生と死の狭間

「・・・・・・おやおや、あなたたちは・・・。とうとうここまで追ってきましたか」
眠っていたドルマゲスは目を開けて、玉の中に入ったままこちらに話しかけて来る。
 
「ドルマゲス!よくも兄さんを殺してくれたわね!」
「義父でもある院長を殺めるなんて、いくら心の広い俺でも許さねぇからな」
「ここで会ったが百年目!兄貴、ブッ飛ばして行くでがすよ!」
ゼシカたちが怒っている横で、ヤンガスが斧を振り回してそう言った。
 
「・・・くくく。かなり殺気を感じますね。悲しいなあ・・・。私に戦いを挑むだなんて、自分から死ににきたのと同じ・・・」
ドルマゲスは玉の中から出て、今まで人を殺して来たあの杖を構えた。
「全くここで体を癒して失った魔力を蓄えていたというのに・・・。でもまぁいい。賢者の魂の力をお前たちに見せてやる。ゆっ
くり、痛み付けて殺してやろう・・・」
ドルマゲスはそう言って含み笑いした。
「言っておきましょう。貴様らは負けるのです」
不気味に笑ったその顔を、たちに向け、そう言った。
 
「・・・違う」
そのドルマゲスの言葉を否定するがいた。
「違う。私たちは誰であろうと負けない!」
「ほう・・・。面白い」
真っ直ぐ強気な目でドルマゲスを見つめるに、ドルマゲスは勝ち誇ったように笑った。
「そんなことを言えるのは今だけですよ」
そう言うとドルマゲスは杖を掲げ、大きく振りかざした。
その瞬間ドルマゲスが3人に分裂し、
たちを囲んだ。
 
「みんな、本物はあの真ん中のヤツだ。とりあえず偽者から倒そう!」
「OK!」
の指示通り、ゼシカやヤンガスはひたすら攻撃を加えた。
やっと偽者の1体を倒し、もう一人の偽者に5人は集中攻撃をした。
ドルマゲスの攻撃はどれも強く、フバーハやスクルトがなければ危なかった。
補助呪文は魔力に余裕のある
がすることとなり、ヤンガスにバイキルトを唱えたりと頑張っていた。
 
「えぃ!」
ゼシカが細い腕で精一杯の攻撃をムチで繰り出すと、偽ドルマゲスの残りの1体にとどめを刺した。後は本物だけだ。
 
「よくここまでやりましたね・・・。ですが偽者は倒せても、私がいる限りあなたたちは死ぬの運命なのですよ」
ドルマゲスは杖から大きな炎を発したが、が前に出てドルマゲスに攻撃すると、威力はだいぶ縮まった。
 
は今、憎しみからなのかはわからないがドルマゲスに対して怒りを露にしていた。
人を殺すなんて、人として最低だ。人間の恥だ。
はそう思っていた。
の攻撃の直後、ククールもゼシカもヤンガスももドルマゲスを倒したい思いで、一心不乱に攻撃し続けた。
 
ドルマゲスは体力が尽きたのか、痛そうな顔をしてうずくまった。
 
「く・・・、私ほどの人間が、たかが貴様らに負けるなんて有り得ないのだ・・・ぅっ」
ドルマゲスは杖を掲げて、回復魔法を自分へと与えた。
「お前らもこれで終わりだっ!」
 
ドルマゲスは杖をたちの方へと向け、杖の先から茨を放出した。
トロデーン城を呪うときのように。
 
「ゼシカ!」
「きゃっ・・・」
ククールがゼシカの腕をひっぱり、自分の背後へと寄せた。
 
!」
の安否を確認した。はちゃんと、自分の後ろにいた。
は安心すると、茨が放出しているドルマゲスの方向いた。
茨はたち5人の体を飲み込んだ。
 
 
 
 
・・・ああ、私たちはここで植物人間として、死んでいくんだ。
は、茨に飲み込まれる瞬間そう考えていた。
トロデーン城さえ全てを呪ってしまったドルマゲスの魔力に、自分たちが何かしたところできっと変わらないだろう。
このままこの遺跡の中で死んでいくのかもしれない。
 
 
ドルマゲスは茨に包まれたたちを見て、顔に笑みを浮かべた。これであいつらは終わりだ。
「少し体力を使いすぎた・・・」
そういうとドルマゲスは、たちが乗り込んできたときと同じように玉の中に入ろうとした。
 
その瞬間、後ろから何かが崩れるような音がした。
ドルマゲスがゆっくりと後ろを振り返ると、そこには茨の呪いに一切掛かっていない
たち、5人がいた。
 
 
真っ暗だった茨の中から、光が差し込んだ。その光は、の体から発せられていた。
・・・?」
は不思議そうに尋ねた。どうして今自分は動けるのだろう。どうして話すことができるのだろう。
たしか呪いに掛かったはず。
そしてどうしては今、体から眩しい光を放っているのだろう。
は光り輝く自分の姿を見て、困惑しているようだった。
 
 
その時、自分たちを覆っていた茨が横へと外れはじめた。
「え、何これ・・・。どうなってるの?」
ゼシカが疑問を抱いたように、辺りを見回す。
・・・。もしかしてこれって、が城で呪いにかからなかったのと関係があるかも・・・」
の背中をつつき、はそう言った。
は頭の中での言ったことを考えた。もしかしたら自分は、呪いに強い力を持っているのかもしれない。
そういえばずっと前に、
にそれを言われたこともあった。
 
 
「バカな・・・!この強力な呪いでさえも効かないだと・・・!?」
ドルマゲスが、たちに呪いが効かなかったことを悔しがっている。
そんなドルマゲスを見て、ククールは鼻で笑った。
「ドルマゲス、お前は俺らに倒されるんだよ。俺たちには叶わねぇ」
ククールがそういうと、ドルマゲスは目を血走らせた。
「調子に乗るな!貴様らに私が倒せるはずがない!」
 
そういうとドルマゲスは杖からまばゆい光を放った。
あっという間に
たちのいた部屋は光につつまれた。咄嗟に5人は目を瞑った。
光が止み、そっと目を開けると、そこには羽を持ち爪がするどく、猛獣のような怪物がいた。
 
「これが私の真の姿だ!お前らなど地獄に葬ってくれるわっ!!」
そういうとドルマゲスは翼を広げ、羽をスコールのように降らせた。
たちに降りかかると、かなりの大ダメージがたちを苦しめた。
 
べホマズン!
まだククールもも習得していない呪文をは唱える。緑色の淡い光がたちを包むと、体力が全回復した。
フバーハ!
バイキルト!
スクルト!
補助呪文を次々に唱え、かなり有利になってきたたち。
が剣を振りかざし、ドルマゲスの体に攻撃を加えている。
ゼシカはみんなにバイキルトを唱えた後、ムチでひたすら攻撃する。
ヤンガスは斧やハンマーや鎌など自分の扱う武器で上手いこと攻撃している。
ククールは弓や剣で、特技を使ってドルマゲスにダメージを与えていた。たまにスクルトを唱えてみんなの守備力を上げている。
もフバーハを唱えた後、ゼシカの掛けてくれたバイキルトの効果を使い攻撃する。
ただそこには、武器の振る音や痛みに耐える声が聞こえていた。
ベホマズン!
これで何度目かの、のベホマズン。
、そんなに使っちゃって大丈夫!?」
「うん、まだまだ魔力は残ってるよ、私」
が心配そうにに尋ねたが、にはなんとなくまだ魔力が残っているのがわかった。
 
この世界を救うためなら、大事な人を失って今泣いている人を救えるなら、魔力が無くなって自分が死んでしまってもどうってこ
とない。むしろ平和になるために死ねるくらいなら嬉しいくらいだった。
だから、まだ死ねない。目の前にいる憎いドルマゲスを倒さなければならない。
はドルマゲスを真っ直ぐに見据え、心にそう誓っていた。
 
 
「くぅっ・・・」
ドルマゲスも限界が近づいてきたのか、ダメージを与えるたびに苦しそうな声を上げる。
「もうそろそろね。さあ全力出すわよ!」
ゼシカはそう言うと、特技である双竜打ちを繰り出した。
1つの攻撃に2回ダメージを与えることができ、バイキルトを唱えているのでかなり強力だった。
ククールやヤンガスも同じように特技で攻撃し、もサイを振り回して地面に突き立てた。
雷のような電流がドルマゲスに降り注いだ。
ドルマゲスがまた痛そうに声を上げた瞬間、が剣でドルマゲスを思い切り斬った。
 
 
「ぐああぁぁあ!くっ・・・貴様ら・・・許さん!」
そういうとドルマゲスは、手の先の爪を一段と大きくし取り外した。そこからは少し血が溢れ出ている。
「死ね!」
ドルマゲスはその鋭く尖った大きな爪を、へと投げつけた。その速さも爪の大きさも異常だった。
 
 
!危ない!」
「!?」
ゼシカの甲高い声で、は身が危険だということに気付いた。
の魔力を回復してあげようと、道具袋の中から魔法の聖水を探していて、危険に気付かなかった。
 
後ろを振り返ると、ものすごい速さで大きな鋭く尖った爪が飛んでくるのがわかる。
あの爪に体が刺されば、間違いなく死んでしまうだろう。
でも速すぎて、は避けることができなかった。
 
そっと、は目を閉じた。
きっと自分はここで、死んでしまうのだろう。
何だか今この瞬間が、とても遅いスローモーションのようだった。
逃げ出そうとしても、体がまるで金縛りにあったように全く動かなかった。
城の前で倒れていた自分を助けてくれた城のみんな。
仲間に加わったときのヤンガスの嬉しそうな顔。
ゼシカがリーザス像の塔で、泣き崩れていたあのときのこと。
ククールが身を削って炎の橋の中を渡ってきたこと。
全てが脳内で、走馬灯のように流れていた。
でも気がつけば、のことばかりが浮かんでは消えていた。
が困った顔で、「異世界から来た」と言ったあのとき。
いつも元気で笑顔の

でも裏ではずっとつらくて泣いている
は・・・、自分は、の笑っている顔が好きだった。
自分の辛さを表に出さず、悩んでいる人のために助けて上げる
の優しさ。
 
 
 
せめて死ぬ前に、に思いを伝えたかった・・・。
 
 
グサッ!
爪の刺さる音がした。が、自分に刺さった感触はない。
はそっと、閉じていた目を開けた。
 
 
 
「・・・、・・・?」
閉じた目を開けたの目の前にいたのは・・・。
そこには、ドルマゲスの投げつけてきた爪が腹部に刺さり、血を滲ませている
がいた・・・。

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あとがき
きぇええぇええ!て感じの終わり方ですな(何
はいぃ・・・すっごい展開になっちまいやしたね。

そんなことより今鼻水がやばいです(は

2009.03.07 UP