バカリスマのお話


もうどれくらい歩いただろうか。
はふと思った。
リーザス村からポルトリンクの間と同じくらい、歩いている。 
「ふえ〜・・・まだ次の街までどれくらいあるの、?」
「まだ僕ら半分地点も行ってないよ。その間になんかちっちゃい建物があるみたいだけど・・・この地図では」
 
はマルチェロにもらった世界地図を見ながら困った顔をする。
まだ半分も行ってないとは。その地図書いた人ウソついてねえだろうな。
 
あー、姫様の背中に乗って走りたい。てか走れ姫、馬なんだから。
と、とても
に聞かれたら殺されてしまいそうな思いを、は心の中で呟いていた。

 

「にしても遠いな。修道院からこっち側に来たことねえからな〜」
「ほんと役立たずね・・・。ルーラいつ唱えてくれるかと思ってたのに」
仲間に加わったククールは、次の街まで行ったことがないと言う。
ゼシカも結構、ククールの言うことにツッコむのも嫌いではなさそうだ。
 
「なんかこうね・・・あんたみたいなヤツにピッタリな言葉があるのよ」
ゼシカは腕を組みながらククールを見る。
う〜んう〜んとうなりながら思ったゼシカの、ククールにピッタリな言葉。それは。
 
「バカリスマ」
 
「おまっ・・・それバカでけなされてんのか、カリスマで褒められてんのかわかんねーんだけど」
「もちろん、けなしてるわ
うっ、とククールの顔がひきつる。ゼシカは思い出してスッキリしている。
「もう2人とも、これからはお互い助け合ってく身なんだから仲良くしなよ?」
「いや、兄貴。あの2人はああ見えて楽しんでるでがす。まあ喧嘩するほど仲が良いって感じでがすよ」
「そーだよ、あれでいいんだよ。まあ喧嘩なのかは怪しいとこだけど。イチャついてるようにしか見えないかも」
3人は微笑ましく見ていた。
 
 
 
「あ、あれが地図に載ってる建物かな」
外はどっぷりと暗くなり、魔物も多少強くなって来てヘロヘロな時だった。
運よく、建物を2軒見つけた。
「橋の前のは民家かしらね。向こうは教会じゃない?」
ゼシカが民家と思われる家と、教会っぽい建物を見比べる。
 
「教会なら泊めてくれるんじゃねえか?そろそろ体力も限界だし、頼むだけ頼んでみようぜ」
「そうだね、行ってみよ」
5人と2匹は駆け足で、教会へと足を運んだ。
 
 
 
「くあーっ、俺たち運いいよなー。まさかなんか記念日とかでタダなんだもんな」
「そういうこと大声で言わないでよね、バカリスマ」
「・・・おいおいゼシカ、一応俺にだって名前あるんだからよ。バカリスマじゃなくてククールって呼んでくれよな」
「気が向いたらね」
ダメだこりゃ、と言った顔でククールはため息をつく。
 

 
 
 
 
満月の月が、真っ暗な夜の草原を照らす。
夜はちょっと冷える。はベッドから起き上がり、ハンガーに掛けてあるカーディガンを羽織ろうとした。
だが、1人ベッドにいない事に気付く。
、ヤンガス、ゼシカはいるってことは・・・ククール?」
辺りを見回すが、いない。教会の礼拝席にでもいるのかと思ったが、シスターと神父しかいない。 
「あのー、ここに赤い服の、銀髪で長髪の男の人が通りませんでしたか?」
「あら、さっき教会から出て行きましたよ」
快くシスターは教えてくれた。はありがとうございますと礼をして、外に出て行った。
 
 
扉を開けてすぐに、道を挟んで向こう側に、赤い服をきた男を見つけた。
その横にはチョコンと、切り株に座るトロデがいる。

「あの2人・・・何してんのかな」
は以外な組み合わせにちょっと噴き出しそうだった。

声を掛けようかと思ったが、なんかあの世界には入れそうになかったので、
は玄関の傍にいるミーティアの頭を、しゃがみ込んで撫でていた。
ミーティアも
の顔の高さまで顔を下げてくれた。
 
「姫様・・・あの2人何話してるんだろうねー」
「ヒヒ・・・(さあ・・・)」
「ククールが王様に心開けるなんて、なんか以外だね。結構ガードしてそうなのに」
は2人をチラ、と見て少し笑った。
「トロデ王ってさ、結構和むんだよね。一緒にいて。だからククールも今、心の内を言ってるのかもね」
「ヒン?(そうなの?)」
「うん。なんでだろうね。気持ちが暖かくなるって感じかな」
「ヒヒ・・・ヒヒン(そう・・・私にはわからないわ)」
あれ、私なんで姫様の言うことわかるんだろというと、ミーティアはブルブルと首を振った。
はしばらく姫様の頭を撫でていた。
 
 
 
 
「あれ、じゃねえか。どしたんだこんなとこで姫とオシャベリか?」
「おお、ほんとじゃ・・・ふあああああああワシャ寝るぞ」
トロデはあくびの後一息つくことなく寝る宣言をして、馬車の中に入って行った。
 
「・・・何話してたの?王様と」
「ん、まあちょっとな」
はしゃがんだままククールを見上げて話していたのだが、また姫様の頭を撫でて俯きながら、話を続ける。
「何、なんかあったか?」
「・・・別に。ククールって王様にはしゃべれるんだなーって思って。心和むとは私も思ってるけど・・・さ?」
ククールはちょっとキョトンとした顔で、を見る。相変わらずはしゃがんで俯いている。
 
「それってヤキモチか?」
「はひ!?何言ってますのか!!私にはスキな人がはーーー!」
「ん?だろ?」
の顔がボッ!と真っ赤になる。ククールはニヤニヤと笑う。
「やっぱりなー。見た時からそう思ったよ」
「そ、それゼシカにも言われたよ〜・・・。何、それってみんな気付いてるの?」
「ああ、たぶんヤンガスもな。気付いてないのだけだぜ?」
サーッとの顔が青くなる。赤くなったり青くなったり、どうしたものか。
「ゼ、ゼシカという女の子だけの秘密の話なのに!」
「んなの知らねえよ。まあ本人気付いてないんならいいんじゃねえか?」

ククールはハッハッハッと笑う。
「良くないよんなもん!もしに誰かが告げ口したらどうしようとか考えるじゃん!」
「んな性の悪いことするやついねーだろ。はいい奴なんだからさ」
プーと頬を膨らます。ククールはの頭をポンポンと撫でる。
 
「トロデ王に話してたのは、俺が初めて修道院に行った時のことだよ。それと兄貴と仲の悪い理由」
「・・・簡単でいいから教えて!」
「・・・しゃーねーなー」
ククールは教会の裏に回って、壁にもたれかかる。もその横に座る。
 
 
「寒・・・あれ、がいないわ。・・・後バカリスマ」
ゼシカもと同じように目覚め、心配して外に出る。
どこからか小さく、
とククールの声が聞こえた。声の方をゼシカは耳を澄ませていった。
 
 
 
「俺の父さんは、母さんと子供産もうとしたんだけど、俺がなかなか出来なくてさ。
親父、仕えてたメイドに子供産ませたんだよ。その子供があいつ・・・マルチェロだ。
でも産まれた頃に母さんに俺が出来たんだ。そしたらメイドとその子供には用なし、屋敷から出て行かせた。
まあマルチェロとは言えば異母兄弟って訳だな。それで俺は兄貴に恨まれてるってわけだ。
マルチェロの母・・・つまりメイドはストレスか何かで死んで、あいつは修道院に流れついた。
俺の母さんは、俺を産んで死んだ。親父も酒の飲み過ぎタバコの吸い過ぎのせいで死んじまった。俺も修道院へ流れ着いた」
ククールの長話を、は時々ククールの顔をみて、また顔を下げてと繰り返して話を聞いていた。
ゼシカも、ククールたちに見えないように、壁に隠れて話を聞いていた。
 
「俺は少ねー荷物持って、右も左もわかんねえ状態で修道院を彷徨ってた。知ってる奴だっていない。
そんな中でさ、マルチェロは俺に優しい笑顔で声掛けてくれたんだぜ」
 
 
 
 
 
 
 
 
「君、どうしたの?親は?
「・・・お父さんもお母さんも・・・死んじゃったから・・・ここに来たんだ・・・」
「そっか。僕も似たようなものだよ。でもここではオディロ院長が親になってくれる、大丈夫だよ」
「う、うん・・・!」
ククールは寂しそうな表情から、笑顔に変わった。
その無邪気な笑顔を見て、マルチェロも優しく笑った。
「オディロ院長の場所まで連れて行くよ、名前は?」
 
 
 
「ククール」
 
 
その瞬間、マルチェロの顔つきが変わった。
 
 
 
 
 
 「『お前は俺の居場所をまた奪うつもりか』って言われたぜ。何のことかわからなくてさ。
その時はただただマルチェロが怖くて仕方なかった。さっきまで優しかったのにって。
純情なククールくんの心はこっぴどく傷つかされたってワケだ」
ククールはちょっと寂しい笑顔でに笑いかけた。
 
「そっか・・・そんなイヤな思いを・・・」
「ん、まあ別に寂しかったとかはなかったけどさ」
乾いた声で静かに笑い声をあげるククール。
ゼシカは2人の会話を、苦しそうに聞いていた。
 
「お、もう朝じゃねえか。話こんじまったな。そろそろ帰ろうぜ、。」
「そうだね。ごめんね、そんなつらい話を2回もさせちゃって。寒いのに・・・」
「別にいいよ。それで同情して俺に気持ち向いてくれれば「あ、ごめんそれは絶対ない
 
そのの言葉に必死にゼシカは笑いをこらえて、教会へ急ぎ足で戻って行った。
ククールが今頃ショックを受けているような顔をしているんじゃないかと思うと、笑いが止まらないゼシカだった。
 
 
 
「何、3人とも目の下クマ作って。大丈夫?」
「だーいじょぶだよー。」
気力ない声では手を横にブンブン振る。でも目はめちゃくちゃ眠そう。
3人というのはもちろんククールとゼシカと
だ。

 
「なんだよゼシカまでクマ作ってるなんて。眠れなかったのか?」
「・・・寒くて寝れなかっただけよ。私冷え症だから」
とても昨日ククールとの話を聞いていただなんて言えなくて、とっさに冷え症だなんて嘘をつく。
 
「ククール」
「えっ!ゼシカ、今俺のこと・・・」
「何よ?」
「いっつもバカリスマって言ってたのに、どういう風の吹き回しだよ」
「どういうって・・・こういう風の吹き回しよ」
そういうとゼシカはにバギを唱えてもらう。
その風に乗ってゼシカはグルングルンと宙を回る。
そのゼシカの行動に、バギを唱えた
と、ククールは目を丸くした。

「ゼ、ゼシカ!?お前そういうボケキャラだったけか?」
「べ、別に。たまにはボケたいわよ」
「いやいやボケたいって何ソレ!お前はツッコミっていうイメージが頭の中で作り上げられてるのにぶち壊しじゃねえか!」
ククールはマジで驚いている。
「いいでしょ、別に。ククールには関係ないじゃない、勝手にイメージ作り上げないでよね」
「ほら、またククールって呼んだ。どうしたんだよ」
「・・・何にもないわよ。ただ気が向いただけだもん!」
 
フン、とゼシカはククールの隣にいたのに、追い越していった。
気が強いけど、時には可愛い。そんなゼシカの後姿を、ククールは優しく笑って見ていたのでした。チャンチャン。

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あとがき
な、何このククゼシ小説!
結構可愛く書いたつもりなんだけどねーゼシカがついにボケに回ってしまいましたよ。
ククゼシ好きっこには萌えて頂けたらいいなあ・・・。
あ、主人公の出番があまりにもなくってすみません!数えたら名前6回ぐらいしか出てきてない!←最悪

今思ったけど、私のかく小説ってヤンガス存在感薄い・・・(酷

2008.10.12 UP