伝えなくちゃいけないこと
「はぁ・・・はぁ・・・」 がいくら魔法を唱えても、それ相応のものは出なかった。 「私の話を聞いていなかったのか?お前にはもうほぼ魔力は残っていないんだ」 「・・・・・・っ」 は悔しそうに唇をかみ締めた。 それなら。
「・・・っええええええええい!!!!」 は持っていたサイを振り上げて、ラプソーンに駆け出した。
ドカッ!! 「はうぁ!?」 武器の先端をラプソーンに刺そうと思っていたのに、ラプソーンは全く動じず、しかもの腹部に鉄拳を喰らわせてきた。は口から血を吐き、後ろに大きく吹き飛ばされた。
「う・・・ぅあ・・・っ」 今ので体力がかなり削られてしまった。は倒れたその状態から動けないでいた。 「ゼ、シカ・・・ヤンガ・・・ス・・・、ククール・・・・・・姫様・・・王様・・・」 目の前にある拳を見つめて、ぎゅっと握り締めた。
私、強くなんかないんだ。 今までちょっと錯覚してたんだ。 みんなの後ろをひょいひょいついていって、いっぱい魔物をやっつけて。 暗黒神を倒すなんて、私には大きすぎる任務も背負って。 私は強いんだ、って、勝手に思ってたの。
でも違った。 本当は、みんなに助けられてただけなんだ。 一人じゃなんにもできないの。
一人じゃ、死んじゃうの。
胸の痛みは増す。体は徐々に動かなくなってしまう。 そんな私なんて・・・もういらないなぁ。
「・・・・・・」 昨日、あの時。 気持ちを伝えていればよかった。 どうして私は途中で止めてしまったの? 私はこうなるかもしれないって、わかっていたのに。
私は・・・・・・・・バカだ・・・。
そう思ったときだった。
「!!!」 「・・・!?」 もう目を閉じてしまいそうになる寸前、目の前にあった扉が開いた。
「やっぱり、ここにいた!!」 は倒れていたを抱きかかえた。
「・・・私・・・私・・・」 「えっ何!?無理して話さなくてもいいんだよ!?」 「ううん・・・私、私言わなきゃ・・・に・・・言わなきゃいけないことが・・・」 伝えたい。のに、言葉が出てこない。
たった2文字の言葉なのに。 「すき」って。
「わたし・・・が・・・が・・・」 そこで、は目を瞑ってしまった。 「え・・・・・・?」 意識がなくなってしまったを目の前に、は慌てる。その瞳には、うっすらと涙が浮かび上がった。
急いでククールがの手を取って脈を計った。脈は、まだある。 「大丈夫だ、死んではねぇよ。でもこのまま放っとくのは危ない。俺が回復とかかけとく」 そういうとククールは、持っている蘇生や回復の魔法を全てにかけ始めた。
「お前らか、私の計画を邪魔していたやつらは」 はうつむいたまま、ラプソーンへと歩み寄った。その後ろを付いていくヤンガスとゼシカ。 「お前らがいなければもっとこの世界を征服できたというのに・・・」 ラプソーンは杖に力をこめた。杖の先の玉を投げつけようと思っているのだろう。
「しかし邪魔をされるのは今日で終わりだ。いつまでもこんなことをしている暇は私にはない」 にやり、と笑ったラプソーンは、玉をに投げつけた。
「兄貴、危ない!!」 それを見てヤンガスはを庇おうとする、が。
ズガシャアアア!!! 「・・・なっ・・・!?」
は、飛んできた玉をわしづかみした。そこにいた人全てが目を丸くした。
「よくも・・・よくも・・・」
「よくも僕のをををおおおおおおお!!!!!!」
は持っていた玉を力強くラプソーンへと投げつけた。 「ブフォオォオ!!!???」 あまりに強すぎる攻撃に、ラプソーンは後ろへと吹き飛ばされる。後ろはすぐ壁なので、ラプソーンは壁へと激突した。
「っ・・・お前・・・なにを」 「メラゾーマ!!」 間髪置かずゼシカの呪文攻撃。相手に攻撃をさせる暇なく、勝利に終わった。
「ククール!はどう!?」 「・・・顔色はよくなったけど、意識はまだ戻らねえまんまだ」 「・・・・・・そっか・・・」 は悲しそうな顔をする。
「・・・ふ、しかし、お前成長したな」 「え?何が?」 「『よくも俺のを!』・・・か」 「!!!!」 は顔を真っ赤にして跳ね上がった。 「それは忘れて!!!」 「いやー忘れねえよ。お前ほんっとに好きな女の子のことになると男気溢れるよな」 「兄貴かっこよかったでげすー!」 「ふふふ、よかったわよ」 「やーめーてー!!」 みんなが一概にほめだすもんだから、は頭を抱え始めた。
その時。
ドンッ!
「!?」 「地震か!?」 暗黒魔城都市は、音を立てて崩れ始めた。 「せっかくラプソーンを倒したのにこんなところで死ぬなんてただのバカだわ!!」 「はっ、はやく出るでがす!!」 がアルシェをおんぶして、外へと向かって走り始める。
外へと向かう途中には、ラプソーンの刺客なのかかなり強い魔物がわんさか出てきた。
そこから神鳥のたましいを使って、空から5人は逃げることに成功した、と思った。
「な・・・何よアレ!?」 後ろを見ると、さっきまでいた場所が真っ黒な渦になった。 「ま・・・待って・・・ぼくもう無理・・・」 「!?」 神鳥のたましいは、その渦へと吸い込まれるかのように飛ばされていく。必死に抵抗するが、小さなたましいにはもう限界なようだった。
「わあああああ!!!!」 渦へと吸い込まれてしまった瞬間、魔法が解けて、鳥へと変身していた5人は空へと投げ出されてしまった。 パラシュートのないスカイダイビング。確実に死ぬ。
5人は、ものすごいスピードで地上へと向かって落ちて行く。 しかし、その中に綺麗な羽をもった鳥がいた。その鳥はこちらへと向かって飛んでくる。
「・・・!レティス!?」 「私が来たからにはもう大丈夫です。皆さんをお助けします」 を背中へ乗せたかと思うと、即座に他の仲間も助けに行った。
「ふう・・・5人そろいましたね。とりあえず私の止まり木があるところに行きますね」 「あの、どうしてこっちの世界に?」 「さきほど見ていたでしょう?ラプソーンが闇の世界からたくさんの魔物を呼び寄せていたのを。私もそれに着いてきたのです」 「一番の敵を光の世界に呼んじゃうなんて、ラプソーンも意外とバカでがすね」 げはげはげはと笑うヤンガスにつられて、レティスもふふふと笑った。
止まり木ある場所へと止まると、たちはレティスの背中から降ろしてもらった。 「あれ?王様、姫様・・・なぜここに」 「レティスが何かしたんじゃろう!わしらはいきなりここへと飛ばされたんじゃ!」 「ひひーん!」 二人はレティスに感謝するようにぴょんぴょんと飛び上がる。
「・・・皆さんに大切なことをお知らせしなくてはいけません」 「? なんだ?」 ククールがポケットに手を入れてレティスを見ると、レティスはみんなの目を見た。が。
「・・・言う前にさんの意識が戻るのを待つほうがいいですね。とりあえずレティシアの宿屋を借りましょう」 「あっそうね!」 はずっとそうしたかったのか、レティスの話を聞こうとしていたときもをおんぶしながらずっと足を動かしていた。レティスにそういわれた瞬間、誰も追いつけないスピードで大地を駆け始めた。 「はえー・・・」 「兄貴どんだけが好きなんでがすかね」 「・・・熱い愛ね」 3人は後ろをついていきながら、そんな会話をしていた。
あとがき まだ時間があったらもう1話更新できるかなー。 2010.10.03 UP |