伸べてくれた手を握り、俺は立ち上がった。こいつ、いつからここにいたんだろうか・・・。
「・・・シンシアさんに、謝ってたの?」 「・・・・・・まぁ・・・」 「そうだよね・・・。私も、城のみんなに・・・父様たちに、申し訳ないな」 少し悲しそうに笑うアリーナの頭を、俺は撫でてやった。 「・・・ありがとう。ソロって…やっぱり優しいね」 「・・・え」 「だって、私のこと庇ってくれたでしょ?」 確かに、死ぬ前に俺はアリーナを庇ったけど・・・。 「私もあの後すぐ意識なくなっちゃったけど、それまでずーっと泣きじゃくってたんだよ?」 「そう・・・だったのか」 そういえばあの真っ暗な世界にいた時、アリーナは俺の手を握っていた。もしかしてアリーナは意識がなくなってしまいそうな中、俺の手を握ってくれたのだろうか。そう考えると何だか嬉しくて、嬉しくて「ソロ、顔真っ赤」 そうアリーナは俺の顔を覗きこんで言った。俺の顔はもっと赤くなる。
「!?ち、ちが・・・っ」 「なーにイチャついてんのよ、このガキどもが」 「・・・・・・・・・・・・マーニャ」 背後から俺たちの間に割って入る女は、マーニャ。
「もうみんな目が覚めたわよ。二人がいないからビックリしたわ。話し合いするから宿屋に戻ってくれる?」 「そっかぁ〜ごめんね。じゃあ行こうかソロ!」 「(・・・空気を読んでくれマーニャ・・・)」 なんとなくアリーナとの時間を壊されて残念に感じた俺だった。
「おお勇者殿たちが戻ってきたでござるよ」 「・・・遅れてすいません」 「じゃあ早速じゃが・・・これからどうする?」 ブライのそんな発言から、長々とこれからについて話し合う。結果、レベルを上げてからもう一度デスピサロに挑むことになった。 いつまでもゴッドサイドにいるわけにはいかないので、俺たちは宿屋を後にする。
「・・・あれ?何だかいつもと違いますね」 外に出ると、クリフトはそう言った。俺には全くいつもとの違いがわからないが・・・。 「確かに言われてみれば、いつも静かなゴッドサイドの雰囲気が今日は騒がしいような気がしますね。ソロさん、ちょっと町の奥に行ってみませんか?」 「わかった」 ミネアもその騒がしさがわかるのか・・・。やはり普段からそういう神とか占いとか信じてるとわかるものなのだろうか。
「え、祭壇に穴?」 「はい・・・。昨日まで何ともなかったのですがねぇ・・・」 町の奥では何人かの人が祭壇の周りに集まっていた。そこにいた人に俺が話を聞くと、祭壇に穴が空いているという。
「騒がしい雰囲気というのはこれだったのですね。あの穴から魔物の騒ぐような気配がします・・・」 クリフトは少し眉間に皺を寄せて、祭壇の穴を見つめる。俺は騒がしいというのはこの人だかりの事かと思っていたがどうやら違うようだ・・・。
「魔物っ?魔物なら入ってみましょうよ穴にっっ!!」 アリーナは魔物と聞いて目をキラキラさせている。まぁレベルを上げなければいけないので、別にいいとは思う。俺たちは入ることになった。
「じゃあ早速入ってみよ!」 「めんどっくさ〜〜・・・・・・」 一人乗り気じゃない女がいるが放っておいて、俺たちは祭壇の穴から中に飛び降りた。
あとがき 2010.02.21 UP |