出会いと別れ


 

村に帰ったたちは、塔の強い魔物たちと戦ったことに くたくた だったので、宿屋に泊まることにした。
しかし、宿の扉の前には誰かが仁王立ちで待っていた。

「あ、来た」

その人物はたちの姿を見ると、駆け寄って来た。ポルクだった。

 

「あれ、どうしたのポルク」

「呼び捨てにすんなこの女!女が俺を呼び捨てにしていいのは母ちゃんとゼシカ姉ちゃんだけだ!!」

強がるポルクに 、は微笑した。


「え・・・っと・・・。その・・・ゼシカ姉ちゃんのこと・・・、ありがとな」

ちょっと照れくさそうに、俯きながら話すポルクに、3人は初めて ガ☆キ が可愛いと思った。

 

「ほっ・・・ほんとに感謝してんだぜっ!?サーベルト兄ちゃんが死んでから、・・・村はすっごく暗かったから・・・。ゼシカ姉ちゃんまでそんなことになったら、村どころかアローザ様が倒れちまうとこだった」

なぜか関西弁だったあのおばあちゃんが言ってた、よくない出来事というのは、サーベルトさんの事だったのかもしれない。

 

「・・・宿!マルクと小遣いはたいてお金払ったんだぞ!感謝して泊まれよな!」

そう言ってポルクはさっさと走っていった。

 

「な ーんだ。あいつらもいい所とか可愛いとこあるじゃないでげすか!」

「くすっ・・・そうだね」

ヤンガスは、そんな話をしていた。

 

 

 

「ああ、ポルクたちから金はもらったよ。休んでいきな!」

そういうと宿のおばさんは、ポルクたちからもらったお金を、たちにちらっとさりげなく見せてみた。
たったの6Gだった。

こ・・・こづかいはたくってお前らどんだけ少ないんだよ!!

 

 

 

 

「おやすみなさーい」

「おやすみで・・・が・・・ぐおおお」

でがすを 最後まで言えずに素早く寝るヤンガス。相変わらず寝るのだけは早い。
だが何時間たっても、眠りにつくことが
はできなかった。

 

「・・・。起きてる・・・?」

「・・・うん、起きてるよ」

起きてないだろうと思いながらも、ダメもとで聞いたその言葉が返ってきたので、は少しびっくりした。

 

「よかった、起きてたんだ」

「うん。どうしたの?」

「なんか・・・サーベルトさんのあの映像が・・・瞼に焼き付いてる感じで・・・。目をつぶったら、何度も頭の中であの映像がループして・・・」

「怖いの?」

「ギ・・・ギ・・・ギクーーーーーっ!!!!いいいいやそんなことありませんよ!!!」

「今おもっきし『ギ・・・ギ・・・ギクーーーーーっ!!!!』って言ったけどね・・・」

の言葉には「ハ・・・ハハッハ・・・」とごまかす。

 

は少し頭を抱えて、眠れない理由をに話した。

人が殺される現場を見てしまったこと。そして、自分の身内が死ぬところを目前で見た、ゼシカのこと。
色々考えていると、眠れないのだ。

 

そう名前を呼ぶと、はベッドから立ち上がり、の側まで来て、手をそっと握り締めた。

 

!? な・・・ななななんあ何を・・・!」

「僕がついてるから」

「へ・・・?」

「だから安心して寝なよ」

はとても穏やかな表情で、に笑いかけた。
 

「僕がを守るから。ルイネロさんにも言われたし・・・僕の意思でもあるから」

そう言って、の手を、より一層強く握り締めた。はそのぬくもりに、とても安心した。途端に、ひどい眠気が襲った。
これは・・・安心した、ってことなのかな。

いつの間にか、の意識は、どこか遠くへ飛んでいった。
そのまま
も、いつのまにかの手を握り締めたまま、ベッドにもたれて寝てしまっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カーテンの隙間から朝日が差し込む。その眩しさに目を覚ましたは、手に暖かさを感じた。

・・・?」

まだ寝ぼけているは、いまいち状況がつかめなかった。

 

「・・・・!!(状況がつかめた)きゃ・・・きゃーーーーーーーーー!!!!

「え!?何!?」

昨日あのままそばでずっとついていてくれた。その優しさにジーンとくる感じと、同時に恥ずかしいという気持ちがこみ上げてきた。

 

「あ・・・お・・・おはよう・・・

「ふふっ・・・おはよう、

「さっきの叫び声は何ごとでがすかー・・・ふあああ」

ヤンガスがおっきなあくびをしてが繋いでる手と手をみて、ニヤけた顔をした。


「ほほーっ・・・兄貴と
はもうそんな関係だったんでがすか」

「やっ・・・違うんだヤンガスっっっ」

必死で否定するに、は少しからかった。

「えー!?、私たち同じベッドで寝た仲じゃないのよ!!」

!余計な嘘つくんじゃない!!!」

「兄貴、正直に吐いたほうがいいでがすよ」

「だから違うって言ってるだろーーーー!?」

「これあんたら!うるさいよ!他のお客さんの迷惑になるじゃないか!」

宿屋のおばちゃんがいきなり部屋のドアを開け、部屋中に罵声を浴びせた。そしてバーーーーン!と勢いよくドアを閉めて行った。 

「「「は・・・はーい」」」

3人はおとなしく縮こまった。

「・・・母ちゃんみたいでがす・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

宿屋を出てアルバート家のお屋敷に行くと、既にゼシカは帰っていたみたいだ。母親のアローザと口喧嘩をしている。

「僕のフィア〜ンセのゼシカがあ〜んなに強気だったとはね〜ん・・・」

階段のそばでなんかサグラット(違)とかなんとか言うやつがほざいてるけど無視無視。

 

 

 

「どぅわ〜かあ〜るあぁ〜!話のわからない母親ね!あたしは兄さんに言われたの!自分の信じた道を進めって!私は兄さんの仇を討つ!それが私の決めた道なのよ!」

「まだそんなこと言ってるの!?あなたはこのアルバート家を継ぐ身なのよ?あなたがいなくなってはどうするの!」

「そんなこと知らないわよ!」

 

どうやらサーベルトさんの仇を討ちにいくというゼシカと、アルバート家を継ぐために家に残れというアローザの意見が、交差しているようだった。

相変わらずゼシカの部屋の前でポルクとマルクが立っているが、怯えた表情で2人の口喧嘩を見ている。同様、いつも一緒にアローザの傍に仕えるメイドもだ。

 

「家訓なんて知らないわよ!もう大人なんだから私の好きにさせてよ!」

「なんですって!?あなたはまだまだ子供じゃないのよ!!私はあなたをそのような子供に育てた覚えはないわ!出て行きなさい!」

 

出た!育てた覚えはない! ほら、よく結婚するときに父親が娘に言うヤツね!

 

 

「なああにいいよォォォオォ!!そこまで言うなら出てくわよ!」

そういうとドスドスと足音をたてて勢いよくドアを閉めて自分の部屋に入る。
今朝の宿屋のおばちゃんみたいにドアがバーーーーーン!と音がなり、立っていたポルクとマルクは激しく飛び上がった。

 

次にまた勢いよくドアを開けて勢いよく閉めた。またポルマルは激しく飛び上がる。出てきたゼシカの格好は、胸元が大胆に開いた露出がすごい服だった。

 

「(あの服・・・ドラクエのパッケージに描いてた・・・)」

 

 

 

「じゃあねっ!今までお世話になりました!」

「あっ、ゼシカ姉ちゃん!」

「待って〜っ!」

ゼシカはそういうと、家を出て行った。その後を、ポルクとマルクが追いかける。

 

 

 

「どうしよかね〜ん。僕のフィア〜ンセのゼシカがいなくなっただなんて・・・。父さんに言えやしないよ」

最後のほうだけ口調が普通のグサラット(だから違)を横目に見ながら、たちも、ゼシカたちに追いかけていった。

 

 

 

 

「アローザ様・・・。本当によかったのですか?」

「・・・いいのよ、放っておけば。どうせすぐに声を上げて帰ってくるわ」

強がるアローザに、メイドは少し悲しい表情をしていた。

 

 

 

 

 

 

「ゼシカ姉ちゃん!・・・本当に行っちゃうの?」

「・・・うん。ごめんねポルク、マルク。でも兄さんの仇を討ったら、必ず帰ってくるから」

「ふっ・・・ふえ〜ん・・・っ」

「ほ〜ら、マルク。泣かないの」

ゼシカは優しく、泣くマルクの頭を撫でた。

 

 

「・・・ポルク、マルク。人生の中にはね、出会いもあれば別れもあるの。別れは出会いのためにあるのよ」

「出会いと・・・別れ?」

「そう。私とは別れることになるけど、でもあなたたちはもう私の分の出会いを経験したわ」

「え?」

「・・・あの3人の旅人たち。わたし、あの人たちに出会えてよかったと思ってるわ」

「それは・・・俺もだけど・・・」

「あの人たちも旅をしてるから、そりゃいつかは別れるわ。でもまたその分出会いがある。それを楽しみにしておくことが、人生の楽しいところだって、私は思うの」

涙を流すポルクとマルクに、優しく笑いかけるゼシカ。

 

 

「ゼシカさん・・・本当に行ってしまわれるのですか・・・?」

気付けば、ゼシカの周りには村中の人々がたくさん集まっていた。

「みんな・・・。・・・ごめんなさい。でも必ず・・・」

「無事で帰ってきてくださいね!」

「ゼシカお嬢様!」

 

 

ゼシカは思った。

ああ、私は本当に大切にされてるんだって。私のためにこんなに泣いてくれる人がいる。
兄さん、私幸せなんだね。

 

 

「・・・みんなありがとう。私、絶対無事に帰ってくるわ!」

「ゼシカ姉ちゃん、これからどこに行くの・・・?」

「私は今からポルトリンクに行くわ。あそこなら港町だから人の出入りも多いし、兄さんを殺した奴の足どりも掴めるかもしれないもの。それに・・・この大陸からも出られるしね」

「ポルトリンクとな?あそこは遠いんじゃぞ。気をつけなされな」

「ええ、わかってるわ」

「ゼシカお姉ちゃんーーっ!たまにはルーラで戻ってきてねーーーーっ!」

「うん。たまには顔出すわね!」

 

ゼシカたちの周りでは、少しの笑いが起きた。悲しみの場は、ほんのちょっとだけ和んだ。

 

「それじゃあ・・・行ってきます!」

「「「「「「行ってらっしゃーーーーーーい!!!!」」」」」」

 

 

 

必死で手をふるポルクやマルク、そしておじいさんおばあさん、神父にシスター・・・。ゼシカは送り出してくれた村人1人ひとりの顔を見回し、涙を流しながら村を出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれっ!?ゼシカさんは!?」

「ゼシカ姉ちゃんならポルトリンクっていうアルバート家がつくった港町に行ったぞ。お前らも行くんなら装備とかちゃんとしてけよな!あそこまでは遠いから」

「あ、ありがとポルクくん、マルクくん。・・・お世話になりました」

するとポルクたちは一瞬びっくりした顔をした。

 

「・・・行っちゃうんだ」

「え?」

「大丈夫だよマルク。出会いもあれば別れもあるんだろ?」

2人はさっきまであんなに涙を流していたのに、その言葉を聞くと、あはは、と笑い合った。たちにはよくわからなかったけど。

 

 

「それじゃあね。バイバーーーーイ!」

「バイバーーーイ!2度とくんなよ!」

そんな嫌味たらたらにポルクが送り出した。

「2日に1回くらいで来てやるわー!」

「うっさいヤマザルーー!」

 

がその言葉にくすっと笑うと、最初この村にきた時にポルクとマルクをおばあちゃんが叩いたときのような音が、
後ろで聞こえた。また叩いたのだろうか?兜と鍋を・・・。

 

 

 

悲しみと笑いに溢れた村を、たちは出た。

 
 

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あとがき
いんやー!やっぱギャグが私には合うんだよね。←
原作にはなかったシーンとか付け足してみました。こんな感じだったのかなーって。
リーザス村の人々は個性があって、なんかのどかだし、結構好きだったりします。

それでは次の小説でまた会いましょう(・∀・)

2008.07.31  UP