ふるさと


オラクルベリーのモンスターじいさんやら、男好きの占い師お婆さんやらに会い 、ヘンリーがうるさいので少しだけカジノに行った私たちは、到着してから1日でオラクルベリーを出た。華やかな街を後にするのは少しだけ寂しかったけど、これから新しい地に行くと考えると少し胸が踊る。

「やっぱり新しい武器だと闘いやすいね!」

オラクルベリーで買った新しい武器防具を身に纏った私たちには、奴隷時代の面影なんてひとつもなかった。颯爽と私の前を歩くが、何だか頼もしい人に見えてしまう。 目の前に現れる魔物たちを1匹残さず倒していった私たちの前にあったのは、ひとつの石橋。

「あれ・・・?、こんな所に橋なんてあったっけ?」

「え?・・・、ここが何処か知ってるの?」

私がそう言うと、は少し考える素振りを見せた。が、すぐにいつもの笑顔になって「何でもない」と言うと、また歩き出した。

 

「やっぱり此処は・・・!、ここまで来たらわかるよね?」

「えっ!?えーっと・・・ビスタの港とサンタローズの間あたり・・・かな?」

私の言葉に場所を確認したは、大きく頷いた。

「やった・・・!僕たち、サンタローズに帰って来られたんだね!!」

「ほ、本当に!?」

私とは目を輝かせて、手を合わせて喜びあった。

「サンタローズって、確かの故郷だよな?よかったじゃん!」

ヘンリーは歯を見せてニカッと笑った。私たちは泣きそうになりながらもヘンリーに笑い返す。

「とにかく先を急ごう!」

のその言葉に、私たちは歩を早めた。

 

サンチョさんはまだいるのかな。一人であの家に待っているなら早く帰らなきゃ。サンタローズに来たということはアルカパも近くかな。だったら、ビアンカに会いたい。みんな、元気にしてるのかな・・・。

私は期待に胸を膨らませた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・え・・・?」

目の前で繰り広げられる残酷な光景に、私たちは言葉を失った。そこには、滅んだ村。昔何かの戦争があったことを物語っている。私たち以外の旅人は、口々に「ひどい村だ」と言っている。

 

「どういうことだよ・・・?どうなってんだ?」

ヘンリーの問いかけにも、私とリュカは答えられなかった。あんなにのどかな村だったのに、この10年間の間に何があったんだろう。 門番さんも、住宅も、武器屋さんも――私たちの家でさえも。焼け崩れていた。

 

「・・・奥に村の人がいるみたいだから、行こっか」

「・・・・・・うん」

は平静を装って私たちに笑いかけたけど、やっばりその背中はどこか寂しそうだった。

 

 

 

 

 

「まあ!なの!?久しぶりね・・・!」

昔よく話した教会のシスターはまだいた。教会だけは何とか綺麗に、何事もなかったかのように建っていた。

「よかった・・・生きてて・・・!10年前旅に出たきり戻ってこないから心配したのよ!!本当に・・・大きくなったわね!」

シスターは私たちの手を強く握りしめて、涙を流してくれた。私も目頭が熱くなって必死にこらえたのに、は全然弱さを見せなかった。――強いんだな。 私はそう思った。

 

 

「あの・・・この村に一体何が?」

「・・・実はね、10年前。ラインハットのヘンリー王子が誘拐されたから、お守りだったパパスさんの住む村を滅ぼせって皇后さまのご命令でね・・・。そういえば王子の誘拐はその皇后さまの企みとも聞いたことがあったけど本当なのかしら・・・?」

そのシスターの言葉を聞いた瞬間、私とは一斉にヘンリーを見た。

「・・・ごめん。俺が誘拐なんかされたせいだな・・・」

「・・・いや、でも誘拐を企んだのは皇后なんだし・・・ヘンリーは悪くないよ」

「えっ!?ヘンリー王子だったのですか!?す、すみません!!」

シスターはかなり慌てていた。ヘンリーは後ろ頭に手をやって、笑っていた。私たちはきっと、皇后をずっと許さないだろうな・・・・・・。

 

 

 

 

 

奥に洞窟を掘って宿屋や道具屋をしている村の人たちがたくさんいた。壊れた住宅にも住んでいるお爺さんと男の人もいた。

 

「おお!か!久しぶりじゃな・・・!」

お爺さんは身体が弱いのか、ベッドに寝たきりだったけれど、すごく嬉しそうに再会を喜んでくれた。

 

 

「・・・そうじゃ。わしはお前たちに伝えなければいけないことがあるんじゃよ」

「伝えなきゃ・・・いけないこと?」

お爺さんは天井を見つめると、ぽつりと呟いた。

 

「・・・パパスさんがな。子供が大きくなった時に、伝えてくれとな。確か・・・『サンタローズの洞窟の奥の、私の部屋に行ってみろ』と言っていたかな・・・」

そのお爺さんの言葉に、私たちは顔を見合わせた。そして、行く決心をする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわぁ・・・久しぶりだね、この洞窟も・・・」

辺りを見渡しながら進んでいく私たち。まだ小さい時、ダンカンさんを助けに入ったなぁ。・・・あの時はまだこっちの世界に来て、少ししか経っていなかったけれど・・・のこと、すごく頼れる男の子だと思った。

・・・!?」

「うわっ!はいっっ!!!」

自分の世界に入っていた私は、に名前を呼ばれて肩をビクつかせた。

「大丈夫?どうしたの?」

「あ、あはは・・・ちょっと昔のこと思い出しちゃってただけだよ!」

私はみんなに心配を掛けないように、勢いよく首を振った。

 

 

 

 

 

「・・・ここがお父さんの部屋?」

洞窟の一番奥には、棚や机などがある部屋があった。薄暗い明かりを灯し、私たちはその部屋を見渡す。そして奥には・・・。

「剣・・・?」

「俺、これ知ってるぜ。確か・・・天空の剣だと思うぜ」

ヘンリーは、奥にあった地面に突き刺さる剣を指差してそう言った。

「天空の・・・それって何?」

「勇者しか装備できないんだ。勇者ってのは伝説の人でどんな邪悪な存在でも勝つことができるとか何とか聞いたことあるけど・・・でも確か、勇者は何年も前に滅んだって話だぜ?」

ヘンリーは頭を掻きながらそう言う。例え強い剣だとしても、装備できないなら 宝の持ち腐れも同然。落胆のため息を私はついた。

 

「・・・あれ、でも何でここにあるんだろう?パパスお父さんが勇者だったとか・・・? 」

「どうだろ、それはあんまりなさそうだけど・・・。ま、とりあえず手がかりになりそうなものを何か探そうよ」

疑問を口にした私に、はそう言った。・・・悩んでいても仕方ないし、私はの指示に従うことにした。

 

 

 

 

 

「おい、これって、手紙じゃねえか?」

数分後、机の中からヘンリーが何かを見つけた。それは白い封筒に入った、一枚の手紙。私はこちらの世界の文字も何とか読めるようになっていたので、3人で手紙を囲み、が声に出して読み始めた。

 

 

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あとがき
とうとう戻ってきましたねぇサンタローズに。
ゲームの時は死ぬほど悲しかったです。故郷が滅ぼされてるんだもんね!

2009.11.25 UP