このタコ野郎!
ザザ・・・ザザン・・・ザザア・・・
波の音が耳いっぱいに聞こえる。 「綺麗だねーっ!船なんか乗るの久しぶりかも!」 「そうなの?僕は城にいたときに色んな大陸に行くから、結構乗ってたよ」 久しぶりのゆったりとした時間。本当に魔物が現れるようには思えなかった。
グラッ!! 「ぉわっ!?」 「うわっ大丈夫?」 が、グラついたを支えた、その時。
ぶくぶくぶく・・・。 「あれ?なんかここだけ泡が・・・」 「ほんとだ。なんだろ?」
ぶくぶくぶくぶくぶくぶくぶくぶくザバアアッ!! ものすごい水の音と共に、赤いタコのような物体が出てきた。
「きにくわねーなあ・・・。人間のくせに俺の頭の上を悠々と通って行くなんて何様なんだと思わねえか?」 「あー、思う思う。前から思ってた!」 「やっちまっていいかな?」 「ああ、やっちまえやっちまえ!!」 「え 何コレ腹話術?」
海から出てきた赤いタコは、自分の両手(両足?)を前に掲げ、その2つを前後に揺らしたりして1人で会話している。
「なんかもうめっちゃくちゃキモいんですけど痛いんですけど。てか・・・さびしくないのかな・・・」 「いや、。もうそれは無視してあげて。きっと向こうも意見に賛同してくれる人がいないんだよ」 「ええい!何をごっちゃごちゃ言ってるんだよ!とにかく、俺様の頭の上を人間が通るなと言いたいんだ!」 タコの顔は怒りに満ちていた。船に乗る人々は、怯えまくっている。
「わかった!わかったから!通らなきゃいいんでしょ!?このタコ野郎!」 「タコ!?俺はオセアーノンだ!ほんでもってそういうわけにはいかん!お前らなど懲らしめてやる!!」 そういった瞬間、タコ(オセアーノンと言うらしい)はさっき腹話術していた手でたちをなぎ払ってきた。
「いったあ・・・!」 実質、は今まで魔物と闘ったのは数あったが、攻撃を喰らったのは始めてだった。
「ベホマラー!」 がそう唱えると、ヤンガスたち3人の体の回りを光が包み込んだ。だんだん力がみなぎってくる。
「ありがとうでがすよ、」 「どーいたしましてっ!」
普通このレベルだとベホマラーを覚えるのは早いのだが、は唱えることができた。きっと呪文の名前を知っていることと、ルイネロに言われた魔力が豊富ということもあるのだろう。
「でやあ!」 ヤンガスがオセアーノンの体に、オノを振りかぶった。見事に命中し、オセアーノンの悲鳴が少し聞こえた。 「えい!」 がオセアーノンの顔を、手で殴る、サイで突く、足で蹴り飛ばす、杖でぶん殴るという4連発をかました。 「やあ!」 がオセアーノンに剣を突き立てた。
「行くよ!ヤンガス、!」 「「あいよ!」」 の命令と共に、3人は一緒に、オセーアノンにそれぞれ攻撃した。 「ぐ・・・っお前ら・・・!」
ぶおおおお! オセアーノンの口から、火炎が激しく吹かれた。たちに降りかかる。 「マヒャド!」 が杖を振りかぶって唱えると、氷がたちの周りを包んだ。 と同時に、オセアーノンの火炎との氷が、押し合っていた。
「くっ・・・」 「!」 そろそろ体力が限界だ。もう無理・・・!!
バリン! 「う・・・!」 オセアーノンの火が、止まった。苦しそうな声をしながら、オセアーノンの表情はみるみる崩れていく。 「ヤンガス!私と一緒に攻撃してくれる?」 「がってん!」 とヤンガスが、オセアーノンに攻撃した。 「!」 「うん!」 その隙に、が空に飛んだ。
「やああああああ!!」 剣から火炎が放たれる。 「火炎・・・斬り?」 「でがすね・・・!兄貴かっこいいでがす!」 が、ポツッと呟き、ヤンガスが応援した。すごい生は初めて見た!
オセアーノンが断末魔をあげ、海に沈んでいった。
「本当にありがとうございます!これで安心して定期船を出せます!では、一旦ポルトリンクへ船を引き返しますね」 船乗りが、、ヤンガス、の3人に頭を下げまくる。 「かっこよかったわよ。あなたたちって強いのね!助かったわ、これで南の大陸に行けるんだもの。ありがとう」 もとはといえば騒動の種、ゼシカが、関心したように告げる。
ぶくぶくぶく・・・。 「あれ?また泡」 「まさかまたオセアーノン!?」 たちが身構え、船乗りが身震いし、ゼシカが眉間に皺を寄せた。
「いやーさっきはすんませんねえ」 「「「「・・・え?」」」」 だが、予想していたさっきみたいなオセアーノンではなく、反発してくる様子もないお気楽なオセアーノンだった。
「な、なにこの変わり様」 「実はですね、わしはさっきみたいなマネするような、そんなたいそれたことする魔物ちゃうんですわ」 「は、はあ・・・」
オセアーノンは目を瞑りながら、困り果てたようにたちに話す。
「そしたらおもいっきし睨み返されたんや。そっから気分悪うての。あんなことをしてしまって・・・ほんますんません。わしはただ芸人を目指す魔物のはしくれです」 深々と頭を下げるオセアーノン。海の中なのに深々と頭を下げたので、オセアーノンの顔は水にはいっている。 「ほんますみあksjxm・・・」 すみませんのませんが聞こえません。← ていうか魔物が芸人って・・・芸物の間違いじゃ?←
「そんな中、正気を取り戻させてくださったのはあなた方でした。お礼といっては何ですが・・・どうぞ」 オセアーノンの手から伸びる、きらめく何か。が受け取ると、金のブレスレットだった。
「きっと皆さんに似合いますよ。それでは・・・」 そしてまたぶくぶくと海に沈んでいった。
「なんかオセアーノンは悪くなかったみたいだね」 「うん・・・」 「あ、ブレスレットさ、誰がつける?」 「の嬢ちゃんでいいんじゃないでがすか」 「うん、僕もそれでいいと思うよ」 「そ・・・うかなあ・・・?ありがとっ」 は嬉しそうに笑った。
「じゃあちょっくらアッシは船の中に行ってるでがす」 そう告げてヤンガスは船の中に入っていった。ヤンガスが歩くたびに、船のゆれは酷くなる。
「は入らなくていいの?」 「うん、ちょっと風に当たりたい気分なんだ」 「そっか」 再び、闘いの前のあの穏やかな海が戻ってきた。波の音が耳いっぱいに聞こえる。
「そういえばさっきオセアーノンがさ、海の上を走る道化師って言ってたけど・・・ドルマゲスのことなのかな」 「うん、僕も思った。そうなのかな・・・。だとしたら、南の大陸に行ったんだろうけど」
ザザ・・・ザザア・・・ザザン・・・
「」 「ん?」 「さっきの火炎斬り、かっこよかったよ」 「ええっ!?」
の顔が真っ赤になる。耳まで真っ赤。 「ぷっ・・・かわいいなーもう」 「何が!」 「えーだって・・・タコみたいなんだもん」 「タッ・・・!」
さらにボボンと真っ赤になる。
「やっだもうタコ以上に赤いよ。何をそんなに照れてるの?」 「のせいだろ!」 「え?そうなの?」
「あの2人は何なワケ?どういう関係?」 「まぁ・・・そうなんでがす」 「はぁ?」 船の端で、ヤンガスとゼシカは話していた。
あとがき それでは次の小説でまた会いましょう(・∀・) 2008.08.06 UP |