闇の世界


 

「すごいすごーい!見て!水だけが色ついてゴファァ!!」

「さささささっきのビンタの仕返しだぁぁぁ!」

いやどんだけどもんのよ

ヤンガス曰く「世界の破れ目」―――それを越えると、そこは目を疑う光景だった。色が、ない。 緑だらけの草原も木々も、空でさえ色がないのだ。まさに、モノクロの世界。

しかしの言う通り、何故か水だけは色がついていた。ククールに邪魔されていたが。

 

「とにかく普通の世界じゃないってことよね。ここがラプソーンの支配する世界・・・」

草原と言っていいのか分からない色の原っぱを歩きながら、不思議な世界に少し怯えぎみの目付きで辺りを見回しながら歩く。やはり光の世界と同じような構造で、村長の言っていた事は正しいようだった。

 

「あ、あれがレティシアかな・・・闇の・・・」

が指差す方向には、光の世界と全く同じ場所にレティシアがある。入ってみても何も変わらず、ただ色がないだけ。
しかし。

「ねぇ・・・あの人たち・・・」

「見ていて目が痛くなるわね」

「なんなのかしらね・・・」

道行く人々が、たちを不思議そうな目で見ている。

「・・・なんだ?俺がそんなにカッコイイってか」

「ぜったいに死んでもないから安心して」

ククールの言葉には冷たく突っ込んだ。さっきからこの二人、何を争っているのだろうか。火花を散らせている。

 

「・・・と、とりあえずこっちの世界の村長にも話を聞いてみやせんか兄貴 。何かレティスやラプソーンのことが分かるかもしれないでげす」

「うーん・・・そうだね。行ってみようか」

ヤンガスの意見に賛成したを先頭に、村長がいるであろう村の奥へと進んでいく。

 

「また被害が出たのか?なんということじゃ・・・」

村長のもとに訪れたたちはその光景を見て普通に驚いた。
・・・村長さん、見てる限りではなんかすごい真面目な人なんだけど・・・!!

玄関で見ていると 、光の世界ではものっそいお茶目さんなのに、こっちの世界ではキリッとした表情で村のことを第一に考えている、という顔つきだった。先客がいるようで、村人が何かの被害情報を伝えていた。

しばらくして話が終わったのか、村人は屋敷を出ていき、村長はこちらに気がついた。

「・・・ん?おお、光の世界からの旅人さんかの。 ということはレティスの影を追って来たのじゃな」

あれ?村長さんレティス呼び捨て?は焦った。

「えっと・・・あの・・・レティス・・・」

どっち!?どっちで呼ぶの !?様つけた方がいいの!?
は心の中で頭を抱え転がっていた。

「なんじゃ?レティスが?」

「れ、レティス様のことについて何か知りませんか・・・?」

は怯え怯え村長に尋ねると、村長は「あぁ、レティスなぁ・・・」と言って悲しそうな顔をした。
よかった、こっちの村長さんは呼び捨てでいいみたいだ。
は ほっと胸を撫で下ろした。

「レティス様は最近なぁ、村を荒しよるんじゃ。ワシらレティシア住民はレティス様を崇めているというのに・・・」

あれ?様つきはじめました?

「そのせいで村人たちもレティスに腹を立てておる。崇拝する村だというのに困ったものじゃ・・・。いったいレティスの身に何があったんじゃろうか・・・」

おおお、おい!!呼び捨てなのか様つくのかどっちかにせえェェェ!!
は再び心の中で身体全身を使って転がる。

「まぁそれくらいじゃな。お主らこっちの世界では色があって目立つから、レティス様に目をつけられんように気をつけなされな。頑張れ」

いや何を頑張るの?色抜くの?そして様はつけた方がいいの?つけないの?どっちなの?
は脳内で激しく自分と戦っていた。疑問ばかりがぽんぽんと出てくる。

「あ・・・はい・・・村長さんありがとうございました・・・。みんな行こうか・・・」

村長の家を出ると、はひどく疲れている気がなんとなくした。

 

「・・・大丈夫、?すごい汗なんだけど・・・」

「いや・・・大丈夫だよ・・・」

が心配してくれたので、なんとか元気を取り戻すだった。

 

 

 

「しっかし本当に奇妙な世界でげすね。こんな辺鄙な世界にレティスが本当にいるんでげすかねぇ・・・」

不安そうなヤンガス。ヤンガスは空を見上げた。が、綺麗な青空はそこにはない。

「えー何?ヤンガスまさか怖いとか・・・」

「んんんなわけないでがす!ってばお茶目な事言うんじゃな・い・よ★」

「いやいやいや、ヤンガスのほうがよっぽどお茶目なんですけど

ヤンガスはどうやら怖かったようだ・・・。

 

「とにかく止まり木に行ってみましょうよ。光の世界で見た影はこっちで飛んでるレティスのものなんでしょ?止まり木に行けば会えるかもよ」

ゼシカがごもっともな意見を言う。はゼシカがレティスと呼び捨てにした事に酷く怒っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・残念だな。いないみたいだぜ?」

「もうちょっと待ってみようよ。そんな鳥だっていつも止まり木にいるわけじゃないんだから・・・」

止まり木のある丘についた瞬間、踵を返そうとしたククールを引き止めた。ククールは少し頬をふくらませた。いい年してキショイんじゃコノヤロウ。

しかし、何分かしてもこないレティス。ククールは腕を組んで止まり木にもたれ、足をトントンと上下に揺さぶった。

 

「んだよー来ねぇじゃねぇか。帰りてー・・・」

時間の無駄無駄、と呟いたククール。が、色のない世界には目立つ色の生物が空を飛んでいるのが目に入った。

「あ・・・アレか! ?」

「え!?」

「きききたでがす!レティスー!!」

がヤンガスに呼び捨てにするなと言った後、はレティスが飛んでいる空を見上げた。レティスは止まり木、つまり自分達がいる方向へと飛んでくる。は此処だと示さんばかりに、両手を大きく上で振った。それに合わせヤンガスも大きく手を振る。

 

「あれ・・・?」

レティスは、不思議なこと に止まり木には止まらず・・・自分達に突っ込んできた。
鋭い嘴の矛先は、

「危ない!!」

は飛び出して、の首に手をかけた。そのまま横に吹っ飛んだ二人は、色のない灰色の草原の上に激しく転がった。

、大丈夫!?」

「う、う ん。私は大丈夫・・・ありがと。の方こそ大丈夫?」

「僕は大丈夫・・・!」

少し怯えがちには震えていた。は安心させるために抱き締めてやりたかったが、今はそんな時間はない。なぜか神鳥であるレティスが、人間の自分たちを襲ってきたのだ。今はゼシカたちのいる前に立ちはだかっている。体は綺麗な薄い青緑色で、目がチカチカしそうな色だった。

 

「(そう言えば村長さん、レティスが村を襲ってくるって言ってた・・・!僕たちも色があるから気をつけろって・・・このことだったのか!?)」

が脳内でそんな事を考えていると、服の裾を引っ張られているような感じがして振り返った。そこには自分よりも少し身長の低いが、を見上げていた。

・・・?」

「戦おう!レティス・・・さん、本望であんなことしてないと思うんだ」

ククールたちに襲いかかり始めたレティスを横目に見ながら、はそう言った。よく分からないが、にはきっとそう感じられるのだろう。

 

は少し口元を上げ、微笑んだ。

「・・・わかった。行こう」

そう言った瞬間、自分の体が光る。が回復魔法を唱えたのだ。

 

「・・・かばってくれて、ありがとね」

にっこりとに向かって微笑んだは、レティスと戦うヤンガスたちの元へ走って行った。
その柔らかな笑顔に、
は一瞬腰を抜かしそうになった。すごく、気の抜けてしまいそうな笑顔だったのだ。言葉では表せないくらいの、優しくて安心して、心が暖かくなる笑顔。

 

「・・・よーしっ!」

そしてそのの笑顔に勇気をもらったは、鞘から剣を引き抜いてレティスに向かって駆け出していった。

 

 

next→


あとがき
今回も短めでごめんなさい。本当はすごくすごく書き溜めてるのに、
UPできないのが悔しいOTL

連載当時は1年もあれば終わるだろうなと思ってたけど、2周年になっても終わりそうにないww
DQ4小説の方が危険。もう終わりそうよアレ。

2009.10.23 UP