結婚相手候補


「へーえ・・・の結婚の為にリングを・・・ねぇ・・・」

「水のリングってどこにあるのかなあ・・・」

次の日の朝。ビアンカの家でお泊りし、朝食をごちそうになっている時だった。今の旅の目的を話した。

「10年奴隷に遭った次は結婚? の人生って波瀾万丈ね」

くすくすと笑うビアンカに、はうるさいなぁと顔を少し赤くした。けれど、ビアンカの表情は何となくだけれど、どこか寂しそうに見えた。

 

「それなら私もそのリングを探すのを手伝うわ。水門なら私が開けられるから」

ビアンカは鍵を持ってにこりと笑った。私とはそれを見て安心したように笑う。

「じゃあ私支度してくるわ! また一緒に旅ができるわね!」

ビアンカは嬉しそうにくるりと回って、自分の部屋であろうドアを開けて入っていった。

 

「・・・。 きてくれてありがとうな」

「え?」

「お前たちは父さんを亡くしたからわかるかもしれんが、ビアンカも寂しいんだよ。・・・私が本当の父親じゃないから・・・」

「・・・そうだったんですか・・・?」

初めて聞いた話に、私とは興味津々だった。

「この事はビアンカには言ってないがな。だからこそ余計にビアンカが不憫で・・・。 お前たちがきてくれたお陰でビアンカもすごく嬉しそうだった。 本当にありがとう」

「いえ・・・」

は少し苦しそうな顔をしたダンカンさんを見て、慌てて背中を擦り始めた。

「私もこんな身体だから、いつどうなるかわからないし・・・この先が不安でな」

ダンカンさんはやわらかく笑った。やっぱり昔のような男らしい雰囲気は、どこにもなかった。

 

 

「お待たせ! さあ行きましょう!」

ビアンカが準備を終えて部屋を出てきた。私たちはダンカンさんに挨拶をして、村を出る。

 

 

「またこうして旅ができるなんて、本当夢みたいだわ!」

一応ビアンカが一番年上なのだが、テンションからしてまるで子供のようだった。

「でも昔の約束どおりになったね」

「あったりまえじゃない! たちが約束を破るわけがないもの」

私が言った言葉に、ビアンカは私の手を握ってぶんぶん振り回しながらそう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「水に囲まれた場所に指輪があるっていうなら、私はここしか知らないけどねぇ」

水門を開け、しばらく航海していると、ビアンカが言っていた洞窟に辿り着いた。周りが滝で囲まれた、中の移動もところどころ船でしかできない、少し寒い洞窟。

「さぁ、早く行きましょう!」

ビアンカはとても張り切って、船から降りると先陣を切って洞窟を進みだした。

「ビアンカ、危ないよ!」

「平気へいき・・・きゃああぅ!?」

が言ったそばから、ぬかるんだ地面に足を滑らせて転ぶビアンカ。

「ふえぁぁ!?」

そして同じところでこける私。

「・・・ドジ二人を連れてきちゃったな・・・」

と言ったも、同じようにこけた。

 

「あーったのしーーーっ!!」

ビアンカはそれでも楽しそうに、まるで子供のように泥だらけになりながら笑っていた。

 

しばらく戦っていなかったせいか、ビアンカの戦闘レベルは昔とそんなに変わっていなかった。むしろ私たちのほうが上なくらい。

「ダメねぇ・・・もう年なのかしら?」

「ビアンカいくつだっけ?」

「今は19だけど、もう少しで20よ」

「へー! じゃあもう少しで大人の仲間入りなんだね!」

そんな他愛もない話で盛り上がっていた。

 

 

「・・・あ、リングってあれかな」

一番奥まで行くと、青く光っている何かが見えた。近づくと、そこにはやっぱり綺麗なリングが。

「よし! これで・・・結婚できるわね! おめでとう!」

「・・・ありがとう、ビアンカ」

ビアンカはに肩を回して頬をつねったりしてからかっていた。でもその笑顔はやっぱりどこか、寂しそうにしか私には見えなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

サラボナへ戻ると、もうすっかり日も暮れていた。ルドマンさん宅に行くと、一家でお食事中だった。

 

「おお! なんと、水のリングを手に入れたと申すか!」

「は、はい」

「やっぱりお前は私が見込んだ通りの男じゃ! おまえがフローラの夫にふさわしい男じゃー!!」

ルドマンさんは本当に嬉しそうに、の手をとって振り回す。はペースについていけていないのか目が回っていた。

 

「フローラ、お前もが婿なら文句もないだろう?」

「そ、それはそうですが・・・その・・・さん、そちらの女性は?」

フローラさんは少し困ったような顔をして、の隣にいるビアンカを見た。

「え?あ、ああ!私はのただの幼馴染です! だから気にしないで、フローラさん」

ビアンカはかなり焦りながら首をぶんぶん振って否定した。

 

「わ、私たちは用も済んだし、このへんで・・・行くわよ、

「う、うん!」

「待って下さい!」

私たちふたりはこの場を立ち去ろうとすると、フローラさんに呼び止められた。

「もしかしてビアンカさんはさんも好きなのではないですか? それにさんもビアンカさんのことを・・・。 想い合っているのにもし私と結婚してしまって、後悔してしまうなんてことになっては・・・」

「待ってフローラさん、そんなことは・・・「まあまあ落ち着きなさい」

ビアンカの言い訳を聞かずに、ルドマンさんは話に割り込んできた。

「今夜一晩、に考えてもらおうじゃないか。嫁をビアンカさんにするかフローラにするか。それでいいだろう、?」

「え・・・」

はそれでも少しだけ不服そうに、ルドマンさんの顔を見た。

「いいだろう?」

「あ・・・「ま、待って!!」

そして今度はビアンカが話に割り込む。

 

「私をお嫁さん候補に入れるなら・・・も入れて!」

「!? び、ビアンカ何言って・・・!?」

私が驚きまくってビアンカを見ると、その場にいた全ての人が同じようにびっくりした顔でビアンカを見ていた。

「し、しかしさんはさんの妹なのでは・・・」

の本当の妹じゃないわ! だったら結婚だって大丈夫でしょう?」

ね、とビアンカは振り向いてに笑いかけた。は少し顔を赤くして、こくりと頷いた。

 

「・・・なら、3人。3人の間から選んで・・・「ちょーっと待ったぁぁああ!!!」

次に話に入ってきたのは、フローラの姉・デボラ。

「デボラ!? お前いったい何を・・・」

「フローラが結婚するなら私だってするわ!フローラなんかより私のほうがいいわよ? さん?」

ちょっとセクシーな胸元を見せ付けるようにの目前へと押し付けてくる。は恥ずかしそうに目を背けた。

 

 

 

「・・・あああもう仕方ない!! 、申し訳ないが4人の間から選ぶ、ということでいいか・・・」

「は、はい・・・」

はもう何が起こっているのかわからないと言った顔で頷いた。
一生分のモテ期を使い果たしたのではないか、この男。

 

 

と私には別々の部屋の宿屋、ビアンカはルドマンさんの別荘を与えられ、今晩は皆別々の部屋で寝ることになったのだった。
 

 

 


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あとがき
大好きな結婚イベントまで無事辿り着けてよかったですww
さてさて次回はどうなるんでしょうね(笑)

2010.10.25 UP