変わり果てた仲間
「・・・あ、悪ぃ。起こしちまったか?」 「・・・ううん・・・。大丈夫・・・」
既によりも先に起きていたククールはベッドの中で寝返りを打ち、 「・・・あれ?ヤンガスは・・・?」
「さぁな?俺が起きたときにはもうベッドにはいなかったけどな」
どうせ散歩にでも行ってんだろうとククールは言うと、寝転んだままへ体の方向を向けた。 「あのさ・・・お前ってのこと本当に好きだな」 「は!?」
いきなりククールにそんなことを言われ、は飛び上がってククールへと体を向ける。 「な、何で・・・!?」
「いや、だってドルマゲスにが殺されかけた時、お前相当キレてたぞ?」 「え?そうなの?」
「いや、覚えてないんかい」
なんとはドルマゲスに対してキレまくり、ドルマゲスを一撃で倒したことを覚えてなかったのだった。 「ほんっとに鈍感なんだなお前・・・」
「??」
はひたすら疑問を抱いたような顔でククールを見ている。
「・・・ま、ガキと思ってたけど、ちょっくら見直したぜ?」
「・・・なんか気に入らないけどありがとう・・・」
はベッドに寝転がりながら、顔をしかめてククールに言った。
その数秒後、ものすごい大きな足音が聞こえ二人は目を見合わせた。
「兄貴ぃ!てーへんでがす!」
「え?底辺?」
が聞きまちがえベッドから飛び起きると、ヤンガスが宿部屋の扉を開け息を切らしながらこちらを見つめている。 「うわああ!!もう動いて大丈夫なの!?」 「うん。みんな心配かけちゃってごめんね?」
は入口まで駆けて来たに笑いかけた。が、すぐに焦ったような口調でに話した。 「そんなことより、大変なんだよ!ゼシカが・・・ゼシカがいなくなっちゃったの!」 「え!?」
それを聞いていたククールもベッドから飛び上がってを見た。 「おい、ヤンガス。それまじか?」 「まじまじぃ〜!まじでがすよ!」
ヤンガスが何故か嬉しそうにククールの背中を叩くと、ククールは腹が立ちヤンガスのイガイガ帽子をしばいたが、手に先端が刺
「で、どこに行ったとかはわからない?」
「宿のおばさんが言うには北のリブルアーチとか言う町に向かうって言ってたらしくて・・・。早く追いかけなきゃ・・・」
が今にも泣きそうな声で俯いた。
とりあえずとククールは出発する支度をして、とヤンガスと共にサザンビークを出た。 「ゼシカ・・・無事だよね・・・お願い神様・・・」
はずっと心配そうな顔で、リブルアーチまでの道を歩いていた。
「ここ・・・」
リブルアーチの道の手前に関所があったのだが、そこは以前たちが見たリーザス村の前の関所によく似ていた。 「何で・・・?だってドルマゲスはもう・・・」
「まさか・・・あの杖が・・・?」
が腕を組んで考えていると、ククールは何かを思い出したような顔をした。
「何か知ってるんでがすか?」
「・・・昨日俺たちが倒したドルマゲスが持ってた杖、ゼシカがもう一回城に封印するかもしれないから持って行くとか言ってさ、
そこまで言うとククールは何かを考えて黙り込んでしまった。
たち一行は馬車がちゃんと通れるようにねじまげられた柵をもう少し広げてすり抜け、リブルアーチへと入り込んだ。
「なんだよ。この町なんか陰気くせーな・・・」
ククールが言う通り、リブルアーチは何故か活気がなかった。
「あら、旅の方たちですか・・・?あなたたちタイミング悪いわね」
「え?」
話しかけられたのは、髪の長い女の人だった。は不思議そうな顔でその話を聞き、訪ね返した。 「どうしてですか?」
「なんかね、杖を持った怖い顔の女の人が今ハワード様の家に乗り込んでいったの」
「杖を持った女・・・とハ、ワード?」
たちは直感で杖を持った女がゼシカであることがわかった。
「ハワード様はあそこの大きい家の人なんだけど・・・」
女の人が指した先には、町一番大きい屋敷。
「・・・あの黒い雲は何か共通してるんでがすかね?」
「分かんないけど・・・とにかく行かなきゃ。ゼシカは何か目的があってここに来てるんだろうし、もしかしたらあの杖のせいで
がそう言っている横で、が心配そうな顔で屋敷の方向を見つめていた。 「考えてたって仕方ねえんだからとっとと行くぞ。何としてでもゼシカを連れ戻さなきゃ駄目だろ?」
そう言ってククールは一人屋敷の方へと走り出した。
「あ、待ってよククール!」
その後をたちも追った。
「くすくす・・・」
「このっ・・・ハワード様に近寄るな!!」
ゼシカは今、呪術師ハワードとその召使いのチェルスと睨み合っていた。
「どりゃあっ!」
ハワードは呪術師である能力を発揮し、チェルスと自分の周りにゼシカを寄せ付けないよう魔法陣を張った。
「ふふふ・・・そんなものが無駄だということも分からないの?悲しいわね・・・」
ゼシカは不気味な笑みを浮かべると、握り締めていた杖を掲げ振り下ろした。
「さあ・・・もう待ちくたびれたわよ・・・?」
ゼシカは一歩、また一歩とハワードたちに近寄る。それに合わせてチェルスたちも後ろへと退く。
「ゼシカ!!」
その時、ゼシカたちのいた部屋のドアが開き、そこから顔を見せたのはたちだった。 「・・・っ!・・・ゼシカ・・・!?」
そこには、たちが今まで共に旅をしてきたゼシカの姿ではなかった。 「あら・・・もう来ちゃったの?面倒ね・・・」
ゼシカはまた不気味に笑った。
「今日のところは引き上げてあげるわ。また来るから準備を万端にしておくことね」
そう言うとゼシカは杖から眩しい光を放った。
「ゼシ・・・カ・・・」
は仲間であり親友でもあるゼシカの変わり果てた姿に、前が見えないほど困惑していた。
「ふぅ・・・嵐が去ったな・・・。・・・ん?おいチェルス!貴様レオパルドちゃんに餌はあげたのか!?」
「え!?私はハワード様をお守りするためにずっとここにいたので、まだですが・・・」
「何を言っとるんだ!お前はレオパルドちゃんを餓死させるつもりなのか!?さっさとあげて来い!」
チェルスに存分に怒鳴りあげたハワードは、チェルスに一度蹴りをいれた。
「・・・で、そちらの旅の方々はワシに何か用なのか?」
「え?えっと・・・」
ゼシカに用があり、こんなオッサンに特に用のなかったたちは返答に戸惑った。 「ないのか?じゃあ一つ頼まれてくれんかの?」
「は、はぁ・・・」
力ない返事をするに、ハワードはこの町に住むライドンというおじさんに、 ゼシカがもう一度この町に来ることが分かっているたちはもちろんこのままいるしかなく、 ハワードの家を出て庭を見ると、うなり声をあげている黒犬レオパルドとそれに怯えながら餌をあげているチェルス。
「・・・さっきのハワードとかいうおっさん、もうちょっと優しくしてやればいいのにな・・・」
「あれじゃあ虐待ってやつと同じでがすよ」
そんなチェルスの姿を見ていたたちに気づき、チェルスはこちらへと駆けてきた。 「先ほどはハワード様をお守りくださってありがとうございました」
「え、いや、僕らは何もしてないですよ・・・」
はは、と乾いた笑いを浮かべるに、チェルスは大きく首を振った。 「いえ、そんなことありません!あなたがたが来てくださったおかげで、あの女は逃げて行ったんですから」
「・・・どうでもいいけど、あんたあのオッサンに散々言われて悔しくねえのか?」
たちに感謝の気持ちを述べている最中に、ククールが割って入ってそう言った。 「・・・そりゃあ、嫌だとか屈辱的になることはあります。でもハワード様は、捨てられていた僕を拾ってくれた僕の大切な人な
え、なに、あんたマゾ?とは言いたくなった。 チェルスと別れ、ライドンの家があると言われる場所へ向かっている途中にククールが呟いた。
「あの男も変わってんなあ・・・」
「うん・・・でもそれだけあのハワードとかいう人のことが好きなんだよね」
「おい。お前もあれくらい主君への思い強くしたらどうだ?」 「んなっ!?ちょ、もう充分だよたぶん!僕マゾになりたくないから!」
どんな理由だよ、とククールは言うとため息をついた。いつもならこの辺でゼシカが何かを言うところだからなのだろう。 「父ならいませんよ?」
「は・・・?え?なに?もう一度!リピート!」
「父ならおらんよ?」
「何故に関西弁」
ライドンさんがいるという家へと乗り込んだ、違う、訪れたたちご一行。 「父は今、このリブルアーチを北に抜けた先にいるんですよ。そこで一人で塔を作っています」
「塔?何のために?」
「父は人の力を試すのが好きですからね。また塔もからくりだらけだと思いますよ」
わははと朗らかに笑うライドンの息子。
「・・・ってことはライドンさんに会うためには」
「その塔を登らなくてはいけませんね」
一同顔面蒼白になり、こらまた面倒なことになったと思った。
「あ、塔に入るにはこの石のつるぎが鍵変わりとして必要なので差し上げますよ」
ライドンの息子はにっこりと笑って、石のつるぎをたちに差し出した。 その途中。
「お!ちょ、あの防具屋、魔法のビキニ売ってるぜ!着てみねえ?」 「 絶 対 着 な い 」
「ていうか 着 さ せ な い 」
との怖い腹黒な笑顔に、ククールは腰を抜かした。
あとがき そんな感じで、いつもゼシーカたんに頼っていたこの小説。 2009.03.23 UP |