カジノ都市の事件


「うわーっめちゃくちゃ綺麗な海!青いねー!」
船を手に入れたたちは今、西の大陸に向かって大海原を走っていた。
 
の世界の海は青くないのか?緑とか紫とか?」
「えっ・・・紫!?そんな毒の沼地みたいな色はしてないけど・・・いや、しておまんがな」
「何で言い直した?それ何語?」
「・・・何語だろうね・・・?いやあまあ海は青いよ、青いけどね!みんながゴミ捨てたりしてるから汚くなってるんだよ」
「何よそれ!海を汚すなんて許せないわねー!」
所々に変な会話も混ぜ込みながら、着々とたちの旅はドルマゲスに近付いているのだった。
 
「にしても海上でも魔物は出るんだね〜・・・。こうもっと優雅な感じを想像してたんだけど」
「何言ってるの!ポルトリンクで定期船の出航が遅れてたのも魔物のせいだったのはも知ってるでしょ!
それに私たちにはのんびーりしてる時間なんて、これっぽっちだってないんだからね!」
「・・・はい、そうでしたー・・・あぁ・・・」
力なくの声は小さくなって、波の音に紛れて消えていった。
でもその、船が掻き分ける海の波の音をじっくり聞いて、空の雲が流れていくのを眺めたりしてみたかったなあ。
それと落ちて行く夕陽を
と一緒に・・・。
 
?」
「オワッパーーーショ!!!!!!」
と一緒に夕陽を見ているという設定の絵を頭の中で描いていた途中で、まさかの妄想のお相手てある本人ご登場。
自分もびっくりするくらいの奇声を発して、腰を抜かしてしまった。

はキョトンとした顔でを見つめている。
相変わらずというか何というか、この人はいつもこんな顔だと言われても否定できないくらいだけどキョトンとしている。
 
「いっ、いいいいいきなり出て来たらびっくりするでしょ!」
「だっての顔、今にも天国に連れて行かれそうな顔だったんだもん」
どんな顔だそれ。すごい遠い目とか・・・?
まあ
と夕陽を!キャ☆とか考えてる時だったから、確かに変な顔はしてたかもしれない。
鼻の下のばしてたりとか。チンパンジーみたいに。
 
「餌を与えないでください・・・」
「・・・え?は?」
「特にバナナとかはNGです」
「うんだから何が!?」
 
 
 
 
船を走らせてから、かなりの時間がたった。西の大陸ももう目の前だ。
しかし、西の大陸はどこに船を止めて陸に上がればいいのか、いまいち良い波止場が見あたらなかった。
「・・・あ、あそこ何か教会っぽいのあるわよ。今晩はあそこで泊めさせてもらいましょうよ」
ゼシカが指さす方向には、確かに何かの建物が丘の上に佇んで居た。
タラップを出して陸に上がると、もう外は真っ暗な中をかけ足でたちは教会の中に入って行ったのだった。
 
「長旅お疲れ様です。当教会は巡礼者様以外でも、旅に疲れた方たちも無料で宿を貸して居ますよ」
「今晩借りさせてもらってもいいですか?」
「どうぞ」
一番最初に出迎えたシスターはそう言うと、ニッコリ笑ってベッドのある部屋まで案内した。
教会の中は広いと言えるほどではなく、案内してもらわなくてもわかりそうだけど。
 
「ここですよ。ゆっくり休んで疲れをとってくださいね」
「ありがとうございます」
が礼すると、みんなも同じようにした。
シスターはまた笑うと、一礼して仕事に戻って行った。
今日はどうやら男女別れた部屋ではないみたいだ。貸してもらえるだけマシだろう。
 
「っはー疲れた・・・もう寝る・・・」
ククールはそう言うと、一つ大きなあくびをして、ベッドに倒れ混むようにして眠った。
ヤンガスやゼシカもそれをみて、ベッドに潜り込んでいった。
 
は寝ないの?」
「もう寝るよ。は?」
「私はまだちょっと用があるから」
用?とが尋ねると、はニコッと微笑んで、部屋の傍にいるシスターに何かを聞き始めた。
も眠くなって、あくびをするとベッドに入ってすぐに眠りについた。
 
「あの、ここの近くに街がありますよね?さっき来る途中に明るい光が少しだけ見えたので」
「ええ、ありますよ。ベルガラックというカジノ都市なんですが・・・オーナーが家から出てこないそうなんです。
オーナーがいなければ仕事になりませんし、今はお休み中だそうですよ」
そりゃククールがガックリするだろうな。
「明日みなさんで立ち寄られるんですか?」
「あ、はい。私はそのつもりですけど・・・たぶんみんなもそうしてくれると思います」
「そうですか。魔物が最近より一層強くなってきましたのでお気をつけてくださいね」
はその後も何人かに聞きこみをし、何件かの情報が手に入った後、眠りについた。
 
 
 
 
翌朝、鳥のさえずりがなる中、ゼシカは一番に起きた。
ヤンガスのいびきは相変わらず酷いし、ククールは布団を抱き枕にしてるし。
は一見寝相いいかと思えば、足の先だけ出てるし。が一番普通かしら。
「さて・・・と・・・。どうしよっかな。みんな起こそうかな」
グーッと伸びをすると、ゼシカはドレッサーの鏡を見ながらツインテールを一度ほどいて、整えた。
パサ、と物音がして振り返ると、
が寝返りを打っていた。
 
はやく誰か起きないかなと思った瞬間。
「グオオオオオオオオオウ!」
ガクッと何かを踏み外したように体が上下に揺れると、はハッと目を覚ました。
「・・・?どうしたの?」
「ハア・・・ハア・・・」
息づかいを荒くしながら、はゆっくりとベッドから起き上がり、ゆっくりとゼシカに顔を振り向けた。
微妙に顔が震えている。
「ねえ大丈夫?何か怖い夢でも見たの?」
「がっ・・・がっ・・・」
「が?」
「崖から落ちた夢見たああああぁぁぁぁーーーーーー!!!」
その後、ゼシカがをどのようにしたかは、皆さんのご想像にお任せいたします。ウフ。(←
 
 
 
 
「泊めてくださってありがとうございました」
「いえいえ。これからもお金は取りませんので、またどうぞ遠慮なさらずに来てくださいね」
シスターは教会の外まで見送ってくれた。もう毎日でも来てやろうか。
 
「ねね、あそこに微妙に見える街ね、カジノ都市なんだって!」
「え!?カジノ!?うおおお」
「でも残念だねククール君。今オーナーが家に引きこもりで、いなきゃ仕事になんないから休業中なんだって」
「・・・・・ええええええええええええええええええ!?」
ククールは激しくショックを受けた。何トンもの岩が頭に乗っていたように見えた。
「それでなんだけど、オーナーの家に強盗が入り込んだんだって。そのショックで引きこもってるらしいんだけど・・・
なんか怪しいなと思って。ショックなんかで引きこもるかな?」
「うーん・・・わかんないけど有り得るんじゃないの?」
「そっかー・・・」
 
少し考えこむと、が切り出した。
「今ここで考えてても先には進めないし、とりあえずその街に行こうよ。何か情報が得られるかもしれないしさ!」
「・・・そうだな。行くか。カジノが開いてないと聞いちゃ別に行く意味ねえけどなあー」
そんなことを言うククールに、ゼシカはメラを一発ぶっ放した。
 
 
 
「おおーなんか賑やかな街だねえ」
「でもなんか全体的に暗い雰囲気もあるでがすね」
「そりゃあカジノが開いてなきゃ「うっさいわねえ、このイカサマ野郎!
ククールはちょっとだけ悲しそうな顔をして、地に「の」の字をひたすら書き始めた。
 
「・・・あんなバカほっといて情報収集に行くわよ。とりあえず二手に別れましょう?」
そう言うゼシカの意見に、反対はなかった。
「じゃ、じゃあ・・・そ、その・・・僕と行かない・・・?」
と?うん、いいよー」
辺りに喜びの花を飛び散らかしながら、ニコニコ笑うを見て、はホッとした。
 
「じゃあヤンガスと・・・バカは私と行くわよ。ああもう、キノコ生えてる!抜け!キモイからくっつくな!」
「むりいいいい〜〜」
 
 
 
 
 
ひとまず街に入ってすぐあった宿屋の中に入り、は情報収集に出かけた。
地下にあった酒場にはまだ昼なので、マスターとバニーちゃんの2人しかいなかった。
あ、いたわ。舞台袖に隠れてるおっさんが。
 
酒場を出て二階に上がると、何やら話し声が聞こえてきた。
、足音なるべく立てないで」
「へぁ、はい・・・」
ひそひそ声で話すと、声のするほうへ耳を澄ました。
 
「これ、誰にも言っちゃだめだぞ?」
「うん、言わないから早く教えろって」
「ああ、実はなんだけどさ。ギャリング様の家に強盗が入ったって話・・・あれ嘘なんだ」
「ええ!?」
「でけえ声出すな。いや、嘘じゃねえんだけど、その強盗・・・強盗っていうか道化師に、ギャリング様は殺されたんだよ。
それでその道化師は別に金目の物を盗るわけでもなく、ギャリング様を殺して北の孤島に逃げたらしい」
「本当かよ・・・。素手でクマを殺すあのギャリング様が・・・」
素手でクマって・・・あんた・・・。
は変な顔をしながら顔を合わせて、もう一度声のする方に耳を傾けた。
ギャリングって、オーナーの名前なのだろうか。
 
「だから引きこもってるってのも嘘でギャリング様はもうこの世にはいねえんだ。誰にも言うなよ」
「わかった。そりゃ街に公表できねえ話だな・・・それでユッケ様とフォーグ様は?」
「2人ともどっちが後継ぐのかで揉めてて、全然話にならねーんだよ。だからカジノが開くのはもうちょっと先みたいだな。
それでギャリング様の使いが、今仇を討ちに北西の孤島に向かってるらしいんだけどな。
でもギャリング様でさえ勝てなかった奴に、あいつら勝てんのかなあ・・・」
 
 
 
 
 
「なんか重要な話っていうか・・・聞いちゃいけない話だったのかな・・・」
「でもこれでわかったよね。きっとその強盗・・・道化師は・・・ドルマゲスなんだ」
それだけはきっと決定している。今までの犯行と同じで、別に金目のものは盗らない。
その人だけがターゲット、という感じだ。
 
「あ、ゼシカたちだ。今の話言わないと」
「でもなんかククールにキノコが生えてる気がするんだけど・・・目の錯覚?
「いや、僕にも見えるよ
あれは悲しみのキノコって名づけようかバカリスマの毒キノコにする?
「うん・・・もうキノコでいいんじゃないかな・・・」
 
キノコとゼシカとヤンガスに話しかけて、さっきの話を聞かせた。
「何よそれ!絶対ドルマゲスじゃない!」
「北西の孤島でがすよね。世界地図だと・・・ここでがすかね?」
ヤンガスが太くて短い指で指した場所は、紫色で塗られた北西にある小さい島。
「なんか嫌な雰囲気ね、地図だと。とりあえずさっさと行きましょう!」
「オー!」
 
 
街を出て船に乗り込むと、たちは急いで北西の孤島へと船を走らせたのだった。

next→


あとがき
今回の小説はギャグ満載って感じですね。話そんなに進んでなくないですか・・・?←
なんかもうククール、ダメだよあんた。もうカリスマの扱いじゃないよ。
でもこのゼシカとのカップリングは好きだったりします。
原作ではククールこんなキャラじゃないのにね・・・いたスト並に壊れてます、すみません。

2008.12.18 UP