呪われた城
「ポルトリンクに入りたいとこですが・・・。ここはレフトにギュン★・・・あれ?右ってライトだっけ?」 「右はライト。左はレフトよ」 「はっはー!さっすがお嬢様は勉強も出来るんでござんすねぇ!」 「・・・何だ、最近の中ではござんすが流行ってるのか?」 賑やかな仲間たち。そのどれもが、アホで変な会話。恐らくタネはほとんどなのだが・・・。 パルミドの情報屋によると、たちがゼシカを追うために一度来た、ポルトリンクという港町の入口まで来て、町に入らずに右に行けば、荒野があるという。そのど真ん中に、岩山のようにそびえ立つ古代船。これを使って、ドルマゲスの逃げたという西の大陸に行けば、何か情報が掴めるかもしれない、らしいのだが・・・。
「おっかしいなあ・・・。情報屋さんの言ってくれたことと世界地図ではこの辺に宿屋があるはずなんだけど・・・」
「ないねぇ」 「ほんとに合ってるのかしら?」
うーんとみんなが唸る。風がたちに冷たく吹き付ける。魔物も弱くはなかった。入り口からして賑やかな港町のポルトリンクからはもう大分離れていて、人気も全くなく寂しい。そこでは気付いた。
この旅のリーダーのさんは・・・ズバリ方向オンチですな。
しばらく歩いていると、ククールが建物を見つけた。 「なあなあ、アレがお前の言う宿屋じゃねえのか?」 「え?・・・うおお!本当だ!」 今まで聞いたことのないようなの「うおお」という叫びに、は少々びっくりしましたよ。
「はーよかったよかった。とりあえずここで一休みしていこ!おじさん、ベッドよろしくお願いします」
「いっつも先を急ぐがこんなに休みたがるってことは・・・相当疲れてるんだな」 はぁ、とククールはため息をつくと、ゴロリとベッドに転がった。
「おはよ、。朝よ」
「ふえぅ・・・もうでしかあああ」 むくっとベッドから起き上がると、皆も眠そうな目を擦りながらも起きていた。もあくびをすると、手と手を合わせて伸びをした。それが終わると、バッグの中からクシを取り出して、茶色のセミロングの髪の毛を綺麗にといた。
「それじゃあそろそろ行こうか」
「そうでがすねえ」 ありがとうございましたーと宿屋のおじさんに言うと、おじさんは快くまた来てね、いってらっしゃいと言ってくれた。荒野に向かって歩く。
「ああもう。だとなんだか頼りないわ。私がしてあげる」
ゼシカはそう言うと、無理やりから地図を取り上げた。え、とが小さく声を上げた。
「い、いいよゼシカ!僕がやるよ」
「だーめ。昨日散々歩き回ったこと覚えてるでしょ?今度は荒野よ。昨日より範囲広いんだからね?」 ゼシカは顔を少しふくれっつらにしてにそういうと、地図に視線を移した。は何も言い返せない感じだ。
「あそこになんか岩山みたいなの見えるけど、あれかなあ?」
「え、ほんと?」 宿屋からすぐ出たところから見える、岩山のような物体。実際回りには崖だらけであまり見分けがつかないが、には船に見えるようだ。 「・・・そういえばが指したところ、地図でもなんか記されてるわ。行ってみましょう」 女子の連携プレーで、古代船の捜索へ向かう。男共はただ後ろからゾロゾロと着いて行くだけ。
「うおーでけー」 歓声の声をあげるククール。の言った岩山のようなものは、やはり捜し求めていた古代船だった。ポルトリンクから出ていた定期船とはまた違った感じで、青色が特徴のきれいな形の船だ。さすがに、所々がボロボロだが。
「やっぱりパルミドの情報屋のおっさんの情報は正しいでがすな。アッシがパルミドに居た時は本当に世話になったでがすよ」
「ふーんそうなんだーへーへー10へえって古いか!ハハッハッハッハ」
はそう聞き流すと、船をペタペタと触り始めた。ヤンガスは「の」の字を地面に描いていじけている。
「どう考えてもこのでっけえ船を海までうごかすのはオレらだけじゃ無理だよなあ」 「ていうかどうしてこんな荒野にあるわけ?」 「昔海だったとしか考えられないけど・・・」 「そんな時はトロデーン図書館じゃ!」 みんなが会議中に、トロデの声が聞こえた。
「・・・今なんかトデローントショカンジャとか聞こえたけど空耳かな」 「空耳ね」 「空耳だな」 「やいやい!主君に対してなんじゃその態度は!そんで!トデローンじゃなくてトロデーンじゃ!」 それ以前にですね、残念なことにトロデ王の家臣になった覚えはないんですよ。すみませんねえ★
「ここの荒野は思いっきりトロデーン国領じゃ。っちゅーことは城に近いじゃろ。図書館ならなんか載ってるかもしれんぞ」 「トロデーン城ってトロデ王の城よね。・・・名前からして」 ゼシカがそう言うとトロデは少し悲しそうな顔をする。
「そうじゃ。ワシの大切な大切な国じゃ。なのにドルマゲスに呪われて・・・ワシとミーティアだってこの様じゃ」
トロデは目をつぶって悲しみに浸っている。だがいきなり目を開けて、たちに訴えた。
「トロデーン図書館ならこの古代船のことについてなんかあるじゃろ。行って損はないと思うがのう」 「・・・そこまで言うなら・・・別に行ってもいいと思うけど、ここはリーダーに任せましょ」 「うん、僕はいいよ。・・・城の様子も見たいしね」 「よし、決定じゃ!それじゃあ行くぞ」 トロデは気持ちを切り替えたように、今まで下に向けていた顔を上げた。馬車の荷台の上に乗ると、ミーティアを動かすように指示を出すと、ミーティアは動き始めた。
「開かないよーココ」
「あら・・・茨がみっちり絡みついてるわね」
トロデーン城の正門から入ろうとするみんなは、茨が絡みついたドアを開けようとするが開かない。
「おおそうじゃゼシカ。お主メラとか唱えてはどうじゃ?」
「え?ああそっか、燃やせばいいのよね」
トロデにそう言われ、ゼシカは呪文の詠唱を始めた。その直後に、ドアに絡みつく茨に向かって火を放った。ジュワア、と燃える音と共に、茨がなくなった。
「やっぱゼシカのはすごい威力だね!」 「そうかしら?魔力の強いならこれくらいできると思うけど。あ、この城の茨全部払えとか言わないでよね」
誰もそんなこと頼んでませんからあああー!
ゼシカって放火癖がある上に勘違いですか。勘違い放火少女ですか。
扉を開けると、トロデ、ミーティア、そしての知るトロデーン城とは変わり果てた城。茨が巻きつき、そのせいで崩れ落ちている城壁。空には暗雲。誰が見ても気味の悪い様にしか見えない。
「、茨を触っちゃダメよ。何だか・・・呪われそうだもの」
ゼシカが心配そうに、城の様子を見渡している。 は、庭を見た。綺麗に咲き誇っていた花は、枯れて色を失っている。いつも庭師が水をあげて大事に育てていたのに。庭で手足の先が茨になっている学者は、いつもに面白い話を聞かせてくれていた。 みんな、みんな呪われた。
大事な人たちが・・・。
その思いは、トロデもミーティアも同じだった。
とトロデ、ミーティアは、皆が庭の様子などを見回している間、正門の近くで佇んでいた。はどうしていいかわからなくて、3人の傍にいてあげることしかできなかった。
「どうしてドルマゲスはこの城を狙ったんじゃ・・・」
「王様・・・結局この城でなかったとしても、どこかの国が滅びるのは変わりません・・・」 「わかっておる。じゃが・・・どうして・・・」
2人の会話は重苦しい。ミーティアも、顔の表情が沈んでいる。
は走って、3人の前へ出た。
「行きましょう!・・・苦しい気持ちはわかります。でも・・・ここで止まっていても、城は救われません」 「「・・・」」 「城を救うために私たちは旅をしているんでしょ?仇もあるけど・・・」
は少し笑うと、こう言った。
「待っていても何も起こらない。自分たちの手で、この人たちを早く助けなきゃ!」
「・・・そうだよね。ごめんね。ごめんね。・・・みんな!行くよ!」
がそういうと、庭に散らばっていたみんなは、の元へ駆け寄った。
「図書館はどこなの?」 「この庭から行けるよ。ここのドアを・・・あれ?」
図書館へ入るドアは、ガレキで入れなかった。もうひとつの、入る事の出来るドアをは開けようと、ガチャガチャ押したり引いたりするが開かない。
「・・・そうだ。ここ夜間はカギ閉めてるんだった。城が呪われたのは深夜だったから・・・」
「えー!?」 「城の中から図書館まで行くのは結構時間かかるんだよね。魔物も出るみたいだし・・・」
はため息をつくと、みんなの表情が重くなる。
「・・・もー暗い暗い!ダークですぞみんな!」 「・・・?」 「ほらほら早く行こ」 グイグイと城内へみんなを押し込んで行く。 「もー!ってば強引なんだから!」 「ごめんごめん!ほんじゃ、。案内よろしく!」 「う、うん」
「ここだよ」
城内を散々彷徨ったたち。最短で行けるルートは、崩れた壁などで通れなかった。
かなり遠回りしながらも、やっとたどり着いた。 姫様の部屋についたりして、ククールがちゃっかりガーターベルトを手に入れちゃったりして、トロデに睨まれている。
「なんかこの図書館は、今までのと違う感じだね」 「そうか?変わんない気がするんだが」 「鈍感ククール。ドンクールってあだ名にしてやろう。ありがたく思え!」 「ドンクールってなんだよ!そんなあだ名でありがたく思いたくもねえよ!」 相変わらず意味の分からない言葉に、アホなククールもツッコミに回る。もうこのパーティーでは、今まで女子にチヤホヤされてきたククールは全くいない。
「じゃあとりあえずこの本棚はヤンガス。ここは僕が調べるから、そこはゼシカ、そこはククール、あそこはで調べて。この本棚は種類で分かれてるから、船に関する本があったら一箇所にたくさんあると思うんだ。あったら僕に言ってね」
そう言うと、は自分の調べる場所の本を取り出してめくり始めた。みんなも、自分の調べる本棚の場所へ散らばる。も、に指定された場所を調べる。
1時間ほどがたった。みんな本から役に立つ資料を探している。ククールは何かエッチな記事がないか探してる、そんな感じだが。
も色々調べるが、だんだん首と目が痛くなってきたりで、結構大変だ。深夜に近づいてきたこともあり、眠くなって視界がだんだんボヤけてきた。
そんなとき。 荒野で見つかった古代船 というページの見出しが目についた。大きい文字だったので、視界がボヤけてもなんとか見えた。
「これって・・・あの船のこと?」 目を凝らしてみる。やはりあの船のことだ。はその本を取り出したところ以降の本棚を見た。の調べる範囲だが、船に関する本の見出しがたくさん載っている。
「こ・・・・これでゅわーーーーーーーーーー!!!」 「おお!見つかったのか?」 「ありがとう!その周辺のやつをみんなで見るよ!」
みんながひとつひとつ本を取り出して、机に座って本を見る。
だんだん眠くなってきたみんなは、あくびをしたり、首がカクッとなったり、ヤンガスなんか出ていた鼻ちょうちんが割れた。
すると、月が真上に登った瞬間だった。 潰れた図書館のカベから、月の光が照らし出される。カベのところには窓枠がある。
「この光景・・・どっかで見た事あるよね・・・」 窓枠の影が伸びていく。延びた影は壁に突き当たって、月の世界への扉をつくった。
「行って見よ?」
がそういうと、みんな頷いた。
月の世界への扉を、開けた。
あとがき 2008.11.16 UP |