「ってなワケで、これからは旅に同行させてもらうわ!私はアリーナ。よろしくね!」

「私はブライといいます、よろしくお願いしますのじゃ」

「クリフトです。よろしくお願いします」

サントハイム3人組がそれぞれに挨拶すると、ミネアやトルネコたちは礼をする。

 

「ちょっとソロ。あの姫様を仲間にするなんてどういうこと?別にいいんだけどさ」

「ん・・・まあ成り行きで・・・」

「姉さん、この方たちは私の占いではどうやら3人とも導かれし者のようですよ」

ニッコリと笑ってそういうミネアに、マーニャはふーんと言って3人組を見た。

 

「・・・ま、いいや。若い男が1人増えたしね!」

マーニャは少しだけ目を輝かせ、クリフトを見た。クリフトは色気ムンムンのマーニャに見つめられ、少し戸惑っているようだった。

 

 

09.南国出身姉妹の心

「さっきソロにも言ったんだけど、ソロ・・・勇者のことを探してる戦士がキングレオ城に向かったらしいの。もしかしたらデスピサロを倒すのに必要な人材かもしれないから、とりあえずそのキングレオとかいう城に行ってみない?」

淡々と話を進めるアリーナに、トルネコたちは頷く。ミネアはキングレオ城という言葉に少し敏感なようで、アリーナから発せられたその地名に少しだけ肩をびくつかせ、「キングレオ城・・・」と感傷に浸っているようだった。

 

 

あっさりと主導権らしきものをアリーナに握られた一行は、マーニャのルーラでキングレオ城へと向かった。

 

「あっ・・・!あなた方!」

城に入り、堅く閉ざされていそうな城の扉の前には、兵士が立ち厳重に城を守っている。どうしようか考えていたときに、噴水の近くにいた詩人のような男が話しかけてきた。

「僕はホイミンという旅のものです。どうかお城の中のライアンさんを助けてください!」

「ライアン?」

聞いた事のない名前に、俺たちは首を傾げた。

「ライアンさんは僕が尊敬する強い戦士です。この城に住みつく邪悪な世界を滅ぼす存在をとっちめると言ってこの城の中へ入ろうとしたのですが、兵士に見つかってしまい・・・。今この城の中できっとライアンさんが大変なことになっているかもしれないんです!僕、そう考えたら・・・もう・・・」

詩人は今にも泣きそうな顔で、俺たちに訴えてきた。

 

「どうするの、ソロ?」

アリーナが俺に尋ねてきた。

「・・・別に。助けてやりゃいいんじゃねぇか」

俺がそっけなく答えると、アリーナはそうだね、と言ってホイミンと話しだした。

 

「わかりました。私たちもその捕まった戦士の人と話がしたいし・・・。でもどうすれば助けられるの?」

「城の中には魔法の鍵があれば入れるはずなんですが・・・。あ、コーミズ村にある地下に住む僕の昔からの友人なら、何かわかるかもしれません」

真剣な表情でホイミンは自分の知っている限りの情報をアリーナに話した。

 

「オッケー!それじゃあとりあえずそのミミーズとかいう村に行きましょ!」

「アリーナさん・・・。コーミズですよ」

わざとなのではないかと言うくらいに村の名前を間違ったアリーナに、ミネアは駄目だしした。

 

 

 

コーミズ村に入る前に、俺はマーニャたちの顔色をうかがった。この村はマーニャたちの故郷でありながら、殺された父親との思い出がたくさん詰まった場所なのだろう。そんな場所に来るのはやはり2人にとってはツラいかもしれない。

村に入るとやはり村人たちはミネアたちの姿を見て、「エドガンさんが〜」とどーたらこーたらと昔の話をする。それをつらそうな顔で聞いているミネアに、俺たちは焦っていた。

 

「ほーらミネア、そんなツラそうな顔すんなっての。そりゃちょっとはあたしだってツラいけどさ・・・。こんなところでしょぼくれてたら、何も始まんないでしょ?あのホイミンとかいう悩みも解決できないしライアンだって助けられないし、ね。ソロ、あたしたちのことは心配しないでいいからどんどん先に行こ!」

俺の苦手であるチャラチャラした外見・話し方のマーニャだが、ちゃんと心はいつも父と妹のことを考えている優しい人なのだ。俺はこのマーニャの言葉により一層強くそう思った。

 

「でも、やーっぱりこの村は田舎よね。いつ来ても見栄えしないし暇だわー。あたしはいつかあの豚を食べてやるって、子供のころから決めてるのよ!」

マーニャが指で差した豚は、家畜用の豚なのかはわからないが少し肉のついた豚だった。マーニャはいつかどころではなく今にも食べてしまいそうなのではないかと俺は少し気が気でなかった。

「でもこういう田舎の町も、空気がきれいでいいわよね!」

アリーナは腕を大きく広げて、深呼吸している。ミネアたちが今こんな心がボロボロになっているというのに、能天気な奴だなと俺は思った。

クリフトもアリーナにそうですね〜と言うと、深呼吸している。

 

 

「・・・深呼吸ばっかしてないで行くぞ。ホイミンの友達に会うために来たんだろ」

「あ、そうだったわね。風が気持ち良くてうっかり忘れてたわ!じゃあ行こっか」

満面の笑みで笑うアリーナから、俺は顔を背けた。

なんとなく・・・なんとなく、俺はアリーナが許せなかった。自分が戦うことばかり考えて、きっと今まで城に居た時も周りを振り回してばかりいたのではないだろうか。アリーナには、人の気持ちを考えて行動することができるのだろうか。

できるわけがない。こんな能天気な女が、そんな気のきくことが出来るわけがない・・・。

俺はまだアリーナと親しいわけでもないのに勝手にそう思い込んでしまっていた。きっと今まで村にずっといて外の世界を知らなかったから、ホフマンのように人を信じるということに対して臆病になってしまっているのかもしれなかった。

 

 

コーミズ村の地下というのは、マーニャたちの家の地下しかないらしい。階段を降りるとスライムが1匹いた。俺は急いで剣を鞘から引き抜いた。

「うわあ!ま、待ってー!僕は悪いスライムじゃないよぅ!」

慌てまくって、人間の言葉を話すスライムに俺は安心し、剣を戻した。

「こ、このスライムがあのホイミンの昔からの友達だっていうわけ?魔物なのに?」

「でも確かにあのホイミンさんからは只ならぬ気配はありましたが・・・どういうことでしょう?」

姉妹がひたすら疑問を浮かべていると、スライムが口を開いた。

「ホイミンのこと知ってるの?」

「え、えぇ。さっきキングレオ城でお会いして・・・」

ミネアは魔物に対してでも敬語を使う。

 

「そっか。ならいいや!いいこと教えてあげる!エドガンさんは、ここ以外にも研究所を持ってるんだよ。知ってた?」

「え・・・お父様にもうひとつの研究所!?ちょっとスライム!それはどこなの!?」

今にもスライムを蹴り上げそうな勢いで尋ねるマーニャに少し怯えながら、スライムは答える。

「えっと・・・確か・・・西の洞窟の中だよ。そこに行けば魔法の鍵っていう錬金術師が作る鍵も手に入るかも!あの鍵があれば、だいたいの鍵のかかった扉を開けることができるんだよー」

僕物知りでしょ!と言わんばかりに、スライムは胸を張った。(胸ないけど)

 

「西の洞窟っていえば、前にミネアと入ったオーリンさんの倒れてた洞窟よね」

「ええ。前に行ったときは気付かなかったけど、本当にあるのかしら?」

考え込むマーニャたちに、アリーナは元気よく答えた。

「はいはーい!やっぱこんなとこで考えてたって仕方ないでしょ!作戦練り上げるより実行したほうが早いわよ。それじゃ、早速その西の洞窟に行きましょ!」

ゴー!と一人で張り切って、アリーナはコーミズを出て西へ出た。

 

「・・・はー・・・。あたし、なんだかちょっとアリーナのペースにはついていけないわ」

「私もです、姉さん」

「・・・俺も」

「私もですよ・・・」

マーニャやトルネコにミネア、そして密かに俺も賛同した。あいつに今までついてきたブライさんやクリフトさんはものすごいな・・・。

はっきり言ってあいつの考えていることはわからない。本当に戦うことしか考えていないだろう・・・。

 

 

「姫様!待ってください!一人では危ないですよ!」

「先にいつも行かないでくださいと言っておるじゃろうが!爺は足腰が弱いのですぞ!」

「もー。みんな遅いのよ。早くはーやく!」

本当に女とは思えない体力の持ち主のアリーナ。

その後も、洞窟の中で俺たちはアリーナに振り回されるのだった。

 

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あとがき
うー・・・アリーナは、本当に元気ハツラツですよねえ。
(この小説の)ネタバレなので言えないですが、ソロとアリーナの○○な関係の表現が・・・難しい・・・。

2009.03.02 UP