2階からイヤミ

 

「だーからーっ!!通せって言ってるじゃない!」

「関係者以外の立ち入りを禁ずるとの団長のご命令だ!お前らのような小汚らしい旅人を中に入らせることはできん!」

修道院の広場ではゼシカと騎士団の男二人が揉めている。
は、このまま任せてよいのか止めればよいのかとあたふた。
ヤンガスはというと、相変わらず鼻をほじほじ。

それにしてもゼシカは本当に男勝りだな・・・。ちょっとうらやましい。

 

 

「この指輪があっても宿舎に入るのは無理だって言うの!?私はさっさとククールとかいう男にこれを返せるんならそれでいいんだけど!」

「まったくうるさい女だな!女だからって容赦しないぞ!?」

二人のうちの一人の男がゼシカを突き飛ばした。

「きゃっ・・・」

ゼシカが後ろによろめいた、その時だった。

 

バン!

頭上から何かが音を立てた。
皆が上を見上げると、窓から身を少しだけ乗り出して、M字デコ男がこちらを見つめていた。

 

 

「手荒なまねをするなと言っただろう!全く、お前たちに騎士団を務める資格などない!」

「「す、すみません!」」

「・・・フン。すみません、大丈夫ですか旅人さん。ですがうちもそう やすやすと旅人を入れることはできなくてね。・・・申し遅れました、私は聖堂騎士団団長のマルチェロです」

「は、はあ・・・」

が気のない返事をすると、気に入らなかったのか少し顔をしかめ、話を続けた。



「・・・そのククールとかいうやつに指輪をすぐ返して帰るなら、中に入ってもよろしいでしょう。では」

「あっ、ちょっ・・・話を・・・」


が呼び止めようとしても聞き入れず、マルチェロと名乗る男は窓を閉じてしまった。

果たしてあのM字デコ男は、マルチェロのマのMAのMでデコがあんなことになっているのか、非常に気になる4人だった。
 

「ふーん・・・アイツ、命名 2階からイヤミね」

「何を言っている?そこの女」

「うるさいわね、独り言よ」

「フン、全くお前らのせいでマルチェロ様に怒られてしまったじゃないか!・・・チャッと渡してチャッと帰ってこいよ」

男たちはそう言うと、宿舎への入り口のドアを開いた。

 

 

 

けたすぐそこには、背の低い可愛らしい修道士いた。修道士はてっぺんハゲにする戒律でもあるのだろうか。
その人にククールの居場所を、
聞くことにした。

 

「あの〜・・・。ククールとか言うキザでイカサマ野郎で女の子を口説くことしか考えてなさそうなアホ
どこにいるか知りませんか?」

「す・・・すっごい言い方ですね・・・。ククールならそこの牢獄に入っていきましたよ、さっき団長と」

修道士が指差した方向は、地下に続く階段。その先は真っ暗で、いかにも牢獄という感じである。

 

 

 

「ありがとうございます。行こ、みんな」


が階段へ行くと、続いてみんなはの背中を便りにしながら、真っ暗な階段を降りていった。


「わわっ」

「大丈夫?足元、気をつけて


気付けば、
の手を握っていた。きっとが一度こけそうになったからだが・・・。ぱっ、との方向を向かなくなってしまったが、の顔は真っ赤だった。何せ耳まで真っ赤だったからよくわかる。
 

階段がやっと終わり、少し明るい場所に出た。それでもまだの手は繋がれたままである。ククールがいないかキョロキョロ周りを見渡しながら奥に進むと、誰かの会話が聞こえた。

 

 

「みんなっ伏せて!」

が小声でそう言うと、4人は一斉に伏せた。身長くらいの場所に窓があったからである。
ヤンガスは伏せなくてもギリギリ見えないけどね。

 

 

 

 

「お前はまた何かやらかしてくれたようだな。・・・お前がそういった騒動を起こすだけで我が修道院の品が落ちるのだが?」

「・・・もう知ってたのか、兄貴」

「・・・兄貴ではない!団長と呼べ!」

「はいはい、お偉いお偉い聖堂騎士団の団長さん。で、今回はどんな罰ですか?」

「フン、わかってるならよい。お前はしばらく謹慎だ。この院から一歩もでるな」

ククールと団長・・・確か、マルチェロ(2階からイヤミ)とか言う二人の会話のようだ。何故か兄貴と呼ぶククールだが、何の話だったのだろう。とにかくあのドニの町の騒動での、 ククールに対する処分を言い捨てたようだ。

 

 

 

・・・の・・・手を・・・えと・・・」

「え?」

が あの階段を降りる時のように、耳を真っ赤にしていたので、何だろうと手を見た。そこには繋がっている、の手。

 

 

 

「ちょーーーーーっとーかっちまいんのぼへ!?」

「? 誰かいるのか?かなり変な叫びが聞こえたのだが」

「(ひーーーっ!!)」

マルチェロが気付いてしまったので、たちは早足で、マルチェロたちのいる部屋からすぐある角を曲がった。

 

 

「気のせいか。・・・ククール、約束は守れよ。お前はいつも破るからな」

マルチェロが念を押した。ククールははいはいと返事をしている。その隙に、4人は地下牢獄を抜けて行った。

 

 

 

 

 

 

「もー、いきなり何叫び出すのよ!危なかったじゃない」

「びっくりしたでがすよ、かなりの雄叫びでがしたね」

「いんやっ!お・・・雄叫びじゃないもんっ・・・」

顔を真っ赤にしている。その姿をも見て、恥ずかしそうに俯く。ゼシカはそんな二人の表情を見て少しだけ感づいていた。そして初々しいなあ・・・と。

 

「ねね、こっちのドアに出たら院長室の方に出るんだよね?院長さんには会えなくても、他の人なら話聞けるんじゃない?」

「そうだね、行ってみよっか」

「了解でがすよー」


入ってきた方向から逆の方向のドアを開けた。そこには緑がたくさんの庭園。そして離島がある。その離島に、院長室が立っている。ステンドグラスが使われていて、神秘的で綺麗な建物である。

だがその離島へ続く橋の途中に、聖堂騎士団の男が2人、警備していた。

 

 

 

「あの・・・」

「なんだ?院長になら会わせられないぞ。何たって今はご趣味の時間だからな」

「趣味?」

「そうだ。院長はダジャレとか芸物が好きなんだ。今は道化師を呼んで、芸を披露してもらっているんだ」

道化師・・・?

 

「そっ、その道化師ってどんな感じの人でしたか!?」

「え?んー、ちょっと不気味な感じの奴だったな。院長が何であんな奴を呼んだのかもわからん。ま、そこがいいんだろうがな」

 

4人の脳裏に、サーベルトが殺されたときのあの映像が流れた。

不気味な笑い。長い髪の毛。道化師の格好。

どれをとっても、騎士団の男たちが言うことに、ドルマゲスが一致していた。

 

「あの!入らせてください、院長が危ないんです!」

「何を言っておる?ここは関係者と院長に呼ばれた者しか入ることはできんのだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ムカツク!!本当に入場制限の多い所ね!」

「しょうがないよ、教会とかんなんてきっと、みんなそんなもんだよ。特に偉い方なんかがいる場所はさ」
 

宿舎の方に戻ってきた一行は、ゼシカの愚痴を聞いていた。さりげなくフォローを入れたりと、順調に会話が進む。きっと相性がいいのだろう、この4人は。

 

「本当にこんなところ早く出たいわ!って・・・あれ、ククールじゃない?」

ゼシカの視線の先には、壁に寄りかかるククールだった。

 

 

「ちょっと!ホラ、この指輪!!いらないから返しに来たわよ!」

「ああ、あんたらか。すまねえがもうちょっと持っててくんねえか?」

「は!?何で・・・」

「院長室に怪しげな道化師が入って行ったと聞いた。このままでは院長が危ないと、俺は思うんだ」


ククールと考えていることは
たちと同じだったようだ。

 

 

「だが真正面から院長室には入れない。あの頑固な男2人がいるからな」

さっき話した男たちだろう。やっぱり通してはくれないようだ。

 

「そこで、なんだ。俺聞いたことあるんだけど、院長室に入るにはもう一通りあるってな」

「何!?どうやって!?」

「この修道院から出て、ドニ側に出る。出たらすぐ左に曲がって、修道院を見ながら・・・つまり川沿いに走るんだ。ずっと行くと、修道院の廃墟があるんだ。感染症で潰れた廃墟がな。今じゃ幽霊がうろついてるって話だ」

 

幽霊という語句に、の背筋はゾーッとなった。顔は青ざめている。

 

 

 

「その跡地は地下なんだが、入り口はその指輪をどっかにはめれば開くって話だ」

「それで、私たちがそこに行けばいいってことなの?その奥に院長室の入り口があるの?」

「お、お嬢さん大当たり!そうだ、奥まで行ったら院長室の裏にある石碑の下から出ることができる」
 

が言い当てると、ククールはにウインクを一発し、説明した。
ゼシカはその顔に、うげ・・・と言う表情で目をそらしている。

 

「俺も行ってやりたいとこなんだがちょっとした事情で院から出られなくてな。俺はここで道化師のこと見張ってるから、よろしく頼むよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほんっとに意味わかんないわねあのボサ男!何で私たちが行かなきゃならないのよ!」

「院長が危ないからでしょゼシカーっ」

「そうよそうなのよ!そりゃね、確かに兄さんのような犠牲者を出したくないけど・・・。ここの男たちは何かムカつくのよ!」
 

ゼシカは相変わらずプリプリ。ここに来てから、怒ってしかいない気もするが・・・。

ゼシカが嫌う人たちは皆、何か似ている気がする。勝手に決めつけるところとか。

 

 

 

「もうこうなったら行ってやろうじゃないの!そんで院長助けてヒーローになってやろうじゃないの!!」

「はっはっはゼシカがなったらヒーローじゃなくてヒロインだよねー」


その後
がゼシカに「リーダーの前提で考えたのよ」と言われながら1発、軽く頬をはたかれたりして、後ろでが絶叫していたのは、スルーしておきましょう。

 

 

 

でも本当に行くのか・・・幽霊には会いたくないよ・・・。

ゼシカに一発いれられた頬を痛い痛いとさすりながら、そう思っただった。

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あとがき
ゼシカがかなりウザキャラになってる・・・
大丈夫!今はSWEET TiMEでのゼシカの好感度が悪くても、我が愛しきゼシカちゃんは絶対に大丈夫!
すーぐに取り戻してあげるさっ☆←

2008.08.28  UP