幼馴染との再会
「ああああああっついいいい!!!!」 フローラさんの言う通り、炎のリングのある洞窟は見渡すかぎりマグマ、マグマ、マグマ。ただ立っているだけでも汗が滲んだ。 何とかと二人で頑張り、奥にいたリングを守っていた魔物も倒して、ひとつめの炎のリングを手に入れた。
「じゃあ一旦街に・・・ってああ!?」 私がを振り返ると、の遠い背後に、アンディさんというフローラさんの幼馴染の男性が倒れているのが目に入った。 「どうした?」 「あ、アンディさんが!」 私が急いでアンディさんのもとまで走り、アンディさんを抱きかかえた。 「大丈夫ですか、アンディさん!?」 「あ、あなたは・・・、確か・・・フローラの結婚希望者の・・・お仲間の・・・」 「いいですから、私に掴まってください!」 私はアンディさんの腕を自分の首の後ろへと回し、ガッシリと担いだ。 「、大丈夫?僕がやるよ?」 「いいのいいの!、リレミトお願いできる?」 「・・・わかった」 は少しだけ寂しそうな顔をして、リレミトを唱えた。
なんとなく・・・自分じゃない男を担いでいるを見て、良い気はしなかった。
街に帰ると、僕が炎のリングを取ってきたことは既に知られていた。もう一人の結婚希望者の人が言ったのだろうか。
「あっ、さん!さん!・・・に、アンディ!?」 「う・・・フ・・・ローラ・・・」 とりあえずアンディさんの家に行き、は担いでいたアンディさんをベッドに下ろした。
「そうですか・・・洞窟で倒れていたアンディをわざわざ・・・。ありがとうございます」 「いえ!倒れている人を放っておくなんてできませんから!」 そう言って胸を張るを見て、僕はらしいなぁと思いながら微笑む。 「アンディの看病は、私がしておきますよ」 フローラさんはアンディさんの苦しそうな顔を一度見ると、僕たちを安心させるような笑顔でそう言ってくれた。 「ありがとうございます。じゃあ、行こうか」 「うん・・・」 の手を取って僕はアンディさん宅をおいとましようとすると、はまだ何となくアンディさんを心配そうに見つめていた。そんな僕をフローラさんが見ていたので、僕はフローラさんに会釈をして、と共に家を出た。
「アンディさん、大丈夫かな・・・」 は、ルドマンさんの家に炎のリングを預けに行った後もアンディさんを心配していた。 ・・・でも。 「そんなに、アンディさんのこと心配?」 「え?・・・そりゃ・・・」 「・・・・・・・そっか」 僕はそう言って、ふい、とから顔を背けた。
「・・・?」 「・・・。・・・早く、水のリングを取りに行くよ。確かルドマンさんが街の外に止めてる船を使っても良いって言ってたしね」 「う、うん・・・」 なんとなくが、そっけない気がした。
「わー!!海キレーイ!!」 水のリングというのだから、水にかこまれた場所にあるかもしれない。そんなルドマンさんのヒントを頼りに、使っても良いと言ってくれた船に乗って私たちは航海していた。 「、海の上でも魔物は出るみたいだから、気をつけてね」 「うんっ、わかってるわかってるー・・・アレ!?」 私が船で進む先を見ると・・・そこにあったのは、高く大きく立ちはだかる、門。 「水門・・・?」 「これがあったら、先に進めないよー・・・」 他のルートへ移動してみても、大海原へ出るにはその水門を通らなければムリなようだった。
「うーん・・・どうしよう・・・。・・・あ、見て!」 「え?」 が指差す方向を見てみると、水門の真横に小さな村があった。 「あそこの村がもしかしたら水門の鍵を持ってる人なのかも。行ってみよう」 そう言って、は船をその村がある大陸へと止めた。私たちは船を下りて、村を目指して歩く。
「水門の鍵なら、そこのでっかい家の人が持ってるよ」 「でっかい家の人・・・?」 鍵は誰が持ってるか聞いた村人さんは、村の奥にある大きな家を指した。 「ありがとうございます!行こ、!」 私は大きい家まで走るように歩いていく。
ふわり。 「?」 なんだろう。どこからか匂ってくる香り。なんだか、落ち着く匂い。 私。この匂いを知ってる。
右を見ると、お墓の前でしゃがんで、手を合わせている女性がいた。 「(知らない・・・人だよね・・・?)」 顔はよく見えなくて、私たちはそのまま通り過ぎたけど、やっぱりその女性のいい匂いはどこかで嗅いだことがあるような気がした。
「すいませーん!」 大きな家に入り、そう叫んでみたけれど、返事はなかった。 「誰もいないのかな?すいませーん!」 「おぉ、これはこれは・・・お客さんかな?すまないが、そこから右の部屋に入って来てくれるか」 がもう一度大きな声で叫ぶと、そんな男の人の声が聞こえた。
「すまないねぇ・・・ゴホッゴホッ!」 「大丈夫ですか!?」 部屋に入ったドアのところで立っていると、ベッドに寝ている男性はそう言って咳き込んだ。私はベッドまで駆けて行く。 「あぁ、病気なんだ。気にしないでくれ。私の名前はダンカンという。ご用は何かな?」 「「え・・・!?ダンカン!?」」 私たちは「ダンカン」と名乗るその男性をまじまじと見た。
「ん?どこかでお会いしたことがおありかな?」 「えっと・・・あの・・・パパスという者を知っていますよね・・・?」 がそう言うと、ダンカンさんは「うむ、知っているぞ」と頷いた。そしてしばらくして、目をはっと大きく見開いた。 「も・・・もしや・・・になのか!?」 「だ・・・ダンカンおじさん・・・!!」 私は嬉しくなって、目に涙が滲んだ。アルカパから引っ越していった先は、この村だったんだ・・・!!
「そうかそうか、こんなに大きくなって・・・」 「ダンカンおじさん・・・ご病気、大丈夫なんですか?」 「ああ、心配いらん。こっちに越してからはマシになったよ。・・・嫁は亡くなってしまったが・・・」 なんと、ダンカンさんのおかみさんは亡くなっていたらしい。あんなに元気な人だったのに・・・。
「そうだ、パパスはどうした?一緒にいないのか?」 「・・・・・・実は・・・お父さんは・・・」 私たちは今までにあったことを全て話した。パパスお父さんがいなくなってしまったこと。10年間奴隷をしていたこと。パパスお父さんとの約束を守るために、私たちのお母さんを探して天空の武器防具を集めていて、の結婚のために今こうして旅をしていること。 「・・・そうか・・・。辛いことがたくさんあったんだな、二人は・・・」 ダンカンさんは目に涙を溜めて、話を聞いてくれていた。
「・・・あ、来る途中にビアンカを見なかったかい?母さんの墓参りに行ってるはずなんだが・・・」 「ただいまー!お父さん、具合はどう?」 そう言って、聞きなれた声が聞こえた。その声は近づいてきて、この部屋のドアを開ける。
「お父さん・・・って・・・アレ?」 「ビアンカ!とだよ!お前の友達のとが生きていたんだ!!」 「えっ・・・本当に!?顔をよく見せて!」 ビアンカは私たちに駆け寄り、じーっと私たち二人の顔を見た。 「本当・・・とだわ!生きてたのね!!」 「きゃぁ!く、くすぐったいよビアンカぁ・・・!」 ビアンカは私とをぎゅーっと抱きしめてくる。それが何だか嬉しくて、私はビアンカを抱きしめ返した。
金髪の髪を三つ編みして、昔見た時よりも更に美人になっていたビアンカは、一瞬わからなかった。けれど、その声、そしてこの、さっき感じた安心する匂い。ビアンカだ!私たち・・・再会できたんだ!!
「私、あなたたちは生きてるって、ずっと信じてきたのよ。だってそんなことで死ぬようなあなたたちじゃないものね!今日は泊まっていきなさいよ、たくさん話がしたいわ!」 その日は、私たちはビアンカの家に泊めさせてもらうことになった。
色んな話をした。私たちの話もしたし、ビアンカの話も聞いた。 楽しい時間は、あっという間に過ぎていったのだった。
あとがき 2010.08.13 UP |