最後の末裔
「レオパレス・・・じゃなくてレオパルド21は今どこにいるの?」 「レオパルド21って何だよ」 「あ、あはは・・・。暗黒大樹の葉は今のところ、やっぱり法皇様のところに向かってるよ・・・」 某不動産屋の名前とレオパルドの名前がごっちゃになってしまったにすかさずククールが突っ込みを入れた。 暗黒大樹の葉は、世界地図の上でずっとサヴェッラ大聖堂のほうへと、微々たるものではあったが動いていた。一刻も早く法皇様のもとに行かなければ、レオパルドが殺してしまうだろう。最後の賢者の末裔を。 「お願い・・・間に合って・・・」 ゼシカは指を組んで祈っていた。
「あっ!!!あれ・・・!」 サヴェッラ大聖堂に近づくと、黒い何かが飛んでいる姿が見えた。それを見ては声を上げる。 「あれは・・・レオパルドかな?」 「そうだと思う。黒い身体に黒い翼・・・間違いないわ」 みんなは、空を飛ぶレオパルドを険しい表情で見つめていた。レオパルドはそのまま翼で法皇の館へと向かっている。 「よーし!このまま突っ込むよ!」 「うん、よろしく!」 レティスの子供はそういうと、飛ぶスピードを一気に早めた。
ガシャーーーーン!!! 「!」 レオパルドを追いかけて館へと向かったが、一足先にレオパルドが館へと到着した。レオパルドは地面に着地することなく、そのまま法皇様がいつもいる部屋の大きな窓へと飛び込んでいった。 「やべぇ!法皇様の部屋に・・・!」 「私たちも行きましょ!!」 地面に降り立ち、5人は走って法皇様の館へと入り込む。後ろでミーティア姫やトロデがオロオロしていた。
「急げ!何者かが法皇様の部屋に・・・!」 館の中に入ると、警備していた兵が慌てている姿がたくさん見えた。中は突然の状況に焦ってざわついている。
「僕たちも法皇様の部屋に行こう!」 法皇様の部屋は2階。5人は少し長い階段を駆け上がり、部屋へと飛び込んだ。
「!! ほ、法皇様・・・!!」 は叫んだ。 レオパルドは大きな翼をはためかせ、口にはあの杖を咥え法皇様の前へと立ちはだかっていた。しかし法皇様は戸惑うこともなく、そのまま目を閉じてじっとしていた。聖堂騎士団や大聖堂の兵士たちが何人かで必死にレオパルドに切りかかっているが、レオパルドはものともせずにそのまま法皇様を殺気溢れる眼差しで見つめていた。 「俺たちもレオパルドと戦うぜ!」 ククールはそう言ってレオパルドに攻撃をしかけた。レオパルドは予想していたものよりも弱く、あっさり倒せてしまった。・・・メディおばあさんが殺されてしまったときよりも強くなった証拠なのだろうか。
「おぬしたちは・・・。・・・いや、すまない。あのような魔物を倒していただいて感謝する」 「いえ・・・ご無事ですか?」 「あぁ、大丈夫じゃ」 法皇様はさっきとあまり変わらない立ち振る舞いで、体を心配したに礼をした。も慌てて礼を返す。すると。
「法皇様!大司教ただいま参りました!お体はご無事ですか!?」 「ん?おお、ニノか。わしはこの通り、この方達がお守りしていただいたおかげで大丈夫じゃ」 部屋に一足遅く飛び込んできたのは、太ったおじさんだった。 「あれ・・・メディおばあさん生きてたんだ」 「いや、全く違う人だから。もう性別からして違うからね」 ゼシカがの頭を軽くしばいた。
「ん?この方たちは旅人ですかな。法皇様をお守りいただき有難く思います」 「い、いえ・・・」 見れば見るほどメディおばあさんかと思うは少し泣きそうになっていた。
「・・・これはこれは。薄汚い旅人さん方、よく来ましたな」 「・・・・・・お前は・・・」 ククールが嫌そうな顔をした。だってそこにいたのは、
「薄汚いとは余計だぞマルチェロ。謝りなさい」 「何を言うのですか大司教様。あなたのお仲間なんでしょう?」 「なっ!?」 ニノ大司教は、たちを指差したマルチェロを驚いた目で見た。
「私が知っているお方たちではないぞ。何を勝手なことを言うのだ」 「しらばっくれても私には分かりますよ。どうせ襲撃してきた魔物もグルなんでしょう?自分が法皇になりたいが為にこの魔物と旅人たちに法皇を殺すように頼み、あなたは助けたように見せかけ信頼を集める。違いますか?」 ニヤリと笑ったマルチェロが憎らしい。たちはマルチェロをひたすら睨んだ。
「何を言うかマルチェロ。そのような嘘は・・・」 「お前たち!この薄汚い旅人と大司教を煉獄島へと連れて行け!」 「「「はっ!」」」 法皇様の言葉を遮りマルチェロはそう叫んだ。そこにいた聖堂騎士団3人がかりで、マルチェロの命令に沿いニノ大司教ともにたちは捕まえられた。
「ちょっと離しなさいよ!!」 「アッシたちは何もしてねぇでがす!濡れ衣着せるんじゃねぇでがすよ!!」 必死の抵抗も無駄だった。たちは無理やり引きずられ、どこかへと向かう船へと乗せられた。
「おい、着いたぞ」 青い服を着た聖堂騎士団に蹴られながら、たちは船を出た。 「な・・・何ココ・・・」 が絶句したのも当たり前だった。そこにあったのは、小さな島の上に聳え立つ灰色の建物。いかにも悪趣味な感じのものだった。 「ここは煉獄島・・・。重罪を犯したものが入る牢獄だ。一度入ると二度と出られないと言われている」 同じように腕を縛られながら渋々と船から出てきて、たちにそう説明したのはニノ大司教。さっきまでの威厳はなく、眉は下がりっぱなしだ。
「二度と出られないって・・・死ぬまでこんな所で暮らすわけ?」 「そうじゃ」 「うそォォォォ!!!そんな・・・俺まだ20年ちょっとしか生きてねぇのに!!」 「ククール前にもそんな事言ってなかった?」 建物へと歩かされながらそんな話をする一行。
「でもアッシらは何もしてないんだから、釈放されるんじゃねぇでがすか?」 建物に入り、地下深くへと繋がる鳥籠のようなものにあ乗せられて地下へと降りる途中、ヤンガスがそう言った。それでもニノは首を重そうに横に振った。 「無理じゃ。マルチェロの命令は今やほぼ絶対的・・・。あやつが何も言わないかぎり釈放は有り得ぬ」 ニノがそう言うと、ククールはため息を吐いた。自分の兄が弟を捕まえるように命令を下したのがショックだったのかもしれない・・・。
「今私たちはどこに向かっているんですか?」 「地下何メートルもの場所じゃ。今わしらが乗っているこのエレベータに乗らなければ地上へは出られん。じゃがこのエレベータの下では看守がずっと見張っておる。脱獄も不可能じゃろうな」 「そんな・・・」 は絶体絶命のピンチだと思った。
「さぁ、さっさと入れ」 牢獄の中に投げられるように入れられ、鍵を閉められた。そこにいた看守はたった1人だったが、半日で交代するようだった。たちはみんなの縄を解き、なんとか自由になった。 たち以外の囚人もたくさんいた。大聖堂の寄付金をこっそり盗って捕まった神父、連続殺人を起こして捕まった男。でもここではみんな協力して暮らしており、地面に溜まっている泥水を飲んで喉の渇きを潤すなど、地上では考えられない生活を送っていた。
「ねぇ」 「ん?」 「・・・ここって女の人は他にいないのかしら」 気づくと、女性はゼシカとのみ。最初からいた囚人も、全員男の人だった。
「牢獄に個室とかないのかしら」 「囚人にそんな配慮ないんじゃないかな・・・」 「何ですって!?お風呂はどうすんのよ!!」 「囚人にそんな配慮ないんじゃないかな・・・」 「何なのさっきから、バカのひとつ覚えなの?」 ゼシカが呆れたような顔をした。
何日かの時が流れ、たちももう生活に少しずつ慣れていた。最初は看守に向かって「出しなさいよ!」だの「濡れ衣でがす!」とか叫んでいたゼシカとヤンガスとニノだが、他のククールはやはそれを見ていた。 「あんたたち、諦め早いわよねぇ」 「何でそんなジッとしていられるでがすか!?アッシらは無実なんでがすよ!?」 「そうだけど・・・看守たちに言ったって釈放してもらえるわけじゃないでしょ」 がそう言うと、ゼシカが「何だと〜」と言いながらの首を絞めにかかった。それを必死で食い止めるヤンガスと。ククールは壁にもたれながらその光景を薄ら笑いをしながら見つめていた。
「・・・もう無理じゃよ。ワシらはここでお日様の光を浴びることもなく死んでいくんじゃ・・・」 「確かに、この牢獄にいて生きていられるのも少しの間。長生きした連中はいません」 ニノの話に横に割って入ってきたのが、囚人の神父さん。
「そういえば・・・トロデ王たちご無事かな・・・」 「あ、忘れてた」 「え、ねぇ一応主君だよね?」 の言葉にはあははと笑っていた。いや笑い事じゃないよ・・・!!
「おい、聞いたか?法皇様が死んだんだってさ」 「あぁ知ってる。何でもあの館の崖から落ちたんだってなぁ」 「マルチェロ様が見つけたんだろ?何か胸騒ぎがしたとか言ってさ。すげーよなー」 半日が経ったのか、看守の交代の時間が来た。地上からやって来た看守の話に、今まで見張っていた看守が楽しそうに話に乗った。 「ま、待て!その話は本当か!?」 「あ?お前には関係ねぇよ。黙ってろ!」 その話に誰よりも食いついたのがニノだった。しかし罵倒され、ニノは悔しそうに引っ込んだ。
「そんな・・・法皇が死んだだなんて・・・」 「・・・ってことは、最後の賢者の末裔が死んだってことだね」 の言葉に、みんながハッとした。 「また・・・守れなかったのね、私たち・・・」 「・・・仕方ねぇだろ、マルチェロが仕向けたことなんだからよ」 ゼシカが悲しそうな顔をしていると、ククールが久しぶりに口を開いて、ゼシカの頭をポンと叩いてそう言った。そうだけど、とゼシカはまだ何かを言いたそうにしていた。
「・・・そういえば、ドルマゲスのあの杖・・・今はどこにあるのかな?」 「あ、本当だわ。私たちレオパルドを倒したことに気を取られて・・・」 の思い出した出来事。あの杖を持った者は、ラプソーンの魂に乗っ取られて賢者の末裔を殺しに行ってしまう。 「俺の勘からすると、マルチェロが持ってんじゃねぇかな」 「え、何でマルチェロさんが?」 「だってアイツは偉い地位に立ちたいんだろ。だったら法皇様はきっと邪魔な人だ。誰もが敬うあの人を殺すっていやぁ、アイツしか考えられねぇよ」 「で、でも法皇様は殺されたんじゃなくて崖から落ちたって・・・」 「嫌な胸騒ぎなんてそう感じ取れるもんじゃねぇよ」 ククールは嫌味っぽそうに笑った。やっぱり兄弟だね!
「どちらにしろ、このまま黙ってここにいられないわ!」 「よし、脱獄計画だ!!」 脱獄計画。そう称して、6人は看守にバレないようヒソヒソ話を始めたのだった。
あとがき 2010.03.27 UP |