わがままプリンス


「全く・・・何で俺がこんな目に・・・」
王家の山へと向かう途中、馬車の荷台の中でチャゴスはブツクサと言っていた。
足下にある連金釜を邪魔と思いながらも、歩くよりはマシだと思い今こうして馬車の中にいるのだ。
手前に見える馬は大変綺麗だが、その主っぽい緑の魔物は本当に醜いな・・・。

「この俺様とは大違いだな。この魔物」
「・・・例えばどこがですか?」
不満そうに尋ねるに、チャゴスはトロデ王を見下すかのように言った。
それはそうだ、こんな魔物が自分の結婚相手の父親とは思うわけがない。
「そりゃあ外見とかに決まってんじゃねーか!わっはっは!」
「いやーそんなに変わらない気もしますがねえ、おほほほほほ」
チャゴスの陽気な笑い声は、のそんな一言でかき消されたと一行は思った。
 
 
うざいチャゴスに怒りをこらえながら、なんとか王家の山までやってきた。
入り口の近くには家があり、どうやらこの山を守っているようだ。
外で遊んでいた子供たちがたちに駆け寄ってきた。
「ねえねえ!今からアルゴンリザード倒しに行くの!?」
「うん、そうだよ」
にっこりと笑ってがそう言うと、子供たちは一瞬顔を見合わせた。
 
「じゃあいいこと教えてあげる!アルゴンリザードを呼び寄せるにはこのジョロの実がいいよ!」
「ジョロの実?」
「そう!こうやって・・・」
すぐ近くにあった畑にある、そのジョロの実とかいう玉ネギの巨大版みたいな物体を子供は重そうに持ち上げると、
地面に投げつけた。辺りに臭いのか、いい臭いなのか判断できない微妙な臭いが漂う。
「アルゴリザードはこの臭いが大好きなんだ!おびき寄せるときに使うのにはいいよ!」
「おおー!有力な情報ありがとう!!」
は子供の手を握って、ぶんぶん嬉しそうに振り回した。子供たちも嬉しそうに笑った。
 
子供たちと別れると、早速たちは王家の山へと入り込んだ。
チャゴスが後ろでわめいてるが、そんなの気にしないことにします。
「待て!!無視すんな!!」
「もー何よ。あんたのトカゲ嫌いなら知らないわよ」
ゼシカは王子に対する態度か?と疑いたくなるような言葉遣いで、チャゴスに振り向く。
チャゴスはクラビウス王からもらっていたという「トカゲのエキス」をたちに振りまいた。
アルゴリザードは臭いに敏感だそうで、人間の臭いを少しでも消すためらしい。
 
「これって臭いのかな?」
「さあな。トカゲの臭いなんて嗅いだことねえけど・・・臭いんじゃねーの?」
生ゴミみたいなのかな?
お前生ゴミ好きだな・・・
どうやらは生ゴミがスキらしい。
 
 
王家の山に入るとすぐに、こちらを向くアルゴリザードがいた。
が、
たちの姿を目で捕らえると急いで逃げて行った。
「アルゴリザードはその貴重なアルゴンハートを落とすから、よく人間に狙われるんだ。
だから人間の臭いや気配には敏感だぞ。ちゃんと気をつけろよな・・・ったく」
んなこと聞いてなかったよ、とたちの顔は怒りで歪む。我慢、我慢するんだー!
 
次に現れたアルゴリザードは後ろを向いていたので、勝利を挑みやすかった。
後ろからやっつけるが、かなり体力があるみたいでちょっとやそっとじゃ倒せない。
だがメタルスライムたちのように戦闘中には逃げないので、頑張れば勝てそうだ。
チャゴス王子もちっさな果物ナイフみたいなもので、みんなの先頭に立って闘いに参加した。
「お、ちゃんとアイツも戦うんだな」
「そりゃあ一応、あいつの為の儀式ですもの。逃げ出すなんてダメ・・・ええ!?
ゼシカが見たのは、既に逃げる体制に入ってアルゴリザードに背を向けるチャゴスだった。
逃げるんかいな!!!
大声を出しては突っ込んだ。
 
 
何とか倒し、指輪にできそうなくらいのアルゴンハートを手に入れた。
これでやっと帰れる・・・。
「さ、帰りやしょうや兄貴!それで鏡を・・・」
「・・・まだだ」
「は?」
ヤンガスの目が点になった。
 
「こんな小さなアルゴンハートじゃ恥ずかしくて帰れないだろ」
「え?どういうこと?」
は不思議に思い、チャゴスに尋ねた。
「アルゴンハートが大きいほど、俺が王になった時の信頼があるんだ。もっと大きいのを!さあ次の奴倒すぞ!」
 
ゼシカやククールは今にもキレそうな顔だったが、が必死になだめた。
 
次にも2、3体倒したが、チャゴスはアルゴンハートの大きさには納得しない。
「ちょっと・・・!絞め殺しちゃってもいいかしら
「だ、だめだよゼシカ!」
「でももう嫌よ!だいたいなんなのよアイツ!先頭に立って闘うのかと思ったら、1ダメージくらいしか与えないで逃げてさ!」
「俺ももう無理・・・。だいたい世間知らずの王族のやつなんかは外に出ちゃダメなんだよ」
ゼシカとククールはもうキレまくっている。いつチャゴスを殴りだすかわからない
 
その後アルゴリザードを探したが見つからず、とりあえず空き地で野宿することにした。
焚き火がパチパチと鳴る中、たちはその火を囲んで夕食をとる。
 
「なんだあ?この焦げまくったもんは・・・これは食べ物なのか?」
焦げたのではなく元の色がもう最初から黒い魚をつまみ上げて、嫌そうな目で見る。
「嫌なら食べなくていいですよ!私食べますから。お腹空いてるんで〜」
そう言うとは嫌味のない笑顔で、チャゴスの手元から焼いた魚を取りあげた。
こう言ったのも、この魚を調理したのは
だったからだ。
「ああ!いい、俺が食べる!いらんことすんな!」
チャゴスは再びから、自分の魚を取り戻した。
少し嫌そうにしながらも、豪快に口の中に放り込む。
 
「・・・まさかこの魚だけなのか?デザートは?」
「当たり前でしょ?外でコックもいないんだから、お城で出るような料理は出ないわよ」
「う、嘘だろ!?俺はデザートなしじゃダメなんだよ!」
知るか!とヤンガスに言われ、チャゴスはもう王族の者ではないような扱いだ。
これも日頃の性格が祟ったのだろう。
 
 
星が綺麗な夜、は焚き火の前で一人座っていた。
先ほど水で消して、皆は寝袋の中に入って寝ていたのだが、なんだか目が冴えてしまった。
少し寒気を感じたので、また火をつけてみた。
 
目の前で激しく燃える火を、ただジッとは見つめていた。
「・・・もし大きいアルゴンハートが取れたら・・・城に戻って鏡もらうよね・・・。
それで闇の遺跡にいって・・・ドルマゲスを・・・」
は一人でそう呟くと、ため息をついて膝を抱え込んだ。
 
「そうすれば・・・こうやってみんなで旅をするのも終わっちゃうのかな・・・」
は寝袋に入っていたが、火の明るさで目を覚ましていた。
そんな
の独り言と聞いて、も旅が終わったときのことを考えていた。
はしばらくするとまた火を消し、自分の寝袋に入って行った。
 
 
 
 
 
 
次の日。は、トロデ王の叫び声、チャゴスの怒声、ミーティアの嘶く声で起きた。
急いで寝袋から出て2人は体を起こす。ゼシカとククールは既に起きているが、アタフタしている。
ヤンガスの姿は見えない。
 
2人の目に飛び込んだのは・・・。
ミーティアに乗り、ムチを振り回しているチャゴス。そしてその横で声を張り上げて、止めさせようとするトロデ王。
「なっ何だよ・・・お前馬だろ!馬なら馬なりの仕事をしろ!ほら、ちゃんと乗れ!」
「やめんかい!ミーティアは馬じゃないんじゃ!我がトロデーン国のひっ・・・ゴニョゴニョ」
姫とまではさすがに言えないトロデ王。
「馬じゃなかったら何だ?こいつは人間なのか?ソレッ!」
パシーン!と、ミーティアに叩きつけるムチの音が鳴り響く。ミーティアは痛そうに声をあげた。
 
「ね、ねえ・・・これって・・・」
「な、なに?
・・・それより急いで止めないと・・・」
これってさ・・・もし姫様が人間の姿だったら相当やばいよね・・・
「え?姫様が人間の姿だったら・・・」
は頭の中で想像した。5秒くらい経過すると、はハッとなった。
「ななななななな、何を言ってんだよ!それより早く助けるよ!」
「ふふふ・・・はーい!」
呆然と見ているゼシカとククールには声をかけて、
4人の力でなんとかチャゴスをミーティアから降ろすことに成功した。
なんとゼシカとククールも、さっきが言った「姫様が人間だったら」のあの事を思っていたらしい。
「まあ馬じゃなきゃなかった事故だろうけど・・・あの王子ってなんかそういう趣味ありそうよね
「姫様をアイツと結婚させるのはやばいな」
そんなことを言っていたときだった。
 
「あ、あにきい!!てーへんでがす!!!」
今時「大変」を「てーへん」というヤンガスに、は振り向いた。

「あ、ヤンガス。どこ行ってたのさ」
「えっとアッシはちょっと花を摘んで・・・い、いや!ちーとばかし日向ぼっこしに行ってたんでげすけど!」
どちらにしても可愛いよヤンガス。
その体型、コワモテな顔で花摘み・・・可愛い・・・。
 
「そしたら昨日アッシらが倒してたアルゴリザードなんかよりも比べもんにならないくらい巨大なアルゴリザードが!
きっと親玉か何かでげすよ!」
「何だって!よっしゃあ大きいアルゴンハートが手に入るかもだ!早速行くぞ!」
そう言うとチャゴスは急いで、ヤンガスがいるといった方向へ走っていった。
 
「・・・自分は戦わないくせに」
ゼシカがチャゴスの後ろ姿をみて、そう吐き捨てた。
 
 
 
 
 
 
親玉のアルゴングレードはかなりの強敵だった。アルゴリザードの3、4倍は強いみたいだ。
チャゴスは相変わらず1ターン目で逃げ出した。何のために来てるんだアイツは。
粘りに粘ってやっと倒したアルゴングレードは、体に比例してアルゴンハートも大きかった。
「おお!これこそ俺の求めてた大きさ!これでみんなの俺を見る目も違ってくるだろうな・・・!」
チャゴスはふふふと含み笑いをする。きっと頭の中で王になったときの自分を想像しているのだろう。
 
「そんじゃあさっさと帰るぞ!誰かルーラを唱えろ」
「ほんっと人使い荒いんだから・・・
、お願いするわ」
「わかった」
は頷くと、呪文の詠唱を始めた。その間にの腕などに皆捕まる。
「サザンビーク城へルーラ!
周りの草花を揺らす風に包まれると、あっという間にサザンビーク城の前に着いていた。
 
サザンビーク城の中に入ると、やけに賑やかな城内。
「なんかここを出た時より賑やかでげすね・・・あの店たちは何でげしょう?」
ヤンガスが街の奥にある店の群れを指して言うと、チャゴスは嬉しそうに馬車から飛び降りた。
 
「バザーが始まったんだ!」
「バザー?」
「そうだ。サザンビークは毎年こうやって世界中から商人が集まって店を出すんだ」
チャゴスはまだ興奮気味にたちに話すと、チャゴスはバザーの方へと走り出した。
すると後ろを振り返った。振り返るなよ!気持ち悪い!(酷
「じゃあ俺はバザーを見てくるからな!あ、お供あんがとなー」
感謝の気持ちなんてこれっぽっちもこもっていなさそうな言葉で、チャゴスは去って行った。
 
「はあ・・・やっとあのわがまま王子から解放されたね・・・」
、あんなやつ王子なんて呼んじゃダメよ。チャゴスでいいのよチャゴスで」
もうゲ○チャゴスとかう○こチャゴスでいいんじゃないか?
「そ、それはさすがに駄目でしょククール・・・」
まあ確かに王子には相応しくない人物だなあとは思った。
 
 
「じゃあアルゴンハートとかのことは後回しにして、僕たちもバザー見ない?期間限定なんだろうし、貴重な武器とかあるかも」
がそう言うと、ゼシカやヤンガスたちは嬉しそうに自分のほしい物を見始めた。
 
一通り買い終わり、大臣の家へと向かう階段の上にチャゴスと男の姿が見えた。
たちは隠れながら、チャゴスに見つからないように移動してチャゴスと男のやりとりを見た。
 
「どうだ?このアルゴンハート。これより大きいものをくれ。」
「おお!これはすばらしいですな。はい、これです」
確かにたちが取って来たアルゴンハートよりもまだ少し大きいものを、男は取り出してチャゴスに渡した。
チャゴスは自分の持っていたアルゴンハートと、その大きいアルゴンハートを取り換えた。
「あれは・・・闇商人でげすな」
「え?」
「ああやって物を取引するんでげすよ。あれが偽物じゃなきゃいいんでげすが・・・」
 
 
そんな闇商人の男とチャゴスのやり取りを、城のベランダからクラビウス王は双眼鏡で見ていた。
「・・・チャゴス・・・お前は・・・」
王は深いため息をつくと、王座の間へと戻って行った。
チャゴスは大きいアルゴンハートを手にし、堂々と城に入って行った。
父上が、自分の悪事を全て見ていた事も知らずに。

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あとがき
よーしもうドルマゲス戦も手前ですねえ!
なんか悲しいような嬉しいような変な感じですが。
とりあえずチャゴスはムカツきます。この話には私がゲームの時、チャゴスに感じた思いがギッシリ詰まってます(え
たとえばゲ○チャゴスとかう○こチャゴスとか・・・

でもゲームクリアした方にはわかりますが、主人公とチャゴスって・・・○○○なんですよね・・・
しんじられん。イケメン加減が全然違うんですけど。w

2009.01.24 UP