たった一人残された俺の気持ちなんて
誰もわかるわけがない

同情されるくらいなら
死んだ方がマシだ

そんな風に思っちゃダメなのか?

シンシア・・・

 

 

 

03.始めの一歩

ブランカ城を通り過ぎ、俺は無意識に何故か滅びた村へと足を進めていた。マーニャたちは特に何も言わず、俺はそのことに気付かなかった。すると俺が今まで 世話になっていた木こりの家がみえた。この先を通り過ぎると、あの村だ。やっと俺は違う方向に来ていたことに気付き、引き返そうとした俺をミネアが止めた 。

「ソロさん、もう日も落ちてきましたし・・・ここの家で泊まらせてもらえるよう に頼んでみませんか?」

「そうしましょ!私もう足クッタクタなんだからね〜」

俺は どちらかというとあの木こりに会いたくなかった。一度世話になった人に再び世話になるというのだから、迷惑になる気がした、いや迷惑になるだろう。当たり前だがそんな俺の気持ちには全く気付かない姉妹は、木こりの家のドアをノックして開けてしまった。

 

相変わらず木こりの口は悪かったが、家に泊めてくれた。俺が村を滅ぼされたあの日、ぼろぼろに泣き崩れていた俺を木こりは、口は悪かったが根は優しいその性格で立ち直らせてくれた。その時と同じように、また優しく俺たちの旅の疲れを癒してくれた。

褒めると尻がかゆくなるという変なじじぃだが、俺はやはりこの木こりが好きだった。

 

次の日、また木こりを褒めると尻がかゆくならぁと言われた。その言葉にミネアは爆笑していた。ミネアの笑いのツボは結構浅そうだ。

礼を言って家を出発した俺は砂漠の方へ進もうとし た時だった。

 

「あっ!ねぇねぇ、あそこなんかあるよね?行こうよ!」

マーニャはそう言うと、滅びた俺の村を指差して走っていった。

「あ、もう待ってください姉さん!いっつも先に一人で行っちゃうんだから!・・・すみませんソロさん。行きましょうか」

「あ、ああ・・・。そうだな・・・」

俺はあの滅びた村に行くと思うと、昨日は あんな無意識のうちに向かっていたのに今となると気が重たかった。力のない俺の返答にミネアは少し心配そうな顔をしていたが、すぐに姉が走って行った方向へと向かった。俺も思い足取りでその後を追う。

 

「何・・・ここ?誰か住んでいたみたいだけど・・・」

「・・・さあね?何かあると思ったら、ただの焼け野原じゃない。毒の沼地なんてのもあるし・・・来て損した!」

マーニャが溜め息をついた。ミネアは眉間に皺を寄せて、悲しげな表情で村全体を見つめていた。

「も、もう行こうぜ !な?」

「そうね〜・・・って、ソロ大丈夫?顔色悪いわよ?」

俺は今にも逃げ出し たくなるような、小さい頃から過ごしてきた変わり果てた村から一刻も早くも出たくてそう言ったのだが、やはり体の方が正直なのだろう。顔が青いとマーニャに指摘されてしまった。

「・・・ソロさん、何か隠してませんか?私の占いにそう出ています。・・・これから旅を共にしていく存在なんですから、隠し事はやめましょう?」

「隠し事・・・」

ミネアは水晶玉に手をかざしながらそう言う。俺はこの村の住人だったことを、誰にも口にしないつもりだった。

 

「・・・ここは・・・・・・・・・俺の村だった」

「「えっ・・・」」

 

二人は驚いた表情で俺を見つめる。あの日の記憶のまま抜け出せない俺。過去を追い続けてばかりの俺。そんな奴に、生きている意味があるのだろうか。どうせなら、あの時みんなと一緒に死にたかったと、本気で思う。俺は心から溢れ出る思いを、マーニャたちに話した。

「・・・そっか・・・ソロ。そんなことがあったんだね・・・つらかったよね」

「・・・同情はいらない」

「・・・ごめん」

優しく言ってくれたマーニャだったのに俺は素直になれず、人を傷つけてしまう。俺はいつもそうだ。シンシアともそのせいでよく喧嘩していた。 

 

「・・・行きましょうか」

「う、うん!私たちは早く砂漠を越えなきゃなんだしね!」

「ああ、早く行こうぜ」

3人の間に気まずい、重苦しい空気が流れた。戦闘中もただ無言。俺たちはひたすら砂漠の方向へと歩を進めた。

 

砂漠の入り口の前には宿屋があり、そこにいるホフマンとか言う若い男が砂漠を越えるのには必ず必要な馬、パトリシアの持ち主だった。ホフマンは昔、友人とこの宿屋から西にある洞窟に宝を取りに行ったが、友人に裏切られてしまい、それから人を信じることが出来なくなってしまったらしい。俺が勇者だというのも信じてもらえず、馬も貸してもらえなかった。

「も〜どうすればいいのよ!早く砂漠を超えなきゃいけないっていうのに〜!」

「そうやって荒っぽくなっても何も変わりませんよ、姉さん。でもどうすればいいのかしら・・・」

頭を抱えるミネアに、俺はポソッと小さく案を出した。

「その宝を取りにいけばいいんじゃないか?とりあえず」

その小さな声で言った案を、ミネアは聞き逃さなかった。

「そうですね、そうしましょう!」

「じゃあ早速行こうじゃないのよ!」

宿屋から東にあるその洞窟に、俺たちは急いで向かった。

 

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あとがき
なんとなーくなんですが、男主人公はホフマン以上に人を信じなさそうです。よね。w

2009.02.02 UP