元山賊の色恋事情

 
ただっ広い草原の中に、ポツンと池に囲まれた1つの家。
たちは・・・いや、正しく言えばヤンガスが。その家の玄関の前で、男と張り合っていた。

「なんだあ?お前ら。ここはゲルダ様の家だぞ!?お前たちなんか相手にしてもらえるわけがない」
「なんだとぅ!?」
「さあ帰った帰った。お前なんかに用はないんだ」
シッシッ、と家の玄関の前で足止めをする男。
そう、ここはパルミドから北西に行ったところにある、ヤンガスの幼馴染・・・いや、悪友のゲルダの家だった。
ヤンガスはイヤそうな顔をしているが、姫様を助けるためにはしょうがない。
 
「・・・いいよ。どうせその声はヤンガスだろ?通しな」
「へっ?へ・・・へい・・・」
家の中から、女にしては少し低い声が聞こえた。恐らくゲルダという人なのだろう。
男はチッ、と舌打ちをすると、悔しそうな顔をしながらドアを開けた。
 
 
 
「よう、久しぶりだなゲルダ」
「・・・もう会わないかと思ってたんだけどね」
フン、とそっけないゲルダ。その態度に、ヤンガスはため息をつく。
「なあなあ
「?何?ククール」
「俺さあ・・・女は好きだけど、ああいう気の強いのってちょっと勘弁なんだよな。あの格好はいいんだけど」
ドスッ
「ばっかじゃない!?何考えてんですか!」
はククールの顎を、下からグーで殴った。結構いい音がした・・・ククールは苦しそうな声を出している。
まあ・・・確かに。
はちろっとゲルダの格好を見た。
赤い水着のような服をまとい、腰部分に毛皮をまとっている。そこには皮のベルトで、武器をつけている。
はあ・・・確かに色っぺーーーなーー!

と、は思った。自分の体を見る。露出の少ない服。・・・ウフフ。
 
 
 
「なあ、ゲルダ。お前、パルミドの闇商人の店で馬姫様・・・じゃなくて、白馬を買っただろ?」
「・・・ああ、買ったね。あんなに毛並みのキレイな馬は見た事がないからね。気に入ったんだよ。それが何か?」
ミーティアの毛並みは、いつもが手入れしていたから、キレイだったのだろう。
ゲルダはしれっとした顔でヤンガスの質問に答える。

「あれはアッシの兄貴・・・アッシが尊敬するこのお方の大切な馬なんだ。返してほしい」
ヤンガスは額に少し汗を浮かばせながら、を手の平で指し示す。
 
「兄貴ねぇ・・・ふうーん・・・」
「ゲルダ?」
「・・・やだね。あんないい馬をこっちから手放すなんてさ」
ガーン、とヤンガスはショックを受ける。ええ、それはもう。口をあんぐりと開けまして。
「ゲ・ゲルダ!お前なあ・・・!このボケ!カス!ナスビ!カボチャーーー!」
「うるさいなあ!あんたにそんなこと言われるなんて耳が痛いよ!」
ゲルダがうっとうしそうに耳を塞ぐ。
それにしても、ヤンガス。あんたどんだけ低レベル!
 
その後ゲルダとヤンガスの口喧嘩はつづく。ゼシカはうんざりした目で見ていた。
「あーもう!わーかったよ!返してやるよ」
「!本当か!?」
「タダではムリだけどね!」
またヤンガスの顔が・・・口があんぐりと開けられている。あの口の中にハバネロ突っ込んでやりたいよ!
 
「あんたが昔、あたしと約束しても取ってこれなかったビーナスの涙。取ってこれたら返してやるのを考えてもいいよ」
「うぐっ・・・ゲルダ、まだ根に持ってんのか・・・」
「あったり前だよ!あたしはねえ、嘘をついたり約束を破られるのは大嫌いなんだ。だからあんたも・・・」
「あああああ!もういい!それ以上はいいから!」
ヤンガスは手をブンブンと振り回しながら、ゲルダにその先を言わせない。
 
「どうする?ムリだったらやめた方がいいじゃない?その変わり馬は返さないけどね」
「グヌヌ・・・!あ、兄貴ぃ〜!」
そのヤンガスの兄貴という言葉に、ゲルダは少し体がピクリと動いた。
は、気のせいかと思って気にしなかった。
 
「兄貴、洞窟はこの家を出てもっと奥にあるでがす。・・・行きやすよ・・・ね?」
「何言ってるの。もちろん行くに決まってるだろ?姫様を助けなきゃ」
ガックシと、ヤンガスは肩を落とす。
ヤンガスの襟を掴んで、
はズルズルとヤンガスを引きずって行く。
それに着いて、ククールとゼシカもゲルダの家を出て行く。
はなんか少しだけボーッとしていて、気がついたらみんながいない事に気付き、出て行こうとした。
「ちょっと待ちなよ、あんた」
「え?」
ゲルダに呼び止められ、振り向く

「あんたたち・・・いや、あの少年にだけ。ヤンガスは何で兄貴なんで呼んでるんだい?」
「えーと、確か・・・川に落ちそうだったヤンガスを、
に助けてもらったみたいです」
はニッコリと笑顔で答えると、ゲルダも少しだけ、笑って そうかい と言った。
「呼び止めてすまない。じゃあ頑張って」
「・・・?はい」
は少しだけ小首を傾げたが、また笑顔に戻って、家を出て行った。
「あの女の子・・・ただならない空気があるわ。おもしろい」
ゲルダはニヤリと笑うと、の顔を思い出していた。
すると揺りイスから立ち上がり、外に出て部下に指示を出した。

「その馬を出れるように用意して!」
「はっ!わかりました、ゲルダ様」
玄関の前にいた部下は急ぎ足で、馬車のある小屋の中へ入っていった。
 
「・・・信じてるよ、ヤンガス。あたしはあんたを信じてるからね。もう2度と裏切られるなんて、ごめんだよ・・・」
 
 
 
 
「ゲルダさんとヤンガスって、どういう関係なの?何であんな険悪なわけ?」
洞窟までは短い距離だ。それまで歩いている時間に、ゼシカが疑問をヤンガスに聞いた。
「ゲルダは昔っから宝石に目がないでげす。それで昔も、アッシはゲルダにビーナスの涙を取る約束をしたんでげす」
ヤンガスは空を見つめながら、思い出に浸っている。

「でも子供だったアッシには、洞窟の魔物は本当にキツかったんでげす。
死ぬ寸前で帰ってきたんでがすが、約束守らなかったって、しばらく話してくれなかったでげすよ。
後々話してくれたと思ったらあの口の利き方。・・・まあアッシが悪いんでがすがね。約束は守らなきゃダメだしな」

はあ、とヤンガスはパルミドに来てから数え切れないくらい、何度もため息をついている。
相当ショックだったのだろうか・・・。
は、ヤンガスの心が、なんとなくゲルダに向いていることがわかる。
 
「ヤンガス、ここで合ってる?」
「合ってるでがすよ!」
ヤンガスの昔話を聞いていると、いつの間にか洞窟に着いていた。
が洞窟を指して合ってるか聞くと、どうやらここにビーナスの涙が眠っているようだ。
 
「早く持って帰って、姫様を助けてあげなくちゃ!」
そう言ったの目は真剣だった。
・・・やっぱり、は姫様が好きなのかな・・・。
そう思った瞬間、ククールの手がの頭の上に、ポンと置かれた。
彼なりの慰めなのだろう。
は余計に、悲しくなった。
ありがとう と口パクでククールに伝えると、ククールはニカッと笑って、手をどけた。
 
 
洞窟の中は、入るとすぐに大きな宝箱が見える。そこが目的地なのに、それまで行くには時間がかかりそうだ。
宝箱の見える方向を無視して、違う方向に迷路のように入り組んでいる。
「・・・この洞窟を造った人間の底意地の悪さが、よく分かるわね」
ゼシカが呆れたようにつぶやく。
ああもー、この柵飛び越えて宝箱まで行ったらいいじゃん!こういうとこだけ、ドラクエって律儀なんだからー!!
と、は思う。
 
 
子供のヤンガスが苦戦しただけもあってか、魔物は結構強かった。
ダメージを受け続けるが、
とククール、時々の回復魔法でなんとかなった。
ドアを開けようとしたらなんとバネドアで、
たちはバネの力で後ろの穴に落っこちたが、
それで行けなかった場所にあった宝箱の中にあった地図も入手したので、それをよく見て奥に進んでいく。
すると、あるフロアにたどり着いた。
2つの石像が縦と横に動くようになっている。
部屋の奥には石碑がある。
「天を・・・仰げ?」
「こうでがすか?」
ヤンガスが手を上にして平泳ぎのような手をしている。
「・・・それはヤンガス、天を泳いでるんだけど」
「えっ!?仰ぐって泳いでるようなもんじゃないんでがすか!?」
「大きな間違いならぬ巨大な間違いだな、ヤンガス。天を仰ぐってのはこーするんだぜ」
ククールが得意げに、上を見上げた。すると、「お」とヒトコトだけ発した。
「え?何?何かあるの?」
も見上げると、ポツンとひとつだけ、正方形の穴が。
すぐ真下を見ると、同じような大きさのタイルが敷き詰められている。
 
「ほー・・・。何かわかったかも!」
「「「「え!?嘘!」」」」
は石像を動かそうとする。それを、も手伝う。
ってば頭いいわね。私にはサッパリだわ」
「俺も」
「アッシも」
「・・・正直言って、僕も」
デヘヘ、とはちょっとにやける。重たい石像を運びながら。
ストップ、との声で、手伝っていたも力を抜いた。
もう片方の石像をまた動かそうとするので、ヤンガスが急いで押した。
「あ、ありがと、。えーとヤンガスはそこでいいよ、もう動かさなくて大丈夫!」
ヤンガスが石像から手離して、みんなの固まる場所へ戻る。
 
「よし、作業完了。みんなもうわかった?」
「んー・・・微妙・・・」
「俺も」
「アッシもでがすよー」
「わかんないわ」
みんな、何かを考えている顔をしている。は誰よりもわかったことに嬉しくなった。
「じゃあ正解言うね!この石像と石像が交わるタイル、きっと飛べるんだよ」
は縦に動く石像と、横に動く石像から直線を結んで、飛べるというタイルを指差した。
「私が指してる場所、縦に動く石像と横に動く石像からタイルに向かって伸ばしたら、交わるでしょ?これがカギ」
笑顔を見せると、はタイルの上に乗ってみせた。
 
その瞬間、の体は天を仰いだときに見つけた穴の中に向かって飛んだ。
は、上の階へ着くことができた。
「みんなも、早く来て!ここから階段を登ったら宝箱があるみたいだよ」
「ひえー!アッシが子供で体力が強かったとしても、きっとここで立ち止まってたでがすよ・・・」
続々と、みんなが下から上の階へ足をつけて行く。
すごいね。僕たちがいなきゃきっとムリだったよ」
「どういたしましてっ!」
を関心のまなざしで見てくる。それが、にはとっても嬉しかった。
大好きな人だから・・・。
 
「じゃあ、開けるよ」
が、宝箱に手をかける。みんな頷いて、ゴクリとつばを飲んだ。
 
「・・・ウワアア!」
!」
開けた瞬間、宝箱は魔物と化した。
「大丈夫、!?」
「ヘ、ヘヘヘ・・・。大丈夫、びっくりして腰抜かしただけだから。
ただのミミックだったらびっくりしないのに、あまりにもおっきな魔物だったから・・・」
は本気で腰を抜かしてるようだ。
「私たち、闘ってくるから!ここで見てて。戻れそうだったら、来てね!でも無理しないで」
を壁のあるところまで運んで、もたれさせた。優しい笑顔で笑いかけると、戦闘へ戻っていった。
 
ボオッと炎の音がしたのは、ゼシカのメラやメラミなどの、火の音。
ククールは弓で攻撃をしたり、スクルトをかけたりしている。
ヤンガスはかぶと割りで守備力を下げて、自慢の攻撃を仕掛ける。
はみんなにバイキルトをかけたり、回復魔法をかけたり、闘ったりと頑張っている。
は、腕が鳴った。
みんなだけにはさせられない。腰が抜けただけだなんて格好悪すぎる!
いや、実は少しダメージを与えられてしまっていた。それに関して腰が抜けたということでもある。
は自分に薬草を使うと、戦闘に加わった。
 
!もう大丈夫なの?」
「うん!みんなだけにはさせられないからね」
は笑う。それを見て、も笑う。が、すぐに戦闘に戻る。


まだHPが100に到達したばかりのゼシカやククールたちにとっては、相手がよく出る痛恨の一撃は痛かった。
だが、そろそろ相手もしんどくなってきたのか、攻撃の威力が衰えてきた。 
「みんな頑張って!」
はベホマラーをかける。体力がみなぎっていく。
「行っくよー!」
の号令と共に、以外のみんなは魔物を次々と攻撃していく。
そして。
 
が、剣の回りに火のような光を放って、高く飛んだ。
魔物は、その
の美しい姿に、時間を忘れた。だけど。
 
何かを刺したような音がなる。その瞬間、魔物は砂のように消えていく。
 
「やった!・・・倒したのね、私たち!」
「ア、アッシは今感動してるでげす!子供の時苦戦した魔物も、今じゃらくらくでげす!」
「あー疲れた疲れた。さっさとリレミトで出ようぜ、こんな気味悪い洞窟」
3人それぞれが嬉しそうに笑う。ククールはちょっと隠してる感じだけど。

、やったね☆」
「うん・・・!
のおかげだよ」
「え?あたしは何もしてないよ。
のとどめの一発が効いたんだから!」
無邪気に笑う彼女を見て、はその笑顔に癒された。
 
「んじゃ早くゲルダん所に行きやしょう。姫様に何かあったら大変でげすからね」
 
のリレミトで、みんなは洞窟から出た。

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あとがき
ヤンゲル好きだなー・・・エンディングの後に何かあったとかないのかな。
最近リメイクがよくあるから、8もやってくれないかな(最近すぎるだろw

2008.11.01 UP