わがままプリンス
「全く・・・何で俺がこんな目に・・・」
王家の山へと向かう途中、馬車の荷台の中でチャゴスはブツクサと言っていた。
不満そうに尋ねるに、チャゴスはトロデ王を見下すかのように言った。 「そりゃあ外見とかに決まってんじゃねーか!わっはっは!」
チャゴスの陽気な笑い声は、のそんな一言でかき消されたと一行は思った。 うざいチャゴスに怒りをこらえながら、なんとか王家の山までやってきた。
外で遊んでいた子供たちがたちに駆け寄ってきた。 「ねえねえ!今からアルゴンリザード倒しに行くの!?」
にっこりと笑ってがそう言うと、子供たちは一瞬顔を見合わせた。 「じゃあいいこと教えてあげる!アルゴンリザードを呼び寄せるにはこのジョロの実がいいよ!」
すぐ近くにあった畑にある、そのジョロの実とかいう玉ネギの巨大版みたいな物体を子供は重そうに持ち上げると、
「アルゴリザードはこの臭いが大好きなんだ!おびき寄せるときに使うのにはいいよ!」
は子供の手を握って、ぶんぶん嬉しそうに振り回した。子供たちも嬉しそうに笑った。
子供たちと別れると、早速たちは王家の山へと入り込んだ。 「待て!!無視すんな!!」
ゼシカは王子に対する態度か?と疑いたくなるような言葉遣いで、チャゴスに振り向く。
チャゴスはクラビウス王からもらっていたという「トカゲのエキス」をたちに振りまいた。 「これって臭いのかな?」
どうやらは生ゴミがスキらしい。 王家の山に入るとすぐに、こちらを向くアルゴリザードがいた。 「アルゴリザードはその貴重なアルゴンハートを落とすから、よく人間に狙われるんだ。
んなこと聞いてなかったよ、とたちの顔は怒りで歪む。我慢、我慢するんだー! 次に現れたアルゴリザードは後ろを向いていたので、勝利を挑みやすかった。
チャゴス王子もちっさな果物ナイフみたいなもので、みんなの先頭に立って闘いに参加した。
「お、ちゃんとアイツも戦うんだな」
ゼシカが見たのは、既に逃げる体制に入ってアルゴリザードに背を向けるチャゴスだった。
「逃げるんかいな!!!」 大声を出しては突っ込んだ。 何とか倒し、指輪にできそうなくらいのアルゴンハートを手に入れた。
「さ、帰りやしょうや兄貴!それで鏡を・・・」
ヤンガスの目が点になった。
「こんな小さなアルゴンハートじゃ恥ずかしくて帰れないだろ」
は不思議に思い、チャゴスに尋ねた。
「アルゴンハートが大きいほど、俺が王になった時の信頼があるんだ。もっと大きいのを!さあ次の奴倒すぞ!」
ゼシカやククールは今にもキレそうな顔だったが、が必死になだめた。 次にも2、3体倒したが、チャゴスはアルゴンハートの大きさには納得しない。
「ちょっと・・・!絞め殺しちゃってもいいかしら」
ゼシカとククールはもうキレまくっている。いつチャゴスを殴りだすかわからない。
その後アルゴリザードを探したが見つからず、とりあえず空き地で野宿することにした。
焚き火がパチパチと鳴る中、たちはその火を囲んで夕食をとる。 「なんだあ?この焦げまくったもんは・・・これは食べ物なのか?」
焦げたのではなく元の色がもう最初から黒い魚をつまみ上げて、嫌そうな目で見る。
「嫌なら食べなくていいですよ!私食べますから。お腹空いてるんで〜」
そう言うとは嫌味のない笑顔で、チャゴスの手元から焼いた魚を取りあげた。 「ああ!いい、俺が食べる!いらんことすんな!」
チャゴスは再びから、自分の魚を取り戻した。 「・・・まさかこの魚だけなのか?デザートは?」
知るか!とヤンガスに言われ、チャゴスはもう王族の者ではないような扱いだ。
星が綺麗な夜、は焚き火の前で一人座っていた。 少し寒気を感じたので、また火をつけてみた。
目の前で激しく燃える火を、ただジッとは見つめていた。 「・・・もし大きいアルゴンハートが取れたら・・・城に戻って鏡もらうよね・・・。
は一人でそう呟くと、ため息をついて膝を抱え込んだ。
「そうすれば・・・こうやってみんなで旅をするのも終わっちゃうのかな・・・」
は寝袋に入っていたが、火の明るさで目を覚ましていた。 はしばらくするとまた火を消し、自分の寝袋に入って行った。
次の日。とは、トロデ王の叫び声、チャゴスの怒声、ミーティアの嘶く声で起きた。 急いで寝袋から出て2人は体を起こす。ゼシカとククールは既に起きているが、アタフタしている。
2人の目に飛び込んだのは・・・。
ミーティアに乗り、ムチを振り回しているチャゴス。そしてその横で声を張り上げて、止めさせようとするトロデ王。
「なっ何だよ・・・お前馬だろ!馬なら馬なりの仕事をしろ!ほら、ちゃんと乗れ!」
姫とまではさすがに言えないトロデ王。
「馬じゃなかったら何だ?こいつは人間なのか?ソレッ!」
パシーン!と、ミーティアに叩きつけるムチの音が鳴り響く。ミーティアは痛そうに声をあげた。
「ね、ねえ・・・これって・・・」 は頭の中で想像した。5秒くらい経過すると、はハッとなった。 「ななななななな、何を言ってんだよ!それより早く助けるよ!」 呆然と見ているゼシカとククールには声をかけて、 なんとゼシカとククールも、さっきが言った「姫様が人間だったら」のあの事を思っていたらしい。 「まあ馬じゃなきゃなかった事故だろうけど・・・あの王子ってなんかそういう趣味ありそうよね」
そんなことを言っていたときだった。
「あ、あにきい!!てーへんでがす!!!」
今時「大変」を「てーへん」というヤンガスに、は振り向いた。
どちらにしても可愛いよヤンガス。
「そしたら昨日アッシらが倒してたアルゴリザードなんかよりも比べもんにならないくらい巨大なアルゴリザードが!
「何だって!よっしゃあ大きいアルゴンハートが手に入るかもだ!早速行くぞ!」
そう言うとチャゴスは急いで、ヤンガスがいるといった方向へ走っていった。
「・・・自分は戦わないくせに」
ゼシカがチャゴスの後ろ姿をみて、そう吐き捨てた。
親玉のアルゴングレードはかなりの強敵だった。アルゴリザードの3、4倍は強いみたいだ。
粘りに粘ってやっと倒したアルゴングレードは、体に比例してアルゴンハートも大きかった。
「おお!これこそ俺の求めてた大きさ!これでみんなの俺を見る目も違ってくるだろうな・・・!」
チャゴスはふふふと含み笑いをする。きっと頭の中で王になったときの自分を想像しているのだろう。
「そんじゃあさっさと帰るぞ!誰かルーラを唱えろ」 は頷くと、呪文の詠唱を始めた。その間にの腕などに皆捕まる。 「サザンビーク城へルーラ!」
周りの草花を揺らす風に包まれると、あっという間にサザンビーク城の前に着いていた。
サザンビーク城の中に入ると、やけに賑やかな城内。
「なんかここを出た時より賑やかでげすね・・・あの店たちは何でげしょう?」
ヤンガスが街の奥にある店の群れを指して言うと、チャゴスは嬉しそうに馬車から飛び降りた。
「バザーが始まったんだ!」
チャゴスはまだ興奮気味にたちに話すと、チャゴスはバザーの方へと走り出した。 「じゃあ俺はバザーを見てくるからな!あ、お供あんがとなー」
感謝の気持ちなんてこれっぽっちもこもっていなさそうな言葉で、チャゴスは去って行った。
「はあ・・・やっとあのわがまま王子から解放されたね・・・」 まあ確かに王子には相応しくない人物だなあとは思った。 「じゃあアルゴンハートとかのことは後回しにして、僕たちもバザー見ない?期間限定なんだろうし、貴重な武器とかあるかも」
がそう言うと、ゼシカやヤンガスたちは嬉しそうに自分のほしい物を見始めた。
一通り買い終わり、大臣の家へと向かう階段の上にチャゴスと男の姿が見えた。 「どうだ?このアルゴンハート。これより大きいものをくれ。」
確かにたちが取って来たアルゴンハートよりもまだ少し大きいものを、男は取り出してチャゴスに渡した。 「あれは・・・闇商人でげすな」
そんな闇商人の男とチャゴスのやり取りを、城のベランダからクラビウス王は双眼鏡で見ていた。
「・・・チャゴス・・・お前は・・・」
王は深いため息をつくと、王座の間へと戻って行った。
チャゴスは大きいアルゴンハートを手にし、堂々と城に入って行った。
あとがき でもゲームクリアした方にはわかりますが、主人公とチャゴスって・・・○○○なんですよね・・・ 2009.01.24 UP |