美少女の為なら何でもしよう
装備品を散々物色し、自分たちの目的を思いだしたエイトたち。外は真っ暗。エイトたちを拒むように、店は次々と閉まっていく。
「すっかり目的忘れてたね・・・トロデ王怒ってるかな?」 「ほんとでがすね。まああんなおっさんが怒っても何も怖くないでがすけどね」 「ヤンガス、本当のコト言っちゃダメだよ。さっさと行こう」
・・・エイト。何気なくひどいこと言ってるよ・・・。
余談。アルシェは少し、足が痛かった。言えば疲れた部活の後のトリップだったわけだから、足はもうクタクタだ。
「(でもみんなに心配かけたくないもんね!痛いけどがんばらなきゃ・・・。自分にファイトオーーーーイッパアアアーツ!)」 と、某CMの掛け声を言いながら小さくガッツポーズをするアルシェだった。
酒場に着くと、どうしようもなくだらしない顔を赤くしたおじさんたちが、酒を運ぶバニーちゃんにやらしい視線を送る。 ぐふへへへ とか おっひょひょ とか何とも奇妙な声を上げている。どうしてお酒を飲むと皆テンションが上がるのだろう、とアルシェたちは思っていた。
こんなテンション高おっさん達に聞いてもちゃんとした情報を得られなさそうなので、しょうがなく奥にいるマスターに聞くことにした。 しょうがなくか・・・。そういや最近しょうが焼き食べてないな・・・、 と思うアルシェだった。
マスターのいるカウンターに近づくと、相変わらず顔が真っ赤な、いかにも田舎から出てきました的な農夫がグースカピーと寝ている。酒を飲み倒したのだろう。 その横には、少々アフロの、髭を生やした男がいた。そのおっさんも、これまた顔は真っ赤だ。
「ルイネロさん、もうその辺にしなよ。体壊すよ?ユリマちゃんをこれ以上困らせてどうするんだよ」 「るっさいわ!お前にワシの家の事情を言われる筋合いはない!」
マスターとアフロおっさんの会話が聞こえる。アフロおっさんの名前はどうやらルイネロというらしい。逆ギレする性格や口調はかなりトロデに似ている。
それにしてもユリマというのは誰なのだろう。
「ふんっ・・・お前にユリマの何が分かるんじゃ・・・ん?んんんう?」 ルイネロはエイトの顔を見て、何かに気づいたようだ。顔を近づけていく。 「(お!このおっさん、エイトの兄貴の偉大なオーラに気がついたんでがすね!)」 ヤンガスはそう解釈した。
その時。
「大変だ!街に魔物が入りこんだぞ!」 太ったおじさんが、酒場のドアを勢いよく開けてそう告げた。 「なんだって!」 「そりゃ大変だ!こりゃあ俺ら男の出番だな!」 報告を聞き、酔ったおっさんたちはドヤドヤと外へ出ていく。それと反対に、ルイネロとマスターは落ち着いている。
マスターは言う。 「お客さん、えらく落ち着いてますね」 ・・・いや、そういうアンタもえらく落ち着いてますね。
「あの・・・この街にライラスさんという方は住んでいませんか?」 「え?ライラスですか?・・・そうですか、あなたたちはまだ知らなかったんですね・・・。」
マスターは少しうつむき、深呼吸して、前を見据え・・・言った。
「ライラスは死んだんだよ」 「え・・・!?」 「つい最近火事でね。うちの常連客だったし・・・うるさい人だったけど根はやさしかったからさ、みんなショックだったんだよな・・・。そういえば事件の前日に弟子の・・・ドルマゲスとかいう奴と口論してたって噂があってさ。弟子に殺されたんじゃないかって噂もあるけど・・・」 エイトたちは呆然としていた。まさか死んでたなんて・・・。
「・・・はやく行きやしょう兄貴!アッシらがその魔物とやらをドーンとやっつけてやろうやないでげすか!」 「えっ?!うん・・・」 あれ?エイトも気づいたのかな?
予想どおり、魔物ってーのはトロデでした。
「魔物は街から出ていけ!」 ポコポカと、住民たちはトロデに次から次へと石を投げつけていく。
「やべえ!早く助けに行きやしょう!」 冷や汗をかきながら訴えるヤンガス。ケンカしてても、やっぱり大切な仲間なんだね。
トロデのもとへ駆け寄っても、人の数がすごすぎて入れない。無理やり入ってもすぐ押し返されてしまう。
「こんの野次馬どもがあっ!」 アルシェが叫んだ瞬間。
「ヒヒン!」 綺麗な、白馬が、魔物をかばった。
「姫様・・・」 アルシェたちは姫様とトロデを連れて、街を出た。まだ後ろでは、街の住人が「出ていけ!」という言葉を繰り返している。
「ふう・・・。あせったわい。姫、すまなかったな」 トロデはため息をつきながら、ミーティアの首を撫でた。ミーティアはぶるる、と首を振る。 いやだったのか?人間だったらうなじらへんだもんね。いくら親父でも許されないのかなあ・・・。エイトはしみじみ思った。
「でもいくらなんでも小石投げることないじゃんねっ 魔物だって痛いわ!ボケ!」 「ボケ?まあでも魔物はこの世界では悪者以外の何者でもないからね」 エイトが街の住民に怒っていると、エイトがそう返した。
「・・・ほんでもって、話を戻すぞ。ライラスは見つかったのか?」 話戻ってないよ王。今そんな話してなかったもん。(細かい
「・・・それが王様、大変申しにくいのですが、既にお亡くなりでして・・・」 「なんじゃとーーーーーーー?!死んでいたとは・・・。それは仕方ないのう。これは神の試練じゃな。自分で探せということか・・・」 トロデは何かを考えるようにして目を瞑った。
「面倒くさいでがすね・・・。せっかく有力な情報が得られると思ったんでがすけどね・・・」 「しょうがないよ。こういう事もありうるわけなんだし・・・」
また出た、しょうがない!しょうが焼きが食べたいよう・・・。 「わしはもう街に入らんよ。またこんなことが起きたらいやじゃしな。お主らはもう宿屋で休むといいじゃろう。」 「何いってるでがすか!おっさん一人はあぶないでがすよ!」 「お主こそ何をいっとる!ワシは一国の王じゃ!それなりに魔物とも戦えるわ!」
トロデがヤンガスと睨み合ったその背後から、声がした。
「あの!」 「「「「「え?(ブル?)」」」」」 3人と2匹が声をそろえて、声のした方を見ると、そこには2つに三つ編みをした美少女が、こちらを見ていた。
「あの・・・私夢を見たんです。人でも魔物でもないという方を率いる旅のご一行様が、街を訪れることを」 「人でも魔物でもない!?それはワシのことか!?」 「あっすみません・・・」
少女は謝罪の言葉も逃さず、目を瞑りながら、静かに告げる。 「私、1つお願いがあるんです。・・・すごく、大事な。話を聞いてはいただけませんか?」
一同はそういわれ、目を合わせる。 「どうする?」 「何を言っておる!姫と同じ年頃じゃ、願いを断るわけにはいかん!」 「そういえばその言葉アルシェのときも言ってたでがすね。気になってたでがすが、同じ年頃でなんの関係があるんでがすか?」 「・・・ぬ?いいこだと言うことじゃ」 トロデの意味がわからん言葉が、夜の草原を更に静かにした。
「あの・・・どうでしょうか?」 ユリマは不安そうな顔で、エイトたちの顔を一人一人を見る。 「・・・うん、いいよ!」 「本当ですか!?ありがとうございます!こんな所で話をするのもなんなので、私の家でお話しませんか?街にある井戸のすぐ前の家なので、わかると思います」 少女はものすごくうれしそうな顔をして、説明をする。まるでエイトが、一緒に行こうと告げた時のアルシェの顔のように、明るかった。
「きっと来てくださいね!」
そう行って、彼女はくるりと体を街へ向け、消えていった。
あとがき 今回はけっこうギャグ満載で書いたつもりなんですが、どうでしょう・・・。 それでは次の小説でまた会いましょう(・∀・) 2008.05.25 UP |