旅立ちのワケ
月を見ながら話す。はその横顔を見ながら、ほんとに王と姫だったのかとショックを受ける。
「城には強力な魔力がある門外不出の杖があったんだ。でも王と姫以外に、その代々守られてきた杖の大切さを知らなくて・・・。もちろん僕も知らなかった。兵の警備も甘かった。そこを狙ったんだよ、ドルマゲスは」 静かに目を瞑り、また目を開けて、何処かを見るを繰り返す。・・・何かを思い詰めてるようだった。
「侵入者情報が入った王と姫は、慌てて杖のある封印の間に行ったんだ。だけどもうそこには杖を手にしたドルマゲスがいて・・・。すぐさま2人は呪いをかけられちゃって・・・。・・・それで、今に至るわけなんだ。でも結界の中だったから、呪いも軽くて済んだんだよ」 なるほろ。だからあんな姿になっちゃったんだ・・・。
「そこからは王の意識がなかったからわからないんだけど、たぶんドルマゲスは結界によって制御された呪いにイラついたんじゃないかな。だから外に出て・・・杖を振った」 「えっ・・・!?じゃあ・・・お城は・・・」 は口を押さえて。ビックリしたような目をした。
「・・・うん。滅んだんだ。全部・・・。綺麗だった庭園の花は枯れて、城は茨に包まれて。・・・そして何より。・・・お城にいた人間たちは・・・植物状態になっちゃったんだ」 「・・・そんな・・・・・・」 は何も知らなかったの過去に、言葉が出なかった。だって、自分たちの同僚が、死んだも同然なのだ。しかも、目の前で。
「だから、僕は城の呪いを・・・そして仲間を助けたいんだ。だからドルマゲスを追ってる。・・・ヤンガスは僕が道中助けたんだ」 「あー。だから兄貴とか言ってるんだ?命の恩人って感じなんだね」 「はは!普通逆だろって思った?」 ・・・図星。
「・・・でもはどうして呪いにかからなかったの?城にいなかったとか?・・・例えばだけど、何か買い出し行ってたとか?」 「城が呪われたのは夜だから、みんな城にいた。それも狙いだったのかもしれないけど・・・。・・・僕は、何でか呪いにかからなかったんだ・・・。だから・・・許せないんだよ、自分が。ちゃっかり助かって・・・。みんな苦しんでるのに・・・」 の頬に、一筋の涙が流れた。・・・ずっと我慢してたのかもしれない。
は大胆だったけど、ぎゅっとに抱き付いた。男性としては比較的、背が小さい。顔をあげれば、すぐ近くにの顔が・・・!って何考えてるんだろうか私!!
「・・・!?何して「がっ、我慢しなくていいよ」 の言葉を遮った。慌てすぎて、話を聞くこともできなかった。
「我慢してたら・・・いつぶっ壊れるかもわかんないんだしね?」 「・・・ぶっ壊れる!?」 「ええと・・・その・・・まあ気にしないでっ!!!」 慌てすぎるに、はおかしくなって笑い出した。
「なっ・・・何わらってんの!?」 「あははっははひっぃ・・・」 笑いすぎだよ君。 笑いすぎて声になってないに、はちょっと怒った。
「何よ!笑うな!!」 は頬を膨らませた。 「・・・我慢しないでって、さっき言ってくれたのはでしょ?」 がそう言うと、は少しハッとした。
「もしイラついたら、私にいつでも話してほしいの。人に話せばきっと少しでも心が軽くなるから。私はの力になるから。頼りないけどね。夜だったとしても不安になったら私のこと、別に遠慮しないで叩き起こしてもいいから! ね!?」 「・・・」 はの言葉に少しだけ涙を目に滲ませた。
「それに・・・はね、きっと呪いにたいして強い耐性もってたりするのかもよ?だから・・・1人で全部、しょいこまないで!・・・私たちは仲間なんだから」 がそう言うと、は涙を拭ってほんのちょっと笑った。
「はは・・・叩き起こせかあ。そんなんだったら、いつまでたっても僕ムカついてるからなあ・・・。寝れないよ?」 「・・・な、なにぃ!?そんなにムカついてるんかっ!!・・・うー・・・カルシウム摂れ!」 「なんじゃそりゃ」 2人の間に、少しの笑いが起きた。
「あたしたちずっと笑ってるねぇ」 「それだけ、性格があってるんだよ。ボケとツッコミみたいな感じ」 それって私がボケということですか。
「(・・・でも、性格があってる、か・・・うへへっ)」 そんな些細な言葉に、は胸の中で気色悪い声をあげていた。
「よしっ、じゃあ、そろそろ寝よっか・・・とその前に」 はそういうと、の裸足の足に手を置いて、意識を集中させた。
「・・・ホイミ」 また淡い光が足を包み、今度は腫れもちゃんと引いた。
「・・・もう無理しちゃだめだからね。つらかったらちゃんと言うんだよ?」 「・・・ありがと!」
が軽くほほ笑むと、も優しく笑った。そしてお互い自分のベッドに入っていった。
「今度こそおやすみ!」 「ふふっ・・・おやすみ!」
・・・なかなかヤンガスのいびきで寝れないけど。
翌日、ヤンガスはしゃきっと起き、とだけは寝坊したりしたことは、誰にも秘密。
あとがき 今回はシリアスな感じですた。 それでは次の小説でまた会いましょう(・∀・) 2008.05.31 UP |