きょ、きょ、恐怖の…レヌール城


 

くん、ちゃん!この間は本当にありがとう!!はは、パパスにさえ世話になってるっていうのに、まさか子供の方にまで助けられるなんてな・・・。俺は大人失格だな!」

そう言っていながらも高らかに笑うダンカンさん。

あの洞窟で私たちがダンカンさんを助けたことで、しばらくしてからダンカンさんはお礼に豪華な夜ご飯を振舞うということで、私たちをアルカパへと呼んだ。アルカパはとても賑やかな町で、サンタローズとは正反対だった。

ダンカンさんとパパスお父さんの話が弾んでいる。この2人はきっと長い付き合いなのだろうな、と私は思った。

 

 

「さて、と。そろそろご飯の下ごしらえでもしましょうかねぇ」

ダンカンさんのおかみさんがそう言って椅子から立ち上がると、台所へと入っていった。

 

「今は3時か。ちょうどいい時間ね!、約束してたブドウ食べよっか!!」

ビアンカはそう言うと私たちを引っ張って、2階へと上がっていく。

ビアンカの家は宿屋で、アルカパの中で1番大きな家だった。いや、客室の部分を家とカウントしていいのかは分からないけど。

 

ビアンカはベランダのドアを開けた。ベランダからはアルカパを一望でき、は「うわー!」ととても喜んでいた。ぶどうはベランダの天井にあったので、ちょうど日陰になって気持ちがよかった。

「ぶどうはね、ツルツルしてる奴がおいしいわよ!」

そう言ってビアンカはぶどうに手が届くようにするために、椅子を持ってきた。が嬉しそうに飛び乗り、ぶどうをどれがいいのか吟味している。

 

、いいのあった?・・・・・・あ!!!!!!!!」

ビアンカがビックリしたように、ベランダの外を見た。私は何かと思ってビアンカが視線を投げる方向を見てみた。そこにいるのは2人の男の子と・・・ネコのようなトラのような黄色い生き物。

「あいつらぁ〜〜!!!!」

ビアンカは怒りを奮闘させ、全速力でベランダを出て行った。しばらく呆然としていた私とだったけど、我に返った。

「ま、待ってよビアンカ〜!」

が不安そうに叫びながら、ビアンカの後ろをついていった。もちろん私も。

 

 

 

「ちょっとあんた達!動物をいじめちゃ駄目でしょ!」

「うわぁ〜!鬼ビアンカが来たぞ!!」

「誰が鬼ですって!?だいたいあんた達はいっつも誰かをいじめて・・・恥ずかしくないの!?」

ビアンカが男の子たちにガミガミと怒っている。まるでお母さんのようだ。なんだか鬼と言われてしまっても、仕方のないような気もした。男の子たちはと同い年くらいだと思う。

「でもコイツ、変わってるんだぜ!鳴き声とかネコじゃないみたい!!」

そう言って男の子は木の枝でネコをつつく。その度にネコは「ガルルルル・・・」と唸ってくる。確かにこれはネコじゃない鳴き声だ、と私が思っていると、ビアンカは男の子たちに手を差し出した。

 

「やめなさいよ!可哀想でしょ!そのネコちゃんを渡しなさい!」

「・・・おい渡せだって。どうするよ?」

ビアンカにそう言われ、男の子たちはヒソヒソ声で会話をしている。返答をビアンカは待っているのか、腕を組んで足をトントンと踏んでいる。

「・・・よし。別にあげてもいいぞ、このネコ」

「本当ね?」

「ただし・・・レヌール城のお化けを退治できたらな!!」

「れ、レヌール城ですって!?」

男の子が意地悪そうな笑みで言うと、ビアンカは1歩、後ろへと退いた。

「そ、レヌール城。もしお化けを退治してきたら、このネコをやってもいいぜ」

そう言うと、男の子たちはまたネコをいじめはじめた。

 

「〜〜!!わかったわよ!やりゃあいいんでしょ、やれば!」

ビアンカはムキになったのか、踵を返して家へと向かう。私とも急いでビアンカを追いかける。

 

 

「・・・やるわよ、!」

「「・・・へ?」」

私とが首を傾げると、ビアンカは眉を上げて怒った。

「さっきの話聞いてなかったの?レヌール城のお化けを退治しなきゃ、あのネコちゃんはずっといじめられたまんまなのよ?可哀想じゃない。だから行くのよ、今夜。も付き合ってね!」

そう言うビアンカに、は不満そうな顔をした気がした。

 

 

 

 

 

 

夜は、ビアンカの家で皆で一緒にご飯を食べた。

・・・すごく楽しかった。今まで、みんなと話しながら明るくご飯を食べたことなんかなかった。大体は、一人。ずっと、ずっと・・・。

?どうした?」

気づけばパパスお父さんが私の顔を覗き込んで心配していた。

「あ、大丈夫・・・!ご飯おいしいね!」

私は笑顔でそう言うと、パパスお父さんは優しく微笑んでくれた。

 

 

「見てみてパパー、!!おならーブーッ!!」

お風呂を貸してもらったので、パパスお父さんとと私の3人でお風呂に入った。本当は少し、一緒に入るのは戸惑った。だって心は一応、18歳なのだ。今の体は4歳だけど。

は洗面器をお湯の中に入れ、空気を溜めて一気に空気を外に出すとまるでおならのように「ぼこんっ」と音を立ててお湯の中に出てくる。

・・・また大きいのしたな〜」

いやそんな「う○こ大きいのしたな〜」みたいに言わないでお父さん・・・!と私は思っていると、パパスお父さんは手を組んで、の顔をめがけて水鉄砲をかけた。

「うわぁー!お父さんのバカーッ、えい!」

もパパスお父さんと同じように手を組んで水鉄砲をしかけた。私に。

「キャー!!!何で私にするのーっ」

私がそう言うと、2人は笑っていた。この時間が、私はたまらなく楽しかった。

 

 

「ふーっ、気持ちよかったねぇ、っ」

「そうだねー・・・楽しかった!」

あんな風にはしゃいでお風呂に入ったことなんてなかったなぁ・・・と思った私は頭を振った。何だか今のこの状況と自分の生活を比べてしまう。

たとえこれが夢だとしても、今まで経験したことのない幸せを実感できるなら、それで私はよかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・おきて!」

楽しいひと時を過ごし、すっかりレヌール城のこと忘れていた私とは、同じベッドでぐっすりと眠っていた。するとビアンカがひそひそ声で私たちを起こしているのが分かった。

本当はこのままたぬき寝入りしてしまいたかったけど・・・きっとムリだろう。ビアンカのことだから一発蹴りでも入ってきそうだ。

 

「起きたわね、

眠たい目を擦りながら起きた私を見て、ビアンカがそう言う。

「じゃあ行きましょ、レヌール城に!バレないようにこっそーり行くわよ」

ビアンカは口の前で人差し指を出してウインクした。可愛いすぎるよ アンタ・・・!!

 

アルカパの入り口に立つ兵の人は仕事をせずに居眠りをしている。これなら心配せずに町の外にいけるだろう。

夜の街を飛び出して外に出る。星空がきれいに瞬いていた。
今の時刻は夜の12時。18歳のときは普通に起きていたが、こっちの世界ではなんだか時が止まったように皆家に入り眠っている。もう夜の3時や4時くらいなのではないかと思うほど、どこもかしこも静まり返っていた。

 

 

 

 

 

 

 

「ここがレヌール城よ!」

ビアンカの後をついて魔物たちと戦いながら着いた目的地、レヌール城。お化けがいるというレヌール城・・・。

暗い。怖い。

ただそれだけで一人にされてしまったようで、怖くてたまらなくて私はブルブルと震えた。

「・・・、怖いの?」

が心配そうに尋ねてくる。
確かに幽霊やらそんなオカルト系も決して得意なジャンルではないけれど、ダントツで暗いのが嫌だった。それでも私は心配をかけたくなくて、勢いよく首を振った。

 

 

「きゃあああああああああああ!!!」

「ビアンカ!?」

一瞬辺りが真っ暗になって私がビクつくと、ビアンカの悲鳴が聞こえた。私がビアンカの名前を呼ぶと、辺りが少しだけ薄明るくなった。その時にはもうビアンカはいなかった。

 

大変・・・!ビアンカがいないー!」

「ええぇ!?・・・と、とにかく探そう・・・!!」

雷が鳴る。雷も嫌いな私は泣きそうになってきた。ここは私には不釣合いな場所だ・・・!!しかもしっかり者のビアンカまでいない。これでもしもいなくなったら・・・そう考えると、私はとうとう、泣いてしまっていた。

ー・・・泣かないでよー・・・」

は私をすごく心配そうな目で見てくる。そして、頭を撫でてくれた。
こっちに来てから、
は何度も私の頭を撫でてくれる。不思議と、それは私をとても安心させてくれた。

 

 

 

 

 

 

「もう!!遅いわよ!!ずっと・・・ずっと怖かったんだからっ・・・ひっく・・・」

ビアンカを見つけた。ビアンカはお墓の中に入れられていたのだ。ビアンカは泣きじゃくって嗚咽する。私はビアンカのそんな以外な一面に少しだけビックリしていた。

 

 

しばらく歩いていくと、外に出た。そこには王様のような身なりをした男の人がいた。

「・・・おお!ここまで来る勇気のあった者はそなた達が始めてじゃ!」

その男の人は私達を見ると駆け寄ってくる。が、体が半透明だ。
もしや・・・お化け・・・!?と思った私は、その場から逃げ出したい思いでいっぱいだった。

「少し頼まれてくれんか・・・?ワシはエリック。何年か前にこの城にいた王じゃ。実はその何年か前に、城に魔物が攻め込んできての。その時ワシと妻も、城にいた兵や・・・みんな殺されてしまったのじゃ」

エリックは悲しそうな顔で話し始めた。やはりもう既に死んでしまっている人物のようだが、気にしなければ普通の人間のようなので私は我慢した。

「この城には見ての通り、ゴーストや魔物が棲みついておる。ワシと妻は安らかに眠りたいというのに心配で・・・。魔物がここで好き勝手にやっとるのは、それを束ねるボスがいるはずじゃ。・・・そこでお願いする」

エリックは懇願するような瞳で私達を見た。

「どうか・・・どうかゴーストたちのボスを倒してくれんか・・・?」

その王様の願いに、私たちは必ず倒してみせると約束した。

 

平均年齢6歳の3人。そんな子供にできるのかはわからないけど、私は王様が助けたいと思った。

たぶんそれは、もビアンカも同じだったと思う。

 

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あとがき
5の幼少時代って、短いなーと思ってたんですけど小説で描くと長いですね。
なんかもう全然覚えてないわ。再プレイしなきゃな・・・!!

2009.05.28 UP