オーブ探し
トラペッタにルーラした二人は、早速やまびこの笛を吹いてみた。
「・・・あ・・・」 やまびこの笛は、綺麗な音を出し、辺りに音色が響いた。町の人々は気持ちよさそうに耳を傾けていた。
「トラペッタにあるんだ、オーブ」 「うん・・・あっ! あそこ!!」 が指を指した場所は、かつてドルマゲスの師匠であったライラスの家。火事で焼けた後のままだが、その焼け跡の中に紫色に光る何かがあった。 走りよってみてみると、それは丸い宝石のようなもの。これが、レティスの言っていた7つのオーブのひとつなのだろう。
「・・・」 「ん?なあに?」 がオーブを自分の道具袋に入れたところで、に声をかけられた。 「・・・なんとなくなんだけど・・・僕、オーブがある場所わかったかも」 「え!?」 「とりあえず予定だったリーザス村はやめて、マイエラ修道院に行こう」 「う・・・うん!」 が何を考えているのかにはさっぱりだったけれど、言われるまま着いていくことにした。
の予想通り、やまびこの笛を鳴らすと、マイエラ修道院も同じく綺麗な音がこだました。 「やっぱり・・・きっとあそこだ」 に着いていくと、オディロ院長の館へと辿り着いた。そこには確かに、金色に光るオーブがある。 「すごい!、何である場所がわかったの?」 「、よく考えてみて。オーブがあった場所は、トラペッタのライラスさんの家、オディロ院長の館なんだよ」 「んー・・・?」 何秒かして、はわかったように手をポンと叩いた。 「わかった、私たちが今まで住んで来たところだね」 「いや1秒たりとも住んだことないよ。もっと別のことあるでしょ!」 えー?と悩むに、は浅いため息をついた。 「・・・7人の賢者の末裔が、殺されてしまった場所だよ」 「・・・あ!」 確かにライラスさんが火事で死んでしまった場所、オディロ院長がドルマゲスに殺されてしまった場所だ。
「・・・つまり、僕たちが探す範囲で残っているのは、リーザス像の塔のてっぺんとサヴェッラ大聖堂だ」 「んにゃるほど!!」 が訳のわからない言葉を発したが、はスルーすることにした。あ、別にダジャレではないよ。
「リーザス像は最後に回して、サヴェッラ大聖堂に先に行こうか。きっと法皇様の館にあるだろうね」 「OK!」 たちはさっそくルーラを唱え、サヴェッラ大聖堂へと向かった。
「オーブあったねー」 「そうだね」 予想通り、法皇様の部屋に銀色のオーブが落ちていた。残すはあとひとつだ。
「え?」 がそんなことを言うので、は目をまるくした。 「ニノ大司教・・・どうしてるのかなぁ・・・」 「・・・・・・・・・・」 あのまま、煉獄島に入れられてしまったままなのだろうか。それとも・・・。
「やぁやぁやぁ、にじゃないか!久しぶりじゃな!」 「「 !!?? 」」 誰かに声をかけられ、後ろを振り向くとそこには。 「どうしてここにおるんじゃ?何か用なのか?」 「「 ニノ大司教!! 」」 ニノ大司教だった。
「あなたこそどうしてここに・・・」 「ワシらの疑いが晴れたんじゃよ。誰のおかげなのかはわからぬが」 「もしかして・・・マルチェロさん?」 「ふむ・・・もしそうだとしてもワシはマルチェロを許す気はないがな!ハッハ!」 大きなお腹をぶよんぶよんと揺らしながら笑うニノ大司教は、相も変わらずだった。 「そういやワシ、次期法皇になったんじゃよ」 「「 ええ!? 」」 意外すぎてびっくりした。こんな太っちょが法皇でよいのだろうか。 「おぬしらも頑張れよ。・・・おぬしらなら、きっとこの世を平和にできる」 「・・・ありがとうございます。 そろそろ行こうか、」 「うん。じゃあ失礼します、ニノ大司教」 とはお辞儀をして、その場を去った。
「さーて、残すはリーザス像の塔だねー!」 「魔物弱いだろうけど、気を抜かないようにね」 「はーい」 辺りはもう夕焼けが綺麗な時間で、昼を終えようとしていた。
「あ、あったよオーブ!」 サーベルトさんが殺されたであろう場所には、青色のオーブが落ちていた。はそれを拾い上げて、夕焼けに翳してみた。 「・・・ゼシカたち、オーブ探し順調かなぁ」 「・・・・・・そうだといいね」 きらきら輝るオーブは、まるで賢者たちが頑張れと言ってくれているような気がした。
「・・・ねぇ、」 「?」 振り返ると、の顔は真顔だった。 「・・・? どうしたの、?」 「あのさ、」 が近寄ってくる。なんだか急に緊張して、顔がちゃんと見れなくなってくる。
「・・・昨日、さ」 「え・・・?」 「、『のことがすき』って言ってくれたよね」 「・・・!!」 は顔を真っ赤にして、急いで夕日を見つめた。顔が赤いのをバレないようにするために。 「い・・・言ってないよ、私のことがすきやきって言った」 「まだそんなこと言うの? いや、僕がすきやきって意味不明だからね」 ピシャリとにつっこまれてしまったは、うううと縮こまる。
「・・・、あのね。・・・僕はさ」 「・・・・・・」 目をぎゅっとして怖がっているの左手を、は握った。
「・・・え?」 左手の薬指に、指先から付け根にかけて冷たい感触が走った。閉じていた目を開けてそれに視線を移すと、指輪。 「女神の・・・指輪?」 「そう。それ、魔力が回復するんだ。レティスさんはしばらくすれば回復するって言っていたけど、一刻も早く少しでも回復したほうが助かるからね」 「あっ・・・そっか、そうだよね・・・」 特別な意味じゃない、とはわかっているのに、なんとなく気が落ちてしまう。
「・・・、僕がそれを左手の薬指に嵌めた意味・・・わかってる?」 「・・・・・・ふえ?」
それって・・・。
「・・・・・・・・・・この戦いが終わったら、僕と結婚してください」 「・・・・・・・・・・・・ふええええええええあああああぁぁあああぁぁあああ!?」 腰が抜けて、ズザザザザザと後ろに引く。
「・・・ちょ、何してんの?」 両手で頬を思いっきり伸ばしてみたり、パンパン叩いてみたり、おかしな行動をとるにはあたふた。
「これは夢だ・・・これは夢だ・・・これは夢だ・・・」 どうしよう壊れた。
「・・・、夢じゃないよ。現実」 「だって!だって現実でが私なんぞにプロポーズするわけがない!!ふは、ふはは、FUHAHAHAHAHA」 「落ち着いて!」 が泣きそうな顔での肩を掴んで前後に揺さぶる。
「ほ・・・本当に現実?夢じゃないの?」 「うん。夢じゃないよ。僕がを好きなのは、真実だから」 「・・・っ!!」
これ・・・夢じゃないんだ。本当に、現実なんだ。
は、ぎゅっと私を抱きしめてくれた。私はどうしたらいいのかわからなくて、ただ棒立ちだったけれど。
そして私たちは、本当に少し触れるだけのキスをした。 赤い宝石の瞳はもう嵌っていない、リーザス像が微笑んでくれているように見えた。
あとがき
この小説が2010年最後の更新になるかな^^? 2010.12.26 UP |