翼かな 翼じゃないよ クロウだよ



「おや?これはこれは・・・ドルマゲスを追う旅にはもう飽きてしまわれたのですか?」

出た・・・2階から目薬男。あれ、違う、イヤミ男だったね。ククールの顔が露骨に嫌そう。

たちがオークニスを出てサヴェッラ大聖堂まで船を走らせた。何日かの船旅が続いて気持ちが悪くなったと同時に、大聖堂にはゼシカも、たぶんククールも大大大っ嫌いなマルチェロさんのご登場。法皇様のいる館まで行ける、大聖堂の奥にある昇降板からマルチェロは来た。

もうドルマゲスは倒したのーーーーっ!!

「おっと、私は次の場所に行かなければなりませんのでこれで失礼します。あなたたちとは違って院長になってから忙しいのでね・・・」

マルチェロは嫌味な笑顔を浮かべると、の横をすり抜けていった。ついでにの後ろにいたには満面の笑みで会釈すると、手を振って去っていった。

 

「なんっ・・・なのよあの態度ーーー!!!」

「まじありえねェェェェェェ!!に色目使いやがって!!」

ゼシカとククールが発狂している。
とヤンガスはそんな2人を見て苦笑い状態。

「マルチェロさん、明らかににだけ態度違ったね」

が何も考えてなさそうな声でハハ、と笑うとゼシカは険しい表情になった。

「何うつつ抜かしてんのよ!!これは危機っ!危機なのよ!!」

「?何が?」

何のことか全くわかっていないに、熱くなっていたゼシカは肩を落とした。

 

「全くしょうがないわね・・・とにかく早く法皇さまの所に行きましょ」

ゼシカはすっかりご立腹の状態で昇降板に乗った。それに続いてやヤンガスも続々と乗っていく。

「・・・あれ?」

が首を傾げた。動かない。昇降板が・・・動かねェェェェ!!

「さっきマルチェロさんスイスイスイダラダッダスラスラスイスイスイ〜と乗ってたじゃん!」

「いや、そんな風には乗ってなかったと思うけどね」

ゼシカがを見る。怖いよ、あの人の目怖い!殺されそう!

「・・・あ、これ重量オーバーなんじゃない?・・・ちょっとヤンガス、降りてよ」

「その醜いものを見るような目でアッシを見ないでくだせぇよ」

ヤンガスはゼシカにそう言われ、膨れっ面になりながら昇降板から降りる。が、やっぱり動かない。

 

「おかしいなぁ・・・」

「それは法皇様に呼ばれた方しか動かない特殊な仕組みなんだよ」

そう言ったのは、昇降板のある建物を守る兵士だった。
それを先に言えよキサマァァァァ!!

「そっか・・・じゃあ普通に表向いてはいけないってことね」

「面倒でがすねぇ・・・どっかで鳥の力でも借りれたらいいんでがすけど」

そんなのムリでがすな、と一人で解釈したヤンガスは諦める顔をした。
みんなは目を瞑って何か方法がないかを考える。
しばらくしても頭にアイデアが浮かんでこない
たちは、とりあえずサヴェッラの中を右往左往した。

 

 

「なぁなぁ、聞いたか?海賊のキャプテン・クロウの洞窟の話!」

「え?何それ?」

サヴェッラの中にある大きな長ーい階段の前に、若い男の人二人がそんな噂話をしていた。みんなが必死で考えている途中、はその話を横耳に聞いていた。

「どっかにあるらしいんだけどよ、キャプテン・クロウは全ての宝を集めるために色々旅をしてたらしいんだけどよ、生きている間にどうしても使い方のわからない宝があったらしくてよ。未だにその宝が洞窟の中で眠ってんだってさ」

「本当かよ!?うわー、やっぱ海賊ってかっけーよなー!俺も1回でいいからやってみてぇ!」

男2人はものすごく盛り上がっている。海賊の何がいいのか全く分からないは、二人の話を聞いて少しだけ呆れた。でも今の話は何かに使えるかもしれない・・・は今の話をメモした。

 

 

 

「・・・あ、そういえば・・・」

「なんかあったの?」

が何かを思い出したように声を洩らすと、が不思議そうな顔で見てくる。

 

「うん・・・ほら、だいぶ前にドルマゲスが逃げていった闇の遺跡があったでしょ?あそこにラプソーンとレティスの絵があったなぁって思って・・・。レティスは神鳥で、7人の賢者と一緒にラプソーンを封印したらしいし。ていうことは神鳥は人間に協力したなら・・・ラプソーンの復活を阻止する私たちに協力してくれるかもしれないじゃない?」

がそう言うと、みんなは関心したように頷いた。もうそんなことを覚えていないかと思ったが、みんなちゃんと覚えていた。

「・・・で、闇の遺跡って何でがしたっけ?」

・・・覚えてない人いたァァァァァーーーーーー!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

私たちは再び、雪国地方へと戻ってきていた。目的はメディお婆さんの家があった裏の遺跡。あそこの石碑には賢者のことがたくさん描いてあった。もしかしたらレティスのことについても何かあるかもしれない。すくなくとも、レティスを崇めている場所の手がかりがあればいいのだけれど。

 

「あ、墓石・・・もうある」

ついでにたちはメディお婆さんのお墓にお参りした。バフは相変わらずメディお婆さんのお墓の前にずっと座っている。体はすごく痩せこけていて、可哀相だった。

 

「さて・・・と、石碑の中から手がかり探すかー」

「本当にあんのか?これでなかったら俺嫌だぞ、こんな寒い場所に2回も来ちまったんだからな」

「だーいじょうぶだよ。これでも私、昔は『カンするどっ、ちゃん』って・・・呼ばれてたらいいのにな〜」

それただの願望じゃねぇーか。あとその称号アホらしっ

いや本当に呼ばれて・・・たらいいのにな〜・・・え?そろそろ黙れって?

 

 

「あ!あったわ!やっぱりのカンはすごかったのね!」

ゼシカが手がかりの載っている石碑を見つけそう言った。たちはゼシカに駆け寄って、早速その石碑を見てみる。

 

「隔絶された大地に・・・神鳥を崇める村・・・・・・か」

石碑にはそんなことが描かれていた。

「辿り着くには・・・海図が必須・・・・・・海図?」

が何のことかよくわからないといった顔で首を傾げる。途端に、アルシェの脳裏に先程の若い男の人二人の噂話が横切った。

 

「さっき・・・キャプテン・クロウっていう海賊の洞窟の噂話をサヴェッラで聞いたんだけど・・・。その海賊でさえ使い方の分からない宝があったんだって。もしかしたらそれじゃない?その海図って」

「なんだよ、またカンか?」

「うん。なんせ私は昔『カンする「もういいぞソレ」

ククールに話してる途中に言われ、は悔しがった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「キャプテン・クロウの話ならアッシがまだ山賊だったときに聞いたことあるでがすよ」

船に揺られながら、ヤンガスはにそう言う。

「そうなんだ」

「はい。アッシもあの時はその洞窟にも入ってみたかったんでがすがねぇ・・・なんせまだまだ未熟だったもんで・・・。それに船すら持っていなかったアッシには到底無理な話なんでがすがね」

ゲースゲスゲスと笑うヤンガスを見て、も笑う。

「なんかあの二人って仲良いのか悪いのかよく分かんないわね」

「まああれが兄弟仁義ってやつだよ。血なんか繋がってなくっても・・・」

「それ、ちょっとだけ羨ましいなー」

ククールが遠い目で2人を見つめている。
ちょっと言ってはいけないことを言ってしまったと思った
は、思わず口を閉じた。

 

 

 

 

 

 

「うおわあぁぁ!!こんなところに洞窟が・・・っ!!」

「これがキャプテン・クロウの洞窟かな?」

トラペッタ地方の橋の下に、大きな空洞がある。人目につかない橋の下・・・もしかしたらそうかもしれない。
にしてもこの世界は考え方が安易だな。リーザス像の塔の上に開ける扉の方式といい。

 

 

 

「じゃあ早速乗り込むでがすよー♪」

ヤンガスはノリノリで、メディお婆さんからもらった最後の鍵を使って扉を開ける。その時。
ものすごい強風が吹いた。明らかに人工的な・・・。同時に轟音が近づいてくる。

 

 

 

「これは・・・もしや・・・」

ヤンガスは恐る恐る振り返った。
そう。そこにいたのは・・・ヤンガスの悪友、そして女にして大盗賊のゲルダだった。

ゲルダは船から降りるとヤンガスの前へと立ちはだかった。

「あーれー?ヤンガスじゃないか。こんなところで奇遇だねぇ」

「・・・出来れば会いたくなかったけどな」

ヤンガスがため息をつくと、ゲルダはムッとした表情でヤンガスにつっかかる。

「あー?つれないねー、相変わらずヤンガスはさ・・・。ま、いいや。どうせあんたたちもこの洞窟の宝が目当てだろ?もちろん私もさ。・・・私が先に行かせてもらうわよ!」

そう言うとゲルダは駆け足で、開けたばかりの洞窟の扉を退けて中へと入っていった。

 

「待てゲルダ!お前一人なんかじゃ魔物に襲われてあぶな・・・」

「あたしはあんたみたいに巨体じゃないんだよ。ドシドシ歩くような女じゃないし、魔物に一切気づかれない大得意の忍び足があるんだから、心配される筋合いないよ!」

そう言うとゲルダは暗闇の中に消えていった。

「あーあ・・・行っちゃった・・・」

「もー!!ヤンガスがボーッとしてるせいでゲルダさんに先越されちゃったじゃないのよっ!」

「え!?アッシのせいなんでがすか!?」

ゼシカが悔しそうに歯を食いしばってヤンガスを見ると、ヤンガスは額に冷や汗を浮かべていた。

 

 

 

「うー・・・ジメジメしてて暑いーしかも何か仕掛け多くてうーざーいー」

「ごちゃごちゃ言わないの。がここにあるかもしれないって言ったんでしょ」

それはそうだけど、というに、は笑う。今日は何この人、なんかずっと笑ってない?

 

この洞窟は、仕掛けがたくさんあった。きっと誰かが乗り込んできたときのための対処なのだろう。
ゲルダとは洞窟内で何度も出会った。盗賊のゲルダでさえこの洞窟の仕掛けには苦戦していた。

 

 

 

「むおぉおおおお!!」

ヤンガスが発狂した。

 

井戸の中にあった水を抜くと、どんな仕掛けだったのかはわからないが井戸から水が抜けた。井戸の一番下には奥へと続く扉がある。はしごが現れ、ヤンガスの発狂の原因はその感動から。また先を越され、ゲルダはたちの隙を見てはしごを降りていった。

 

「じゃあ俺たちも行こうぜ。ところで誰からいく?このはしご、なんかすぐ壊れそうなんだけど」

ククールがはしごを手で触りながらため息をつく。

「まずはヤンガスにしましょうよ。それで壊れたらヤンガスが私たちを受け止めて!!」

ゼシカがきらきらと輝く瞳でヤンガスを見つめると、ヤンガスは後ろへ退いた。

「何言ってるでがすか!ていうか何でアッシこのパーティーの中にいるとすごい屈辱的な気分になるでがすか!?」

「お前がそんな体してっからだろ。ほら、ヤンガス行け」

無理矢理ヤンガスはククールに押され、渋々はしごを降りていった。
無事、壊れることはなかった。

 

「じゃあ次は体重的に俺だな」

そう言ってククールは慎重に降りていく。ヤンガスはハラハラしながら上を見上げている。井戸の範囲は狭いので、落ちたらヤンガスが危ない。つぶされるかも

「じゃあ次は僕だね」

そう言ってが降りようとしたとき、の腕を掴んだ。

「・・・?」

「いや、絶対と私だったら私のほうが体重、重いと思うんだけど・・・!!!

は、はしごが壊れるからとかではなく本気でそう思っていた。かなりのマイナス思考である。

「そんなわけないって。どう考えてものほうが軽いでしょ」

も本気で思っていた。は見かけはものすごい細いが、実は筋肉がついているので意外に重い。

 

「大丈夫かなぁ・・・はしご壊れたり落ちたりしてもみんな私のこと助けてくれるかな・・・」

「じゃ、行くわね」

え!?

ゼシカのそんな声が聞こえ、は目を丸くしてはしごのある方向を見ると、ゼシカは既にはしごを降りていた。

「なななな何やっちゃってんのゼシカァァァァァ!!」

「大丈夫よ。私のほうが重いでしょ?」

そういいながらもゼシカはどんどん降りていき、底に足をつけた。

 

「さ、最後だよ!頑張って!!」

下からの励ましてくる声が聞こえてくる。

怖い怖い怖い怖い怖いよォォォ!!!

 

「大丈夫でがすって!!はしごは はしごでも木のはしごだから全然大丈夫!」

「いや木のはしごだからさっきから皆怖がってんだよね。何が大丈夫なの?あんたが大丈夫?」

が冷めた目でヤンガスを見るが、ここは降りていくしかない。

 

「み、みんな・・・私が落ちたらその後はよろしくね・・・私の足とかなんか濡れて滴っててもそれは私の汗だからね」

「何をよろしくされたんだよ俺達。何、俺らあんたのヘルパーさん? ていうかそれ、汗という名の尿だろ。お前それ漏らすかもしんねぇってことか?

ククールはそういいながらも、が落ちたときのために上を見上げて見守っている。

 

「よっと・・・きゃぁっ!?」

半分ほどまで差し掛かったときだろうか。はしごはミシッと音が鳴った。その瞬間の足場が崩れ落ち、はバランスを崩した。

来た。とうとうこのときが。
私・・・死ぬんだね。

は不思議と、落ちる瞬間がスローモーションのように感じた。

 

「「「「 どっせい!! 」」」」

「うおぅうう!?何今の掛け声!?」

ぽすっ、と下で受け止められたとき、以外の4人からそんな声が聞こえた。

 

「ごめんやっぱり重かったんだよね!!『どっせい』とか言っちゃうくらい重かったんだよね・・・!」

「いやいや今のはタイミング合わせる掛け声だからそんなんじゃないよー」

朗らかに笑うもほっと胸を撫で下ろした。というかやっぱりずっと笑ってるよこの人。

 

 

「さてとーそれじゃあ早速奥に「きゃあああああぁぁぁぁぁぁ!!」

甲高い女の人の叫び声が聞こえた。

 

「この声・・・!!ゲルダ!!」

「あ、ちょっとヤンガス!?」

ヤンガスは悲鳴を聞くと同時に、扉を開けて奥へと消えていった。ゼシカが不思議そうな顔で、目を点にして見ていた。

 

「・・・あいつにも青い春到来か?」

ククールは微笑んでいた。

 

 

 

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あとがき
前回がとてもシリアスだっただけに、今回はギャグ多すぎてたぶん皆疲れました(え
疲れましたよね?(((

個人的に夢主ちゃんのはしご降りるシーンが一番好きです。(笑)

タイトルの意味は、キャプテンクロウといえばあの漫画「キャプテン翼」を思い出したもので・・・。
ちょっと川柳風。

2009.06.15 UP