悪徳の町


ある1つのシルエットがある。だんだん色づいていく。
こげ茶色の髪の毛。オレンジ色のバンダナ。優しい笑顔。
「ここにいたの?」
話しても、は返答しない。が近づくと、が消えた。
後ろに振り返ると、
がいる。また追いかけても、消えていく。
だんだん回りがただの闇の世界になって。ドルマゲスが現れた。
ドルマゲスは杖の先に光を集めて、杖を投げた。オディロ院長殺した時のように。
でも、の目前には、が突然現れた。
そして杖に刺されて
――――――――
 
そこでに起こされた。今まで見ていた、夢の内容。
本当に夢でよかった。
 
あたしは・・・がいなくなったら、きっと立ち直れなかったから。
だから今はなんだか、めいっぱい
に甘えたい気分だった。そんなことはできないのだけれど・・・。
 
 
 
やっと苦労してとみんなを起こした甲斐があって、ゼシカたちが起きた。
急いで隣の王様が待つダイニングへ行くと、王様が座っていた。
「ああ、起きられましたか。昨日疲れていたみたいですもんね」
「あの、色々ありがとうございます」
「何を言っておられるんですか!私の方が感謝しなくてはなりません。
・・・シセルのいない悪夢のような日々から、立ち上がることができました」
パヴァンはにっこりと、たちに向かって笑った。
「さあさあ、みんなが腕をふるって作ったご馳走です。みなさん席に着いてください」
「ワーイ!久々のご馳走でがすー!」
「こらヤンガス!」
「フフフ、いいんですよ。おかわりはいくらでもあるみたいだから、たくさん食べてください」
 
 
 
 
 
 
 
「っふー!うまかったでげすなあ!」
「ほんと、久しぶりにあんなに食べたわね」
「俺ちょいワイン飲みすぎたかも」
バカじゃないの、とゼシカは言う。
ククールはちょっとばかし気持ち悪そうだった。まあ自業自得なので、
は何も処置しない。
 
あんまり食べてなかったけど、大丈夫?」
「え?・・・ああ、うん、大丈夫!」
ちょっと顔色が優れないようだったが、は様子を伺いながら城を出た。
 
 
「おお、来よったな」
トロデはいつもこの声で、たちの元へア●レちゃん走りで駆け寄ってくる。
「いいなあ、お主らは・・・。いいご馳走もたんまりと食べてきたんじゃろ?わしだって久しぶりに酒が飲みたいわい」
トロデは恨めしそうな目でこちらを見つめてくる。

「・・・おっさん、ここの近くにアッシの故郷のパルミドがあるでがす。
パルミドの奴らはこのアッシでも受け入れてくれるくらい、外見とかに興味を持たない街でがすよ。
行くでげすか?酒場も大きいのあるしいいと思うぜ。情報屋がいるからドルマゲスのこともわかるかもしれないでげすし」
「ななんに!?それは誠か!ならば早速じゃ、!行くぞ!」
トロデはヤンガスのおいしい話に目を輝かせ、パルミドへ行く方向に馬車を走らせた。
 
「・・・しょーがねーおっさんでがすな・・・兄貴、すまねえでがす」
「いいよ、トロデ王も最近気が立ってたみたいだからさ。アレで機嫌治ってくれたらいいんだけど」
その後ろを、たちはついていく。
 
は一瞬、立ちくらみがした。いつもよりなんだか、気持ちが悪い。頭が痛い。
とヤンガスは話しこんで、トロデ王を見失わないようにしている。
ゼシカとククールは何やら話している。
4人の姿が、ゆれている。足が絡まって、はその場に倒れこんだ。
 
 
ズシャア、と音がして、が振り返るとが倒れていた。
!?」
ものすごいスピードでの元へ駆け寄る。
体を浮かして、おでこに手を当てると、とても熱かった。
 
「やばい、すごい熱だ!」
「兄貴、パルミドには確かクスリ屋とかあるでがすよ!それまでおっさん馬車から降ろして、
を乗せやしょう!」
「何!?ワシは王様じゃぞ?!ワシを下ろすなんて・・・」
の体の方が大事なんだよおっさん」
ヤンガスがそういい捨てると、トロデはムキーッと頭から湯気を出す。
 
!お主はワシを降ろしたりなんてせんよな!?」
「すみません王様。・・・病人(
)の方が大事ですから」
ガーン!と岩がトロデの真上に落ちる。ヤンガスがプッ、と笑う。
をお姫様だっこで抱き上げた。は顔に汗を少々かいているが、とても寒そうで、苦しそうだった。
何で気付いてあげられなかったんだろう。自分が情けなくて仕方がなかった。
「待っててね。すぐに楽にさせてあげるから!」
を馬車の荷台に乗せ、パルミドへと猛スピードで移動した。ヤンガスがトロデを担ぎながら。
 
 
 
「ワシは酒場におるからな。その情報屋とやらに行ってなんかわかったら来るんじゃぞ」
トロデはミーティア姫様を酒場の入り口に待たせ、軽い足取りで酒場へと入っていった。
 
「とりあえず宿屋で寝かせるでげす」
「病人かい?100Gでいいけど」
ヤンガスの話によるとパルミドは別名悪徳の町とも言われているそうだ。
前の町までの宿屋とは驚くくらい、、値段が上がっている。
でも人を寝かせてもらう立場としては何も言えない。
 
 
をベッドに寝かせた。
「僕、とりあえずクスリを買うよ。その後にみんなの所に行くから!」
ヤンガスが情報屋の場所を教えてもらった後に、はクスリ屋に向かう。

クスリを買うと、急ぎ足で
の眠る宿屋へ向かう。猛スピードで階段を駆け上がり、部屋へ入る。
 
!クスリ持ってきたよ。飲める?」
「ん・・・」
真っ赤な顔でがベッドから勢いよく起き上がる。
今朝のように、また
は頭をぶつけ合った。
「・・・うおう!ごめん
「〜〜っ!」
は頭を痛そうに押さえながらも、すぐに大丈夫と笑顔を取り戻した。まだ、痛かったんだけど。

コップに入った水とクスリを、
に差し出す。
 
「・・・っ」
「クスリ飲めた?」
「・・・うん。ごめんね、色々迷惑かけて・・・。ありがと。みんなのとこ行っていいよ?」
「迷惑なんかじゃないよ。僕こそ気付いてあげられなくてごめん。・・・大丈夫?」
「ううんっ!あたしが悪いんだから!みんなの足引っ張るようなことして」
「いや僕が・・・」
「いや私が・・・」
 
こんな言葉をずっと繰り返す2人。ついにの何かが切れた。
「っああー!じゃあもういい!2人とも悪い!おっけー!?」
「へっ!?・・・ああ、うん!もうそれでいいでしょー!」

2人の間には和やかな雰囲気が流れる。
 
「じゃあ僕はみんなの後追いかけるけど・・・」
「うんっ気をつけて。私は元気だからっ!」
 
は今ある体力を使ってに笑いかけた。その笑顔を見て、を安心したようだ。
 
「じゃあ行くね。ここ出た酒場にトロデ王がいるから、何かあったら・・・行ける?」
「酒場ね?OK。大丈夫」
そっか。じゃあ、とゆっくり静かにドアを閉めるはまたベッドに倒れこんだ。
 
 
数分後。あのクスリを飲んだおかげか、かなり体調が良くなった。
に会いたくなった。でも体力のない自分が行っても足手まといになるだけだ。
は、トロデでもいいから会いに行こうと思った。
 
 
宿屋を出ると、姫様の隣に誰かいた。かなり慌てている様子である。
「・・・誰?」
が声を掛けるとものすごい顔で、ビックリした様子だった。
すると姫様を引っ張って逃げていった。
「ああ!待て、ドロボー!」
は今ある力を精一杯に使って、姫様をさらっていった悪党を追いかけた。
不意に、後ろから2人くらいの誰かに腕を掴まれた。さっきの泥棒の仲間だろうか。
2人は
の口を塞ぐと、ズルズルとひきずって、どこかの家に連れ込んだ。
 
 
バンッ!
 
「いったい!何すんのよ!」
「・・・邪魔すんな」
「るっさいぃ!触るな!離せ!」
ジタバタと動いても、今の病人のには全然力が入らない。しかも男2人だ。叶わない。
「まったく大声で叫びやがって」
「証拠消しにでも・・・ヤるか?」
キリ、とナイフをひとりの男は取り出した。その会話を聞いて、ナイフを見て。
は更に寒気というか、怖くなった。頑張って力を入れて体を動かしても、意味はない。
 
「やめてっ・・・!離してよ!・・・!」
ッ!?」
ドアの開く音がして、そこには、ヤンガス、ゼシカ、ククール。みんなの姿があった。
 
「みんな・・・」
「・・・!あんたら
に何してんのよ!?ただじゃすまないわよ?!」
ゼシカが呪文を唱えると、いつもより迫力のあるメラ一発でしとめた。
 
「大丈夫!?!?」
「う・・・うん・・・。強盗に姫様が盗まれちゃって・・・私追いかけたら、途中でこいつらに捕まって・・・」
は怖さで泣き出した。それにが背中をさする。
「・・・もう大丈夫だよ・・・安心して」
「ふっ・・・う゛〜〜〜〜っ・・・」
ボタボタと地に落ちるの涙を、そっとがぬぐった。
 
「・・・あいつら見てたらムカつくぜ」
ククールがニヤッと笑った。
 
 
街の人たちの話を聞くと、闇商売の店へ、酔いどれキントが持って行ったそうだ。
急いで追いかけて闇商売の店へ行った。するともう買い手が行ってしまったという。
「またややこしい話になっちまったな・・・とりあえずそのキトンとかいうやつんとこ行ってヤるか?」
「キトンじゃなくてキントよバカリスマ。でもその意見には大賛成よ」
ククールとゼシカは武器を構えて、キントの家と言われる場所へ向かう。
 
 
 
 
 
「997、998、999・・・1000!やっべー1000Gだ!もう飯に困らねえな・・・」
キントはウシシと笑う。たちの姿があるのも気付かずに。
 
「その金は・・・ワシの姫のものか?」
「ヒイッ!」
いきなり緑の魔物に話しかけられて、キントは肩を揺らした。
ヤンガスが拳をポキポキと鳴らしている。
「うあああああ・・・!もしや馬の持ち主っ!?殴らないで!殺さないで下さいっ!こここのお金は返しますから・・・」
「当然でがすよ」
ヤンガスが当たり前と行った感じで、1000Gの入った袋を取り上げた。
ちょっと名残惜しそうに袋を見つめるキントを、更にコワモテな顔のヤンガスが睨むと、う゛う゛とキントは縮こまった。
 
「馬を買ったのは誰だ?」
「へえ・・・僕が売りに来た時にいた人で・・・たしかゲルダさんとか言う人でした」
「・・・何い!?ゲルダだとーーーーー!?」
ヤンガスの顔が青ざめる。
「あっそれって、だいぶ前にトラペッタで言ってたヤンガスの知り合い?」
「知り合いも何も悪友って感じでげすよ。女盗賊なんでげすけどアッシのことをかなりいびるんでげすよ。
・・・まあアッシのせいでもあるんでげすけど」
ヤンガスがハーッとため息をつく。
 
「とにかく早く行くのじゃぞ!一刻も早く姫を助けださねば・・・!」
 
トロデは今までに見たことのないくらい、あたふたしていた。

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あとがき
ヤンガスの出番大目にしてみた。だって故郷だしね☆(何

2008.10.26 UP