結婚相手は誰でSHOW!?
「・・・あんたたちを信じたオラがバカだったよ。魔物とグルだったなんてな。さっさと出て行ってくんろ」 カボチ村に行くと、予想外の出来事が起こった。信じてくれていた農夫さんも村長さんも魔物とグルだったと見なされ、礼金はもらったものの悪人扱いされてしまった。チロルは申し訳なさそうな顔をしている。
「まさかこんなことになるとはな〜・・・」 「最後まで白い目で見られてたね・・・」 「フニャ〜・・・」 うなだれながら私たちはとりあえずカボチ村を出て、ポートセルミへと引き返した。まだ向かっていない西の方角へと歩く。
「こっちに行けば街があるみたいなんだけど・・・」 「そういえばポートセルミで聞いたけど、その街には呪文を研究してるおじいさんがいるらしいよ」 世界地図を見ながら迷っている私に、がそう言った。呪文研究か〜なんかカッチョいいな〜なんて思いながら魔物と戦いつつ、歩いていると街が見えてきた。
「ようこそ、ルラフェンの街へ!」 街の案内役のような人がそういい、私たちは出迎えられた。街の中は階段ばっかりで少しややこしかったけれど、綺麗な町並みの心優しい住人が集まる街だった。
「ねぇねぇ聞いた?」 「聞いたわよ奥さん!礼の アレ でしょ〜?ヘンリー王子もやるわよね〜」 「!」 街を歩いていると、近所のおばさん同士が井戸端会議している声が聞こえた。「ヘンリー」という名前が聞こえたので、私はなんとなく耳を傾けてみる。 「しかもたいそうな結婚式だったらしいし」 「わたしゃあんな綺麗な女の人は見たことないよ!」 「(ええええ?ヘンリーが結婚・・・!?)」 「、今の話聞いてた?」 「えうえあああっ!!!聞いてました聞いてました!!!」 不意にが私の顔の横に居てものすごくビックリいたしました。どうやら今の話、も聞いてたみたい。 「すっごい気になるね・・・。後でラインハットに行ってみよっか!」 「うん!」 ヘンリーのお嫁さんかぁ・・・。どんな人だろう。ヘンリーはああ見えて女の子には優しいから、きっとステキな人なんだろうなぁ。女の子には優しくても私には優しくないけどね。
その後、ルラフェンにいたベネットという噂の呪文研究をしているおじいさんに頼まれ事をされた。何でも今は、過去に行ったことのある街などにひとっ飛びで行けるという昔の呪文を開発しているらしい。その呪文を作るには、夜にだけ生える「ルラムーン草」がいるので、それを取ってきて欲しいとのことだった。 夜を待ってルラムーン草を取り、ベネットじいさんに渡すと早速呪文を開発し、私とに「ルーラ」という便利な呪文を習得させてくれた。これで今まで行ったことのある街などに楽に行けるようになった。
「よし!じゃあ早速ラインハットに行こう!」 「フニャァ〜ン」 「気をつけるのじゃぞ〜!」 ベネットじいさんに見送られ、私たちはルーラを使ってラインハットへと向かった。
「こいつは驚いた!とじゃないか!俺随分お前らのこと探してたんだぜ!」 「ヘンリー!結婚したって聞いたから戻ってきたんだよ!何でそんな大事なこと言わないんだよ!」 「いやだから今俺 お前らのこと探してたって言ったよな?」 はもう怒り爆発って感じでヘンリーの突っかかっていた。ヘンリーは困ったような顔をしているけれど、それでもやっぱり何だか嬉しそう。 「まぁまぁ聞いたのは俺の結婚の話だろ? な、 お れ の お く さ ん ♪」 「ふふふ。さん、ちゃん、お久しぶりです」 ヘンリーが幸せそうな顔をして紹介したのは・・・なんとマリアちゃんだった。 「「・・・・・・・・・・・・」」 「ふははっ驚いたろ?」 「驚いたも何も・・・」 「ん?」 「私のマリアちゃんに何さらしてくれとんじゃこのタラシ男がァァァァァアアア!!!!」 「ぐふっ!?」 ヘンリーのお腹を一発勢いよく突進して私は殴った。ヘンリーは部屋の隅まで弧を描いて飛び上がる。 「おまっ、!何しやがんだ!」 「あ〜スッキリした・・・やっぱり二人両思いだったんだな」 「いや何でがスッキリしてんの?」 4人の中で笑いが起きた。
「ま、とにかくお前に会えてよかったよ。あ、そうだ。結婚式には呼べなかったけどさ、記念品があるんだよ。俺の部屋の奥に宝箱があったの覚えてるだろ?そこにあるからさ」
「ヘンリーの部屋ってここだよね?」 ヘンリーの部屋に入り、奥の部屋へと入る。やっぱりお城って綺麗だし広すぎて何が何だかわかんないな・・・。
「・・・あれ?記念品なんて入ってないじゃない」 宝箱を開けてみると、昔のようにもぬけのカラ。 「ああああんの男!そろそろ人をからかうのもいい加減に!!」 「まぁまぁ落ち着いて。・・・ん?あれ、底になんか書いてある」 宝箱の底には、確かに何かメッセージが書いてあった。
“、。お前らに直接話すのは照れくさいから、ここに書きのこしておく。 お前らの親父さんのことは、今でも1日だって忘れたことはない。 あの奴隷の日々に俺が生き残れたのは、いつかお前らに借りを返さなくてはと…… そのためにがんばれたからだと思っている。 伝説の勇者をさがすというお前らの目的は、俺の力などとても役に立ちそうにないものだが…… この国を守り人びとを見守ってゆくことが、やがてお前らの助けになるんじゃないかと思う。 、。お前らはいつまでも俺の子分…じゃなかった、親友だぜ。 ヘンリー“
「・・・ヘンリーってば、くどいことしちゃって」 「でも・・・ヘンリーらしいといえば、らしいよね」 ははは、と私とは笑った。
「え?記念品は入ってなかったってか?あっはは!お前らあいっかわらず騙されやすいよな〜」 「こら、あなた!」 ヘンリーが私たちを笑うと、マリアちゃんは少しだけ怒った。ごめんごめんと言いながらもヘンリーは嬉しいというか楽しそうで、二人はとても幸せそうだった。 「ほら、これが記念品だよ」 「うわっ可愛い〜!!」 ヘンリーからもらったのは、ヘンリーとマリアちゃんの人形がついた、オルゴール。 「・・・あれ?でもココ・・・」 「そこは本当は宝石を埋め込むつもりだったんだけどよ、職人が見つからなくてそのまんまなんだ。ごめんな。あ、その記念品はお前らだけの為に作らせたんだから、大事にしろよな!」 「「(さすが王家のやることは違います・・・)」」 とすかさず思う私とリュカだった。
「のお嫁さんは誰になるんだろうな?」 「きっとステキな方なんでしょうね〜」 「えっ!僕のお嫁さん・・・!?」 マリアちゃんは必死に考えているを見てふふふと笑っている。
のお嫁さん・・・本当だ、誰になるんだろう。やっぱりビアンカ?
「ははっ、案外だったりしてな!」 「「ぬあっ!?」」 私とはずっこけた。っていうか何でずっこけるの・・・!?私がずっこけるのはまだわかるけど!!
「いやごめん、そんな本気にすんなよお前ら・・・」 「でもお似合いですわよ、二人とも。将来が楽しみですね」 マリアちゃんはいつでもニコニコ、そんなことをドストレートに言う。何なのこの二人・・・。
「じゃ、じゃぁそろそろおいとましようか まりん・・・」 「そ、そうだね!とりあえず王様たちにご挨拶してくるよ!また来るからね二人とも!」 「おう!また来いよな!あとも早く結婚しとけよ!!」 「ブッ」 が猛烈に唾を吐き出した。本当恥ずかしがりだよこの人・・・!!
「あはは・・・二人とも面白かったね」 「ヘンリーのテンションにはついていけない・・・」 はすっかり疲れてしまっている。私はを元気づけながら、デールさんがいる玉座の間へと向かった。
「やや、あなたたちはっ!兄からあなたのことを色々と聞きました。何でも伝説の武器防具と勇者を探しているとのことだそうで・・・。せめて恩返しにと兵士たちに調べさせたんですよ」 「ええっ!?僕たちのためにわざわざそんなことまで・・・!?ありがとうございます!」 が頭を下げると、デールさんは朗らかに笑った。 「どうやらサラボナという街に天空の盾があるそうですよ。一度訪れてみてはどうですか?サラボナは、ルラフェンという街から南のようです」
「すっごい有力な情報が得られたね〜!」 「やっぱりデールさんも王様としてちゃんと仕事果たせてるみたいだね」 早速デールさんの情報どおり、私たちはルラフェンまでルーラで戻り南へと歩いていた。
もうすっかり陽も落ちて辺りは暗く、魔物も強くなってきたので、今日は野宿になった。
「・・・」 「ん?」 「やっぱりも・・・結婚とか憧れてる?」 「ブッッッッ」 本日2回目ですよさん。唾吐き出すの。
「まで〜・・・。何なのみんな、今日どうしたの?」 「え、いや・・・特に意味はないんだけど・・・どうなのかな〜って」 なんとなく聞いたことが恥ずかしくなってきて、私はから顔を背けた。
「・・・一応・・・お嫁さんにしたいなって人は・・・いるよ」 「ほ、本当!?」 絶対に、ビアンカだと私は思った。でも、心の中で「私」じゃないかなとかそんな淡い期待まで抱いてしまう。でもきっと、のお嫁さんになったら幸せだろうなぁ。
「そっか・・・すごいね、」 「は?」 「え?」 「はいないの?結婚したいと思う人」 の突然の問いに、私は目を丸くして驚いた。
「私・・・」 私が何かを言おうとするその顔を、は真剣な瞳で見つめてきた。今まで歩いていた足も、なんでか止まってしまっている。 「私・・・は・・・」 「フニャァアアアアア・・・」 その瞬間、私との顔の間に割って入ってくる人物・・・いや、動物、チロル。 「(空気読んでチロル・・・!!)わ、私はチロルかなっ、将来結婚したいの!」 「・・・ぷっ、何それ!」 が思いっきり笑ってくれたから、何だかちょっとだけ嬉しかった。
「じゃ、そろそろ寝ようか」 「そうだね。おやすみ」 「おやすみ、」
その日の夢。私はどこかの教会で、結婚式をあげている夢を見た。 隣にいるのは、誰か男の人。 顔はわからなかったのだけれど、でもどこか見覚えのある人で。 それは間違いなくチロルではなくて・・・黒い髪の、たくましい男の人だった。
あとがき 2010.04.19 UP |