隔絶大地と仲間たち


 

その夜。
洞窟の近くにあったトラペッタに、
たち一行は船を動かして泊まることになった。

ヤンガスは今だボーッとしている。いつもなら兄貴兄貴とうるさいのに、口数も少ない。

 

「ヤンガスってば、まだ浮かれてるわねぇ」

「あいつも相当嬉しかったんだろ。それよりゼシカちゅわぁぁ〜んトランプしようぜ〜」

ゼシカがククールの顔に肘うちしながら
「気色悪いよふざけんじゃねーよお前もヤンガスのように浮かれさせてやろうかあの世に」
と言い、ククールが震え上がっているのを横目に
を見ていた。

「(・・・今日はと久しぶりに話せたなぁ〜・・・)」

ヤンガス同様、も結構浮かれていた。にとったらもうそれだけで、すごく嬉しかったのだ。

 

トラペッタの宿屋はいつだって人が多い。いつもなら部屋は男子と女子で別れるのだが、今日は一部屋だ。とゼシカが女の子の話に花を咲かせている横で、男子軍団はベッドの上に倒れこむようにして眠っていた。

「何?もうみんな寝ちゃったの?そんなに疲れてたのかしら・・・」

ゼシカが腕を組んで言う。

「じゃあ・・・私らも寝よっか、ゼシカ」

「ん、そうね。おやすみ

ゼシカは布団の中に潜り込むようにして入っていく。そんなゼシカをしばらく見た後、も布団へと体を埋めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん・・・」

は、たぶん・・・夢を見ていた。真っ暗闇の中に誰か人がいるように思える。

「まぁ・・・?」

そこには、人間の姿のミーティアが見えた。

「ひ、 姫!?どうして・・・」

「ミーティア、ずっとお星様にお願いしてたんです。夢でもいいからとお話したいと・・・。きっとそのお願いが叶ったんだわ!」

ミーテ ィアは胸の前で手を組み、にっこりと笑ってそう言った。

「ああ・・・でもこうしてゆっくりと話せて、私幸せだわ」

ミーティアは少し頬を赤らめているような気が、には激しく感じた。

 

「また絶対に泉に連れていってくださいね? 姫からの命令ですっ」

「わ、わかりました・・・!」

人差し指をの前に突きだしたミーティア姫は、口元を緩めてそう言う。

 

「あと・・・あんまり女性の人と、仲良くしないで下さいね」

「・・・え・・・・・・?」

はミーティアの以外な言葉に目を剥いた。

「だって何だかミーティアお馬さんになってから、のことがすごく心配に なっちゃって・・・。ほら、お城にはと同じ年頃の女の人っていなかったでしょ?だから・・・の傍にいつもいたのはミーティアだったから・・・」

「・・・・・・」

はミーティアの話を黙って聞いていた。
以外だった。ミーティアがこんなに、自分のことを心配していてくれていただなんて。

 

「・・・大丈夫ですよ、姫」

はミーティアを安心させるように、少し笑った。ミーティアは不安そうだった顔を明るくさせて、

「また会いましょうね」

と、そう言って夢の中から消えていった。
全く、喜怒哀楽の激しい人だ・・・。

僕が8歳の時に城に拾われた時も、そうだったな。はそんな昔の思い出を、感じていたのだった。

 

 

 

「ぶっ・・・くくっ・・・。こいつ、さっきから誰と話してんだ・・・?」

の寝言で目を覚ましたククールは、の会話口調の寝言を聞いて笑っているのだった。

 

 

 

 

 

次の日。

「えーっと・・・このへんかしら?」

舵を回すゼシカがそう呟いた。
昨日キャプテン・クロウから手に入れた光の海図を世界地図にかざし、そこに示された場所へと船で向かっていた。海図の指す場所は、南にある大陸のすぐ横。そこに×マークが赤でつけられていた。

 

「ここに何があるんでがすかね?」

不思議そうな顔でそう言うヤンガス。いやそれがわからんから今向かってるんだよね。

 

「・・・お?」

何かに気づいたような声を洩らしたククールに、一同は目を向ける。

 

「あ、印がついてた場所になんかある」

エイトがそう言う。確かに印のついていた場所には岩山のようなものが4つ、四角を描くように並んでいた。そのまま船をゼシカは進めていく。そして4つの岩の中心に入った瞬間、目映い光がそれぞれの岩から空に向かって真上に放たれた。

 

 

「「「「「 わぁー!! 」」」」 」

誰もがそう叫んだ。トロデ王とミーティア姫は目を真ん丸くしている。光はそのままひとつになり、そしてすぐ横にあった隔絶された大地へと突き進んでいく。大陸の壁に光がぶち当たると、光は止まった。光が進んでいった道が、海の上で輝いている。

 

 

 

 

「えっ・・・きゃあっ!」

舵を動かしていないのに、船が勝手に動く。それにびっくりしたゼシカは舵から手を離した。

 

「やだ 、船が勝手に・・・!」

ゼシカのその言葉に、みんな慌てふためく。一番慌てているのはトロデ王だ。

 

「な、なんじゃ!何が起こってるんじゃ!?」

「や、やばいんじゃない!?このままじゃあの大陸にぶつかっちゃうよ・・・!」

がそう言うと、みんなの顔が真っ青になる。

 

「うそォォォ!そんな・・・俺まだ20年とちょっとしか生きてねぇのに!」

「今はそんなこと言ってる場合じゃないって!!僕なんかまだ20年も生きてないし!!」

ククールが発狂している中、は必死に舵を回しながらククールにツッコむ。でも、船は海の上の輝く道に沿って、勝手に船が進んでいく。の運転も利かない。

 

「ウソォォォ!」

「だからククール、もういいってば!」

「だってオメッ・・・、俺たち人生まだまだこれから・・・ウソォォォ!!!」

「るっせーつってんだろ!!」

ゼシカの飛び蹴りがククールの顔面にクリーンヒットした。いつものことなので、もう誰も心配しない。というか最近ゼシカとククールのキャラがかなりすごいことになってきてると思うんだけど大丈夫かな。

 

 

もう大陸までは後少し。このままじゃ・・・船もろとも死んでしまう。

 

「ウソォォォ!!」

まだ嘆いているククール。舵を回しても動かない船。大陸の日陰に入り、もう大陸は目前。

 

 

ぶつかる・・・!!

「ひゃ・・・っ」

思わずそんな声が出て、は目を瞑った。それはゼシカやヤンガスもだった。

 

 

 

「・・・あ、れ? 」

時間がしばらくたって、みんなは固く閉じていた瞼をゆっくり開ける。

 

「は・・・ハワイ?」

がポツリと呟いた。

暑くて眩しい日差し、浜辺に止まる自分たちの船、砂漠のような土だらけの大地、ところどころに緑がいっぱい。木もヤシの木のようなものばかり。

 

「どこだここ?南国みてぇだな」

「暑い・・・それにしても大陸の崖を乗り越えてここまで来たみたいでがすね」

ヤンガスがもう既に「お前サウナ入ってきたんかい」といいたくなるくらいの汗をかいている。

 

「んー・・・でもこの大陸の周りは崖で囲まれてるみたいだし、あそこの岩の中に入って正解だったんだね。とりあえずどこかに何か村とかあるみたいだから、探そう」

世界地図を見ながらそう言うに、みんなは頷いた。

 

 

「うぱーーーーー!!」

いきなり、背後から大きな何かの影が見えた。は叫ぶ。みんなが振り返ると、足元をそれはそれは大きな鳥が飛んでいる影が見える。しかし、上を見上げても鳥が飛んでいる姿はなかった。

 

「何コレ・・・なんか気持ち悪いわね。っていうか『うぱー』って何よ

「え・・・いや・・・驚いたときの声ですけど・・・」

「どんな叫び声だよ。普段の生活に『うぱー』なんて言ってるやつ聞いたことねぇよ」

「そんなことないよ!!驚いたら『うぱー』も口から出るよ誰だって!!」

歩きながらギャイギャイと言っている3人。そんな光景を笑いながら見るエイトとヤンガス。

 

姫様はあんまり女性と仲良くするなとか言っていたけど・・・やっぱりもゼシカも仲間だもん。
仲間の間にギクシャクした関係は、やっぱり嫌だ。

僕はこの5人でいるのが、好きだなぁ。

 

そう思いながら笑うを、ミーティアはトロデと馬車を引きながら見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここがレティシアかー」

大陸のほとんど真ん中と言ってもいいほどの村、レティシア。村名からして神鳥レティスを崇めていそうだ。

 

「村長さんに会えば何かわかるかしらね?」

「そうだな。それよりさーゼシカ、こういう田舎の女の子ってさ・・・なんかこう・・・あるよな・・・」

ククールが顎を擦りながら言うので、ゼシカは目を細めた。

「・・・何がよ」

「え・・・色気とか・・・?」

ブチ、とゼシカの中から何かがキレる音が、そこにいた仲間全てに聞こえた。ククールを除いて。

 

「えーだってほら、村の女の子の服とか何気にスカート短いし!ゼシカにも1着持ってきてもらおっか?」

ニコニコと言っているククールの背後で、血の気が引くたち3人。ゼシカは下を俯いていて顔が見えない。

 

「・・・あれ?ゼシ「そんなもんいらんわボケがァァァァァァァァ!!!!!」

ゼシカの手はククールの耳をつかんだ。

「ギャアアァァァァァァァ!!!」

そのままゼシカは背負い投げ。ククールは村の畑に突っ込んだ。

 

「オラァァァこの赤いのォォォ!!オラの畑に何してくれんだァァァ赤いのって呼ぶぞ!!」

「いやもう既に赤いのって呼んでたし!!ごめんオッサン! ゼシカー何すんだよー!!」

耳掴まれてたのに、何故か吐血しているククールをゼシカは見た。

 

「あんたってばほんとに・・・バカよね・・・。あきれた」

「ええ?ちょ・・・ごめんって・・・」

ゼシカはククールに背を向ける。ククールが慌てたようにゼシカに謝罪すると、ゼシカは振り向いた。

 

「じゃあもうそういう変なこと言わないって約束してくれる?」

ゼシカが笑顔でそういうと、ククールは力強く頷いた。

 

「もし今度したら、ただじゃおかないわよ」

「た、たとえば?」

おびえた表情で聞くククールに、ゼシカはにっこりと答えた。

「あれ・・・えっと・・・するわよ、なんかするわよ」

あ、罰の内容は決めてなかったんだ

後ろでククールの断末魔が聞こえる中、たちはそんな2人をほっぽって村長のもとへと向かった。

 

 

 

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あとがき
今回は(も)ネタまみれです。
今まで自分が持ってたネタを全面的に押し出しました。

話進めろ自分!

2009.08.04 UP