ペット登場!未来の姿と妖精さん
王様のアドバイスでたいまつを探し出し、この城に棲みつく魔物の長を倒しに行こうと、私たちは城中を探し回った。たいまつがあれば、真っ暗なお城の中でもかなり視界はよくなった。途中、魔物たちのエサにされそうになったりと色々ハプニングがあったが、なんとかボスの元まで辿り着けた。 ボスは城のベランダから、夜空を見上げていた。
「あんたね!王様たちを苦しめてる存在は!」 ビアンカが鞭を構えてそう言う。その声にびっくりした魔物は振り向く。
「ここまで来るとはバカな人間の子供だな・・・。二度と姿を現すことの出来ないようにしてやる!!」 魔物のボスは私たちに襲い掛かる。即座には剣を構え、ビアンカは鞭を魔物に必死に振るう。私も短剣を必死で振り回し、頑張って攻撃した。
結構な時間が経って、魔物は倒れこんだ。やはり3人の力には敵わなかったのだろう。私ら子供だけど。 「ま・・・待ってくれ!この城からは出るから殺さないでくれ・・・!」 さっきまであんなに「二度と姿を現すことの出来ないようにしてやる」なんて言うくらい強気だったくせに、今ではすっかり腰も引けていて逆に面白い。 「俺が出て行けばこの城の魔物もいなくなる。俺たちはただ楽しく暮らせる場所が欲しかっただけなんだよ・・・許してくれよ。なっ?なっ?」 懇願する瞳で見つめてくる魔物を見たビアンカは、ひたすら首を横に振った。それはも私もだ。王様や死んでいったお城の人たちを苦しめた罰をそう簡単に許せるわけがない。
「そんなこと言わずに、まじで頼むよ!頼むって!」 そう言う魔物。だけど、まだ私たちは首を振る。すると魔物はため息をついてこう言った。
「・・・もう〜、まじありえないんだけど〜。どんだけ〜」 ・・・エエエエエエェェェェェェ!?!? 魔物の意外すぎる一面を見た私たちは背筋がゾーッとして、早くこの場から逃げ出したい気もして首を縦に振った。本性を現した魔物は「ありがと〜。つぅか〜、最初から許してよって感じ〜?まじどんだけ〜」と言いながら消えていった。 「そんなお前がまじきもいわ!!!!」 と叫ぶビアンカに、私とは声を上げて笑った。
魔物を倒したことを王様に伝えようとすると、視界が真っ白になって、気づけばお城の最上階の、2人のお墓についていた。お墓はさっきまでビアンカが隠されていた場所だ。 「よくぞやってくれた!心から礼を言うぞ!」 「本当にありがとうございます。これで私たちも安心して眠りにつけますわ」 王様とお妃様は半透明の体で墓石の上に立った。王様たちの笑顔は、本当に嬉しそうなものだった。
「そうだ、おぬしたちに褒美をやろう」 貴族の褒美なのだから、きっとものすごく豪華なものなのだろうと思った私たちだったが、渡されたのはよくわからない・・・金色の水晶玉のようなものだった。
「これはゴールドオーブじゃ。ワシらがお主らにあげられるものはこれくらいなんじゃ、すまんのぅ・・・。しかしそのオーブは必ずそなたたちを幸せにしてくれるじゃろう」 王様はそう言うとお妃様と目を合わせて、頷いた。 「それでは私たちは眠りにつきます。本当に・・・ありがとうございました」 優しい笑顔のお妃様はそう言うと、半透明の体が墓石の中へと消えていく。そのすぐ隣にいた王様も同じように、墓石の中へと段々消えていく。 最後に「ありがとう」と言い残して。
「やっぱりいいことした後っていうのは気持ちいいわよね!!」 ビアンカが満足そうな顔で伸びをした。 レヌール城を抜け出して、今はアルカパに向かっていた。夜明けの薄明るい外は少し肌寒い。朝日が山の中から恥ずかしそうに微かに見える。 ビアンカの家に帰ると、私たちは倒れこむように眠った。
そして次の日・・・。私たちが目覚めたのは昼近くだった。
「さあ約束よ!そのネコちゃんを渡しなさいよね!」 「ちぇ、しょうがねぇなぁ。まさか本当に退治してくるなんてな・・・」 ネコをいじめていた男の子2人は、しぶしぶビアンカにネコを渡した。まるでチーターのようなネコは、ビアンカが抱きかかえると嬉しそうに体を振った。
「そうだ、名前をつけてあげましょっか」 ビアンカがそう言うので、私たちは頷く。何にしようかと考えていると、ビアンカは思い出したように人差し指をあげた。 「ゲレゲレなんてどう?」 「げ、ゲレゲレ!?」 「ゲレゲレ・・・ですか・・・」 ビアンカのネーミングセンスを疑いたくなるくらいの名前だ。私とはずっこけそうになった。 「やだ、ももセンス悪いわね。ゲレゲレという名前の良さがわからないなんて・・・」 頬を膨らますビアンカに、私たちは首を振った。あんたがセンス悪いんだよ!!
「じゃあそうね・・・ボロンゴはどう?」 なんでそんな名前ばっかりなの!!
「これも気に入らないの?じゃあ・・・そうだ、チロルなんてどう?」 ビアンカが満面の笑みでそういう。確かにチロルなら可愛い。 「それにしよう!!」 そう言っていたのは私だった。ビアンカは「じゃあ決まりね」というと、チロルを抱えて立ち上がった。
ビアンカの家に入ると、ダンカンさんとパパスお父さんが挨拶をしていた。もう帰るのだろうか。 「おお、、。いい所に来たな。もう帰るとするか、いつまでも世話にはなっておれんしな」 「もうちょっといればいいのに・・・」 「いや、私も次の仕事があるのでね。これで失礼するよ」 私達に話してくれるパパスお父さんに、もうちょっと居て欲しいのはダンカンさんのようだ。ダンカンさんはものすごく寂しそうな顔でパパスお父さんを見つめている。
「見送りありがとう。ここまででいいよ」 町の外まで見送ってくれたダンカン一家に、パパスお父さんは礼をしたので私ともそれに習って礼をした。
「!!」 ビアンカが私たちの名前を呼んでいたので、私とはビアンカの元まで駆け寄る。
「この数日、一緒に遊べてすごく楽しかったわ。またしばらく会えないかもしれないけど・・・私のこと絶対に忘れないでね!」 ビアンカは少しだけ涙を目に滲ませ、声を震わせてそういう。強がりだったビアンカがすごく可愛く見える。
「あ、そうだ。これあげるわ」 ビアンカは自分の髪を結んでいた緑のリボンを外した。私のツインテールとおそろいのリボン。 「これ、あげるね。そうだ、チロルちゃんにつけてあげるわ!」 宿屋ということでやはりお客さんに苦手な方がいてはいけないから、チロルは私たちが飼うことになった。ビアンカは首輪代わりに、チロルの首元に自分がつけていたリボンを結んであげた。 「ふふ、私とチロルちゃんと、お揃いね!」 にこやかにそう言うビアンカに、私も嬉しくなった。心なしからチロルも嬉しそうに笑っている気もした。
「じゃあね、。またいつか一緒に冒険しましょ!絶対よ!」 指きりげんまんを3人でして、私たちは別れた。
「あはは!!チロルくすぐったーーーいっ!!」 サンタローズに帰ってから、と私はチロルとあそんでいた。チロルも、もうすっかり私たちに懐いてくれたのか、の顔を舐めたりしていた。 あと何日後かにラインハットという国にいく仕事が、パパスお父さんにはあるらしい。私たちはまたそれにもついていくので、しばらくの間また家を開ける。だから今のうちに、思う存分村で遊ぼうというの提案により、私たちは家の横にある草むらであそんでいた。 「チロルって可愛いよねっ!ビアンカのリボンつけてもらって嬉しいのかな?」 私がそう言うと、なんとなくチロルが首を縦に振ってくれているような・・・肯定してくれているような感じがした。ペットさえもいなかったうちの家。今こうして動物がいてくれることが嬉しい。 何よりも、以外にも遊び相手が増えた。これで旅に出ても賑やかになるだろう。
「はぁぁあ〜・・・かっこいいぃぃ〜〜・・・」 私たちの家の横にある草むらのすぐ隣、そこにはサンタローズの教会がある。そしてその教会にいつもいるシスターが、今日は外にでてそう呟いていた。 「どうしたんですかシスターさん?」 「あっ!くん、ちゃん。こんにちは」 シスターは頬を真っ赤にしながら言っている。そういえばさっき何か「かっこいい」とか何とか・・・。
「かっこいいって誰がですか?」 「えっ、ちゃんってば聞いてたのね・・・?・・・あの人よ。でももう奥さんがいるみたいね」 シスターが向ける視線の先には・・・紫色のターバンにマント、黒色の長い髪を後ろに結う男性。それはどう見ても・・・今のが大きくなった後の姿にしか、私には見えなかった。
「・・・?」 「なぁに、っ?」 は無邪気にチロルと遊んでいて、男の人には興味はなさそう。だがどう見たって、あれはの大人バージョンのようにしか見えない・・・。 「あの人、なんだかに似てるね」 さりげなくそう言ってみたが、は首を傾げている。 「そうかな〜?似てないよ、全然・・・」 男の人を見ていた視線は、すぐにチロルへと戻された。は相当チロルが気に入ったようだった。
「・・・あ!」 シスターが言っていた、奥さん。確かに男の人の奥には女の人がいた。 その女の人の格好も・・・今の自分を映し出したかのような姿。 と同じように、私の大人バージョンなのだろうか。18歳の姿の私・・・。
気になって気になって仕方なかったけど、はそんなに気にしてもいないようだったので、私は考えすぎなのかと思った。頭を振って、の元へと走った。 気にしないでおこう。 そう思いながらも、後ろを振り向いてしまいそうになった。
「ああ、坊ちゃまお嬢様おかえりなさいませ。あの・・・疑っているわけではないのですが・・・まな板をタンスになんて入れてはいませんよね?」 「「はっ?」」 私とは目が点になった。 家に帰るなり、召使サンチョはそう言った。
「何言ってるんだよサンチョ!そんなワケないだろ!」 「そうですよ!だいたいなんでまな板をタンスに!?」 「ですよねですよねぇ!!いや、まな板が本当にタンスにあって・・・いたずらっ子でも家に入ったのでしょうかねぇ」 サンチョは首を傾げながらそう言った。
が、その次の日も、村中でたくさんのいたずらが起こった。村に子供は少ないので、私とは疑いをかけられたが、パパスお父さんが守ってくれた。
「もうなんなんだよ〜!いたずらする奴を見つけ出してとっちめてやるぅ〜!!」 すっかり腹を立てたは、チロルと私を連れまわして村の中でいじめっ子を探した。確かに私も、疑いをかけられるのはもうこりごりだ。
村の地下にある唯一の酒場に行くと、マスターが「誰もいないのに勝手にグラスや酒瓶が動く」とおびえていた。つい最近レヌール城に入ってしっかり幽霊体験してしまった私とには、これくらいヘッチャラだった。 というか、見えていた。 グラスや酒瓶を動かしている犯人が。
「もう!!何で誰もあたしのコトに気づいてくれないのよ!!ムカツク〜〜〜!!!」 耳の尖ったピンク色のショートカットの髪の女の子は、グラスや酒瓶をポイポイと床に投げた。グラスは音を立てて割れる。それを見てマスターは「ひぃい!!」と泡を吹いて倒れた。
「あ〜ん〜た〜ね〜!?最近村中いたずらしてるってやつぁ!!」 「えっ!?な・・・なに!?」 私が怒りを奮闘させて女の子に近づくと、女の子は怯えた表情で私を見た。
「え・・・てかあたしのコト見えんのっ?」
ベラというその子は、妖精界に住むエルフの女の子だった。 「詳しい話は、もうひとつの地下のある家でするわ!あそこは妖精界に繋がる場所なのよ。それじゃ、先に行ってくるからね!」 そう言うとベラは超特急の速さで、その地下のある家へと行ってしまった。
「この村で地下のある家なんて、僕ん家しかないよね、」 「え、そうなの?知らないけど・・・もうひとつっていうくらいだからそうなんじゃないかな・・・」 まだこの村のことがよく分かっていない私は首を傾げたが、は一人で確信したように「うん、そうだよね、そうだようん!!」と言っている。なんか可愛いぞお前。
「で、、ベラちゃんっていう子のことは許してあげるの?」 「えっ・・・。う〜ん・・・なんか理由ありそうだし、聞いてから判断する」 そう言ったに、私は笑った。やっぱりはやさしい。そう言っているけど、ならきっと許してしまうだろう。どんな理由であっても。
私たちは急いで自分の家の地下へと向かったのだった。
あとがき 5夢主は・・・何だ? 2009.06.08 UP |