カジノ都市の事件


海をしばらく船で走りつづけ、魔物と戦いながらもたちは北西の孤島へ辿りついた。
岸には既に、向こうで聞いたようにギャリングさんの使いが乗った小さいボートのようなものが停まっていた。
中にはまだ人が3人乗っていて、島の奥には突撃していないようだった。
 
「・・・なんかここ、気持ちわるいね」
「トロデーン城みたいに黒い雲があがっているのう。なにか共通してるんじゃろか?」
島の上には、トロデーン城で見た時のような暗雲が空に立ちこめていた。
全体的に「どよん」といった効果音が似合いそうな、息も苦しい感じの雰囲気だ。
 
「とりあえず奥に進みましょう。ここにドルマゲスがいるのはきっと間違いないんだから!」
ゼシカは皆にそういうと、ひとりで進んで行った。
その後をたちは急いで追いかけた。
 
 
「奥に進むにつれて怪しい感じの臭いがするでがすなあ・・・」
「えー、それってどんな臭い?生ゴミみたいな?
「そ、そんな臭いじゃないでがすよ!!」
ヤンガスまでもツッコミにしてしまったある意味すごいと思う一同だった。
 
島の奥に進むと、何かの遺跡があった。
遺跡の入り口からは、闇があふれ出ているような、そんな感じだ。
「・・・あ!!あいつ・・・!」
ゼシカが何かを見つけたように叫んだ。
ゼシカの視線の先に目を向けると、そこにはドルマゲスの後姿が。
ドルマゲスはそのまま真っ直ぐ進み、闇に包まれた遺跡の中へ入ろうとしていく。
「ここがドルマゲスの本拠なのか?」
「わかんないけど、逃がすわけには行かないわ!私たちとうとう追いつめたのね、ドルマゲスを!」
え・・・追いつめたって勝手にドルマゲス出てきただけじゃないですかと思うだった。 
 
ゼシカは走ろうとしていた。あのドルマゲスの後ろをそのまま、兄さんを殺したときのように・・・。
でも足が動かなかった。怖くて、まるで操られているかのように。
今、ドルマゲスが目の前にいるというのに!
悔しくて、たまらなかった。
額には冷や汗だけが滲むだけ。
ただそれは、皆も同じだった。
 
ドルマゲスは遺跡の入り口にたどり着くと、首だけたちのほうへ返した。
すると口元の端だけ上げて、奇妙に笑った。
その不気味な笑顔に5人は青ざめた顔になり、背筋が凍った。
ドルマゲスは闇に包まれ、遺跡の中へと入っていってしまった。
 
「あ・・・い、行っちゃった!早く追いかけないと・・・!」
「で、でもなんかアッシ・・・まだ足が動かねえでがす・・・なんつーかアイツの威圧に負けたみたいな・・・」
「僕も・・・」
5人はまだ青ざめた顔を見合わせ、うなずいた。急ぎ足で遺跡の中へ入っていく。
遺跡の中は真っ暗で、何も見えない。さっきまで隣にいたの姿が見当たらない。
「・・・?」
もちろん、返事はない。怖くなって、何度も名前を呼ぶ。
「ゼシカ・・・ヤンガス・・・ククール・・・・・・。みんなどこー・・・?」
今にも泣きそうな声で、奥へ奥へと歩き続ける。どこが壁なのかわからない。いつどこにぶつかるのだろう。
自分の手や足、体さえも見えない。本当に闇に包まれているんだ、この遺跡は。
そのときだった。
「イーヒッヒッヒッ・・・」
「え!?何!?い、いや・・・助けて!」
ドルマゲスの笑い声が聞こえ、一気に怖くなったは、目を瞑り耳を塞いで、その場に力なく座り込んだ。
するとだんだん、視界が明るくなってきた。
ゆっくり目を開けると、外に出てきていた。
「あっ!大丈夫!?」
が心配そうな顔つきでに走り寄ってきた。
 
「う、うん・・・大丈夫・・・。こ、怖かったあ・・・」
目を潤ませては、頬に一筋の涙を流した。
「うっうわあああなんで!」
「だ、だってみんなの名前叫んでも返事ないし・・・」
は必死で涙をこらえようとしているけど、自然に涙がこぼれている。
 
「・・・もう大丈夫だから。ほら、僕もここにいるでしょ?」
に、手を差し出した。
はその手を、少し戸惑いながらも握った。
「・・・うん・・・。ありがと・・・。」
「うん」
座り込んでいたをゆっくり立たせた。
 
「みんな出てきたよな?さっきのはちょっと参ったな」
「私も。いきなりみんなの姿が見えなくなっちゃうんだもの」
ふー、とため息をついていると、後ろから足音が聞こえた。
どうやらさっき岸に停めていたボートの中にいた、ギャリングの使いのようだ。
 
「あら、さっき大きい船でこの島に来てた人たちですね。こんにちは」
「こんにちは。えーとあなたたちはギャリングさんの・・・」
「ええ、使いですけど・・・知ってるんですか?ギャリングさんのあの事件のこと」
「少しだけ・・・」
そうですか、とギャリングの使いは言うと、遺跡に目をやった。
「あ、そうだ。僕たちさっきドルマゲスの姿を見たので遺跡にはいったんですけど、中は真っ暗です。
奥に進むと笑い声が聞こえて、この外に出てきてました」
は今あった一部始終を、ギャリングの使いに話すと、少し驚いた顔をした。
 
「では何か必要なのでしょうか・・・ん?」
ギャリングの使いの一人が、遺跡の入り口から少し前にある柱に気がついた。
歩み寄って、丸いくぼみがある所を見つめた。
 
「・・・大自然の光に包まれるものって書いてあります」
「大自然の光?・・・に包まれる・・・もの」
はそれを聞いて、そのくぼみを見つけたギャリングの使いに近づく。
「ほんとだ。大自然の光に包まれるもの・・・きっとこのくぼみにそれをはめ込むんだね。みんな何か心あたりある?」
がそう聞くと、その場にいた人たちは腕をくんで考える。
するとギャリングの使いのもう1人が、何か思い出したように言った。
「確かサザンビークという王国に、『太陽の鏡』という国宝があるそうです。もしかしたらですが・・・どうでしょうか」
皆の顔を見回して、使いはそう言った。
 
「それはありうるかもしれんな。じゃあ私はここで待っているから、お前たちはサザンビークに行ってくれ」
面長の使いの1人の男がそういうと、後の2人はうなずいて、走って船のもとへ行ってしまった。
 
「・・・じゃあ僕たちも行こうか」
に皆掴まって、とりあえずベルガラックへルーラした。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「あーっ疲れた疲れた!」
ここは宿屋の女子部屋。ベルガラックへ戻り、宿屋に泊まったたち。
とりあえずサザンビークへ向かうのは明日に控えて今日は休むことになった。
 
「・・・ねえ
「ん?なーにゼシカ?」
ゼシカは深刻そうな顔で、を見つめた。
「・・・あのね・・・。のこと、どう思ってるの?」
「・・・え?」
一瞬、部屋の時間が止まったように、沈黙が続いた。
 
「な、何いってんのゼシカ・・・。そんなの仲間に決まってるじゃない!」
「・・・違うでしょ?」
何もかもを見透かしたような目のゼシカに、は喉がつまった。
「・・・・・・うん・・・」
「よかった。やっぱりね」
「ヘ?」
がキョトンとした顔で、ゼシカを見た。
「ああ、ううんこっちの話。でも。・・・素直にならなきゃ、気持ち伝わらないよ?」
「・・・ゼシカ」
ゼシカのその言葉に、は下を向いた。
 
ならきっと大丈夫よ。私も応援するから・・・頑張ってね」
「うん・・・ありがと。ゼシカもククールと「黙れ
「えーでもスキだよね?スキだよね?」
「好きじゃないわよ!!」
 
しばらくこんな会話が続いた。
決戦間近の旅でも、女の子はやっぱりこういう話が好きなのです。
その頃はくしゃみ連発していたという。

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あとがき
今回のはギャグすくなめでした。すいませんねえ。

・・・うん、なんかなんでもうドルマゲス戦間近な感じになってんだろう(は

2008.12.29 UP