短い命
「ここがゼシカ姉ちゃんが行くって言ってたリーザス像の塔だ」
「ほえー・・・」
塔はかなり古い建物のようだ。葉がぐるぐる巻き付いていた。
「さて、入るでがすか!」
そう言ってヤンガスが塔の扉を開けようとした時、一瞬ポルクがにやっと笑った気がした。
「あれっ?押しても引いても開かねえでがす」
「え?ちょっと貸してみて。・・・あれ?本当だ・・・」
ヤンガスとが開けようとしても、扉はうんともすんとも言わなかった。
「あったりめーだろ!!普通に開けられるんじゃ盗賊にすぐ入られちゃうだろ?この塔には最上階にあるリーザス像の瞳に宝石が埋め込まれてて・・・って何言ってんだ俺!!!!」
ポルクは自分で言った言葉を慌てて濁した。 「普通に開けられるんならこんな村から近い場所に一緒に来ねえよ。この扉は村人にしか開けられねえようになってんだ」 「・・・」
はポルクの得意気な顔とヤンガスの悔しそうな顔と、のボケーっとした顔を見ながら、扉の前に歩み寄った。
「? おいお前、何してんだよ」 「うん。よいっ・・・しょっとーーぉ!!」 は塔の扉を下から上に持ち上げた。ポルクの顔を横目で見ると、ショックを受けたような顔をしていた。
「なっななななななんでっ・・・!?まままさかっ・・・これでサーベルト兄ちゃんも・・・!?」
ポルクの顔が青ざめていた。
「そっ・・・そんじゃあ俺・・・アローザ様にバレちゃまずいから・・・かっかっかっ帰るなっ・・・!ゼッゼシカ姉ちゃんのこと・・・たっ頼むぞ!?」 そう言うとポルクは青冷めながら足早にその場を立ち去っていた。
「何だったんでがすかねえ、あのクソガキャ・・・。にしても、よく仕組みがわかったでがすね」 「いや、シャッターみたいな感じなのかなーと思って。それに扉にしては蝶番もないから怪しいし・・・ていうかこの仕組みで盗賊から絶対守れるだろうって思ってるリーザス村の人が超心配なんだけど」 「へーすごいなぁ・・・見方を変える能力ってこういう所で役に立つんだねー・・・ってこんなことしてる場合じゃないんだよ、、ヤンガス。ゼシカさんがやばいんだよ!早く助けに行かなくちゃ」
・・・まあゼシカの遺書は死ににいくのか村に戻るのかハッキリしないものだったけど。 あ、トロデ王とミーティア姫のことすっかり忘れてた。 今頃村の前で怒ってるかな・・・ (笑)
「なんか結構神秘的なんだねぇ」 庭のような場所には誰かのお墓。所々崩れている階段は昔何があったんだろう。壁にある青い変な顔っぽいものに触れると、壁がくるくる回る。忍者になった気分ではずっとくるくる回っていると、目が回った。
塔の最上階はこのリーザス地方を見渡せそうな、外と吹き抜けになっていた。
水が流れ、その真ん中に誰かがモデルになっていそうな綺麗な像が立っていた。
「あれは・・・なんていう像だったけ。ジーザス像?」
「いや、リーザス像だよ」
の心の中は、トロデとが同類という言葉でひとつに結ばれた。
「あ、ポルクのガキが言ってたとおり、瞳になんかはめ込まれてるでがすね」
たちは像に近寄った。瞳には赤い宝石が嵌め込まれている。
あまりにも綺麗で、宝石に全く興味のなさそうな3人でも、ただただ見つめていた。 カラン! 「な・・・何してるのよ、あんたたち!?」 物音がした。 3人が振り返ると、燃えるように赤い色の髪を高い場所で二つに結う、おそらくゼシカというその
「やっぱりね!宝石を狙いにまた来ると思ってたわ!ここで見張っていてよかったわ・・・!」
そう言うとゼシカは口角を上げて笑い、メラを力いっぱい手の中にこめた。
「でぇやあ!!」
「ぎええ!」
火の玉はに向かった。必死に逃げたが、足の膝の部分をすこし火傷した。
「!大丈夫?」 「・・・、ありが「兄貴!!危ねえでがす!!」 とが我にかえると、ゼシカの火の玉がこちらに向かっていた。
「くっ!」
が必死にを守りながら逃げた。の黄色い服に、少し黒いものがついた。
も・・・萌え・・・!ドラクエの主人公に守られちゃった★←
「逃げないでよ!ゆ・・・るさな・・・いんだか・・・らっ!」 「待て・・・ゼシカ・・・」
どこからか、若い男の人の声が聞こえた。その声に、ゼシカが反応した。
「兄さんっ!?本当にサーベルト兄さんなのね!」 「私を殺したのはその方たちではない・・・。だから・・・その呪文をやめなさい・・・」 「やめろったって・・・もう止まんないわよ!」 そういうとゼシカ投げた火の玉は、リーザス像に当たった。ゼシカは突っ立っていたヤンガスの体を押し、声のするリーザス像に近づいた。
「ゼシカ・・・そこにいる旅人の方・・・。よく聞いてほしい・・・。この・・・リーザス像の瞳を見つめてくれ・・・そこには・・・記憶が刻まれている・・・」
途切れ途切れに聞こえるサーベルトというゼシカの兄の言葉に、ゼシカとたちは静かにその像の瞳を見つめた。
「私はこの塔に不審者が入ったと聞き・・・塔の様子を・・・見に・・・きた・・・」 その瞬間、話を聞いていたものすべての者に、サーベルトの記憶が頭の中へと流れ込んだ。 「な・・・に?」
さっきまでいた塔の最上階は、セピアになる。そこに、サーベルトと思われる若き男が現れた。
「ここにも、誰もいない・・・な。何のために侵入したんだろう」 サーベルトは周りを見渡しながら、そんなことをつぶやく。 「さあ、早く帰ろう。きっと母さんたちも心配してるな」 サーベルトの頭に、自分を待つ母、アローザと、妹ゼシカの顔が浮かぶ。 家族がいるっていうのは幸せだな。そんなことを思いながら階段を降りようとした時だった。 不気味な笑みを浮かべながら、階段の前に立つ道化師の姿。
「きっ・・・貴様は誰だ!?」
すぐさまサーベルトは腰にかかる剣に手をかけた。
「くっくっく・・・。悲しいなあ・・・」
その奇妙な笑い、声に。そこで見ているたちは、鳥肌が立つようだった。
「質問に答えろ!貴様はここで何をしている!?」 「くっく・・・。私の名はドルマゲス。ここで人生の儚さについて考えていた」 「・・・なんだと!?」 サーベルトは険しい顔をする。こいつは何か、おかしい。変だ。そう思い剣を抜こうとするが、剣は抜けない。
「ぐっ・・・!何故だっ・・・!剣が・・・っ、剣が抜けんっ・・・!」
「悲しいなあ・・・。私はその勇ましさに触れるほど悲しくなる・・・。」 「きっ・・・貴様何を・・・!体が・・・次は体が・・・う・・・ごかな・・・っ」 体が言うことを聞かない。焦りが増す。 ドルマゲスは、一瞬見逃してしまえばすぐこちらにいるかのように。瞬間移動でサーベルトに段々近づいてくる
「やめろ・・・っ!く・・・るなっ!」 剣を抜きたくても抜けない。逃げたくても体が動かない。
「悲しいなあ・・・」
そんな言葉を繰り返して、ドルマゲスはとうとうサーベルトの目の前まで来ていた。
「お・・・前・・・!ドルマゲスと言ったな・・・!その名・・・を・・・決して忘れんぞ・・・!」 「ほう・・・私の名を忘れないと。それは実に喜ばしきことだ。私こそ忘れはしないよ。君の名はたった今より我が魂に永遠に焼きつく事になる。さあ、もうこれ以上私を悲しませないでおくれ・・・」
ドルマゲスがそっと、サーベルトを優しく包み込んだ。 サーベルトは、アローザや、リーザス村の住人、そしてゼシカの笑顔・・・。子供のころからの大切な思い出の一つ一つが、走馬灯のように頭に流れ込んでいく。
―――――ドスッ―――・・・
鈍い音とともに・・・サーベルトの腹部に、ドルマゲスの杖が刺された。
「悲しいなあ・・・。君との出会い・・・語らい。そのすべてが我が誇りと思おう。君の死は・・・無駄にしないよ」
そう言ってドルマゲスは姿を消した。サーベルトの視界は、だんだんと狭くなる。 「み・・・んな・・・。母さん・・・。ゼ・・・シカ・・・」
そうつぶやいて、サーベルトは静かに目を閉じた。
目が、さっきの痛々しい場面から、明るい、最初の塔の最上階に戻った。
「私にはわからぬが・・・このリーザス像は・・・そなたたちを待っていたようだ・・・。これで私の役目も終えた・・・」
「い・・・いやよ・・・!行かないで・・・兄さんっ!ずっとここにいてよぉ・・・!」
「・・・ゼシカ。分かるだろう・・・?死んだ者は・・・か・・・ならず・・・行かなくては・・・ならない」
「いやよ!」
「ゼシカ!」
ゼシカは、ハッとした表情で、サーベルトの声がするリーザス像を見た。
「わがまま・・・言うんじゃ・・・な・・・い・・・。分かって・・・くれ。わたしだって・・・別れは・・・悲しい・・・。最後・・・に・・・ゼシカ・・・。お前は・・・これからも母さんに・・・手を焼かせることだろう・・・。だが・・・。お前は自分の信じた道を進め・・・。それが・・・きっと、ゼシカ・・・。お前の答えだ・・・」
「自分の・・・信じた道を・・・進め・・・」
ゼシカはその言葉を噛み締めるように言った。
「お別れだ・・・。旅人の・・方・・・。すまなかった・・・そして・・・ありがとう・・・」
そういうと、リーザス像からひとつの光が、空に向かって消えて行った。それをゼシカは追いかけるようにして天を仰ぎ・・・、そして俯いて泣き出した。
「・・・・・・・ゼシカさん・・・」 「ご・・・め・・・っんなさい・・・っ。今は・・・何も話しかけないで・・・っ」 「・・・・・・」 「・・・行きやしょう、兄貴。」 「・・・うん」 そう言ったヤンガスの言うとおりにして、階段を下りようとした。
「あっ・・・!待って・・・!」 涙のあふれる目をこちらに向けるゼシカ。
「はい・・・?」
「えと・・・村には・・・もうちょっとしたら戻るね。今度また・・・今日勘違いしたことゆっくり誤るから・・・。だから今だけは・・・今だけはここで・・・もう少しこうやっていさせて・・・」
そういうとゼシカは、また俯いて泣き出した。
たちは、ゼシカを置いて塔を後にした。 あとがき ほんとこのシーンでは泣けましたんべ。(誰 それでは次の小説でまた会いましょう(・∀・) 2008.07.22 UP |