[PR] この広告は3ヶ月以上更新がないため表示されています。
ホームページを更新後24時間以内に表示されなくなります。
暗黒魔城都市
「あ・・・暗黒大樹の葉が・・・」 エイトが地図を見てみると、三角谷のエルフ・ラジュからもらった暗黒大樹の葉は、レオパルドを追っていた時に見たように地図上をうろうろとはせず、現在地である聖地ゴルドを指していた。 「・・・ここを指してる・・・ってことは・・・」 やっぱり、とみんなは上を見上げた。
先ほどの大きな振動。聖地ゴルドを一気に廃墟にした原因。 見上げた先には・・・聖地ゴルドの祭壇の、変形したような形。
それは・・・暗黒神ラプソーンの、居城だった。
「あそこに行けば・・・ラプソーンがいるのね」 ゼシカが眉間に皺を寄せて、その城を見上げた。 「ラプソーンを倒せば・・・全て終わるんでがす」 ヤンガスは見上げるのをやめて、拳を握り締めた。 「・・・オディロ院長の仇もとれるんだな・・・」 ククールは少しだけはにかんだ。 「これでみんなの・・・王様と姫様の、呪いを解けるんだね」 エイトは嬉しそうに、そして勇気づけるように唇をかみ締めた。
「・・・・・・・・」 アルシェは何となく、納得できなかった。 こんなもので終わる世界じゃない。きっとあそこにいるラプソーンを倒しても、何も終わらないだろう。 「? アルシェどうした?」 「え? あ・・・何でもない・・・」 もしこれで終わらないとしても、死ぬ気で突っ込んでいかなきゃ。
「とりあえず今日は休んで、明日あの城に神鳥のたましいを使って向かおう」 「やったー!僕の出番だね!僕、役に立ってる?」 「立ちまくってるわよ。いつもありがとうね」 「えへへー!」 神鳥のたましいは、エイトの周りを嬉しそうにくるくる回る。
「・・・・アルシェどうかしたのか?さっきから元気ねぇけど」 「ご、ごめん・・・」 アハハ、と笑うアルシェのおでこに、手袋を取ったククールの手が伸びた。 「んー・・・別に熱はねぇみたいだな」 「ちょっ!ククール何やってんだよ!!」 「なんだよー」 即座にククールの手を、エイトが振り払った。それを見てゼシカとヤンガスが笑い、アルシェの頭の上にははてなマークが浮かび上がった。
「じゃあみんな、おやすみー!」 「おやすみなさーいでがすー!」 「おやすみ!」 「へいへい、おやすみ」 「・・・おやすみなさい・・・」 パチ、と部屋の電気が消えた。しばらくして、ヤンガスのいびきやエイトの寝息が聞こえてくる。
明日で・・・、この旅は終わるのかな。 ううん、きっとまだ終わらないよね・・・?
でも・・・旅に終わりが見えてきてしまっていて、何だか怖い。 そしていつか私は、元の世界に戻っちゃうんだろう・・・。
「(・・・今更こんなこと考えてても、仕方ないよね。最初からわかってたことだし・・・!)」 アルシェはそんなことを最後に思いながら、眠りについた。
次の日。
「んー・・・あれ?おはようエイト」 「あ、アルシェ。おはよう」 一番乗りに起きたかと思ったアルシェだったが、寝ぼすけのエイトが既に起きていた。どういう風の吹き回しだろう・・・。 「今日くらいはリーダーの僕が一番に起きようとか思って頑張ったんだよ!」 心の中を読まれたかのように、エイトはアルシェに微笑んだ。
「・・・エイト」 「んー?」 自分の荷物を片付けたり、ベッドのシーツを畳んだりしているエイトに、アルシェは声をかける。 「もし・・・もしラプソーンを倒したら・・・」 「?」 エイトはにこにこしながら、話を聞いてくれる。 私・・・いつ消えるかわからないから、言ってしまったほうがいいのかもしれない。
「あのね・・・私・・・。・・・・・・」 だめだ・・・言えないよ、こんなの。 『好き』なんて、いえない。
「ううん・・・ごめん、なんでもない。今日、頑張ろうね!」 「? ・・・うん!」 少しだけ不思議そうな顔をしたエイトだったけれど、またいつもの顔に戻ってにこりと笑った。アルシェも笑う。
「あそこだね?」 「そう。みんな、準備はいい?」 「オッケー!」 神鳥のたましいに代わって、ラプソーンの居城に向かう。 「魔城都市」という言葉がピッタリなほど、禍々しい気配に包まれながらも、人間が住むような城や街の形をしていた。
「ここまで忠実に作られてると気味が悪いわね・・・」 「まるで俺たちを招待してるみたいだな」 「城とか街の形してやすが、全然人が住んでる気配はしないでがすね」 ヤンガスの言う通り、『荒れ果てた城』というのがピッタリな場所だった。本棚は倒れ、電気はなく、イスは壊れており、橋や壁などは崩れ落ちて所々進めない場所もあった。
「あっ!なんかレバーがあるよ!お肉のほうじゃなくて!さすがの私も拾い食いとかしないよ!」 「誰だってわかるよ肉のほうじゃないこと・・・」 ククールに言われたことを無視してアルシェは、見つけたレバーを引いてみる。 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・ 「おーーーゴゴゴゴゴゴゴゴ」 「や、別に効果音一緒に言わんでいいよ」 ゼシカのツッコミになんでー!と怒るアルシェ。 よかった・・・いつものアルシェに戻ったみたい。
「わー・・・回廊?」 「ドアは開かねぇでがす・・・」 今までとは違う、明るい、円形状の街に出た。 「カモフラージュか何かかな。僕たちを混乱させるための・・・」 「どっちにしろ、先に進むしかないわね。行きましょ!」 ゼシカの言葉を先導に、エイトたちは走って街を抜けていく。
「・・・あれ?なんか・・・風景変わってきてない・・・?」 アルシェの言う通り、回廊を1周回ると、少しだけ先ほどの街が廃れていた。毒の水溜りが所々に存在し、綺麗だった武器屋などの看板は汚くなっていた。しかも、この回廊に入って来たときの入り口が見当たらない。 「回れば先に進む仕組みなんだろうな。このまま進んでいいと思うぜ」 ククールは立ち止まって辺りを見渡す仲間にそう言う。みんなは頷いて、再び走り始める。
3周目になると、今度は街が牢獄になった。牢屋の中には骸骨など、死体がたくさんある。 「・・・気持ち悪い・・・」 「なんか怖くなってきた・・・!」 怖いのがキライなアルシェとゼシカは、顔を歪ませる。
「そろそろラプソーンに近ェのかもな。・・・地の底から悪い気がふつふつと伝わってくる」 ククールが走りながら、低い声で言う。
「・・・!?」 皆の一番後ろを走っていたアルシェは、急な違和感に襲われた。 「うわきゃぉおぉぁあああ!?」 「何か変な奇声が! アルシェ!?」 いきなりアルシェの足元に、穴が空いた。アルシェの悲鳴を聞いてエイトは驚いたように後ろを振り向いた。
「どこに行ったのよ・・・!」 「・・・もしかしたら・・・だけど、ラプソーンのところに行ったのかな・・・」 「え?なんででがすか?」 ヤンガスの問いかけに、エイトは目を閉じた。
「・・・ルイネロさんに・・・言われたんだ。アルシェは魔力がすごいから、この世界では悪い奴に、その魔力を狙われるかもしれない、って」 エイトの言葉に、皆は耳を傾けた。 「ラプソーン、きっと今以上の魔力を手に入れたいのかもしれない。きっとアルシェは・・・そこにいる」 「じゃあ、早くラプソーンのところまで行ってアルシェを助けなきゃ!」 ゼシカがそう言うと、一人で走り始める。皆もそれを追った。
「・・・ん・・・・・・」 意識を取り戻して、アルシェは目覚めた。辺りは、マグマに囲まれた橋の上。
「ここ・・・どこ・・・」 「お目覚めか? 異世界の者よ」 「!!」 聞き覚えのある声が聞こえた。あの憎たらしい声・・・これは・・・。
「暗黒魔城都市へようこそ。私がラプソーンだ」 「ハ・・・」 「は?」 「ハートの女王ですか!?ぶわっはっはっはっは!!!」 「いや笑いすぎだろぉぉぉぉお!!!」 アルシェの言う通り、ラプソーンの風貌はハートの上に悪い顔がくっついたような感じだった。
「ひー、ひー・・・!もっとすごい感じの怖い人(?)かと思ってたのに・・・!まさかこんなキューティーとは・・・っフハアッ!」 「うっせぇキューティーとか言うな!!私も気にしてるんだ!!」 ラプソーンお怒り。持っている杖の先の玉を投げつけてきた。
「いった・・・何すんの!?」 「いつまでもお前と茶番なんてしてられないんだ・・・ククク、もうお前の魔力はほとんど吸い取ってあるんだからな!」 「・・・え?」 アルシェはその言葉に、目を丸くした。魔力を吸い取る? 今までその魔力で、みんなの戦いを補ってきた。回復、補助。限りのない魔力のおかげで、今まで楽に戦ってこれていたようなものなのに・・・。
「知ってるか?・・・魔力もほぼ体力と同じ・・・。失ってしまうのは危険なのだ・・・!」 「じゃ・・・あ・・・私はもうじき、死ぬの・・・?」 「ククク・・・それはどうかな・・・自分で考えるんだな!アハハハハ!!」 ラプソーンは、高らかに笑った。アルシェは歯を食いしばる。
「べ・・・ベホマ!!」 「無駄だ。お前にもう魔力は少ししか残っていない」 「・・・っ、う・・・っ・・・」 呪文を唱えるために激しく動いたせいで、足が崩れ落ちる。普通に立っていられない。視界が霞む。息もだんだん、苦しくなってくる。
「や・・・だ・・・助けて・・・。エイト・・・!」
「エイトーーーーーーーーーーー!!」
あとがき 2010.07.10 UP |