WEB拍手お礼小説5 2008.12.07〜2009.06.26

 



「はあ・・・」

もう深夜2時くらい。まだ、眠れない。
私の隣のベッドで、ゼシカはグッスリ寝ていた。

私は立ち上がって、そろそろと足音を立てないように、宿屋の部屋にある窓に近づいた。
重たく、冷えた窓を開けて、夜空を見上げた。

2階からの高さでは、地上と見る星空とは変わらない。
少しでも近くなった気は、これっぽっちもしない。

 

 

「お母さん・・・、みんなどうしてるのかな・・・」

そうだ。私が今こうして、みんなと過ごしている間にも、
私のいる世界では、同じように時間を過ごしている。

お母さんは私のことを心配しているのだろうか。
私が今、こうしてみんなと楽しい時間を過ごしている間にも。

 

 

「・・・?」

ふと人の気配を感じ、キョロキョロと周りを見渡した。

すると、私と同じように夜空を見上げる、いつも私たちを引っ張っていってくれる、人がいた。

 

「・・・っ」

・・・私の、大好きな人。

 

 

 

何を思っているんだろう。
私と同じように、トロデーン城で呪われて動かない仲間のことなのだろうか。

私は、部屋で寝ているゼシカを起さないように、小さく名前を呼んだ。

彼はその私の小さな声にもちゃんと気付いた。
少し微笑んで、まだ起きてたんだね と言った。

 

 

「・・・眠れないの?」

「うん・・・」

「はは、僕も」

彼はそっと笑うと、また視線を夜空に戻した。
2人とも、敢えて・・・理由は聞かなかった。

「綺麗だね」

「うん、そうね。ベルガラックじゃ電気があるから、星空が見えないし」

「でも僕、星よりも綺麗なもの、見つけたよ」

「・・・え?星よりも?」

綺麗な物が好きなのは、やはり女の感性のひとつだ。
私はその話を、興味深深になって聞き返す。

 

「・・・今、僕の近くにいる人」

「え?」

「じゃ、じゃじゃじゃじゃじゃあー僕寝るからね!あ、明日早いんだし!おやすみっ」

そう言うと彼は、顔を覗かせていた窓を即座に閉め、私に姿を見せてくれなくなった。

今僕の近くにいる人、か。そっちの部屋で眠る、ククールのことだろうか。
決してヤンガスのことじゃない。
確かにククールは美形だけど、星ほどじゃ・・・(←酷

 

「・・・ん?」

私は、少しだけ深く考えた。

「・・・今、僕の近くにいる人」あの人はそう言った。
しかもその後、逃げるようにして部屋に消えていった。

それってもしかして。それってそれってもしかーして。

 

 

「・・・あ、あああああああたし?ワタクシめのことですかい?」

頭が混乱して、変な言葉しか出てこない。

私はヘタッと、立っていられなくなって座り込んだ。
顔はすっかり、熱くなっている。

 

「え、えええええええええええええええええええぇぇぇぇぇぇ!?」

静まり返った田舎の村の宿屋に、私の声が響き渡った。
ゼシカが飛び起きたのは、言うまでもないのでぃす。






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