未知の世界


風。草のにおい。なんだかすっごく心地よい。 

 

「・・・っうああああ?」 

 

変なあくびをしながら目を覚ますと、自分の真上には陽射しのまぶしい澄みきった青空。起き上がり辺りを見回すと、牧場のような草原。はここがどこか考えた。が、今の時代、自然はなかなか少ない。こんな場所、にとったら未知の世界だった。

 

「どこやねんココ」

と問いかけてみるが、もちろん返事はない。

 

ものすごく不安になってきた。自分の家の近くなのだろうか。でもの知ってる限り、近くに牧場はない。ていうかその前に、自分がなんでこんなとこにいるのかさえ、全く理解できていない。

 

「なんか持ってないかな、私。ケータイとか・・・」

だが制服のポケットをいくら探っても、入っていたはずのケータイや手鏡などは、一切なかった。

 

「どこですかココ・・・!お母さん!マミー!?
ていうか、部活帰りなんだから夕方のはずでしょ!?なんでこんな真っ昼間になってんのよっ!」

 

 

ふと、さっき自分の身に何が起きたかを思い出した。

自分の手はドラクエのつかないテレビに吸い込まれ、体は真っ暗な画面に飲み込まれていた。

その後はなんだか、宇宙のあの満天の星空の中をマッハで駆け抜けているような感じで、その星のように白い物体は、の横をシュンシュン通り過ぎていく。

意識はだんだん遠くなり、・・・・・今に至る。

 

 

「・・・はっ!そうだ!人!人を探そう・・・!誰かいるはず!うんきっと!」

 

自分にそう言い聞かせ、は歩き出す。草の上で寝っ転がっていたもんだから、制服には草やら土がたくさんついている。

払い落としながら歩いていると、後ろからなんだか奇妙な気配を感じる。強張った表情で後ろを振り返ると、そこには不気味な笑みを浮かべた水色スライムが。

 

「・・・・・・・スッ、スッ、スッ、

スライムですかこれはーーーーーーーーーーーーっ!

 

ただっ広い草原にの声が響く。
 

「(うっそやばい!可愛すぎる・・・っ!本物みたい・・・)」
 

少し手を伸ばしてスライムに触れようとすると、スライムはいきなり体当たりをしてきた。

 

「痛ってえ!なんじゃこいつ可愛くないっすよ先輩!!」

先輩って誰だよ、と、きっとその場に人がいれば思うだろう。そして自身も恐らく分かっていない。
とか何とか言っている間にも、スライムは容赦することなくどんどん体当たりをしてくる。その度に、なんだか体力がなくなっていく気がする。

 

「いっ痛いって・・・!マジでや、やめて・・・」

意識がだんだん遠くなる。

 

「(こやつ・・・もしかして本物みたいとかじゃなくて モノホン!?)」

ちょっと古い流行語を巧みに使いながら、はその場に倒れこんだ。

 

 

今までの思い出が全て走馬灯のように流れる。
お父さんに買ってもらったテディベアのこと。友達となにかと悪さをしたこと。何もかもが頭に流れては消える。
なんだか死んだじいちゃんが、橋の向こうで手を振ってる気がするよ。

これが死ぬ前に見る映像・・・三途の川っていうやつか・・・。よく吉○新喜劇でおじさんが言ってたな・・・。「三途の川や〜」って言ってたな・・・。私も今そんな風におちゃらけて言いたいよ・・・。

 

ってのん気に言ってる場合じゃなくて!

これは相当ヤバイぞ・・・まじで死ぬかも・・・おお・・・。と内心では思った。

 

 

「スライムみたいな低級レベルの魔物に殺されるなんて・・・なんかちょっと・・・やだよ・・・!」

の頬を一筋の涙が伝った。こんなことで泣くなんて、と思った矢先だった。

 

 

 

 

こげ茶色の髪をした少年が、剣をスライムに突き刺した。スライムは血も出さず、風のように煙になって消え去った。

その後、少年はに手を振りかざしているようだ。気がつけば、の意識はしっかりしていた。

 

「よかった・・・!意識戻ったみたいだね!」

「は・・・?」

「大丈夫でがすか?一応兄貴がホイミをかけてくれたんでがすよ!」

「ホイミ?カス・・・?いや、がす・・・?て何・・・・?」

「兄貴、まだ体力戻りきってないんじゃないでがすか?」

コワモテのおっさんはそういうと、少年は豆でっぽう喰らったような顔をした。

 

「う〜ん。そうかもね・・・。ホイミ!

パアッとの周りを緑色の光が優しく包む。さっきよりも何だか体の調子がよくなった気はする。

 

 

 

「大丈夫?君ここでスライムにやられかけてたんだよ?」

「え・・・?スライムにやられかけたって・・・。一体ここはどこでっか?」

「で、・・・どこでっか・・・?何語?

少年は眉間に皺をよせて考えている。しまった何か論点ズレてること言ってしまった・・・!?

 

が慌てていると、少年は「まあその話は置いといて」と言って再度こちらを見てくる。置いとくんだ・・・。

 

「落ち着いて。ここはトラペッタっていう街の周辺だけど・・・君はそこに住んでる子じゃないの?」

「・・・・・トラペッタ?トランペットの親戚かなんかですか・・・?」

「それは楽器でがすよ」

 

コワモテおっさんに何気にツッコミを入れられ、ちょっと傷ついた

 

「その様子だとトラペッタの街の子ではないみたいだね。なんでここにいるのかわかる?」
 

何で自分がここにいるか?そんなこと全然わかんない。自分がいきなりテレビに吸い込まれたのだって、何もかも謎だ。
私はなんでこんなとこに・・・ん?

 

この2人、見たことあるかも・・・?

 

 

「あああああああああああああああああああ!」

「?! 何でがすか?!」

 

 

思い出した!ドラクエ8の主人公と山賊っぽいおっさんじゃん!あのゴッド★TORIYAMAが描いた!確かパッケージで剣やら色々構えて凛々しかった・・・!あとナイスバディなお姉さんもいたわ!!

 

「ど、どうしたの?」

「いっいいいいいえ!!な、なななな何にもないんですっ!!」

「そんなことより早く家に帰ったほうがいいでがすよ。もう今から真っ暗になりやすし、魔物も凶暴になるでがす・・・」
 

魔物・・・?じゃあやっぱりさっきのスライムは・・・。私はもしかして・・・ドラクエの世界に飛ばされたとか?!

 

 

「・・・いやぁ、まさかねっ!そんなことあるわけないし!」

「この嬢ちゃん、ちーとばかし独り言が激しいでがすね」

 

 

現実逃避失敗。

こんな変な口調の人に言われたくなかったわ!!!と思うだった。

すると少年が切り出した。

 

 

「でも本当にこのおっさん・・・いや、おじさんが言うとおり魔物が強くなる前に早く帰ったほうがいいよ??」

「兄貴、せめてお兄さんがよかったでがすよ・・・。」

はそんなコワモテの山賊おっさんは無視して、少年の話に返事した。

 

「帰るも何も・・・きっとこの世界には・・・あたしの家はない・・・と思うし・・・」

「「どういうこと(でがすか)?」」

少年とおじさ・・・ゲフンゲフン、お兄さんは不思議そうな顔での顔を覗き込んでくる。

 

「じ、自分にもよくわかんない・・・。でも簡単に言うと・・・この世界に住んでないって感じです・・・かねぇ」

「つまり異世界のやつって感じでがすか?」

異世界の人。なんだか差別されてるみたいで、ちょっとショックだった。だって、自分からすればこの世界が異世界のようなもんだ。にとっては当たり前の世界がバカにされているような気がした。

 

「まあ・・・そういうことになりますかね☆」

泣きたい気持ちをこらえながらはつぶやいた。そんなことを言っていたに、少年はつぶやいた。

 

 

「何そんな軽く話してるの?!だって・・・君の周りには今、君の事を知っている人はいないってことだよね!?」

「・・・・・・・・」

「身元もハッキリできるようなものはなくて・・・なんで笑ってられるの・・・?」

 

 

ぷちん。の中で何かが切れた。

 

「ほ、本当はねえっ!めっちゃつらいよ!辛杉増子(つらすぎます子)だよ!!すっごく怖いよ!か、か、家族も、と、友達も・・・知っている人なんて全然、全然もう全くいないし!!!」

キレた口調のだが、噛み噛みで全然決まらない。しかも瞳からは涙がポロポロと止めどなく流れ落ちている。

わかってる、この人たちは何にも悪くない・・・。怒ったりしちゃ迷惑なのに。

 

すると少年は、の頭をポンポンとなでた。ぶわっと更に涙が流れる。 

 

 

「信じて・・・くれるの・・・?」

「うん!あたり前だよ。君は嘘をつくような子じゃないって、一目で分かるもん」

優しい声、笑顔で少年は頭を撫でてくれる。

 

「それに・・・ボクも似たような感じだから」

「え?」

「でも僕はちゃんと家族と思える人がいるから。寂しく・・・ないよ」

少年はコワモテのおじさん(もういいやおじさんで!!)を見ながらそう言う。

 

 

の涙は止まらなかった。

 

「だからさ、君も・・・」

「・・・?」

 

少年は少し困った顔をして、こう続けた。

 

「ねえ、もしかして行くあてがなかったりする?」

「・・・うん・・・」

「よかったら僕らと一緒に旅しようよ。僕たちがある目的で旅してるんだけど・・・その話はまた仲間になってくれてからだけどね!」

 

 

少年は笑顔いっぱいに笑ってみせた。自然に顔が緩んでくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「本当にいいんですか?」

は何度もさっきからこのように尋ねた。

 

「だからいいんだって。ね、ヤンガス?」

「兄貴がいいならどんとこいでがす!」

「姫と同じ年頃じゃしな・・・よかろう!人数は多い方がドルマゲスを倒すのに有利じゃしな。」

 

全く気がつかなかったが、緑の醜い魔物とキレイな白馬も、どうやら仲間のようだ。

 

それにしてもドルマゲス。聞いたことない名前だった。まぁ当たり前だ、まだゲームはひとつも始めていなかったのだから。

 

「ドルマゲスっていうのは僕らが追ってる人なんだよ。」

「は・・・そうなんですか・・・!」

「あ!それと仲間なんだから。敬語はやめてね!」

 

仲間・・・。
その響きは、友人も家族もこの世界では失ったにとったら嬉しいものだった。

 

「僕は。こっちのおっさん・・・あ、お兄さ「いいでがすよ兄貴!・・・ムリしなくて。あっしはヤンガスでげす!よろしくな嬢ちゃん!」

「わしはトロデじゃ。こっちはミーティア。」

「ヒンッ!」

一人ひとり名前を紹介してくれる。えーっと若そうな男の子がで・・・おじさんがヤンガスで・・・。
と名前を整理していると、が聞いてきた。

「君の名前はなんなの?」

と。

 

「私は!!みんなと環境が違うから足手まといになったりするかもだけど・・・よろしくお願いします!!」


笑顔いっぱいの彼女に、場は和んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ところで。トロデさんはどうして魔物の格好なの?」

「うぬ?ワシとミーティアはドルマゲスの魔法で姿を変えられてるんじゃ。もとは王と姫なんじゃぞ?」

胸を張っていうトロデだったが、は正直言って全く信じられなかった・・・。

 

「あ、そうだ。早く街へ行っての防具とか買わなきゃね」

「うっ・・・、なんかもう何から何までごめんね・・・」

 

は街に着くまで頭を下げまくり、街に着いた頃には頭がフラフラしたりしたのは、言うまでもない。

 

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あとがき
肩がこった!ただそれだけです。w
ギャグはいってるんでしょうかこれ・・・?
頑張ります〜

 

2008.05.19  UP
2008.05.23    加筆
2009.05.17  書き換え