勝利!!
意識を取り戻したとき、そこはまだ空の上だった。
「・・・!! 、本当によかった・・・!!」 ゼシカが泣いて、の手を握り締めていた。もその隣で、すごく悲しそうな顔をしていた。 「あれ・・・? 私・・・」 「、マダンテ唱えて倒れたんでがすよ」 ヤンガスが はー、とため息をついて、にそう言った。は ハッとした顔をした。 「そ・・・そういえば・・・ラプソーンは!?」 「おめーがやっつけたんだろーが」 にや、とククールが笑う。
「え・・・私が・・・?」 「が唱えたマダンテのおかげで、ラプソーンは滅んでいったよ」 は相変わらず悲しそうな顔で、にそう言った。 「そ・・・そっか・・・! 私、みんなの役に立てたんだ! 本当によかっ「なんであんな無茶したんだよ!!」 いきなり、がの肩を掴んでそう言った。 「え・・・?」 「みんなが・・・皆がどれだけ心配したかわかってるの? 結果的にラプソーンをやっつけることが出来たけど、もしあのまま滅びなかったら・・・どうするつもりだったんだよ!」 「・・・・・・・・・」
本当だ、私・・・後先考えずにマダンテを唱えてた。きっとこれで皆の役に立てる、って思い込んでた。
「・・・ごめ、・・・!?」 はそっとを抱きしめた。その肩は震えていて、泣いているのがわかった。
「もうお願いだから・・・こんな無茶しないでくれよ・・・」 「・・・・・・うん。ごめんね、」 はの背中をそっとさすった。ククールたちはその光景を見て、微笑んだのだった。
「トロデ王たちは私の力でトロデーン王国へと返しておきました。今からその場所に向かいますか?」 「もちろん!」 は涙を拭って、レティスの言葉に返事する。
トロデーンへと向かうと、決戦へと向かったときと同じように、トロデ王がぴょんぴょん飛び跳ねてこちらへと手を振っていた。
「おっさん、アッシらラプソーンを倒してきたでがすよ!」 「おぉ、おぉ!見とったぞみなの戦い!さすが我が家臣じゃ!!」 「・・・おかしいな、アッシおっさんの家臣になった覚えはないでがす」 「あら、私もよ?」 「・・・俺もだな」 「私も私も」 「・・・ぬ? 細かいことは気にするんじゃないぞい!!」 わっはっは、と笑うトロデ王に、自然とみんな笑顔になる。
「・・・これでやっと、リーザス村に堂々と帰れるわ」 「俺も、オディロ院長の仇を討ててよかった。さてとー、これからどうしようかねー」 「修道院にも帰るわけに行かないし、ククールニートデビューだね」 「・・・な・・・!?」 ククールはの言葉にカチンと来たのか、のこめかみをグリグリしてみたが、本当にそうなりそうで地面に「の」の字を書いて落ち込んでいた。 「ククール、働き場所がないならこの城で兵士にでもなれば?」 「あ?兵士?んだと、俺がの下で働けってか?」 「うん(キリッ」 の何ひとつ濁っていない目でそういわれ、ククールは「・・・考えとく」といって俯いた。絶対なる気ないなコレは。
「・・・それでは私はそろそろ・・・いつまでもこの世界に留まるわけにはいきません」 レティスはそういうと、羽を広げてばさばさと飛び上がった。 「あ・・・ちょっと待ってくれぃ!神鳥よ!」 トロデ王は慌てた様子で、レティスのところまで走っていく。 「なんですか?」 「あの・・・わしと姫と城の呪いなんじゃが・・・いつ解けるんじゃろうか?」 そういえば、トロデ王たちの姿と城はまだドルマゲスに呪われてしまったときのままだ。ラプソーンを倒したというのに。 「今世界中から呪いが消えて行っています。あなたたちの姿もこの城も、もうじき呪いから解き放たれるでしょう」 「そうかそうか、それを聞けば安心したぞ。・・・神のおぬしに言うのもなんじゃが、気をつけてな」 トロデ王はレティスにそういうと、にこりと微笑んだ。
「・・・私は神鳥だなんて呼ばれていますが、実際神でもなんでもありません。レティスというのもあなたたち人間がつけた名前・・・」 「え、そうなんですか?」 「はい。私が生まれた世界では違う名前で呼ばれていました。確か・・・ラーミアと」 「ら、・・・ラーミア!?」 その名を聞いて、は飛び跳ねた。うううううそ、まさかこんなとこでラーミアと会えるなんて・・・!!?? 「なんでがすか、ラーミアを知ってるんでがすか?」 「知ってるも何もあの3に出てくるラーミアじゃん!アホヤンガス!」 「いや・・・3てなんでがすか」 「・・・むぐむぐ」 はいけないことを口走ったと思い黙り込んだ。
「あなたたちの強さと諦めない心に驚かされました。これからもその強さを忘れずに、頑張って行ってくださいね。・・・それでは」 「じゃぁねレティス! またいつかねー!!」 ゼシカが空へと羽ばたいていくレティスにそう叫んだ。
「・・・あ」 の道具袋から、レティスの子供である魂が顔を覗かせた。
「・・・そういやおっさん、なんか体が光ってるでげすよ」 「何? わしはいつだって光り輝いておろーが」 「いや光ってねーって。そういう意味じゃなくて、ちゃんと自分の体見てみろよ!」 ヤンガスがそう言ってトロデ王は改めて自分の姿を見てみると、確かにピカピカと光っていた。その光はより強くなり、一瞬目を開いていられないほどの眩さに一行は目を瞑った。
目を開くと、そこには・・・・・・・・姿がほぼまったく変わっていないトロデ王がいた。
「え・・・」 「よっしゃー!! 呪いから元に戻ったぞーーーっ!!!!!」 ぴょんぴょん飛び跳ねるトロデ王を見て、以外みんなが噴き出した。
「ぶっはーーーーー!!! おっさん何も変わってねーじゃねーでがすか!!!」 「お・・・王様・・・早く・・・元に戻ってください・・・ぶはははは」 「あっはははは!! 王様魔物のときのほうが可愛かったわね!」 「・・・・ぷっ」 「おっおぬしら好き勝手いっとるんではないぞ!!!」 王様はぷんぷんしていた。
「ひー、腹いてぇでがす・・・、そういやおっさん、馬姫・・・げほげほ、ミーティア姫はどこでげすか?」 「そういえばさっきから姿が見えんな・・・姫?姫ーーーっ!!」 「ここですわ、おとうさま!」 城の入り口の辺りから声が聞こえ、ミーティアが姿を見せた。 「おお・・・!!ミーティア・・・!!!」 ミーティアの姿は、あのふしぎな泉で見た人間の姿と同じ。相変わらず清楚なお姫様といった風貌だった。
「ミーティアーーー!!」 「お父様!!」 二人は嬉しそうに駆けて行き、抱き合った。それだけ呪いが解けたのが嬉しかったのだろう、二人は涙を浮かべていた。
しかしこのお父さんと見たことのないお母さんからミーティアが生まれてきたのかと思うと、お母さんのほうはどれだけ美人だったのだろうと思う。
「あ・・・お父様、お城も・・・」 「おぉ・・・!!」 茨に包まれていた城も、茨がだんだんと消えていく。植物人間になっていた人々の呪いも解け、嬉しそうに伸びをしたり、走り回る子供もいる。
「よぉし・・・皆のもの!宴じゃー!!!宴の準備じゃ!!!」
「元に戻ってよかったね、」 「・・・うん、本当によかった」 いすに座ってトーポにチーズをあげているの横に座った。 「・・・、ずっと辛かったもんね。私もすごく嬉しいよ」 「・・・ありがとう・・・」 にこりと笑ったの肩に、トーポが登ってきた。
「ん? トーポ、どうしたの?」 「チッ」 トーポは隣にいたの服を足で掴み、との距離をさらに縮めさせた。 「ちょ・・・トーポ!」 は顔を真っ赤にしながらトーポをこつんと叩いた。
「あ・・・あっあの・・・これ飲む・・・?」 は慌てて自分がジュースを飲んでいたグラスをに差し出す。は「あああありがとう」といいながらそれを受け取り、飲む。 「・・・あ・・・」 「な、何・・っ?」 「・・・今の、間接キス・・・」 「・・・・っ!!!???」 の言葉に、はボボボボッと顔を真っ赤にした。
「「・・・・・・・・・」」
「あーあ、初々しいわねー」 「何々ー、お姉ちゃん、あの二人できてるのー!?」 「んー、まだまだだけどね」 子供に呪文を教えていたゼシカは、そんな二人を見て微笑んでいた。
ヤンガスもトロデ王と楽しそうに、ビールを飲んでいる。
本当に全てが、戻った。
あとがき 2011.07.03 UP |