イカサマー
「着いたじょーーー!」 「着いたねぇ」 「着いたわね」 「着いたでがす・・・!」
それぞれの声を発しながら、初めて踏み入れる大陸に四人・・・いや、はテンションはアゲアゲだった。
「何かいいものあった?」 「今使ってるのより攻撃力が強いのがあったの!後、盾もあったんだー♪」 「おお!よかったね、!僕はねー」 笑顔で話すとに、ゼシカがツッコミを入れた。 「あのね、あんたたち。武器や防具も大事だけどねー・・・。ドルマゲスでしょ?私たちの目的は」 「あ、そっか」 「みんなどうだったの?何かいい情報はあったワケ?」 「「「ううん・・・」」」 ゼシカを除いた3人が、縦でなく横に首を振る。ゼシカはため息をついた。 「・・・実は私もなの。ここには現れてないのかしらね、ドルマゲス・・・。じゃ、宿屋の中の人にも聞いてみましょ」
旅の主導権がなんとなくでなくゼシカになりつつある中、宿屋も調べることになった。
宿屋の中には屋上があったので、人がいるかもしれないということで、ゼシカたちは張り切って階段を登って行く。部活を最近、トリップのせいでやっていないは体力不足であり、息をものすごい切らしながら、みんなと屋上へ続く階段を登った。
「(これで屋上に誰もいなかったら私は階段から転げ落ちてやる・・・!)」 意味がわかりませんさん。
屋上に登ると、一人の少女がどこか遠くを見つめていた。よかった転げ落ちなくて済む! 「(何か恋の悩みとか・・・思い詰めてるのかな・・・)あのーすいません・・・」 「はあ〜っ、ククール様・・・!」 「はへっ!?」
「あっ、すいません!聞こえてました?・・・っていうか、まさかと思うけどあなたたちククール様を知らなくて?」 「「「「は・・・はい・・・(ていうか誰だよそれ!!!)」」」」 聞き覚えのない名前に、四人は首を傾げるばかりだった。
「ふーん。この世界に住んでて聖堂騎士団を知らない人がいるなんて信じられないわ。・・・ほら、ここから綺麗な建物が見えるでしょ?」 「あ、あひ。ビミョーに。」 の変な返事にツッコミを入れ、丁寧に修道院の説明をする少女。しかもはその三大聖地のうちの2つは行ったことがあると言っている。
「そこにはね、聖堂騎士団っていう院長とか、神に関するものを守る団体がいるの。それがもうイケメンぞろいで!!!」
あ、やっぱり面食いか。
「そこにいる聖堂騎士団の一員がククールって言う人なの。他のやつとは違ってダントツにかっこいいの!女の子のアイドルよ!だから結構この辺じゃ有名よ。でも何故か聖堂騎士団の人には評判が悪いらしいんだけどねぇ」
「でも修道院は礼拝人しか入れないの・・・。だからいつもここからククール様が見れないかなって思って見てるの」 「「「「・・・へー・・・・・・」」」」 恋する乙女って感じだ。は、いつも好きな人と・・・顔を合わせられることに感謝した。 たちは彼女に別れを告げ、船着き場を出た。
「ねえ。その修道院っていうのに寄ってみない?お告げを聞いて、一応情報も収集しましょうよ」 そのゼシカの提案で、一行は修道院へ向かうことになった。やっぱり主導権ゼシカになってる。
魔物は一段と強くなったりと、修道院まで向かう道中は一苦労した。
やっとついた修道院は、威風堂々と地に立ちはだかっていた。
「うひゃー!なんかスゴイ・・・。私こういう建物って見たことないから」 「の世界にはこういう建物って珍しいんでがすか?」 「え!?や、あ、こことは風習というか宗教というかなんか全部違うからっっ」 「? の世界?」 がトリップしてきたことを知らないゼシカは、よくわからない顔をしていた。 「あーえとまた今度教えまする・・・」 なんとか、そう言い逃れただった。
「ここもダメねー・・・」
「うお、大っきい酒場でがすね。そういえばドニって行ったら世界一大きい酒場があるって聞いたことあるでがす」 「そういえば酒場見るの久しぶりだね。ヤンガス、別に入っていいけど・・・行く?」 「そうね、あたしも何か喉渇いたから、ジュースとか欲しいわ!」 「じゃあ私、宿屋予約してくるね!みんなは先に酒場行っておいて!」
「えーと・・・男女2人ずつなのでツインの部屋を2つお願いします」 「はいよ」 宿屋への予約を入れ、急いで酒場へと走る。
「(それにしても本っ当 大きい酒場だなー・・・。トラペッタとかポルトリンクなんか比べものにならないかも)」 そんな事を思いながらガチャ、とドアを開けると、目の前にいたビールを持ったバニーちゃんが驚いた顔をしている。チラ、と他のおじさんの顔に目を移しても同じだった。口をポカーンとして唖然としている。中には腰を抜かしている人も数人いた。
「(一体何が起きたの・・・って えええぇぇ!?)」 がそこで見た光景。それは。
宙に・・・椅子やら酒やらテーブルが舞っている。 「え!?何?!何ごと!?」 そのテーブルたちの下を見ると、3人のあらくれと、テーブルを投げそうなヤンガスと、今にもメラを放ちそうなゼシカ。おそらくケンカをしているのだろう。何が原因かは知らないけど・・・。 それにしてもこの木造の酒場でメラ放っちゃいけんだろゼシカ。 そしてその5人のケンカを呆けた顔で見ている。
「(な・・・何かって・・・戦ってる時と笑ってる時以外、ほぼ全部呆けた顔をしている気がするのは私だけ!?)」 は冷や汗を浮かべながら見ていた。
の横では薄ら笑いを浮かべている銀髪の、キザなイケメン男がケンカを見ていた。 「(あれがククールさんて人なのかな?私は好みじゃないけど・・・女の子がギャーギャー騒ぐのも分かるかも・・・)」
しばらくその光景をも見ていると、ククールらしきキザな男はゼシカの腕を引っ張って裏口っぽい所から出ていった。その後をも追いかけていく。
ケンカを見ることに没頭していた。行け!ヤンガス!とか何気なく応援する。そして我に返ったは、ヤンガスがまだ3人のあらくれとケンカをしていることを確認して外へ出た。
酒場の裏に回ると、やっぱりさっきのキザ男とと、ゼシカが何かもめていた。いや、正式に言うとゼシカとキザ男がもめている感じであるが・・・。
「だから!そんな指輪いらないわよ!」 「いや、君と出会えた印なんだ。有難くもらってくれ」 「こんなイカサマ野郎のものなんて絶対いらない!」 強気なゼシカは、男の口説き台詞もうまくかわす。うわわ、私だったらあんな強くもの言えない・・・!
「えっとー・・・・・・一体何が・・・」 「あ、。いや、あの男の人が酒場の人とポーカーしてたんだけど、イカサマしてることがバレてもめて・・・」 「あちゃー大変だそれは・・・」 に一通り話を聞くと、チラっとそのキザ男を見た。すると男と目があってしまい、は露骨に目をそらした。 「(やばっっ!なんかこういう何もかも見透かしそうな人ムリ!!)」 男はの手をとって、キスを落とした。 「(アアアアアアアアアアァァアアア苦手ェェェェエエエエェ!!!!)」 「くす、真っ赤だね」 どっちかっつーと真っ青になりそうです!!!! とは思った。その妙に整った顔を近づけて、男はの顔をのぞきこむように見つめてくる。は恥ずかしくなって、目がまわってくる。は咄嗟にの後ろに隠れてしまった。 「なんだ、このボーヤの連れか。人の女にキョーミなかったけど・・・可愛いから手出したくなっちゃうな」 そういうとまた男はの手をとった。だが、今度はがその手をパシッと振りほどいた。 「・・・が怖がってるだろ?やめろよ」 ドキ、と鼓動がひとつ、大きくなった。
「あー怖い怖い!まあいいや、俺はそろそろ修道院に戻るかな」 「え?」 「可愛い女の子2人はまた会いたくなったら修道院に来なよ。聖堂騎士団のククールだ。しっかり頭に焼き付けておけよ?」
・・・やっぱりこの人がククールさんだったんだ・・・。
「なんっなのよあの男!!こんな指輪返しにいってやる!!」 「きっとこれ聖堂騎士団の証の指輪なのかもしれないよ。・・・そんな大事なものホイホイあげちゃうあの人もどうかと思うけど・・・」 「じゃあとりあえず明日は修道院に返しに行こっか。僕もなんか・・・あの男気に入らないし」 3人はしかめっ面で、ククールという男の話をしていた。何がそんなに気に入らなかったんだろう・・・いや確かに私も苦手な部類ではあるけども!!!
「でもやっぱりあの人がククールさんだったんだね」 「え?やっぱりって?」 「だってカッコイイって言ってたじゃない、船着き場の女の子」 「あー・・・言ってたけど・・・。もああいう男のほうがいいの?」 「え?や、やだな!そ、そういうわけじゃないよ!」 とがそんな会話をしていて、ゼシカは横目でみていた。微笑ましいなーと。
「あ、兄貴!こんなとこにいたんでがすかーーっ!探したんでがすよ」 ヤンガスがおもいっきし走ってに激突した。 「痛い!痛いヤンガス!そんな体当たりしなくても」 「すっすまねえでがす」 「・・・まあいいわよ!とにかく明日は修道院へ ゴーよ!それでイカサマしたことも全部修道院にチクってやるんだから!」 ゼシカの元気よい・・・いや、怒りに満ちた声が、夜のドニの町に響き渡った。
あとがき 2008.08.20 UP |