マドンナ救出大作戦
「はぁ・・・まじでこの塔、雲の上まである勢いだな・・・」
ライドンの塔に登り始めて、もう何時間経ったのだろう。 ライドンの息子が言うとおり塔はからくりだらけ。あっちの石像を動かしてはシーソーがごっとん傾き、こっちの石像を動かせば
「三人寄れば文殊の知恵って言うけど・・・。とククールと私じゃ何にもならないよね。ヤンガスでも駄目。 ヤンガスの突っ込みはに見事に交わされ、ヤンガスはいじけ始めた。 ・・・というかこの塔おっさん一人でつくったのか・・・。だとしたらスゲエよ。尊敬しちゃうよ。第一シーソーで移動する塔な
「うわー!高い!もうこんなに登ってきたんだね、私たち!」
疲れた足で、は外が見える塔の隙間から景色を眺めた。 「ねぇねぇ!ほら、キレイだよー!・・・・・・?」 手を招くに、は勢いよく首を振って噛みかみながらも断った。
「・・・もしかして・・・、高いとこ、苦手・・・とか?なの?」 尻餅をついてあとずさるに、は直感でが高所恐怖症だということがわかった。 「こんなに綺麗なのに、もったいないなぁ・・・。でもしょうがないもんね」
は笑い、外を見るのを止めてへと駆け寄る。その時。
「ふん!物好きな奴等め」
声が上の階から聞こえてきた。この塔は中心が吹き抜けになっているので、大声をだせばどこの階でも聞こえる。 あの人がライドンさんだろうか。それなら今、クラン・スピネルのある場所を聞いてしまえば早いと思い、
「あーぁ、結局上まで登らなきゃでがすね」
が必死に仲間たちを励まし、未だ高いところが怖くて嘆いているをなんとか立たせ、
「・・・何だ、もう登ってきやがったのか」
最上階まで苦労しながらも登ってきたたちは、ライドンに話しかけた。 「・・・まあ最後まで登って来たというのはすごいな!気に入ったぞ!わっはっは!」
と高らかに笑うライドンおじさん。さっきの態度とは全く違う。何このツンデレじいちゃん。
「何か用なのか?」 思い切り間違ったに正解を教えたククールは、ひとつ咳払いをした。
「僕たち、クラン・スピネルという宝石を探してるんです。
ひとつひとつ要点を話していくに、ライドンは作業する手を止め顎を擦っている。 「クラン・スピネルか・・・。聞いたことはあるがドコにあるかまでは知らん」
4人は一気にショックを受けた。ここまで苦労して登ってきた意味がないではないか、と。
「いや、私の先祖の方にその宝石が関わっとるのは知っておるんだがな・・・。そういえば自身最高の作り上げた石像の瞳にはめ
はライドンの知っている情報で、クラン・スピネルのある場所がすぐに分かった。 「何だよお前ら、そんな顔するってことは何かわかったのか?」
何かを思い出したかのような顔をしているやに、ククールは首を傾げた。 「そういやあの時ククールはまだ仲間じゃなかったもんね。ククールが旅に加わる前に、一回そのクラン・スピネルのある場所に
がそう言うとヤンガスが頭に疑問を浮かべた。
「・・・アッシらそんなとこ行きやしたっけ?」
驚きまくるに、ヤンガスはひたすら首を傾げた。 「・・・全く覚えてないでがすね。アッシそろそろ天に召されるころが来たかもでげす」
ククールはツッコんだ後ため息をつくと、ククールがリーザス村へとルーラした。
「?・・・これどうやったら取れるのかな・・・」
がリーザス像の前に立ちそう呟いた。
確かにクラン・スピネルは像の瞳に嵌め込まれていたが、きっちりと嵌めてありすぎて手では取れそうにない。
「メラとか呪文で取れないでがすかね?」
頭を抱えるに、村の人に聞いてみようと言ったの案でとりあえず塔を降りようとした。
「お・・・待ちく・・・ださ・・・・・・」
声が聞こえた気がしたは、像のある間から階段で降りようとしていた体の向きを慌てて像の方へと向けた。 「お待ちください旅の方・・・。私はリーザス・クランバートル。暗黒神を地の底へと葬った賢者の一人の末裔です」
リーザス像から浮き上がったきれいな女の人・・・リーザス・クランバートルが、たちにそう言う。
「私が生まれたクランバートル家は伝説の七賢者の血を受け継ぐ由緒正しき家系でした。しかしある代でクランバートル家は賢者 リーザスの話を聞きながら頭の中で考えていく4人。リーザスは話を続けた。
そういうとリーザスは消えてしまった。
しかし、リーザス像の瞳からクラン・スピネルは地へと落ちた。
「あ・・・」
声を洩らしたはリーザス像の前に駆け寄り、落ちた2つの赤い宝石、クラン・スピネルを拾い上げた。
「・・・ありがとうございます、リーザスさん」
がリーザス像に向かって礼をした。なんとなく、リーザス像が少しだけ微笑んだ気がした。
「あーあ。リーザスさんがあんなに綺麗な人だって分かってたら花束のひとつでも持ってこれたのになー」
呆れた顔で皆はククールを見ていた。
早速リブルアーチのハワードの元まで急いだたちが見たものは、とてつもなく気分を悪くするものだった。 「この クズめがっ!!お前のようなどこの馬のホネとも知れん旅人を雇い入れたわしの恩を きさまは仇で返すつもりか!!」 ハワード邸の庭では、大きな犬用のエサ入れを持ったチェルスと仁王立ちで向かい合うハワード、その横で唸るレオパルド。 「な・・・何があったんだろ・・・?」 が心配そうな目でチェルスとハワードを交互に見つめる。 レオパルドはチェルスに向かって唸り、牙をむいている。 「おお、そうかそうか。お前も気分が悪いか。ムリもないのう。毒をもられたばかりかあのような愚か者に気安く呼び捨てにされたのではなあ・・・」 上から目線(いや、上なんだけど)でハワードは腕を組んでチェルスを見下げる。
「信じてください、ハワードさま!私は断じてレオパルド・・・さまのご飯に毒などもっておりません!」 テメー何様だーーハワード様だ!!とは叫ぼうとしたがククールに止められた。 庭に視線を戻すと、チェルスは悲しそうな顔をしながら地面にエサ入れを置き、這い蹲ってエサを食べ始めた。 そしてたちがいたことに気づいたハワードは、こちらへと寄ってきた。 「クラン・スピネルを取ってきたんじゃな?ワシは先に部屋へ行って用意をしてくるから、ワシの部屋に来るんだぞ」 そう言ってハワードは家の中へと入って行った。
「チェルスさん!!大丈夫ですか!?」 はハワードが屋敷の中へと入るのと同時に、門扉を開けて慌ててチェルスへと駆け寄った。 「私は大丈夫です。ハワード様の虫の居所が悪かったのに僕がヘマしちゃって・・・」 へへへ、と恥ずかしそうに笑っているチェルスに、たちは心配そうな顔をした。 「そんな顔しないでください、本当に僕は大丈夫ですから。だって僕・・・ハワード様もこの屋敷も大好きだから」 君、大丈夫?ほんとにマゾって呼んでいい?とその場にいた一同は思った。
屋敷へと入りハワードの部屋へ向かっていたたち。 「いやーそれにしてもハワードさんがそんなにサドという外道を突き進んでたなんてね」 が関心したように言った。いつもなら誰かが突っ込むところだが、皆そう思っていたので誰も突っ込まなかった。
「おお、来たか。ではクラン・スピネルをもらおうか。どうやって手に入れたかなどはどうでもいいぞ。何しろワシは結果だけを重視する男だからな」 ハワードは手を差し出しながら笑うハワードに、ちったぁ過程を聞けよというヤンガスの顔。
「じゃあ褒美に屋敷の衛兵を頼むぞ。早速仕事だ」 そう言ったハワードが、自室の机の横の壁に呪文か何かを唱えると、隠し部屋が現れた。 「ここに世界結界全集って本があるんじゃよ。それを取ってきてくれ」
「全く人使いの荒いおっさんでがすよ。何が結果だけを重視する男なんでがす」 気だっているヤンガスをなだめたは、本棚の本の表紙をひとつずつ見ていく。 本棚にちゃんと収納されていないものもあり、探すのに大変苦労した。
「んじゃー後はあのおっさんに渡すだけだな。これでゼシカが来れば・・・どうなるんだ?」 男3人がため息をつく中、は考えていた。
「・・・あれ?なんかやけに上が騒がしいね」 本棚たちは階段を下りたところにあったため、上からドンドンと走る音が聞こえる。 「貴様ら遅いんじゃ!何を本1つ探すのに戸惑っておるんじゃ!?あの杖女が来たのだ!!」 と言ったのはヤンガスだった。衛兵が反論するなと言ったハワードは、の持っていた世界結界全集を奪い取った。 「とにかくワシは急いで結界をつくる!お前らはあの杖女を食い止めておけ!!」 そう言って部屋にある大きな釜の横にあったはしごに登り、ハワードは結界をつくりはじめた。
「杖女ってゼシカだよね!?・・・戦うの?」 舌打ちしながらそう言ったククールに、の顔色はどんどんと悪くなっていく一方だった。
外に出ると既に衛兵たちはゼシカにやられ、倒れていた。 急いで庭へと走ると、ゼシカは庭にある噴水のハワードの石像の上に載っていた。うわーいすごいバランス力★
「準備を万端にしておけってあれほど言ったのにえらく無防備なのね・・・」 ゼシカは顔に浮き上がった血管をピクピクと脈打たせながら、チェルスと睨み合っている。 「貴様・・・!ハワード様には指一本触れさせない!!」 そう言うとゼシカは笑い出した。 「何がおかしいんだ!!」 ゼシカは再びチェルスを睨み、石像の上から降り立った。 「・・・チェルス。あなたのことよ」 杖でチェルスはゼシカに指され、チェルスは驚いた顔をした。 「悲しいわね・・・。あなたの命を守るべきはずの男がその使命をまるで覚えてないなんて・・・」 ゼシカはチェルスへと近づく。チェルスは後ずさり、ゼシカを見る。その額には大量の汗が浮かんでいた。
「ゼシカ!!!!!」 その時、が叫んでチェルスを庇ってゼシカの前へと飛び出た。 「あら、もう来たの?早かったわね」 ゼシカを説得しようとしているを、ゼシカはうざったそうな目で見ている。 「・・・どいてくれない?邪魔よ」 首を大きく振って、チェルスへの殺意に満ち溢れたゼシカの肩に手を置いた。 「離しなさい!!」 ゼシカは肩におかれたの手を持つと、メラゾーマを唱えた。 「!!」 が焦りながらの元へ駆け寄ろうとしたが、火の玉が消えても見えたのはの立っている姿。 「なっ・・・」 ゼシカが何で死んでいないんだという顔でを見た。
「・・・ゼシカ・・・お願い・・・」 呪われていたゼシカはの手を強く握り、その苦痛には顔を歪ませていた。 「こんなのだめだよ・・・。ゼシカはいつも優しかったじゃない・・・!」 黙れと言おうとした灰色の肌のゼシカの顔が、一瞬、ほんの一瞬だけいつものゼシカに戻った。 「た・・・すけて・・・兄さん・・・・・・。・・・」 助けを訴え、すぐに呪われている姿に戻ったゼシカは、再びの手を握った。 「・・・イオナズン!!!!」 は何も迷うことなく、呪われしゼシカの手を無理やり外し呪文を唱えた。
「・・・。みんな、ゼシカを・・・呪われたゼシカをやっつけよう」 のその言葉に、全員がうなずいた。
「・・・黙れ!!この私に勝つものなどいる訳がないのよ!!この愚かな人間が!」 ゼシカは杖を掲げて空高く飛んだ、とその時。
「ワシの命を狙う不届き者め!!わしの超強力な結界を食らえ!!」 屋敷から出てきたハワードが、結界を張った。リブルアーチの町を包む結界は、空へと飛んでいたゼシカにも届いた。 ゼシカの肌色はいつものように戻り、しかし気を失っているのかゼシカはそのまま地面へと強く体を打ち付けて倒れた。 「ゼシカ!」 が駆け寄ってベホマを唱える。杖女にとどめを刺せというハワードを無視し、急いで宿屋へとゼシカを運んだ。
「オレはひいばあさまからこんな話を聞いたことがある。西の世界から嫁いで来たひいばあさまのそのまたひいばあさまは高名な賢者だったんだって」 「なに、賢者って?」 「・・・・・・ん?じつを言うとオレもよくわからないんだけどな。ただ その方は女性でありながら、剣術、魔術とも知り尽くしていて大変な能力の持ち主だったらしい」 「ふ〜ん・・・。あ、それじゃさ。きっとサーベルト兄さんはその人のチカラを受け継いでるのね。だから剣も魔法も両方得意じゃない!」 「そう都合よくいけばよかったんだが、残念ながらそうはいかなかったらしい。剣術こそみがけばまだ向上する余地があるのかもしれないがオレの魔法なんて、真に能力のある者から見れば子供だましだよ」 「そうかな?・・・どっちもうまくできない私から見れば兄さんの魔法、すごいなって思うんだけど?」 「いや、だからさ、オレはこう思ってるんだ。ご先祖様の魔法のチカラはオレではなくゼシカ、お前に受け継がれたんじゃないかってな。きっとお前には自分でも気づかない能力が眠っていてさ、いつかそのチカラが目覚める日が来ると思うんだ。オレは結構本気でその日が来るのを楽しみにしてるんだぜ?」
「兄さん・・・兄さん・・・兄さん・・・」 目を開けたら、の顔がドデンとあった。ゼシカはびっくりしてベッドの上で跳ね除けた。 「良かったああああああああああああああああああ!!!!ゼシカあああああああああああ!!」 ゼシカは頭を痛そうに抱えながら、起き上がって周りを見渡す。 「ねえみんな聞いて。私・・・杖にのっとられていたからわかるけど・・・」 そう言って、ゼシカはひとつずつ話し始めたのだった。
あとがき タイトルのマドンナってのはもちろんゼシカちゃんですよ。 2009.04.09 UP |