お返事
「え・・・え? ・・・ええぇ?」 まったく状況がつかめていないは、おどおどしながら僕の差し出した手を見つめてばかりだった。
「はぁ・・・4人で最後の1人なんだから、小魚が誰を選ぶかくらいわかるでしょーが」 階段からいつの間にか僕のプロポーズを見ていたデボラさんがそう呟いた。・・・どうやら小魚とは僕のことみたいだ。
「えっと・・・えええ・・・あの・・・」 「、嫌なら嫌って言って良いんだよ」 「ええええっ・・・・!?」 正直、「嫌」なんていわれたら僕は一生立ち直れないと思う。一生分の恥ずかしさを今ここで捨て、こうしてにプロポーズしているのだ。
1分、2分と時間が経って行く。はまだ僕の差し出した手を見つめたまま、返事は何もしない。時計のカチ、カチ、という音だけが部屋に鳴り響く。
「・・・あの・・・・・・」 「は・・・っはい・・・?」 「そろそろ返事してくれないと、僕 腕が痛い」 「・・・!! あっ そうですよねぇ!!! ごめんなさい!!!」 僕の腕はに差し出したまんま、上にしているのでそろそろプルプルと震えてきた。
「あの・・・・・・っ !」 はぎゅーっと目を瞑り、何回か息をすると、僕を見た。その顔は、本当に真っ赤だった。
「私・・・も、が好き・・・っ!!」
そう言っては、僕が差し出した手の上にそっと、自分の手を置いた。
「カーーーーーン!!!カーーーーーーン!!!!」 びっくぅ!! とがなったのがわかった。この大声の持ち主は、ルドマンさんだった。鐘の音でも言っているのだろうか。
「いやぁーーーおめでとう!!! では早速 式の準備だ!!!」 「あっ お父様 わたくしも手伝いますわ!」 「な・・・なら私も!」 「・・・勝手にすれば」 ルドマンさん、フローラさん、ビアンカは急いで部屋から出て行く。デボラさんはふぅ、とため息をついてまた自室へと戻っていった。僕とは部屋に二人きりになる。
「え・・・っと・・・」 二人きりになると何だかすごく恥ずかしくなってきて、僕はの手をまだ握ったままではあったが目線をまりんから逸らす。
「・・・」 「え・・・?」 名前を呼ばれてのほうを見ると、はまだ目に涙を浮かべながらも、満面の笑みで僕を見ていた。
「私なんかで、本当によかったの?」 「・・・うん。僕にはしかいないって、思ったから」 「・・・・・・ありがとう・・・ありがとう・・・っ」 またたくさんの涙が、瞳からたくさん溢れ出す。
「・・・ほら、泣くな」 僕は指での涙を拭いてやる。が嬉しそうに笑った。僕は愛しくなって、握っていたの手を思いっきり僕のほうへと引く。 「ふえっ・・・!?」 は驚いたようだった。そりゃそうだ、そんなことをすれば すっぽりと僕の腕の中へと入ってしまうのだから。
「・・・・・・?」 「・・・あのね、。僕はのことが大好きだよ」 ぎゅうっと僕はを抱きしめる力を強める。 「・・・私も・・・っ、私も、が大好き・・・」 は顔を真っ赤にして、僕の背中に腕を回した。手のひらで精一杯、恥ずかしさを堪えているのか僕の服を掴んでくる。それが本当に可愛くてたまらなかった。 今まで何度かこうしてを抱きしめたことはあったけれど、それとはずっと違った。お互いの想いが通じ合って抱き合うこの感触は、本当に心地よくて幸せだった。
ばーん!!! 「おーい!!!ちょっと頼みごとがあるんだが・・・ん?」 いきなりルドマンさんが部屋に入ってきたので、僕たちは慌てて抱き合っていた腕を振り払う。ルドマンさんには寸前で気づかれてはいないようだった。
「あぁ、。いよいよ結婚式だが、じつは山奥の村の温泉村の洞穴にだな、腕のいい道具屋が住んでるとビアンカさんに聞いたのだ。そこで花嫁にかぶせるシルクのヴェールを注文しておいたのだが、それを取ってきてもらいたいのだよ」 「え? そ、そんなことまでして頂いてるのですか?」 「ワシは君が気に入ったのだよ。だから気にするでない。では、手間を取らせてしまうが頼んだぞ!あ、さんは後でワシのところへ着てくれ。フローラたちがドレスを着せてくれるじゃろうからな」 わっはっは、と笑うとルドマンさん部屋を出て行った。
「ご、ごめんね・・・一人で大丈夫?」 「大丈夫だよ、一人で行けないようじゃの旦那さん失格だしね」 「だっ・・・だんなしゃん・・・!!??」 の顔は再びボッと赤くなる。ほんとに百面相だなこの子は。
「まぁ、いざという時はチロルもいるから。じゃぁ、いってきます」 そういうと僕は、の頬に手を置いた。
「え・・・?」 僕はの頬にキスをした。 「!!!???!!!」 キスされた頬を押さえ、は口をパクパクさせていた。 「・・・ふふ、いってきます!」 「いっ・・・いってらっしゃい・・・!!」
僕はどうやら、が相手だと少しいじめたくなってしまうのかもしれないな。
あとがき 2011.05.07 UP |