みんなの恋心


 

「ゲルダ!!」

ヤンガスはゲルダの悲鳴が聞こえた部屋へと乗り込んだ。
そこには、何もないただっ広い部屋の真ん中にゲルダは倒れ込んでいた。

「ゲ、ゲルダ!?」

ヤンガスは驚いた顔をすると、冷や汗をかきながらゲルダに駆け寄り、ゆっくり体を起こしてやった。

「や・・・ヤンガ・・・ス・・・」

「ゲルダ!?何があったんだ!?」

ゲルダは苦しそうな顔で、ヤンガスの名を呼んだ。ヤンガスの後を追ってきたたちは、二人の後ろ姿を黙って見つめていた。

 

「宝を・・・取ろうとし・・・たら・・・」

ゲルダが震える手で指差した先には、1つの大きな宝箱が置かれている。そしてその真ん前には、半透明な体で浮いている男。長い茶髪に黒ひげ、その風貌はどこから見ても海賊。あれはキャプテン・クロウの幽霊なのかもしれない。

 

「・・・の嬢ちゃん、ゲルダを頼むでがす」

「えっ・・・? あっ、うん・・・」

ヤンガスはゲルダを置いてゆっくりと立ち上がった。はひとまずゲルダに回復魔法を唱えると、優しく壁にもたれさせた。

「キャプテン・クロウ、とか言ったか?どんな理由であれ・・・」

ヤンガスはキャプテン・クロウに向かって歩き出す。クロウはただ黙って、まっすぐこちらを見据えている。

 

「どんな理由であれ・・・女を・・・ゲルダを傷つける奴は許さねぇ!!」

ヤンガスは俯いていた顔を上げてキッとクロウを睨むと、叫びながら自慢の武器・斤を構えクロウに飛びかかった。

が。

 

スカッ

 

「あれっ?」

クロウをすり抜け、ヤンガスはそのまま宝箱に足を躓かせ壁に激突した。

 

「えぇえ!!!!ヤンガスーー!!??」

「せっかく決まってたのに ちょ、おまっ」という顔でヤンガスのいる場所まで走った。
ヤンガスは目をぐるぐるさせながら仰向けに倒れている。
がベホイミをかけるとなんとか意識は取り戻した。

 

「・・・ヤンガス・・・あいつ・・・バカか・・・?」

ゲルダはそんなヤンガスのバカ丸出しの行動を全て見てしまっていた。しかし、そう呟いた後、口元を少しだけ緩ませた。

「・・・あいつ、小さい頃から正義感だけは強いんだから・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「この宝は誰にも渡さん。託すのを許すなら私よりも強い奴でなければな」

キャ プテン・クロウはたちにそう話した。その瞬間にクロウの体は、半透明でなく実体を持ったような体になった。

「さぁ・・・どこからでもかかってこい!」

クロウが先頭体制に入ったると、たちは一斉に攻撃に取りかかる。その光景を、ゲルダは体を壁に預けながら見つめている。

 

 

 

 

 

 

 

 

「くっ・・・」

何十分かが経ち、キャプテン・クロウもそろそろ力が尽きてきたようだった。

 

「ゼシカっゼシカっ」

「・・・ん?」

が小声でゼシカを呼ぶ。ゼシカはの近くまで寄り、耳を傾けた。

 

「ぱふぱふ」

「・・・え?」

「ぱふぱふ!」

何言ってんのこの娘。

 

「・・・ぱふぱふが何なのよ」

「やろう!クロウにやっちゃおう!ゼシカ、パフパフ女王になろう!ヤッフー!!

あ、変なスイッチ入っちゃったのね。そうなのね

変な言葉を叫ぶに、ゼシカの顔が激しくひきつった。
なぜなんだ なぜこの子はこんな子なんだァァァァァ!

 

「クロウも男だよ!そりゃーあんた乙女のあれに挟まれたら嬉しいでしょ幽霊でも!!」

「知らないわよ!てかリアルにやり方言わんでええわ!!・・・そんなにしたいならがやればいいじゃない」

同じ女なんだし、と言ったゼシカに、は目を点にしてゼシカを見た。

「な、何よ」

「あなた・・・私にそんな・・・挟めるほどのモノがおありとお思いなのか・・・」

真面目な顔でそう言ってくるに、ゼシカは一歩後ろへと退いた。

 

「私は「、ゼシカ危ない!!」

の叫ぶ声が聞こえた。そうだ今戦闘中だよ忘れてたよオオオ!な勢いで、振り返ると同時に、サイの柄の部分で自分を守った。キャプテン・クロウは既に剣をに 突き立てて後ろまで攻めていたのだった。しかしはそれを交わした 。

 

「ゼシカ、今!!」

「〜〜っ!もう!!わかったわよ!!!」

ゼシカは少し恥ずかしそうに顔を赤らめたが、クロウへと向かってスタンバイをした。ぱふぱふの。

 

 

・・・しばらく、その場に沈黙が流れた。ゼシカがぱふぱふを終えた瞬間、クロウは呆然と言った顔をする。

 

 

「・・・ほらやっぱり・・・。反応ないみたいよ」

「・・・え〜・・・?」

ゼシカがふぅー、とため息をついた、その瞬間だった。

 

ふぉぉぉぉ!!!!!

キャプテン・ クロウは奇声をあげながら、テンションがみるみる上がっていく!
キャプテン・クロウはスーパーハイテンションになった!

 

「キャパァァァ!!」

むしろテンションあげちゃったァァァ!!

がム●クの叫びのような顔をする横で、ゼシカが目を見開いてクロウを見ながらそう叫んだ。クロウは回りがピンク色のオーラに包まれている。あれは本当にスーパーハイテンションだよね?ゼシカへの海賊ロイヤルフェロモンとかじゃないよね?

あの状態で全体攻撃なんかでもされたら、ひとたまりもないでしょうね、ええそうでしょうねぇ。

 

「ヤンガス!とどめだ!とどめ刺せ!」

「えぇ!?」

ククールのその声にヤンガスは驚いたようにククールを見る。

 

「ゲルダを傷つけた奴は、どんな理由であれ許さないんだろ?」

にっ、と笑ったククールはそう言った。

ヤンガスは少し動きが止まっていたが、決心したように頷いた。

 

 

「・・・キャプテン・ クロウ!」

ヤンガスはスーパーハイテンション状態のクロウに立ち向かった。クロウはヤンガスに気づき、目線を変える。

 

「今度こそ・・・くたばってもらうでがす !」

そう言うと、ヤンガスは斤で地面に弧を描いた。描いた線はいきなり輝きだしし、ヤンガスの全体的にふっくらした顔が、そのまばゆい光に照らされる。

 

「 蒼 天 魔 斬 !  ! ! ! 」

ヤンガスは斤で一気に光る弧を叩きつけた。そこからは大きな骸骨の幻影が現れ、骸骨は迷うことなくクロウへと向かって飛びかかっていく。クロウは大きな声をあげると、あっという間に、片膝をついて降参した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・宝はお前たちにくれてやろう」

キャプテン・クロウは宝を渡すのを認めてくれた。

「最初っからそうやって渡してくれりゃあいいのよ、そうやって」

「いひゃ、いひゃい、何これなんの拷問?

はクロウの頬を思いっきり横に伸ばしてやった。クロウって意外とおちゃめさんだね。

 

「・・・ん?これが海図?」

は宝箱を開け、中に入っている紙を手にとって見た。

「それを地図に重ねて見れば道が開けるだろう。私は残念ながら生きている間に世界地図か手に入れられなかったのだ・・・。しかしお主たちなら、その海図も使えるだろう」

クロウは少し悲しそうな顔をしたが、すぐにキリッとした決まった顔になった。

 

「さて、これでこの洞窟に守る宝もない。私はみんなの待つ場所へと行くとしよう」

そうクロウが言うと、クロウの体はだんだんと輝きながら薄くなっていく。

 

「・・・これからも旅、がんばれよ」

クロウはそう言い残して、天へと昇って行った。そして途中で聞こえた声は。

おなごのぱふぱふ最高だったぞぉーーー・・・・・・・

ゼシカの顔はとても嫌そうだった。

 

 

 

 

 

 

 

「なんだい?そんな紙切れなんかのために、あたしら競争してたわけ?」

すっかり元気になったゲルダは、が持っていた海図を取り上げて見た。海図は、古ぼけた紙に何やら赤い印が入っただけ。

「・・・ふん、くだらない。こんなもののためにわざわざ船走らせて、燃えてたあたしがバカだったよ」

ゲルダは海図をに返すと、諦めたように踵を返した。

 

「ま、途中で1万ゴールドは手に入ったし。今回はそれでいいや」

「い、いいいいちまんぅう!?お前そんな金どこで・・・!!」

ヤンガスが目を丸くし てゲルダを見ると、ゲルダはにやっと笑って横目でヤンガスを見た。

 

「・・・ヤンガス」

帰ろうとしたゲルダは、部屋の出口へと向かう途中にいたヤンガスに、小さな声で言った。

 

「あんた、強くなったね。ちょっと見直したよ」と。

 

 

「あばよ。たまにはあたしの家にも来てくれよ?」

部屋の入り口で後ろ手にたちに手を振ると、ゲルダの姿は見えなくなった。

 

「なになに、なんて言われたのー?」

興味深々と言った顔でがヤンガスを小突くが、ヤンガスはしばらく顔を真っ赤にしていて、誰の言葉も耳に入っていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわっ・・・もうすっかり夜だなー・・・」

船で洞窟をでると、外は真っ暗。星空がたちを出迎えてくれた。ヤンガスは未だボーッとして、トロデ王はちょっ かいを出しても反応を示さないヤンガスに少しつまらなさそう。

ゼシカとククールは何かを話している。どうせククールが「星が綺麗だね、でも君の方が綺麗だよハニー」とか言って口説いているのだろう。気持ち悪ッッ

 

、大丈夫?寒くない?」

「あ、。大丈夫だよ」

海を見つめていたに、が心配して来てくれた。なんだかこうやって二人だけで会話するのは久しぶりかもしれない。

 

「星、綺麗だねー」

「うん・・・」

がせっかく話しかけてくれてるのに、は何だか恥ずかしくての顔が見れなかった。満天の星空の下で穏やかに笑うのその横顔が、愛しくて、、、

 

「・・・?僕の顔なんかついてる?」

「・・・え?」

ずっとの顔を見すぎてしまっていたせいか、が心配したようにの顔を覗き込んだ。
キャパァァその子犬のような目は反則だァァお前!

 

「なんでもないです!ないで酢昆布 !

「えっ・・・酢昆布!?・・・ぶ・・・ぶんこす!?

「な、なんで今反対から呼んだ感じなんですか

「し、しりとりなのかと思って・・・!」

だからって反対に読むなよ!と思わず突っ込みたくなった。

・・・なんだか私が言うのもなんだけど、って・・・変、というよりも、面白い。

 

「・・・ふふっ」

「な、何が面白いの・・・!?」

「うーん、ぶんこす?」

「それはもう言うなぁ!!」

は恥ずかしそうに手をブンブン振って、二人は笑いあっていた。そんな二人を嬉しそうに見つめるククールとゼシカ。木の枝でヤンガスをつつくトロデ王、上の空のヤンガス。

 

そして・・・悲しそうな表情をした、馬の姿のミーティア姫。
ミーティアは流れ星に願った。

 

「今日は、とお話したい」と。

 

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あとがき
約1ヶ月ぶりぶりの更新だァァ!!
今回はみんなの恋の気持ちを押し出してみましたー。
やっぱりヤンゲル大好きだー!!

2009.07.23 UP