何なんだ、さっきの女。 そんなことばかり気になって、眠れない。 いや、もう外は明け方だから早く寝なきゃという思いであせってるんだ。あと、トルネコのいびきも気になるからきっと寝れないんだろう。 あんな女なんか、別にどうでもいい。
俺は寝返りをうって、目を閉じた。けどやっぱり眠れない・・・。
そしてとうとう、もう起きる時間になってしまった。
06.パデキアの洞窟 昨日は真っ先に宿屋に向かった俺たちは、ソレッタの国ではまだ王に挨拶もしていない。 「ソレッタのお城へようこそ!」 ・・・と。 「・・・お城?この小屋が・・・ですか?」 ミネアが不思議そうに訪ねた。 「え!?いや、えと・・・その・・・はい・・・お城です・・・」 兵士が少し恥ずかしそうにミネアに言うと、ミネアは黙った。きっと兵士はこの小さな小屋がお城と言うのに、恥ずかしくなってきたのだろう。
その城という小屋に入ると、まず目の前に玉座があった。が、王の姿は見当たらない。 「おお、このソレッタの国に客が来るとはどれくらいぶりだろうか・・・!」 王っぽそうではないが、玉座の横にいた髭を生やしたおじさんが俺たちに近づいてきた。大臣というやつだろうか。 「あの、王様はどちらですか?」 「王様なら畑にいらっしゃいます」 畑・・・!?ましてや王様が!? 俺はそう思ったが、きっとマーニャもミネアもトルネコでさえもそう思ったに違いないだろう。 急いで城(小屋)を出て、目の前にある畑を見渡した。そこには畑には不似合いな毛皮のコートなどを着る王の格好をした、ソレッタ国の王様がいた。王は畑仕事に必要な道具を持って土を掘ったりしている。 「ちょっと・・・!あの人、王様なのよね!?何で畑の仕事なんてしてるの!?そんなの国民に任せればいいじゃない!」 マーニャが畑仕事に勤しむ王の姿を見て、何とも不思議そうな顔で俺に問いかけた。ごもっともな意見だ。
「あ、あの・・・」 「ん?おお!旅の方か?」 王は額に流れる汗を拭い、俺たちを見た。ミネアが前に出て王様に尋ねた。 「えっと、パデキアをもらいに来たんですけど、最近育ってないって聞いて・・・。ありますか?」 「・・・すまないが、パデキアは今この国にはひとつもないんだよ」 やはり、ダメだった。ミントスでも言われたからあまり期待はしていなかったけど。 「この国の大半はパデキアを売るお金でやっていっていたのに・・・こうも種がないとな・・・」 「種があれば育つんですか?」 「ああ。この国から南にある洞窟の奥に、先代の王が万が一の時に置いてあるらしいんだが・・・なんでそんな大事なものを洞窟に置くかな、先代王は!」 一人でブツブツと嘆いている王様は再び畑仕事に精を出した。
「洞窟ねー・・・。しょうがない、行ってあげるか。何かこの国を助けてあげたい気もするし」 「あら、珍しいわね。そんな気持ちに姉さんがなるなんて」 うるさいわねーと冗談で怒るマーニャに、ミネアは笑う。 「ソロさん、どうするんですか?行くんですか?洞窟なら私は馬車に・・・」 「いや、人数ちょうどいい感じで4人だからトルネコさんも着いてきてくださいね」 馬車で待機したがっていたトルネコを俺は無理やり連れて行くことに決め、ソレッタの国を出発して洞窟へと急いだ。後ろでまだトルネコがブツブツ言っている気がしたが、俺はひたすら無視をした。構ってしまえば負けだ。
洞窟に辿り着き、未だぶつくさ言うトルネコを連れて俺達は入った。するとそこには、昨日宿屋にいたアリーナが、男を連れているのを見つけた。 「もう、こんな扉・・・・・・・・・・・・・・・・・・うおおりゃああああ!!!」 ドーン!と激しい音がして、鉄で出来ているであろう洞窟の入り口からすぐにある重たい扉をアリーナは蹴破った。あれを開けなければきっと洞窟の奥に入れないのだろう。 「さ、みんな行くわよ!」 そういうとアリーナは男たちを置いて先へと進んで、俺たちから姿が見えなくなってしまった。 「な、なあ。姫様って確か、盗賊の鍵を昨日俺からもらったよな?」 「そんなにドアが蹴りたかったんだろうか・・・」 なんていう怪力な女なんだ、昨日話したアリーナという奴は。俺はさっきのアリーナの行動を見て思った。それはその場にいた皆も思っていたみたいだ。
「姫様ー!!!」 後ろから少し年老いた独特な髪型の爺さんが、洞窟に入って来た。 「は・・・!そちらの方たち、青いとんがり帽子とマントをした女子を見ませんでしたか!?」 「ああ、その人ならさっき男3人くらい連れて洞窟の奥入って行ったわよ。若いのにやるわねえ」 マーニャが関心したように言うと、その爺さんは安心したように胸に手を当ててへたりこんだ。 「よかった・・・!兵士を雇われていたのか・・・!さすがは一国の姫君!」 「・・・えー!さっきの姫様なんですか!?なのになんであんな力を!」 ミネアがちょっと混乱したように頭に手を当てて、考えている。 「私はあの姫様の教育係で、姫様がおつきの神官の病を治すために一人で旅立たれて・・・!心配で追いかけてきましたが、大丈夫なようですな・・・」 そのアリーナの教育係の爺さんはそれだけ言うと、俺たちに背を向けて洞窟から出て行った。 「はーっさっきの少女が姫様とは、あなどれませんなー!」 トルネコも感心したように、もう姿の見えないアリーナたちが行った洞窟の奥を見つめていた。
「って、あたしたちこんなことしてる場合じゃないでしょ!!あの女の子に負けないために一刻も早くパデキアの種を見つけなくっちゃ!」 姉妹で奥へ進もうとするのを、俺は未だアリーナに関心しているトルネコを連れて着いていった。 本当、一度思うとどこまでも引きずるんだな、トルネコは・・・。
あとがき 2009.02.11 UP |