プロポーズ
「それでは・・・この4人のなかから、花嫁を決めてもらおうか。どれか1人にプロポーズするのだ」 ルドマンさんの今までに見たことのないような、しっかりとした眼差しで僕は見つめられた。僕は緊張のあまり、4人の顔を見渡して唾をごくりと飲んだ。 左からデボラさん、フローラさん、ルドマンさんを挟んでビアンカ、。
僕はこの4人の中から 今――――、一生を共にする女性を、選ばなければいけないのだ。
荷が重過ぎる・・・。 僕は はぁー、と深く息を吐いた。
とりあえずルドマンさんに話しかけてみる。 「ん?なんだ」 「えっと・・・あの・・・」 僕やっぱり緊張して、とか言おうと思っていた矢先。ルドマンさんはハッ(゜д゜)とした顔をして、顔を赤らめるとこう言った。 「そうか・・・・・・。ワシが好きともうすか・・・」 「えっ・・・!? 違・・・!?」 僕が焦ると、が必死で笑いをこらえているのが視界の端に映った。いや助けて!!!
「・・・とまぁ、冗談はここまでにして」 「えっ 冗談だったんですか? 面白そうだったのに・・・」 「あのね・・・」 ビアンカが呆れたような表情をしていたが、それでも何だか楽しそうだった。
「そんなに緊張するというのなら、端っこから話しかけていってはどうだ?」 にまにましているルドマンさんは、僕にそんな提案を考え出してくれた。そのほうが花嫁もドキドキ☆ワクワクで楽しいじゃろうとか抜かす。この人絶対に楽しんでるな。
「まぁ・・・そうします」 僕はとりあえず左端にいたデボラさんから話しかけていくことにした。
「ふふ・・・私と結婚して、損はないわよ?」 デボラさんはいやらしく笑うと、僕の首に手を回してきた。 「あっ ちょっと・・・」 フローラさんが怒ろうとすると、ルドマンさんが引きとめた。
「さて、どうじゃ? ワシの娘のデボラは」 「・・・この人は・・・この人はないな」 「!!!???」 デボラさんはめちゃめちゃびっくりした顔をして、俺を見た。
「ちょっと!!! ないって何よ ないって!!」 「その言葉の通りです、ないです」 「意味がわからないわよ!!!!」 デボラさんはカンカンに怒ると、足音をどんどん鳴らして自室へと帰っていった。
「・・・あんな娘じゃ嫁になれなくてもムリはない。さぁ、気にせず続きを」 「は、はぁ・・・」 素直な気持ちをぶつけただけだったけれど、何だかいけないことを言ってしまったようだった。またが視界の端で必死に笑いをこらえているのが目に入って、僕は何だか恥ずかしくなった。だってってば、もう床に転がりそうな勢いで笑いを殺してるんだもん。
「えっと・・・わたくし、さんに頑張って着いて行きます・・・。魔物とも、戦いは慣れていませんが、さんのためなら・・・」 デボラさんとは違って、フローラさんは控えめにアプローチしてきた。
でも、僕の答えはやっぱり、決まっていた。 「・・・ごめんなさい、フローラさん。僕はあなたとは・・・「その先は言わないでください!!」 フローラさんらしくない大声で僕の答えを制止され、僕は一瞬戸惑った。
「・・・わかっていたんです、最初から。でもどこかで、さんが振り向いてくれるんじゃないかなぁ、なんて・・・勝手に、淡い期待を抱いていたのです。でもさんならきっと、どんな女性も幸せにすることができますわ。・・・これからも、頑張ってください」 にこりと笑ったフローラさんは、僕の手を取るとぎゅっと握ってきた。僕もそれに答えて、ぎゅっと握り返す。フローラさんは更に満面の笑みを作って僕を見ると、ビアンカとのいるほうを見た。 僕は内心、ドキリとした。
そうか・・・、もう、決めるのはあとこの2人だけなのだ。
幼馴染で年上の、姉御気質のビアンカ。 小さいときからずっと一緒の、ずっと妹だと思っていた年下の。 正反対の、二人・・・。
「・・・」 は不安そうに僕を見つめていた。
「・・・ビアンカ」 「・・・・」 僕はビアンカの前に立つと、ビアンカはそっと目を瞑って僕の名を呼んだ。
「私は・・・フローラさんみたいに女らしいわけでもないし、きっとを弟扱いしたりするかもしれない・・・。けど、を思う気持ちは、きっと誰にも劣らない、そう思ってるわ。でも・・・」 「・・・でも?」 「・・・でも、私・・・やっぱり・・・」 さっきまでのアプローチの気迫はすぐに消え去り、ビアンカの表情が曇った。
「私は・・・とは結婚、できないかもしれない・・・」 「・・・」 「!!??」 僕もかなりビックリしたが、1番ビックリしていたのは、誰よりもだった。
「ちょっと、ビアンカ・・・!?」 「いいの、。私なんかはにふさわしくないから・・・」 「そんなの・・・そんなの・・・」 は何か言いたげだったけれど、ルドマンさんに止められ仕方なく口を閉じた。
「・・・ビアンカ」 「はい」 「・・・僕・・・僕は・・・」 ビアンカが、僕から目を逸らしたのがわかった。
「僕は、ビアンカのことが好きだった」
「・・・え・・・?」
ああ、やっぱりそうだ、と私は思った。 隣で話し合っている二人―――とビアンカを見て、本当にお似合いだと思っていた。ビアンカはにふさわしくないなんてふざけたことを言っていたけれど、私は1番にふさわしい人だと、ずっと思っていた。 私がに恋した日から、ずっと・・・。
そんなことを考えていると、は口を開いた。
「でも僕は、ある日から違う人が好きなんだ、ってわかったよ」 「・・・・・・・」 ビアンカは少し嬉しそうにしてを見上げた顔を、また俯かせた。
「・・・僕には、ビアンカよりもきっと後だったけれど、出会ってからずっと一緒の人がいる」 「・・・えぇ、わかってるわ。だから早く言ってあげて」 ビアンカは涙を浮かべながら笑うと、はそんなビアンカの頭を撫でてこくりと頷く。
「・・・ずっと、家族だと思ってた。違うとわかってからきっと今までも、家族のように思ってたと勘違いしてたんだろうな・・・、僕は」 ふ、とは笑い、私を見た。私は思わず「?」という顔をしてしまう。
するとは服の中から腕を出し、私の前に膝を付くと、手を差し出してきた。
「・・・さん。僕と、
結婚してください。」
あとがき 2011.05.07 UP |