とある集落


「あーっ、やっぱアッシは色がある世界の方が好きでがす!」

「それはきっとみんなも同じよ。私も、あんな目が痛くなっちゃうような世界はコリゴリだわ」

ヤンガスは大きく伸びをしながら、ゼシカは目を押さえ言っている。光の世界と闇の世界の歪みを越え、たちは光の世界へと戻ってきていた。水色の青い空、綺麗な草原。やっぱり、色のある世界っていいんだなぁ・・・としみじみ実感するだった。

 

「なぁ、これからどうすんだ?」

「うーん・・・そうだなぁ・・・。あ、鳥になって今まで行けなかった場所とかに行ってみない?」

そのの言葉を聞いていたのか、レティスの子供である神鳥のたましいは、の回りを嬉しそうに飛び回る。

僕を使ってくれるんだね?嬉しいよ!

と言いながら。

鳥になるには、空を飛んでる所をみんなでイメージしてね。すっごく簡単だから!

そう言われて、たちは目を瞑って、頭の中で空を飛んでいる所をイメージした。すると体に風を感じ、目を開けたらいつの間にか空にいた。

 

「○△◇×□!?」

「普通に話せ!・・・ってすっげぇな・・・!」

今まで感じたことのない爽快感。どこまでも飛んでいけそう・・・。

「兄貴、どっか行けそうな場所あるんでがすか?」

「んー、地図を見てる限りではね、何だかパルミドの辺りに怪しそうなものがあるんだ。ほら」

が世界地図を広げ、その怪しそうな場所というのを指差して皆に見せた。確かに、回りは森に囲まれているけれど、村か町か何かの絵が描いてあった。けれどパルミドなどがある大陸からの橋も何もないので、足やキラーパンサー、船では行けなさそうな場所だ。

「そういえば鳥でしか行けないなら人って住んでるのかしら?何だか緊張してきたわ!」

ゼシカの顔は希望に満ち満ちている。

 

目的地に着き、色々頑張ってなんとか上空から着陸したたち。着陸するべき場所を失敗して目的地から離れた場所に着地してしまった。しばらく森の中を歩いていると、恐らくさっきの言っていた集落のようなものが見えてきた。

「あ、あそこだね。・・・な、なんか飛んでない・・・?」

「奇妙な光景だな・・・。ていうか人間ってあんな飛べんの?あいつ膝にバネでもあんの?

集落の入り口まで来ると、その跳び跳ねていたのは人間ではなく魔物のバーサーカーだった。

 

「びよーん。ここは、びよーん。三角谷、びよーん。だよーんびよーん。人間と、びよーん。魔物と、びよーん。エルフが、びよーん。住んでるんだ、びょーん」

いや『びよーん』うぜェェェェ!!!

そこでやっとの飛び蹴りが入った。

「話す時くらいじっとしようよ。あと、途中の『だよーんびよーん』の時、自分上手いみたいな顔してたのも何か腹立つしよ」

「いや、バーサーカーずっと同じ顔だったわよ」

「いやいやいや勝ち誇った顔してた」と頑なな。バーサーカーは蹴りを入れられたのが怖かったのか、飛ぶのを止めじっとしている。すると、馬車に今まで潜り込んで愚痴しか漏らしていなかったトロデが馬車から降りてきた。

 

「そ、そこの魔物!お主、今魔物が暮らしているといったな!?」

「そうだ、びよ・・・そうだよ」

あ、今言い直した。そんなに怖かったんだの飛び蹴り・・・。

「なんじゃと・・・!?!ここに入るんじゃ!!」

「え・・・?いや言われなくても入るつもりでしたけど・・・」

「人間もいるなら酒の一杯くらい飲めるじゃろ!さぁ行くのじゃ!!」

「あ!待ちなせェおっさん!・・・いや、ここはおっさん向けの町なんでがすかねぇ・・・」

ヤンガスは遠い目で呟き、トロデは嬉しそうに、ア○レちゃん走りで集落の中へと入っていく。そんな主君の姿に、は少し微笑んでいた。

 

 

 

 

「っか〜!やっぱ酒はうまいのぅ!マスター、カクテルを作るのに優れておるな!」

「ありがとうございます」

たちは集落に入ってすぐある酒場にいた。酒場のマスターはトロデの言葉に頭を下げる。トロデが今飲んだお酒は「ピュアギガンテス」という、何とも不思議な名前のお酒だ。ギガンテスがピュア・・・!?考えただけで、はすこし鳥肌が立った。

 

「私、お酒もビールも飲んだことないけど・・・そんなにおいしいものなの?」

「あー。俺は酒やビールよりワイン派だけどな」

「アッシはビール派でがすなぁ。山賊の一仕事を終えた後に飲むビールは格別うまいんでがす!」

仲間のなかでも成人しているククールとヤンガスは趣味が違うようだ。の問いに必死に答えている。

 

「そうなの?前に私、兄さんがビールを飲んでるのを少しだけもらった事があったけど・・・すごく苦かった思い出しかないわよ?」

ゼシカはヤンガスを物珍しそうな顔で見ている。ヤンガスは「まだまだゼシカの姉ちゃんは子供でがすな」とか言って、ゼシカの右ストレートが飛んでいた。

 

「あ、あはは・・・お酒の話はこれくらいにしてさ、僕らはとりあえずこの集落の中を見てかない?」

「そうだね。ここってエルフも住んでるんでしょ?会ってみたいなーなんて・・・」

は今までのドラクエシリーズを思い出していた。ドラクエにはエルフが高頻度で出てくる。ファンとしてはすごく興味ある・・・!

 

「じゃあ王様、僕たちはちょっと出てきますね」

「うむ。ワシはここで飲んでおるからな」

「ほどほどにしろよ、おっさん」

誰がおっさんじゃーとか言ってるトロデを無視し、たちは酒場を出た。

 

 

「エルフ?あぁ、ラジュのことだね。その子なら、あの吊り橋を渡ってすぐにある洞窟の中にいるよ!」

「わかった、ありがとう!」

村にいた人間の子供には礼を告げ、たちを見て頷いた。みんなはわかったというような顔だ。

「吊り橋の、奥の洞窟・・・あ、ここかな?」

集落の中にある吊り橋はギッシギシいって少し怖かったけれど、何とか通り抜けられた一行。その先にはかなりの草が生い茂っていて、それを掻き分けていく。その先にあったのは、そのエルフがいるといわれる洞窟。

「(うわわ・・・!もう今会えるんだエルフと!耳とんがってるんだ!わーわー!)」

「なんだお前、鼻息荒くして。変態か?」

「いや聞こえないんで今日耳は日曜なんでククールの声が聞こえた瞬間耳にシャッターかかるんで」

興奮が押さえきれずに心が踊っていたに、冷たく刺さる「変態」というククールの言葉。はもうククールの言葉に耳を傾けないことを心に決めたのだった。

 

 

「あぁ・・・!やっとあなたたちに会えることができました・・・!ようこそ他種族の集落である三角谷へ!」

「(それはこっちの言葉です、ああジュラさまぁぁ!・・・あれ、ジューラだっけラージュだっけ?ラー油だっけ?)」

エルフのラジュは会うなり、そう言い駆け寄ってきた。そしての手をぎゅっと握り、にこりと笑った。その仕草に、一瞬は焼きもちを焼いてしまい、でも何か言いたいのを我慢した。顔赤くしちゃってるし・・・!

ラジュはピンクの髪に整った顔立ち、やっぱり耳はとがっていて。細い体で肌の色は白い。あぁ何か全部負けてるのね私・・・と嘆くだった。

 

「そうか・・・この子だったのか!」

「何よククール。ラジュさんのこと知ってるの?」

「いや、俺体内に美女検索サーチ機能持ってんだよ。ここ来た瞬間にビビビッと1人ヒットしたからよー誰かなーって思ってたんだよな」

「ばっっっっっっっっっっっっっっかじゃないの?」

「間長っ!いやいやバカじゃないよなぁ?」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

「あぁ、マジでシャッターかけてんの?俺もう泣いていい?

ひどい扱いのククール・・・ちょっと可哀想だなと思うであった。

 

「えーっと・・・あのラジュさん、やっと会えたって・・・?」

その話は置いといて、は先程のラジュの気になる言葉に問いかけた。ラジュは少し思い出したような顔になる。

「はい。私は少しだけ未来を見る力があるのです。それによると、近い将来・・・この世界は蘇った暗黒神によって滅ぼされてしまうでしょう。しかし、それを阻止しようとする者が私の下へ訪れると・・・。それがあなたたちだと私は思うのです」

ラジュは真剣な顔でそう言っている。暗黒神・・・つまりラプソーンのこの世界の支配を、阻止する者。それが自分たち。

「何か・・・私たち、世界規模の事件に関わっちゃってるのね・・・」

重たそうな声でゼシカが呟く。みんなの顔が少し沈んでいる。一人を除いて。

「・・・おい。事の大きさわかってるか?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・ぅうっ。すまねぇ、俺の代わりにに話してくんね?俺じゃあ耳にシャッターかかっちまってるからコイツ」

本気で目に涙が滲んで潤んでいるククールが面白い。は少し含み笑いをした後、に話しかけた。

 

「おーい、?」

「・・・はっ!?な、なに?」

「いや・・・今のラジュさんの話、聞いてた?」

「・・・え?」

「まさか聞いてなかったでがすか?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・☆」

「いやそんな「テヘっ☆」みたいな顔しても駄目なんだよォォォ!!」

ククールの怒声が聞こえたところで、のククールへのシャッターが外れた。そしてうるさいなー変態とは項垂れている。はエルフに会えた事に感動して魂が抜けていたようだった。何とか今までのラジュの話をにして、ラジュは話を再開する。

 

「救世主さまの何かのお役に立てられればいいのですが・・・」

救世主というのはたちのことだ。ラジュが心配そうに差し出したものは、黒い葉っぱ。

「・・・?これは?」

「それは暗黒大樹の葉と言って、世界地図に乗せることで邪悪な存在を示してくれるんです」

「えっ!じゃあ・・・」

空を飛べるレオパルドの居場所もわかる!?という表情で、皆は顔を見合わせた。急いでは鞄から世界地図を取り出して、その葉を地図に乗せてみた。しばらくすると、葉が勝手に動きだした。

「そこが・・・悪の存在の居場所、ということです」

「すごい・・・」

葉は、トラペッタ地方を飛んでいるようだった。

「は、早く行こう!」

トラペッタ地方の横はトロデーン地方。そしてその北にある大陸は・・・サヴェッラ大聖堂のある地方。そしてそこには、最後の賢者の末裔である法皇様がいる。もしかしたら、法皇様を殺すために向かっているかもしれない・・・!

 

「王様、行きますよ!」

「な、なんじゃなんじゃ!?」

に服の襟を捕まれ、お酒の代金をカウンターに置いて出口へと走る。三角谷を出た瞬間、神鳥のたましいを使って飛ぶたちだった。

 

 

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あとがき
何だかだんだんと終わりが近づいていて悲しいです・・・。
って言ってもあと20話くらいはありそうですが(爆)
余談ですが、ラスボスとの戦いの後にちょっとオリジナルな話が入って連載が終わると思います(笑)
お楽しみに!

2010.01.20 UP