「ソロー!!! アリーナが俺に向かって手を振っているのが見える。 俺はもうマーニャたちの待つソレッタへ帰ろうとルーラを唱えかけていたのを、急いでやめた。
08.おてんば姫の目的 「何でなにも言わないで帰ろうとするのよ!」 アリーナはちょっと頬を膨らませて俺に怒った。 「・・・別に。もう夜遅いから邪魔だと思って」 俺はそっけなくそう答えたら、アリーナは俺の服を掴んだ。 「だからって無言で帰ることないじゃない!まだお礼だって言えてないのに・・・」 掴んだ手をアリーナはゆっくり降ろした。俺を見つめる潤んだ紅い瞳に、少し俺は戸惑う。
「・・・ありがとう」 アリーナは嬉しそうに俺に微笑んだ。俺はその笑顔を受けないように顔を背けた。 「もー。ソロってほんと素直じゃないね。口数だって少ないし!」 せっかく笑顔を見せたのに、アリーナはまた俺に強気な顔を向けた。
「・・・俺もう行く」 「あ、待って!!」 俺はルーラの詠唱を再び始めたが、止めた。 「・・・何」 「え・・・と、あの・・・」 アリーナは少し言いにくそうに下を俯いたが、一人で頷くと俺を見上げた。
「私とクリフトとブライと・・・私たち3人を、ソロたちの旅の仲間に入れてほしいの!」 俺は一瞬、アリーナが言ったことを疑った。俺とアリーナたちが、一緒に旅? 「・・・何でまた?」 「だってやっぱりたくさん人が集まった方が強いもの!私たちにもちゃんと旅の目的があるけど、私ソロの旅に目的があるなら、力になりたい。クリフトやブライが反対したら、私だけでも着いてくわ!」 強く決心したのか、アリーナは俺に向かってそう話した。 本当はクリフトとかいう神官が大事なくせに。本当は、離れたくないくせに・・・。
「・・・俺の旅の目的は、俺の故郷の村を滅ぼしたデスピサロを倒すこと。それが勇者の・・・俺の使命だから」 「え・・・?」 さっきまで強気な顔をしていたアリーナは、一瞬戸惑っている顔をした。 「・・・どうした?」 「え・・・わ、私・・・私たちもデスピサロを討つために・・・」 アリーナは唇が震えて、上手く話せないのか、声まで震えている。俺はアリーナがそこまで言った時点で、アリーナもデスピサロを討つために旅をしてるのだとわかった。 アリーナは今にも泣いてしまいそうな顔だった。俺のように、デスピサロに何かされたのだろうか。
「・・・もう言わなくていい」 「えっ?」 アリーナは俺を見上げた。 「・・・とにかく、旅に加わるなら明日の朝8時までにソレッタの宿屋まで来てくれ。じゃあ」 「あ、ソロ・・・!」 さっきから何度もルーラをしようとしてアリーナに止められてしまったが、俺は今度は無視をしてソレッタに戻った。
「・・・んっ・・・」 俺は窓から差し込んでいた朝日が眩しくて、目を覚ました。横ではトルネコが大きな鼾をかいている。 「・・・あいつ、マジで来やがった・・・」 仲良し3人組は3人組で旅をしていればいいのに、と俺は思ってしまった。 仕方なく俺は宿屋の外へ出て、アリーナたちに会った。
「・・・あ!ソロ!よかったーちゃんと気付いてくれたのね!」 「・・・あぁ」 俺は力なく頷いた。するとクリフトが視界に入り、目があった。クリフトは俺に礼をすると話し始めた。 「ソロさん・・・ですよね。昨日はパデキアをありがとうございました」 「・・・いえ」 クリフトがそう言うと、やわらかく微笑んだ。こんなお転婆な姫様についていけるのだから、優しいやつなんだろうな。
「とりあえず8時までに来たんだから、仲間に入れてよね!約束破りは許さないわよ?」 「わかったわかった・・・」 アリーナは俺の目の前に人差し指を出して、俺はアリーナに宣戦布告でもされたかのようなポーズをした。
「あ、そうそう。昨日ね、ソロが勇者だって話をしてたの。そしたら外にいた吟遊詩人の人がその話聞こえてたらしくって。前に勇者を探してたライアンって人が、キングレオに向かったらしいの。とりあえずそこに行かない?」 アリーナは元気いっぱいに俺に笑いかけた。俺は無言でうなずくと、マーニャたちのいる部屋の窓を見つめる。あの3人はアリーナたちが仲間になることに賛成してくれるだろうか。こいつら3人は導かれし者なのか。
そんなことを気にしていると、また俺はクリフトに睨まれていた気がした・・・。 あとがき 2009.02.16 UP |