水晶の力
蒸し暑い洞窟から抜け出したたちは、大自然の草原に広がる澄み切った空気を深呼吸した。
「あ〜、やっぱりこういう空気が有り難いと思うでなあ!」 「、おっさんみたいでがす」 「おっさんに言われたかないわYOOOO!!」 「ひ、 ひどいでがす!」 ヤンガスはガーンと、ショックを受けた。
「さーて、水晶も手に入ったことじゃし、早く町に帰るぞ。もう暗いし、明日には新しい地にも行きたいしな。今日中にやることを終わらせようではないか」 トロデはうなずき、顎を擦りながら話す。癖なのだろうか・・・。 水晶玉はが持っている。ってことで、洞窟の中でレベルアップしたが覚えた、ルーラで町に帰った。
外はトロデの言うとおり、太陽が今にも沈んでいきそうだった。 「早くユリマちゃんとこに行こう!」 そう言うと、足早にユリマの家にたちは駆けていった。
ユリマの家の前に着く。ノックをしてノブを回す。そこには、相変わらず薄暗い部屋の中に大きな偽水晶がどでんと据えられている。の持っている 水晶は、外の時よりも一際輝いて見えた。 「待っておったぞ」 誰かの声がした。声のした方には、強張った顔をしているルイネロ。その顔に、たちは一瞬たじろぐ。
「その水晶を渡しなさい」 ルイネロは、水晶を持つに、手を差し出す。
「い、いや・・・」 「水晶を渡せ!」 「嫌!」 は水晶を抱きかかえるようにした。 「強情なやつだ・・・。いくら持ってきてもまた捨てるだけ。 その水晶に用はない、渡せ」 「嫌だって言ってるじゃないっ!」 はキッと 、ルイネロを睨み付けた。
「・・・っこうなったら力づくで!」 どこから出したのかはわからないが、気付けばルイネロの手にはかなづちが。 「壊してやる!」 「きゃっ・・・「もうやめてお父さん!」 部屋の奥から、ユリマの声がした。 「悪いのは私なの!何もかもその方たちにお願いしたのは私なの!」 「ユリマ・・・!お前・・・!」 ルイネロは、 ユリマを睨みつけた。
そして、ユリマが口を開いた。 「私・・・知ってたの。お父さんが私の本当の親じゃないって」 その言葉に、ルイネロは驚いたように目を見開いた。ユリマは少し下に視線を落とし、またルイネロを見る。
「何があったかはわからないけど、私の両親は死んじゃったんだよね。だからお父さんは代わりに私を育ててくれたんでしょ?」 「・・・・・・・・・」 「でもお父さんは死んだ理由が、自分の占いのせいだって・・・そう思ってるのかも知れないけど・・・。私はそんなこと、一度も思ったことない! 」 ユリマはにっこりと、笑顔を見せた。 「だって、私はお父さんのこと、本当の親だって、そう思うから」 「ユリマ・・・・・・」 「それに私、見て見たいなあ!占いが何でも当たって ・・・自信に満ち溢れたお父さんの姿!」 「ユリ・・・マ・・・。すまなかった・・・っ、迷惑かけて・・・」 そう言うとルイネロは、力が抜けたように、手からかなづちがすり抜け落ちていった。
「・・・・・・お主らにも迷惑かけたな、すまなかった。・・・そうじゃ、お礼といっては何じゃが、お主らを占ってやろう。その水晶を貸してくれんか? ・・・なあに、もう壊したりせんよ」
はその言葉を信じ、ルイネロに水晶を渡した。ルイネロは偽水晶を台からどけて、
本物の水晶を台に置いた。 「(うわ、じじい
が占い師!よく商店街の隅にいる人とは違うわ!←)」 はトロデに似ている と言って少し悪く思った。
「お主らは何が目的で旅をしておるのじゃ?」 「人探しです。ドルマゲスというやつなのですが・・・」 が答えると、ルイネロは嬉しそうに目を輝かせた。 「人探しじゃな!わしの得意分野じゃわい」 そう言うと、ルイネロは水晶に手をかざした。水晶が光り始める。
「そう言えばドルマゲス・・・か。聞いたことのある名前じゃな・・・ぬ!?」 ルイネロは水晶の端にある傷に気付いた。 「何か見えるんですか!?」 「なになに・・・あほうじゃと!?むむむ「お父さん!」 3人はズッコけた。結果かと思っていたのに。今にも水晶を投げ飛ばしそうなルイネロをユリマが止めた。おそらく「あほう」というのはザバンが書いたものだろう。
「おっと、すまんすまん。取り乱してしまったな。・・・占いに戻る」 またルイネロは真剣な顔に戻る。 「これは・・・南の関所か・・・?」 「南の関所って?」 「お主らが行った洞窟の手前にある、分かれ道を行った所じゃ。・・・だが・・・あそこには確か頑固な門番がいたはずじゃ。絶対向こうの地方には行かしてくれんほど頑固な奴がな。・・・じゃが・・・門は何か魔力でぐにゃぐにゃにつぶされ 、門番も全くもって、いる気配はない・・・」 ルイネロは暗い顔をした。
「すまないが・・・水晶が闇にかかってしまった。何も見えん。・・・じゃが、いまの関所が出て来たということは、そやつがここを通ったということじゃろう。・・・わしは関所のことが気になる。様子も見に行きたい所じゃが・・・魔物と戦うごめんじゃしな。すまんが、旅に行くがてら様子を見て行ってくれんか?またここに来た時に教えてくれるだけでいいんじゃが・・・」 「わかりました、ありがとうございました!・・・行こっか。ヤンガス、」
はルイネロに一礼し、とヤンガスを出口に促した。だが。 「待て 、そこの嬢ちゃん」 ルイネロはを呼び止めた。 「え、何ですか?」 「・・・ちと お前さんを占ってはならんか?・・・少し興味があるんじゃよ」
・・・・・・・・・・・・占い中・・・・・・・・・・・・
「ぬぅ・・・。お主、何か自分の中ですごいと思ったことはあるか?」 「・・・いえ・・・特にないですが・・・。」 「・・・お主は・・・ものすごい魔力を持っておる。・・・そして・・・お主はこの世界の奴ではないじゃろ?」 「「「・・・!?」」」 たち3人は驚いた。だって本当の事だったから。
「何言ってるの、お父さん!?」 ユリマはびっくりしたようにルイネロに訴えた。 「ユリマは黙っておきなさい。・・・?これは本当のことだと思うか?」 「・・・は、はい。本当です・・・ね・・・ハハッ(←」 「さんっ・・・!」 ユリマは口を押さえて、を見た。
「わしが知ってる中では、この世界の他には魔物も出ない、武器もいらない世界があると聞いた。お前さんのおる世界はそこではないのか?わしの水晶がそう映し出しておる」 はビシバシ当ててくるルイネロに感心した。やはりこの人の占いは本物だ。
「でも・・・それに何かあるんですか?」
は怪訝そうに、ルイネロの顔を見た。
「その世界の奴が、ここまでの魔力を持つのは危険すぎると、わしは言いたいのじゃよ」
「・・・どういうことですか?」
「この世界の奴なら魔力は多少持っておるんじゃが・・・お主は違う。だがお主の世界では魔力は必要ないのに、この世界のやつよりも壮大な魔力を持っておる。それはとても危険じゃ」
「え・・・?」 は唾を飲み込み、次の言葉を待った。 「・・・悪の輩・・・つまり魔物に狙われやすくなるじゃろう。ああいう奴らは、魔力がどれだけあるかが問題じゃ。それで勝ち負けが決まる。・・・お主のような世界を滅ぼせるほどの魔力は、それはそれは魔物も欲しがるじゃろう。お前さんの魔力を取り込もうとするはずじゃ。だが魔力も、体力とほぼ同じ。いきなり失ってしまうのは、体にはとてもじゃないが危険すぎる」 ルイネロはとても真剣な顔でを見据える。が口を開いた。 「それじゃあ私は・・・どうすればいいんですか・・・?」 ルイネロは目を閉じた。そして、を見据えた。 「・・・身を守れ。それだけじゃ。人に頼るな。・・・そしてよ」 「・・・はい」
はルイネロの言葉に少々びっくりしながらも、返事をした。
「の奴も自分の体を守るくらいの力が必要じゃ。非戦闘員ではなくちゃんと入れてやれ。危険なことじゃが、いつかこの世界を滅ぼすものと戦うことになるじゃろう」
「・・・わかりました」
非戦闘員にしていたこともバレていたか・・・やっぱりこの人すごいな、とは関心していた。は少し口元を緩めた。
は思っていた。確かに、はただ者ではないと。魔物のいない世界の者が、魔物の中でも強いザバンを倒したこと、
でもは、少しずつそれを受け止めていた。
が大切だから。
この時点で、はを、命に代えても守ると決心した。
「疲れているのに引き止めて悪かったな。またいつか来なさい。待っておるよ」 「ありがとうございました」 3人はルイネロとユリマに礼をして、家を出た。奥からユリマのおやすみなさいという声が、聞こえた気がした。
たちは宿につき、食事をした。
「っはー!疲れたっ!!」
の声が宿屋の部屋に広がった。
「・・・何か・・・誰もいないと暇だなあ・・・」
今日は宿屋が空いていたので、男女で別れることになった。
当然は、ヤンガスたちと違って女なので、1人の部屋である。 だが話し相手もいなく、めちゃくちゃ暇だ。 「シャワーでも浴びてくっかな!なんか独り事おおいよね、私。旅の最初にヤンガスに言われたの、当てはまっちゃってるよ・・・」 そんなことを思いながら、はシャワー室に入った。 シャワー室は自分の家よりも綺麗だった。宿なんだからあたり前の事だけど、やけに落ち着かない。
「うっはーーー!なんか泡たっちゃってるよ!これが泡風呂ってやつっすか!ッフーーーー!とか何とかやっちゃって!しゃぼん玉できちゃったりして!もうハリウッド映画ですか!?みたいな?!」 やっぱり、独り言の多いだった。
「気持ち良かったあ〜!やっぱりお風呂ってこのさっぱり感が好き!」
髪の毛を拭きながら、冷蔵庫にあるご自由にお取りくださいなコーラを取り出す。
「この世界にもコーラあるんだ・・・よかったよかった」
コーラを一気に飲み干す。素っ裸なは、部屋の窓で外から裸が見えそうな事に気づき、せめてと思ってタオルを体に巻いた。と、その時だった。
コンコンとドアを外から叩く音が聞こえる。
「?入るよ?」
の声がドアの向こうからする。
「べらぼうどlkjだldわうしょんべらこっこっこ!?」
「、明日の起床時間とか伝えてなかったか・・・ら!?」
の目に入ったのは、のタオル一枚姿。健全なにとったら、目の飛び出る光景だった。
「ごっごっごっごっごめんーーーーーーーーッ!」
バタン!とドアが閉まった。はポカーンとしていた。
「っと、早く着替えないと!」
意外にも冷静な。そそくさと着替え、ドアを開けた。と、が部屋に倒れてきた。どうやらドアにもたれかかっていたようだ。この宿屋のドアは引き戸である。
「ご、ごめん!」
「ぼっ僕の方こそ!その・・・み・・・ちゃった・・・んだけどっ!?」
かなり顔を真っ赤にしながら慌てるに、は笑った。
「別に気にしてないよ!それより・・・話って何なの?」 「ああ・・・えと・・・その・・・明日はリーザスっていう地方に行くから、なるべく早く起きないとなー、と・・・」
「そっか、わかった!わざわざありがと!」
はにっこりとに笑顔を向けた。
「その・・・本当にごめんね?」 「うん、いいよ。いつか責任とってもらうから。」 「う゛?!」
を少し脅した。
「嘘だよ!そんなことより早く寝ないと。ほらほら!」
「もう!脅かすなよ!・・・おやすみ」 「ふふっ、おやすみ」
そう言って、は兄貴ラブなヤンガスの待つ部屋へ戻っていった。
あとがき それでは次の小説でまた会いましょう(・∀・) 2008.06.23 UP |