そのまんまモンスター
「まったく・・・はほんとに城にいたときから変わらんネボスケじゃのう・・・。それに加えてまさかまでととはなあ・・・?」
トロデが少しあきれたように話す。
「いや違うんです!慣れない環境の為寝れなかっただけです!決してネボスケではないんです!ネボスケはネボスケでネボスケです!」 「ネボスケ兄貴〜」 「違うって〜!」
それは、洞窟までの楽しい道中だった。
昨日あの後、はすぐ寝たがはなかなか寝付けなかった。結局、寝るまで小一時間程かかり、起きるのが遅くなった。も寝坊していたので、昨日夜遅くまで付き合わせてしまって少し悪く思ったが、ネボスケと聞いて安心したりした。にしてもネボスケだなんて可愛すぎる・・・。
洞窟につくと、ご丁寧に入口まで橋がかけられている。
洞窟の真上には滝があり、水独特の音をたてて延々と流れ続けていた。 「それじゃあ、ワシと姫はここで待っておるぞ」 「いい気なもんでがす・・・」 「もいたほうがいいんじゃない?」 「えっ!?なんで!?私も行く!」 はかなり慌てた。こんな緑の魔物と一緒にいるところを見られたらなんと思われるか。
「でも・・・危ないよ?」
「大丈夫だよ!頼りないけど、呪文なら唱えられるし!・・・と思うし・・・」
不安な表情ではに必死でお願いした。するとは少しにこりと笑った。
「・・・わかった。おいで」
そう言うと、はトロデに一礼して、ヤンガスと洞窟にゾロゾロと入って行った。
それについていくようにして、も王たちに別れを告げて洞窟に入っていった。
洞窟の中はかなり湿気でジメジメしていて、蒸し暑かった。
「うわ・・・暑い・・・。この洞窟全体にエアコンのドライをかけたいわ・・・」
「え?」 「いやこっちの話・・・」
ドライをかけたら多少は涼しくなるのになー、と思うだった。こっちの世界にはそういうのないのかな・・・。
「そうだ、魔物が出て来たら下がっててね?」
・・・へ?
「なななななっなななんで・・・っ!?」
は武器を買っただけなのに、もう武器の達人になったような思いになっていた。当然、魔物とも戦えると思っていた。
「僕たちはそりゃあまだまだ旅の初心者だけど、魔物がいる世界だからこそ、その分鍛えられてる。でもにそういうのはないだろ?」
「で、でもでも!」 「とにかく、兄貴の言うとおり、下がってるでがすよ」
何だよヤンガス。言うこと言うことに合わせやがって。
襲ってきた魔物を次々と倒していく2人。はその姿をただ呆然と見ていた。
・・・悔しいな。側にいるからには、みんなの役にたちたいのに。そんな特別扱いされたら、なんか・・・モニョモニョするじょ!!
意味不明な言葉を心の中で思い、なんだか泣きたいのかイライラしているのか、自分でもよくわからなかった。そんな時。
「!後ろ、危ないっ!!!」 「え?」 が振り返ると、そこには顔が気色悪い(酷)びっくりサタンがいた。 「きゃっ・・・!」 反射的にの武器、サイが飛び出た。すると、びっくりサタンは煙となって消えていった。 「び・・・びっくりした・・・。まさにびっくりサタンのびっくりってとこですね・・・」 「何を意味わかんないこと言ってるの。にしても大丈夫?すごい反射神経だね!・・・っていうか、助けてあげられなくってごめんね?」
はすこし申し訳なさそうな顔をしている。はにっこりと笑って、いいよと呟いた。
「アッシはドンくさいですから見習いたいでげすよ・・・」 「本当だね。そうだ、怪我はない?」
腹に黒い影が見えますさん!!
とってええ!!!その黒いモンとってぇぇえ!!!
「い、一応自分の身は守ったです体調・・・」 「隊長って呼ぶな隊長って。しかも字まちがってる」
につっこまれたことに少しショックを受けながら洞窟をズンズン進んでいくと、雰囲気がガラッと変わる間にでた。別にこれといって今までと変わらないのだが、何かが違う。何かが潜んでいる気がする。
「あ!あそこに水晶玉があるでげすよ!」 「おもいっきし重力無視だアレ・・・」 まっすぐと奥まで見渡せる広い空間の中に、ポワンと浮かぶ、おそらくルイネロの水晶。その水晶の側まで3人は駆け寄り、ジロジロと見た。
「ユリマの嬢ちゃんが言ってた水晶ってーのはきっとこれでがすね、兄貴」 「うん、そうだね。こんなところにご丁寧に浮かんでるのはなんか怪しい気もするけど・・・?」 は何やらブツブツと何かを唱えている。よく聞いて見ると。
「なんでなんだ・・・。たしか地球には重力というものがあって物は浮かないのじゃ・・・。あ、ニュートンですか!これはニュートンか!りんごを落として射るニュートンか!あれ?それは確か息子の頭の上にりんご・・・?弓?由美?由美ちゃん?由美ちゃんって誰だよ」
意味わからん。
「とりあえず持って帰らないと・・・」
が水晶玉にそっと手を触れた瞬間だった。
「ずっと待っておったのだ・・・お前らで何人目になるかのう」 ザバン!と滝の中から一匹のモンスター。半分魚で半分不明。オレンジ色をしたその体は、うろこに包まれている。
「わしの名はザバン。お主ら、この水晶の持ち主か?」
ザバン・・・そのまんまじゃねーか・・・。
「いや・・・あの」 「そうでげすよ!」
ヤヤヤヤヤヤ、ヤンガスゥゥゥゥゥ?!余計なことをォォォォ!
「そうか!わしはお前らをずっとまっておった。この水晶の持ち主をな」
ザバンはちらっと水晶玉を見て、またたちに目を戻した。 「お前らがどんな理由でこの滝つぼに水晶を投げたかは知らんが・・・覚悟!」
そういうと、ザバンはたちにとびかかった。 「!後ろ下がって!」
「が?がってん・・・しょうち」
たちはザバンに何度も攻撃をしかけるが、ヒラヒラとザバンは体をよけた後、こちらに攻撃をしかける。 「兄貴!・・・よくも兄貴を!」
ヤンガスがザバンに、オノを振りかぶったが、それもかわされ、ヤンガスはシッポでなぎ払われた。
「・・・よーし、読めた!」
はそう呟くと、ザバンに攻撃をしかけた。 「何度やってもわしはかわすだけ・・・じゃ?!」 ザバンが攻撃をかわした先には、もうの武器、サイが飛び出ていた。見事にその刃先は命中。ザバンはすこし悲鳴をあげ、キッとをにらむと、攻撃をしかけようとした。 が、それもはひらりと攻撃をかわした。ザバンはがどこにいるか分からなかった。 「やっぱり動きがワンパターンだよねーっゲームだもん!」
の声がした。気づいたら、ザバンに頭上に、はサイを構えて跳躍していた。次の瞬間には、ザバンの頭にはサイが刺され、ザバンは頭をかかえた。さすがゲーマーの考え・・・というべきか。
「く・・・っ女のくせに生意気な・・・呪ってやる!」 ザバンは紫色したよくわからない気体を、にぶっとばした。 「危ない!」 がの前にでて、かばった。呪いらしき禍々しい気体は、の前でかき消された。
「なっ!?わしの呪いが打ち消されるとは・・・っ!さ、さてはお前・・・あの勇者か!?」 ザバンは少しびっくりしたように、を見ながら言った。
「噂じゃが、聞いたのじゃ。ある城が、ある者によって呪われた。城は滅び、住人たちはすべて植物状態にあると。・・・だが1人の若者は、その呪いを受けず、王たちを救い出すために旅をしていると・・・」
「めっちゃのことやん!」
「そうじゃろうそうじゃろう」
ザバンはうんうんとうなずくと、の方を見た。
「まさかそんな勇者がここにきたとはな。・・・さてはお主ら。この水晶の持ち主ではないじゃろ?」
な、なんでわかったくそじじい!←酷
「・・・今のお前らにはこの水晶が必要なのか?」 「・・・・・・はい。ものすごく・・・必要です」 「お主はこの水晶の持ち主を知っておるか?」 「え? はい、知ってますけど・・・」
はザバンを見た。
「そうか・・・。しょうがない、くれてやろう。じゃがな、持ち主に1つだけ伝えてくれ。2度と滝つぼに物をほるな、とな!」
ザバンは勢いよく振り返り、たちを指差し告げた。だが次の瞬間。
「あいたたたた・・・古傷が痛むわい・・・」
どうやらルイネロが水晶を投げたときにあたり、傷ができて恨みを持ってたのかもしれない。そんなことを考えていると、いつの間にかザバンはいなくなっていた。
「不思議な人だったね・・・」 「、あれって人なの?」 「・・・あ。どうだろう・・・」
悩むとこじゃねえ!
「じゃあ・・・また戻らなきゃね」 「うあ・・・。来た道を戻らなきゃでげすか・・・。かなり面倒くさいでげすねえ・・・」 「あ、待って!あたし・・・できるかなあ・・・」
とヤンガスは疑問符を頭上にちょちょいんと浮かべた。
「、ヤンガス。あたしに捕まって?」
そういうと、ヤンガスは遠慮なくの腕につかまった。だが、はすこし顔を赤くしながらにつかまろうとしない。「・・・どうしたの、?」 「え?いや・・・その・・・一応女の子だし・・・どこ捕まれば・・・」
一応っておいコラ。
・・・ま・・・まあいいか・・・。 「ヤンガスのつかまってないほうの腕をつかんでいいよ」 「わ、わかった・・・」
は少し照れくさそうにの腕をつかんだ。それがちょっと可愛く見えた。
「できるかわかんないけど・・・やってみる!」
は脳内でイメージをして・・・目を瞑った。
「・・・リレミト!」
薄暗い洞窟の中に、もうたちの姿はなかった。
あとがき タイトルはですね、ザバンって効果音そのまんまだなーwwwと思ったんで、 それでは次の小説でまた会いましょう(・∀・) 2008.06.09 UP |