ラプソーン


 

青い青い空の中を、一行はレティスに乗って飛んで行く。
飛び立ったあとの地上を見てみると、そこにはレティスの止まり木付近で手を振っているトロデたちがぼんやりと見えた。

は世界中を見渡して思っていた。

今まで旅をしてきて、いろんな人たちにお世話になった。
いろんな人が殺されていくところを、何もできずにただ呆然と見送ってしまった。

でも、その仇を今から討ちに行くんだ。

後ろを向いていた視線を、前へと向けた。そこには青い空に真っ黒に浮かぶ、ラプソーンの姿。

 

「(絶対に・・・絶対にラプソーンに勝つんだ!)」

にもらった女神の指輪が嵌まった左手の薬指を見て、はぐっと拳を握り締めた。

 

辺りが、青かった空から黒くなっていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「一気に行きますよ、皆さん!」

レティスのその言葉に、みんな唾をごくりと飲んで頷いた。レティスは突然加速して、ラプソーンの元へとまっすぐ向かっていく。

 

「最初は皆祈りましょう!」

ゼシカのその言葉に、みんな道具袋から出した神鳥の杖をかかげて、祈りをささげる。
祈っている最中にラプソーンからの強い攻撃もたくさんあった。

でもみんな、一心不乱に祈り続けた。賢者たちの復活を祈って。

 

「あ・・・!」

5人の祈りが終わると、ラプソーンの周りに1つだけ光が生まれた。

「あれが賢者の魂です。どんどん復活させていきましょう」

レティスが足元でそう呟く。みんなはとりあえず攻撃で受けた傷を回復し、また祈る。

 

 

そして、5人で一斉に杖に祈ることができた7回目。光がやっと、ラプソーンの周りに7つ浮かんだ。

 

「え・・・っ何!?」

祈った神鳥の杖のまわりに、7つの光が近づいてきた。その光は円を描くように5人の周りを飛び交い、その発光をより強くした。そのまぶしさに目を瞑ると、7つの光はオーブと同じ色を帯びてラプソーンの元へと飛んでいく。

「・・・あれが、賢者たちの力・・・」

ラプソーンの周りに硬く張られていた結界が、崩れていく。

 

「愛するわが子孫よ。僕たちにできるのはここまで・・・・・・。
 
このすばらしいわれらの世界を・・・・・・われらの未来をどうか守り通してほしい。

 僕たちは遠くできっと見ている。
 さらばだ 愛する子孫。
 そして 神鳥レティスよ・・・・・・」


 

そういって、光たちは消えていった。

「マスター・コゾ・・・、シャマル・クランバートル・・・、エジェウス・・・、ギャリング・・・、クーパス・・・、カッティード・・・、レグニスト・・・。ありがとう」

レティスは少しだけ、瞳に涙を浮かべているようにも見えた。

 

 

「うおおおぉぉぉっ!!!」

そう叫んだのは、目の前で悔しそうに拳を突き上げているラプソーンだった。

「おのれぇぇ・・・・・・!!どこまでも目障りな虫ケラどもがぁぁっっ!!」

ラプソーンは相当怒りに震えるているのか、たちをキッと睨み付けてこう言った。

「我が闇の結界を払いのけたことを地獄の底で後悔するがいい!! この肉体の真のチカラを見せ付けてやろう!
死してなお消えぬほどの永遠の恐怖をその魂に焼き付けてくれるわっ!!」

「なんですってぇ〜・・・?」

ゼシカもまた、相当の怒りを抱えたのか眉間にシワを寄せた。

 

「意味わかんないわよこのデブ!あんた人に恐怖を与えることの何が楽しいワケ!?趣味悪!まじ趣味わっる!!

「う・・・うるさいうるさい!この人間ごときが!!」

ラプソーンは持っている杖を振り回し、ゼシカがこけてしまう。

「いった・・・」

「ゼシカ 大丈夫!?」

「だ、大丈夫。それよりラプソーンをやっつけるわよ!」

が差し出した手を取り立ち上がったゼシカは、ラプソーンを真っ直ぐ指さす。

 

「みんな・・・きっとこれが最後の戦いになるから。だから、がんばろう!」

の言葉に、みんな一斉にラプソーンへの攻撃へと走った。みんな、ラプソーンを憎む気持ちは同じだった。

 

 

バイキルト!

アルシェは、必死に皆の補助をするしかなかった。攻撃も時々繰り出し、また回復や補助などに回る。
それが自分なりの1番の戦い方だと思ったからだ。

、ククールにベホマお願い!」

「う、うん!」

に頼まれてククールにベホマを唱える。

「・・・くっ、悪いな、

「大丈夫・・・、!?」

 

いきなり、視界が歪んだ。足元がおぼつかず、は座り込んでしまう。

「大丈夫ですか、さん!?」

「あ・・・れ・・・? な、んか・・・たってられない・・・」

レティスが心配する中、は必死に立とうと頑張っていた。体力はあるから、魔力がなくなったのか。魔法の聖水を使ってみても何も変わりはしなかった。

「ど・・・どうしよう・・・みんなに迷惑かけちゃ・・・う」

今にも泣きそうな顔で、必死に戦っているみんなを見る。みんな必死すぎて、が座り込んでいることにも気づいていない様子だった。

 

「(やだ・・・こんなところで、私のせいで負けるかもしれないなんて嫌だ・・・!)」

みんな、頼ってくれている。私の呪文に。きっとラプソーンに奪われてしまった魔力がまだ完全回復していないからだろう。今までと同じようびたくさんの魔力を使い、きっとまたなくなってしまったのだ。

 

「(お願い・・・お願い! 私・・・みんなと一緒に帰りたい・・・!! ・・・っ!!)」

そう思った矢先だった。突如、左手の薬指に嵌まっている指輪・・・にもらった女神の指輪が、光り始めた。

 

「な、なんだ!?」

ラプソーンがその光を見てすこし戸惑った。みんなもそれに気づき、後ろを振り返る。

 

そこには、光に包まれるの姿があった。

 

 

「・・・たくさんの人を殺した罪は決して許されない。私は死んでしまった人たちの、悲しみを少しでも取り除いてあげたい。だからラプソーン、あなたを絶対に許さない! 私たちは絶対にあなたを倒す!!」

はゆっくりと立ち上がり、何かを唱えだした。

 

 

いまなら、できる。何だか前みたいな力が戻ってきた気がするんだもん。

は、ラプソーンをキッと見据えた。

 

そして。

 

 

「マダンテ!!!!!!!!」

「な・・・!?」

から放たれた強大な光に、ラプソーンは目をくらました。

 

 

「ぐあああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっっっ!!!!!」

ラプソーンは、大きな断末魔をあげて、破裂した。それと同時に、今までこの場所を渦巻いていた暗黒の雲たちも消え去っていった。

 

 

 

 

「やった・・・やった!!! ラプソーンを倒したのよ!!!! ありがとう・・・、!!」

ゼシカがぴょんぴょんと飛び跳ねて、ばっと後ろを振り返った。そこにいたのは。

 

また魔力を一気に失って、倒れているだった。

 

 

 

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あとがき
やっと倒せましたね!!ラプソーン!!
私、戦いのシーンってあまり書くの好きではないです・・・全く得意じゃないので(笑)

てなわけで次回から最終章突入です!!

2011.07.03 UP