幽霊のような魔物のような
「うおおおおお〜・・・」 ゴゴゴゴゴゴと岩と岩が擦れるような音がすると同時に、旧修道院跡地へと続く地下への階段が開いた。その迫力にはまるっきり女を捨てた声を出す。 ここは旧修道院跡地の入り口。
「さ、入るよ」 「イヤーー!!待ってください待ってくださいよさんよ!」 「・・・?どうしたの」 呆れた顔でを見るやヤンガスにゼシカ。
「・・・大丈夫よ、心配しなくても。幽霊なんているわけないんだから」 「そんなこと言っちゃっていいのゼシカ!!!呪われてもわたしゃ知らんよ!知らんぜよおっ!?」 ぶるぶる震えるだ。そんなの首回りの後ろをゼシカは掴んだ。 「いいの。さ、行くわよ」 ずるずるとを引きずりながら階段を降りて行くゼシカ。しばらく呆気にとられて口をポカーンと開けているとヤンガスは我に返り、ゼシカたちの後を追ったのだった。
ガサッ 「ひいっ」 少しの物音にびびりまくる。正体は魔物だったので、それに気付くとは 「紛らわしいんじゃボケェェェェッ!!!」 とかなり怒りながらメラミの火の玉をぶっぱなした。
「、そうとう幽霊が嫌いみたいでがすね」 「んーまあ女の子だし無理ないような気もするっちゃするけどね・・・」 「いるわけないわよお化けなんて!そんなことよりさっさと行かないと院長が危ないわ」 ゼシカは結構そういうのに強いようだったが、は見抜いた。 「ワアッ!!!」 「「キャアア!?」」 が大声で脅かす。の肩がかなりビクッとなっていたが、その横でゼシカの肩もビクッとなっていた。 「・・・もしかしてゼシカも、そういうの無理な人?」 「う・・・ーーーー!?」 ゼシカがかなり悔しそうな顔をしながらを睨む。 「そんな強がらなくていいのに。怖いなら怖いでいいだろ?女の子なんだし」 「私はみたいに女の子の中の女の子じゃないんだもん!おばけが怖いなんて・・・似合わないじゃない」 ちょっと拗ねたように、頬を膨らましながら言うゼシカ。 「そんなことないよ!ゼシカかわいいし!ちゃんと女の子じゃん!!むしろ私よりも!!!」 仲間が見つかったから嬉しいのかわからないがはかなり嬉しそうだ。 「・・・うん・・・。わかったわ・・・」 「えへっ」 こんな息苦しい廃墟の中でもやっぱり女の子の友情ってすばらしいな、と思うとヤンガスだった。
その後もひょいひょいと修道院の跡地の中を進んでいくたちご一行。
「さあー次もかかってこいや魔物さーん♪」 さっきまでの怖がっていた気はどこへ行ったというばかりに元気ハツラツオロナ○ンCな。
・・・だがそこにはいつものように、ガランとしたフロアではなかった。 とーーーっても気色の悪い何者かが、部屋に立ちはだかっていた。
「キャーーーーーーッ!!」 「ひょえーーーーーー驚きましたですよーーーーー!!」 当然なのだが前者の叫び声がゼシカで後者はなのである。今までに見たことのないような奴で、おそらくゾンビだと思われるのだが。幽霊が大嫌いで怖いなとゼシカは、雄叫びをあげる。
「何者だ!?」 「クル・・・シイ・・・」 が剣を身構えると、ゾンビはそう言った。
はっ、とはククールの言葉が頭に浮かんだ。 「感染症で潰れた廃墟がな。今じゃ幽霊がうろついてるって話だ」 感染症で潰れた廃墟。それで死んでしまった人々が幽霊になって、うろついている・・・。そうだ。きっとこの人は感染症で死んでしまったんだ。苦しいんだ・・・。
「ワタ・・・シハ・・・コノ・・・修・・・道院ノ・・・院長・・・ダ・・・ッタ・・・」 とても苦しそうな声で必死に話す幽霊。 「コノ院ガ・・・感染症デ・・・ツ・・・ブレテ・・・私ハ・・・トテモ悔シカッタ・・・」 「「「「・・・」」」」 苦しい。とても、苦しくなる。死んでしまった院長の苦しみが、足の先から頭の頂点にまで伝わってくるような、そんな感じだった。
「ズット・・・コノ院ヲ・・・守リタカ・・・ッタ・・・。コノ苦シミヲ・・・オ前達ニモ思イ知ラセテヤル・・・!」 「ええ!?何でそうなるの!?」 吃驚した様子のにお構いなしに、かつて院長だったそのゾンビは達に呪いをかけた。 「きゃあ!」 いやな音をたててゼシカたちに襲い掛かる。一瞬で体が重くなった。動かすことができない。 ただだけが、呪いが体の前でかき消されていた。 「・・・えっ・・・?!」 呪いがかき消される!?バリアでもしてたの? そういえばは、自分の仕えていた城が呪われた時、自分は呪われなかったと言っていた。やはり何か、呪いに対して強い耐性を持っているのかもしれない。 は呪いをかき消す魔法なんてなく、ただ呪われているみんなを心配してオロオロしているだけだった。しばらくすると呪いが解け、いつものように体が軽くなった。
「僕も何もできなくてごめんね。・・・じゃあ・・・頑張ろう!」 「うんっ!!」 とがパン、と手を叩き合うと、二人で攻撃に出た。
わかってる、この人は悪い人なんかじゃない。きっと成仏できないだけ。
4人で一人ずつ攻撃しながら、向こうが攻撃してくる隙を与えない。時々攻撃されることもあったが、のベホマラーなどで、なんとか体力を補うことができた。 相手もかなり、死ぬ寸前・・・いや、もう既に死んでいるけど・・・。
「「「え?」」」 てっきり最後までやると思っていた3人は、の言葉に驚いた。
「・・・院長さん」 「・・・ッ・・・ナ・・・ンダ?」 は躊躇することなく、ゾンビになっている院長の手をそっと握った。ヌメヌメしていて少し気持ち悪かったけど、は目を瞑った。 「・・・」 ゼシカが心配そうに、の行動をただ見つめていた。
「・・・無理、しないでください。苦しかったですよね、悔しかったですよね・・・!」 「オ・・・前・・・ハ・・・何・・・者ダ・・・?」 院長はに問うた。 「・・・私はただの旅人です。・・・みんなの所に・・・早く行きたいんですよね?」 「・・・・・・」 2人の会話を、見つめる3人。は、は一体何者なんだ、そう思っていた。 「ソウ・・・ダ・・・。私ハ・・・早ク・・・皆ノ所ヘ・・・修道院ニイタ皆ノ所ヘ・・・」 「強く願ってください。きっと・・・ううん、絶対大丈夫です。みんな待ってますよ、あなたのこと!」 がそう言って笑い、強く握ったその手から、白い光が現れた。 「アリガ・・・トウ・・・」 そうに告げながら。
「・・・一体何したの?」 「え?何もしてないよ」 「嘘でがしょ?アッシらは見てたんでがすからね!」 「ほんとに、何にも私はしてないよ」 は優しい笑みを浮かべながら話した。 「私は何もしてない。ただ、成仏して楽にさせてあげたいって・・・そう思っただけなの。後は、あの院長さんがどう思ったか・・・それだけだよ!」 「・・・」 の優しい心に、は微笑んだ。もちろん、ヤンガスもゼシカも。
先に進むとはしごがあり、そこから・・・外に出た。
あとがき 2008.09.15 UP |