喪服をかぶったお城


「じゃあワシとミーティアはまたここにおるからな。情報収集したら帰って来るんじゃぞ」
トロデはそういうと、城の入り口の横に馬車を止めた。

あの教会に泊まった後、また随分と歩いたと思われる。
は姫様の上に乗りたいという、アホなことばかりを考えていた。
外は、の世界で言えば秋の5時くらいといったところだ。
少しだけ辺りが暗くなり、オレンジ色の空になってくる。
そんな時に次の街・・・いや、城を見つけた。
城といっても
やトロデ曰く、トロデーン城よりはだいぶ小さいらしい。
世界一のサザンビークとは比べ物にもならんとトロデは言う。
「とりあえず入ろう。早くしないと夜になるから、人もいなくなっちゃうし」
「にしてもなんか、静かだよな・・・この城」
「確かにね。この時間ならまだ人がいるはずよね?外にまで賑やかさが伝わってこないっていうか・・・」
城に入るまでは、コンクリートの緩い坂道があるのだが、城に入るまで、ゼシカたちはそう話す。
え、何みんなエスパー?私には全然そんなん伝わってこないんですけど・・・。
 
城に入ると、確かに人が全然いなかった。所々に人がポツポツといる。
「うわわ、この城の人たち寝るの早っ!!
「いやどう考えてもちがうでしょ
。この国、最近誰か死んだりしたんじゃないかな」
「え、何で?」
が指差す方向は、城の真上に突き出す塔のような建物。その頂上から、黒幕が掛かっている。
「ああいうものが掛かってるってことは、国王とか王妃が死んだときに使うんだ。
今この国は喪に服しているんじゃないかと思うんだ」
は少し考え込むようにして、みんなに伝える。
「さすが元近衛兵ね、よくわかってるわ」
「はーっやっぱアッシの兄貴でがすな」
 
よく見れば、店たちも全て閉まっている。城下町にいたおばあさんに事情を聞くことにした。
「2年前に王妃シセル様がお亡くなりになったんじゃよ。それで国王さまがずっと心を閉ざしておるのじゃ。
それからずっとこの国は、喪に服しているんじゃが・・・あんたらもタイミング悪いのう・・・。
今だと王様の話を聞くことなんて出来んじゃろうしなあ・・・」
おばあさんは悲しそうな顔をして、話をしてくれた。
は礼をすると、お城の中に行ってみようと言った。
 
「(うわーーっ!お城っていったら日本だと和風のやつだもんなあ・・・!
洋風のお城なんて本物でも入ったことないし、興奮する、フンーーッ!)」
少し鼻息を荒くしながら、は皆と城に入っていくのだった。
 
「うわー噴水!すご!ちょ、なんで階段が二つもあんの!どっちから行っても同じだろーに!」
興奮しまくるの口を、ククールが塞ぐ。
「お前なあ、さっき聞いたろ。喪に服してんだこの国は。ちょっとは静かにしたらどーだ」
「うえあっ!すんませんねえこういう建物は始めてなもんでー!」
ヘヘヘとは頭を掻く。
 
話を聞きながら城の中を回るが、誰もドルマゲスのことなんて知らなかった。ついに屋上まで来てしまった。
屋上に行くと、遠くを見つめる王様がいた。
「あの人が・・・王様?」
「2年も塞ぎこんでるヒキコモリ王ね。私はサーベルト兄さんが死んだ時は潔かったわよ!」
「ゼシカ、兄妹の愛と夫妻の愛ってのは違うもんなんだぜ?」
ククールがゼシカの肩に手を回して言う。ゼシカは即座にククールの手を抓り上げた。
 
「王様」
たちのいる階段の後ろから、髪の毛を高いところで一つに結んだ金髪の、小間使いが現れた。
その少女は、
たち一行に礼すると、王様の近くに寄っていった。
 
「パヴァン王様。お食事の時間です」
「・・・・・・・・・・」
「・・・今日もお召しにはならないのですか?」
「・・・・・・・・・・」
「・・・わかりました。お部屋に置いておきますので、食べてくださいね。少ししたら食器の方をお下げにまいります・・・」
 
少女は何も言わない王に話しかけるのをやめた。
王に礼をし、通り過ぎる際に
たちにもう一度礼をして、階段を降りて行った。
たちは少女の後を追いかけるために、階段を降りた。
 
「あの!」
「・・・あ、さっきの・・・」
少女は振り返ると、そう言った。
「えと・・・その・・・王様は最近何も食べてないのですか?」
「・・・はい、そうですね。いつも食器を下げにいく時も、一口も食べたご様子はありません。
このままでは、王妃様だけでなく王様まで・・・。王様はきっと、王妃様の元に行くつもりなんではないかと心配で・・・」
少女は下を俯いて、今にも泣き出してしまいそうな声で話す。きっと王様のことを大切にしているのだろう。

「王様は・・・いつも夜になると王座のところで泣いているんです。もうしばらくしてから来て見てください・・・では」
少女は振り返ると、キッチンのある部屋へと行ってしまった。
 
 
夜になってから、もう一度たちは城にある、王座の間へ急いだ。
王座に顔を伏せて、嘆く王の姿がある。
「・・・・・・・・・」
ただ沈黙が流れた。いても立ってもいられなくて、皆はその場を後にした。
 
 
「やはり、王様は泣いておられましたか?」
少女は、城を出ようとしたたちを、引き止めた。その言葉に、はうなずく。
「やっぱり・・・。早く何とかしてあげたい・・・王様が立ち直れるように。
確か私のおばあちゃんのおとぎ話では、願いを叶えられる丘があると聞いたことがあるけど・・・忘れてしまいました」
 
はその話を聞いて、あることを思いついた。
「あの、そのおとぎ話、知ってるかぎりでいいので教えてくれませんか?」
「・・・確か・・・満月の夜にだけ、ある丘で神秘的な世界が作り出されるとか・・・どこの丘かはわかりません」
「僕たちが、聞いてきます。おばあさんの家を教えてくれませんか?」
の目は真剣だった。心の優しいだから、国を助けたいと思ったのだろう。
少女はその
の行動に、目を輝かせた。
 
「ありがとうございます!私のおばあちゃんの家は、ここに来る途中にある教会の近くなんです!」
ゼシカがその話を聞いて、ひとつ閃いた。確か、教会の手前にある民家。
 
「わかりました。みんな、今日は遅いから明日行ってみよう。今日の月の満ち欠けなら、明日くらいは満月なんじゃないかな」
はにっこり笑った。
その日は、アスカンタの宿に泊まることにした。
 
 
次の日、相変わらず暗いこの国を、ルーラでたちは、あの川沿いの教会へ行く。
そこから、少女のおばあさんの家と思われる民家へ行く。
民家のドアをノックして入ると、テーブルの回りに旅をしていると思われる兵士が2人ほど座っていた。
その奥に、糸を紡ぐおばあさんが一人、座っている。あの人だろうか。
 
「あの・・・」
「あら、どうされましたか?」
「私たちは、城にいるお孫さんに頼まれてきました。満月の夜に願いが叶う丘というおとぎ話の話を・・・」
「ああ、キラのことだね。わかったわ、ちょっとここにお座りなさい」
どうやらあの小間使いの少女はキラというらしい。
たちは言われるがままに、指定された椅子に座ることにした。
 
「私の家を裏側にまわったら、川沿いへ出れる道があるのよ。そこからずっと行けば、洞窟があったりするの。
その中をくぐって、丘を登って・・・そうしたら、頂上へつくんですよ。
満月の月が頂上まで登った時、ある世界へたどり着く・・・と本に書いてありますよ
ドゴォ!と音を立てて、5人は椅子から転げ落ちた。本に書いてるって!あんさんが知ってる情報じゃないんかい!
 
「あらまあ吉本○喜劇みたいなことして・・・」
うっひゃ知ってたよこのばあちゃん!!一体何なんだこの世界・・・。
「あ、ありがとうございます。みんな、行こう」
は苦笑いといった感じで、みんなを外へ促せた。
 
「にしてもさっきのばあちゃん面白かったでがすなあ!天然っていうか・・・」
「可愛いおばあちゃんだったねえ〜」
次々と襲ってくる強敵な魔物を、たちは苦戦しながらも倒して行く。
丘の頂上までの道はかなり険しい。ぜえぜえと息を切らしながらも歩く。

「にしてもホントに願いが叶うのか?これで叶わなかったらまじであの婆さん恨むぜ俺は」
恨む前に丘の頂上から落ちて死になさい。私が背中押して上げるから
ゼシカはニッコリと、ククールに笑いかける。悪かったよとククールは謝る。
 
「暗くなってきたね。早く登らないと、夜が終わっちゃうかな」
が心配になってきたころ、頂上についた。
頂上には、窓枠のようなものと、その反対側に崩れ落ちた壁のようなものがあった。
「なんだここ」
「わかんないけど、とりあえず真上に月が来るまで待ちましょ」
そういうとゼシカは、落ちている岩に腰を下ろした。
 
は、窓枠の近くに寄った。窓枠には草が巻きついている。
その草を引きちぎったりする。
時々空を見上げる。月が、近くに見える。もちろん星も。
、何してるの?」
「うん、ちょっとね。綺麗だなーって思って」
が話しかけてきたので、は一瞬を見て、また視線を空に戻した。
「確かに綺麗だよね。月がめちゃくちゃ近くに見えるし」
「うん・・・あともうちょっとかな、真上まで」
は手をグーにして、段々積み上げていったりとか、周りを見回したりする。
そんな無邪気な
を、はかわいいなと思った。
 
月が真上に来た。けど、何も起きない。
「なんだよ、なーんも起きねえじゃねえか。やっぱ婆さんを俺はうら「ひもなしバンジージャンプまで5秒前
ゼシカはククールを頂上の丘の際まで押す。「ヤメレ!」とククールは泣き叫ぶ。
そんな時。
「「ん?」」
ゼシカとの目に入ったもの・・・それは。
窓枠の影が、向かい側にあった崩れている壁に、扉のように映し出されていた。
周りは、キラキラと光輝いている。
「みんな、ここ!」
がはしゃぎながら、その扉のような場所に近づく。
 
「何かありそうだね」
「どういう仕掛けかしら」
「全然わっかんねーでがす」
「俺も」
んーと悩む以外の4人を後ろに、は影に触れた。
その瞬間、
の触った影から、更にまばゆい光が放たれた。
「「「「「!?」」」」」
影は、扉のように真ん中で開いた。
たちは驚いた顔をしながらも、吸い込まれるようにして、開いた扉の向こう側へと入っていく。
 
 
 
 
 
 
 
扉の中は、本当に神秘的な世界だった。
歩く場所は丸い盤のようなものが8個ほどある。その盤と盤の間には、見えない通路がある。
そして一番奥には、家がある。
 
「あそこの家に誰か住んでるんでがすかね」
「こんなとこに住んでる人なんて、気持ち悪いったらありゃしないわね」
そらそーだ。満月の月の時しか現れないこの世界に住む住人とは・・・。
「まあでもロマンチックな場所よね。まるで絵本の中に入り込んできたみたい」
いやあんたはゲームの世界の人ですから!!!
 
 
「とりあえず、あの家の中に行ってみよう。その人が願いを叶えてくれる人かもしれないし」
見えない通路は落ちるわけないのに少々怯えながらも、5人は家へと足を運ぶのだった。

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あとがき
今回・・・つまらんですね・・・

2008.10.13 UP