旅に出てからどれくらい立つだろう。1週間は経つだろうか。 でも目的は変わらない。俺は必ず仇を討つ。
02.新しい仲間
とりあえず俺は旅に同行してくれる仲間を探していた。もしかしたらデスピサロを滅ぼそうとする同じ目的のやつが、この世界のどこかにいるかもしれない。俺は木こりの家から更に南にあるブランカ城へ行った。 街中では「地獄の帝王を倒すはずだった勇者様が殺された」という噂で持ちきりだった。
この城の城下町は城の中にある。魔物などに襲われないためなのだろう。 「僕たち悪の親玉を倒しに行こうと思うんだ。・・・あ、よければ君もくる?」 兵士はにっこりと笑っている。俺はその笑顔、言葉に甘えて仲間にしてもらうようにした。悪の親玉がデスピサロなのかなんだか知らないが、仲間になれるなら誰だっていい。・・・・・・のはずだった。 「・・・あ。ごめん、もう人数いっぱいだったよ。君は君で仲間になってくれる人を探すんだね」 いきなり、天から地獄のどん底に落とされた気分だった。最後の言葉もなんかちょっと胸にグサッときた。
でもまあ、いつまでもクヨクヨしてたって仕方ない。俺は街の住民にデスピサロのことや仲間になれる奴はいないかなどを聞いていた。すると街の一番奥で、踊り子の格好をした女2人がクルクルと効果音の付きそうなくらい、上品に回りながら踊っていた。舞台の練習なのだろうか。 「あの・・・」 「ん?あら、何かしら?」 女の人2人は19、20歳くらいといったところだ。まだ17の俺には大人の女たちに見えた。シンシアとは大違いだな、なんてバチ当たりなことを思ってしまった。
「デスピサロって奴を知ってますか?あと旅をしたがってる人とか・・・」 「デスピサロ?聞いたことないけどねえ・・・。あ、でも確かエンドールに勇者を探して旅をしてる人はいたわよ?」 それだけ言うと2人はまた踊り始めた。 俺は踊りに夢中で聞こえてないんじゃないかと思ったが、一応ありがとうございますとだけ言うと、急いでエンドールへと足を走らせた。
一人での旅は別に何も悪くない。むしろ快適だ。俺は普通に1人でいる方が気が楽だと思う。考え事だって出来るし、誰にだって邪魔はされない。だから俺はうるさいヤツは嫌いというか、苦手なタイプだった。 ・・・後からそんなうるさい奴が仲間になるとも知らずに。
エンドールに行くと、ブランカ城よりも強力な武器や防具があった。俺はブランカ城で何も買わなかったには正解だな、と少しほくそ笑み、武器防具ともに買った。
その他にも街の中を物色していると、人よりちょっと色の黒い同じ年くらいの女が、兵士と何か話している。彼女は水晶玉やタロットカードを持っている。占い師か何かで兵士を占っているのだろうか。 兵士は占いが終わった後、嬉しそうな顔で教会へと駆け込んだ。占いの結果に満足したのだろうか。そんな2人のやり取りをずっと見つめていた俺は、女と目があった。
「へ?」 あまりにいきなりの問いに少々間抜けな声が出てしまい、それに対して女はクスクスと笑う。俺はめちゃくちゃ恥ずかしい気持ちになった。 「どうですか、占い。10Gでいいんですが」 「・・・別に占いとか興味ないんだけど」 「じゃあお金はいりません。私、何だかあなたをとても占いたい気分なんです。あなたから只者じゃないオーラがします」 そんなに言われると、こちらとしても断りづらかった。正直占いなんてどうでもいいのだが、無料ならやらせとくだけでいいだろう。了承すると女はさっそく水晶玉に手をかざし占いを始めた。が、占いを始めて0.5秒経った時。
「・・・!」 女の顔は今までの真剣な表情とは違い、驚いたような表情になった。 「どうかしたんすか?」 俺が不安気に問いかけた。
「え?俺が?・・・故郷ではそう言われてたけど・・・」 「勇者」という言葉に吐き気を覚えそうだ。今までだって村で勇者勇者と言われ続け・・・そして俺を守って皆死んだ。俺が勇者になんか産まれなければ、きっと誰もが今も生きて幸せに暮らしていたかもしれない。そう、俺が産まれなければ。 深刻な顔をしてそんなことを思っていた俺を女は心配そうに見つめていたことに俺は気付き、なんでもないと言った。女は「さっきの話に戻りますが」と言った瞬間にいきなり目を輝かせて、俺の手を握った。
「あなたの仲間にさせてください!!!!!」 「え?は?」 突然の出来事に俺は頭に疑問符を浮かべまくった。 「あ、申し遅れました・・・すみません。私の名前はミネアといいます。実は私は姉とともに勇者様を探して旅をしていまして・・・」 「俺を?」 「はい。あなたは私たちの旅にかかせない人物なんです!」 その理由を俺は聞いてみた。 やつの名は、バルザック。 「でも俺が追ってるのはデスピサロっていう奴だし・・・」 「デスピサロ・・・。バルザックはデスピサロの手先と聞きました。お願いです、手を組みましょう!」 未だ輝いた瞳で見つめてくるその女の迫力に、俺は占いの時のように断ることが出来なかった。
「ありがとうございます!では早速姉を呼びましょう。・・・どうせ酒場でスッてると思うんで」 はあ、とため息をつくミネア。 ミネアの姉、マーニャは金遣いが荒く、酒とカジノが大好きなどうしようもない女らしい。このしっかりした妹の姿からは想像できないくらいだ。ミネアが占いで稼いだお金も、全て酒とカジノのコインに変えるお金で無くなってしまうとミネアは口々に愚痴る。そうとう苦労してるんだな・・・。
カジノにたどり着くと、ミネアは「姉はスロットが好きです」と言っている。 「あ!姉さんここにいたのね!」 「あら、ミネア。今日はちょっと負けてるわ〜もうお金ないのよ。ミネア、持ってない?」 「・・・たとえ持ってたとしてもあげないわよ。そうそう、それで占いをした方が勇者様だったのよ!」 「お!とうとう勇者見つけたのね!やっるじゃないのよミネア〜!じゃあこれからはこの勇者様に食べさせてもらいましょ★あたしはミネアの姉のマーニャよ。よろしくね〜」 いかにも男と金とカジノなどの娯楽にしか目がなさそうで、軽そうな女だ。姉妹そろって紫色の髪の毛、比較的色の黒い肌。それしか似ているところはなく、しゃべり方や性格は正反対だ。にしても俺に食わしてもらうって・・・自分で頑張れ。
いつまでも街の中にいるわけにいかないし、エンドールを後にする。ブランカ城から南東にある砂漠の地方に行く事になり街を出ようとするのだが、カジノから離れたくないとグチを言うマーニャを放って、俺とミネアはエンドールを出た。 後からちゃんと、マーニャはついてきてた。と思う。たぶん。
こうして俺は新しい仲間と共に、新しい旅が始まった。
あとがき あ、ちなみにですがこの小説はDQ8並にギャグじゃないです。シリアスで突き進むつもりなので。 それよりも・・・アリーナああああああああああ!(何 2009.01.29 UP |