“人を信じる”

そんな風に俺は人を信じたことは、きっとシンシア以外にいなかったと思う。
親父も、おふくろも、シンシア以外は信じなかった。

それくらい俺はシンシアのことを大事に思っていたんだろう。

 

 

 

04.信じる心

「「きゃああああああああああああああああ!!!」」

「うわああ!大丈夫か!?あれ、いない・・・」

間一髪で助かった俺。後ろを振り返っても、今まで着いてきていたマーニャとミネアの姿はもうどこにもない。俺は仕方なく一人で、目の前にあった下へと続く階段を降りて行った。

ホフマンから馬を借りる為、そしてホフマンに人を信じてもらうために、俺たちはあの砂漠の宿屋から西にある洞窟へと来ていた。そして洞窟に入ってすぐに、落とし穴があり、あの姉妹は罠に引っかかった。今さっき下に落ちて行ってしまい、俺は危機一髪で落とし穴に落ちなかったが、仲間とはぐれるなら自分も落ちたかった・・・と思う。

 

階段を降りると、先ほどの落とし穴のあった所からすぐ下のらへんにミネアとマーニャがいた。

「あ、ミネア、マーニャ・・・ぬお!?

2人の名を呼んでもミネアとマーニャはすぐに俺に背を向けて走って行ってしまった。俺はすぐに2人を追う。2人は行き止まりになると足を止め、俺の方を向いた。

「おいミネア、マーニャ。名前呼んだのに無視って何だよ・・・」

「やだ、私達もソロを探してたのよ!・・・お前を殺すためにな!」

いきなりマーニャの口調が変わり、魔物と化して襲ってきた。ホフマンもきっと友人の姿にこの魔物が化けて襲い、そのせいでホフマンが人を信じることが出来なくなってしまったのだろう。

俺はあっさりとミネアたちに化けた魔物を倒した。

 

その後もまた色々あり、俺は何度もミネアたちに化けた魔物に遭遇した。そしてまたマーニャたちの姿が見え、俺は話しかけるのを少し躊躇した。が、向こうが俺の姿を見つけてしまった。

「あ、ソロ!探したわよ・・・なんてね!もう騙されないわよ!」

今度は本物のようだ。しかしマーニャは俺を魔物だと思ってる。きっと俺と同じような目にミネアたちもあったのだろう。

「待って姉さん!この方はきっと本物のソロさんですわ」

「え、そう?・・・じゃあ質問だけど、エンドールでカジノにいたのはミネア?」

そう尋ねられた俺は首を振った。するとマーニャの顔が喜びに満ち溢れたように見えた。

「な〜んだ!本物じゃない!よかったあ〜!何度あたしたち、あんたの化けた魔物に襲われたと思う!?」

「いや、俺もあんたらに化けた魔物に襲われたし・・・」

「え、そうなの?なんだか気持ち悪いわね・・・。じゃあさっさと帰りましょうよ!」

「何言ってるの姉さん。ホフマンさんが取りに来たっていう宝をまだ取ってないでしょ!」

あ、そっかという顔をするマーニャを俺はもうコイツはダメだという目で見つめた。

 

 

俺たちは洞窟の奥まで進み、宝箱の中にあった「信じる心」という水晶のような輝く玉を手に入れた。

「きっとこれでホフマンさんを人間不信から立ち直らせて差し上げられますわ」

嬉しそうな顔でミネアは信じる心を手にとって見つめた。早速リレミトでホフマンの所へ行こうと思ったのだが、不思議な力でかき消されてしまい、仕方なく自力で洞窟の外へと出たのだった。

 

 

 

「なんだ?それが俺が求めてた宝だっていうのか?」

「そうです。これであなたは人を信じることが出来るはずです」

ミネアはそう言ってホフマンに信じる心を差し出した。ホフマンは半信半疑といった顔でそれを受け取り、信じる心を見つめた。すると瞳の色や表情が、変わった気がした。

 

「これは・・・信じる心?・・・そうか、あれは魔物だったのか・・・」

ホフマンは全てを悟ったのだろう。信じる心を見つめた後、人が変わったように明るい表情、口調になった。

「ありがとうございます勇者さん。僕はやっと立ち直る事が出来ました・・・そうだ、あなた方の旅の仲間にさせてもらえませんか?そうすれば馬も連れて行きますよ!」

ニコッと笑うホフマンに、ミネアとマーニャも微笑んだ。馬の条件があるなら、俺たちも言うことはない。早速ホフマンを仲間に入れ馬を出してもらい、俺たちは砂漠を超えた。

 

 

砂漠を越えるとアネイルという街があり、更に南に行くとコナンベリーという港町があるらしい。俺たちは一刻も早くこの大陸から出る為に、アネイルの宝たちを取るとコナンベリーへ向かった。

コナンベリーでは既に船を出していなかった。トルネコとかいう大商人が船を自力で作っているが、船の行く道を照らす灯台の光が、怪しげな光へと魔物のせいで化してしまったのだそうだ。その光に照らされた船は必ず沈んでしまうらしく、船を今は出していないという話だ。

船を出すためにその商人のトルネコは、一人で魔物を倒しに大灯台へ行ってしまったらしい。

 

「そのトルネコとか言う男、商人だから金持ってるわよね!しかも自分で船を作ってるっていうんだから、もうこれは大金持ちでしょ・・・!それで一人で魔物を倒しに行くってんだからきっとすごい力の持ち主なのよね!うん、私トルネコと結婚するわ

マーニャは一人でそう言うと、決意したように拳を握った。もうトルネコは結婚していたらどうするんだ、と俺は横目でマーニャを見た。

 

「なあなあ、知ってるか?」

「何が?」

「コナンベリーの船が欠航になる前の一番最後の船に乗ってた姫様の話だよ!」

「え?姫様が乗ってたのか?」

「そうだよ。若い神官とじじいの呪術師をお供にして旅をしてたんだけどよ、その姫様の国が滅んだんだってよ」

「あ、それ聞いた事ある。サントハイムっていう国だろ?」

「そうなのか?国の名前は知らねえけどさ、また姫様がかなりの可愛さでさぁ!でも姫だからって舐めちゃいけないぜ。その姫様、エンドールで開かれた武術大会で優勝したんだってよ」

「えー!まじかよ!すっげえ姫様だな!一目でいいから見たかったなあ」

 

街の片隅で船乗り達がそんな話をしている。武術大会で優勝した姫?姫のくせにそんなに強いのか?俺はひたすらに首を傾げるばかりだ。姫といえば普通おしとやかな感じなのではないのだろうか・・・。

そんなサントハイムという国の姫様の話に、俺以外にも耳を傾けていたのはミネアだった。

「ソロさん、その3人は何だか気になりますね」

「・・・そうか?俺はその姫がなんでそんな武術に長けてるのか気になるんだけど」

「そうですね。姫様なのに武術って・・・。でも私なんとなくなんですけど、そのサントハイムの3人はもしかしたら導かれし者なのかもしれません。私の占いではそう出ています」

ミネアは真剣な表情で、俺にそう言う。導かれし者を集めるのは大事なことだが、俺は何よりもデスピサロを倒すことができればそれで良い。だが導かれし者が揃わなければデスピサロは倒せないというし・・・もう訳が分からなくなってきた。

 

「ねえ、とにかくトルネコが向かったとかいう灯台に行きましょうよ!どっちみち一人じゃ危ないでしょ!」

「もう、姉さんってばトルネコさんが見たいだけでしょ・・・」

ミネアが呆れたような目でマーニャを見る。はは、と軽く笑うマーニャ。

「でもさあ、ね!行こうよ!いいでしょソロ?」

「・・・まあ船が出ないとどうも出来ないし、いいけど・・・」

「やったああ!そうとなればゴーよゴー!ヒューー!」

マーニャが壊れた・・・。あ、いつもか。

 

そんなこんなで俺たちは、コナンベリーから東にある大灯台へと向かった。

 

 

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あとがき
マーニャのトルネコのイメージ→すっごいかっこいい人

実際→・・・。

でもネネは惚れたんだ!(何

皆さんトルネコは馬車にいてこそトルネコだとかいいますが、私は常に4人の中に入ってますw

2009.02.02 UP